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第1話_「刻が動く日」

Last-modified: 2013-12-18 (水) 17:46:45

月面都市グラナダ

 

月の裏側に位置する第2の都市

 

旧ジオン公国キシリア・ザビ中将率いる機動軍の本拠地とされ、
一年戦争の終戦協定が締結された軍事都市でもある。

 

そのグラナダ市内にあるエゥーゴの為に極秘裏に設けられた、
ごくありふれた5階建てほどのビル。ビルの最上階の一室で
エゥーゴの指導者でもあるブレックス・フォーラ准将と、
月面基地プトレマイオスに拠点を置く
連邦宇宙軍第8機動艦隊司令、
デュエイン・ハルバートンとの間で会談が行われていた。

 

「私にエゥーゴへ参加しろと?」

 

ハルバートンは腕を組み、鋭い視線をハルバートンへ向けながら問いかける。
ハルバートンの視線で一瞬だが応接室に緊張感が走る。
しかしブレックスは臆する事もなく、彼の目を真っ直ぐに見て応える。

 

「知将と呼ばれるお前の力があれば、
臆病風に吹かれた保守派を動かす事もできるはずだ」

 

「ブレックス……
いくら友人の頼みでもそうやすやすと決断出来るものではないぞ…?」

 

2人は士官学校時代からの同期であり親友だった。
ブレックスは、アースノイド至上主義組織であるティターンズのやり方に猛反発し、
ティターンズなどの強硬派による監視の下、軟禁状態に合っていた。

 

ハルバートンはそんな彼の身を案じ、
連邦上層部やティターンズに彼の軟禁状態を解くよう働きかけるなど、
ブレックス・フォーラとデュエイン・ハルバートンの間には、強い絆があった。

 
 

「私はお前のように軍政に参加するつもりはないのは分かっているだろう?
世直しをするなど私には荷の重すぎる話だ。」

 

彼の言うように、ブレックスは連邦軍階級は准将でありながら、
議員資格すらも持つ大物中の大物である。
ハルバートンはエゥーゴの存在を認めない訳でもなく、
ティターンズに賛同している訳でもない。
連邦政府を動かせるのはブレックスしかいないと考えてもいる男で
ハルバートンは現在の連邦を改革するには重要な人物なのだが、
彼にはその自覚はなかった。

 

「……そうか。いや、無理を言ってすまなかったな。」

 

ブレックスは彼の返答に納得し、
清々しい表情でハルバートンへ語りかけていたが、
ハルバートンは下を見て何やら考え込んでいるようだった。

 

「…デュエイン。どうした?」
「……いや、待てよ…」

 

ハルバートンの考え込んむ様子をブレックスが不思議に思うと、
ハルバートンはふと何かを呟く。
それを聞き逃さなかったブレックスの眉がピクリと動く。

 

「…ブレックス。お前に聞きたい事がある。」

 

ハルバートンは再び顔を上げると鋭い視線を再度、ブレックスに向ける。
その空気を読み取ったか、ブレックスは何だ?
と返すとハルバートンはゆっくりと語り出した。

 

「現在、連邦宇宙軍が再編計画を行っているのは知っているな?」

 

ハルバートンの問いかけに当然だと言わんばかりに
何も言わずにブレックスは大きく頷くと、ハルバートンはさらに続ける。

 

「その中で穏健派である第3地球軌道艦隊のジョン・コーウェン中将がアナハイムと協力し、
ガンダム開発計画を行っている。そしてティターンズも
独自の技術でガンダム開発計画を行っている。」
「なんと…ガンダムだと?」

 

そうだ。と、言うとハルバートンは
それまで組み続けていた腕を解き身振り手振りで話を続けた。

 

「実は私もガンダム計画を極秘で行っている。
その為の艦艇も完成している。
もちろん、アナハイムや連邦の技術では無い、
ある所の技術を用いてな。」

 

アナハイムガンダムは自身の知るところではあるが、ティターンズや、
ましてや旧友である彼すらもガンダム計画を行っている事を知らされたブレックスは驚きを隠さなかった。
一年戦争以降、軍縮によりモビルスーツ開発自体が進まずにいた事にも起因はしているが、
兵器開発に消極的になっている企業は多かったからだ。
ブレックスは迷わずにどこの協力でモビルスーツ開発を行っているのかをハルバートンへ聞き出す。

 

「モルゲンレーテ社…アナハイムとはそれなりに仲の良い会社とは聞いているがな。
モルゲンレーテはオーブの軍需産業会社だ。
新型モビルスーツはサイド7のヘリオポリスで密かに行われている。」

 

ブレックスは驚愕した。
中立国を標榜するオーブが何故連邦軍に協力しているのかと。
どうやらハルバートンとオーブとの間には、
太いパイプがあるそうだが、モルゲンレーテとの利害関係の一致が決め手だったそうだ。

 

戦争に関わらないと宣言した国とその軍需産業を味方につけるとは、
やはりこの男は連邦の改革に関わるべき男だとブレックスは思ったが、
それをここで言っても首を立てには振らない男だというのももう分かっていた。
しかしアナハイムのメラニー会長も人の悪い方だ。
だが、企業ならば我々みたいな顧客が離れるような情報などをおいそれと流す事はしないな…
などと色々と考え込んでいたブレックスを尻目にハルバートンはさらに続ける。

 

「ブレックス…心血を注いだこの計画。
何故お前に簡単に漏らしたと思う?」

 

ハルバートンの真剣な表情にピリピリと肌が痺れる感覚を覚えたブレックスは、
彼のその言葉の意味を数秒ほど考える。
やがてその意図を読んだブレックスが
ハッとハルバートンの顔を見やると彼は大きく頷く。

 

「そうだ。その新型をエゥーゴにくれてやる…しかし私はエゥーゴへの参加は出来ん。
計画に参加している艦長を始めとする士官達はエゥーゴへの参加をかねてから希望していた。
それらを全てお前に託す…彼らを正しき道へ導いてやってくれ。」

 

ハルバートンはここまで来て断るとは言わせんと言うと、ブレックスも彼の意思を尊重し彼の要望を快く快諾し、2人の極秘裏に行った会談は終わった。

 
 
 

サイド7(グリーンオアシス)
オーブ首長国コロニー・ヘリオポリス

 

アークエンジェル級強襲機動特装艦・アークエンジェルーーー

 

連邦宇宙軍第8機動艦隊司令、デュエイン・ハルバートン准将がオーブ・モルゲンレーテ社の協力のもと極秘裏に推し進めた、連邦宇宙軍再編計画の一角として開発された記念すべきタイシップである。
その姿は一年戦争最大の功労艦であるペガサス級・2番艦ホワイトベースに酷似していた。

 
 
 

優雅なその白亜の船体は来たるその『刻』を待っていた。

 
 
 

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