Top > 第13話_「運命の分かれ道」
HTML convert time to 0.034 sec.


第13話_「運命の分かれ道」

Last-modified: 2014-04-05 (土) 01:14:18
 
 
 

時を同じくして
プラント・アプリリウス市~

 

ピンストライプ地に紺色のスリーピーススーツを身に纏い、
議長室に通された白銀の髪を後ろに束ねた男と、
黒いスーツに褐色の肌をした細面の男が、
議長席に腰をかけるパトリックに頭を下げ口を開ける。

 

「お初にお目にかかります。ザラ議長閣下。」
「…うむ、頭を上げたまえ。」
パトリックは男に言うと、
その精悍な顔がパトリックの目に入る。
その目は力強く、まさしく戦いを知る武人のそれだった。
このような力強い目をした兵が我が方には
どれだけいるだろうかと一瞬考えた。

 

「私共のような若輩者への
丁重なる出迎えに非常に感謝しております。」
男の口から出る言葉は固く、
形式ばってはいたが、彼は粛々と挨拶を済ませた。

 

「噂に違わぬ男のようだな…アナベル・ガトー少佐。
君に会えると聞いて内心ワクワクしていた。」
パトリックは彼から滲み出る空気に触れ、
少しばかり内心興奮していた。
一年戦争時代『ソロモンの悪夢』と呼ばれた
このアナベル・ガトー少佐の功名は
地球圏全体に知れ渡るほどの男だった。

 

「勿体無いお言葉…。
議長閣下、こちらがデラーズ少将からの親書でございます。」
世事をあまり好まないガトーは軽く返すと、
本題であるジオン残党軍を指揮する
エギーユ・デラーズ中将の親書をパトリックに手渡した。
ガトーが使者としてプラントへ赴いた目的は、
まさしく打倒連邦を掲げ敵を同じくする
プラントとの同盟関係を築く事にあった。

 

ガトーの後ろにいるのは
同じく一年戦争時代の生き残りで、
ガトーの腹心である
カリウス・オットー中尉だった。
パトリックはソファー席にガトーとカリウスに掛けるよう施し、
二人はいかにも高級な本革張りのソファーに腰を掛ける。
ガトーらの対面に座るパトリックは、
親書に目を通して数分が経過すると、
テーブルに読み終えた親書をそっと置き、
一つ息を吐いてからガトーの目を見て口を開ける。

 

「つまりは我々と同盟を結びたい…そういう事だな?」
パトリックが読み終えた親書の内容を理解し、
ガトーへ単刀直入に伺う。

 

「連邦は内訌状態…
ジオン、プラント双方にとって千載一遇のチャンスなのです。」
「だがそなたらのような、
少数勢力と組むメリットは?目的は何だ?」
理路整然と答えるガトーにやや消極的とも思える姿勢で
再度、ガトーにその真意を問うた。
ガトーにとってもパトリックの反応は、
当然だろうと考えていた。
ジオン残党はごく少数で連邦に対して粘り強く、
ゲリラ戦を続けているとはいえ、
ジオンと組んだ所で、ドラスティックに
何かが変化するとは誰もが思わないのが普通だった。
しかしそんな心配を払拭させる事が出来る
ある一つの情報をパトリックにガトーは打ち明ける。

 

「ご心配には及びません。
サイド3は遅かれ早かれ我々が取り戻します。」
パトリックのぴくりと動いた眉をガトーは見逃さなかった。
若干の動揺を押し殺していたパトリックだが、
その顔にはどういう事だ?と、言いたげな色が垣間見えると

 

「小惑星アクシズと共に、
ミネバ・ザビ様が地球圏にご帰還致します…」
とガトーがたたみかけるかのように続けて言うと、
衝撃的な彼の言葉にパトリックの背筋がざわりとして、
何か冷たいものが触れた気がした。

 

「…なんと!?それはまことか?!」
彼はプラントの最高責任者という立場であるにも関わらず
正装に身を包んでいるとはいえ、
ジオンの落ち武者の前で声を上げて驚く姿を晒していた。

 

「ミネバ様の地球圏ご帰還が叶えば、
サイド3は再びジオンの名の下に立ち上がるはずです。」
ガトーは予想通りの反応だなと、
隣に座るカリウスに顎を軽く上げると、
側に置いたジュラルミンケースを徐(おもむろ)に開け、
その中から数枚の資料をパトリックに手渡した。

 

パトリックはまだ驚いていたが、
手渡された資料を目にすると
連邦軍のモビルスーツ、ガンダムに関するデータが
詳細に記されている資料だと分かった。
各ページに散見され、ある単語に気付いてガトーに聞く。

 

「『ガンダム開発計画』?アナハイム製のようだが…」
ガトーとカリウスは互いの顔を見合わせた。
やはり食いついたな…。
そう思っていたガトーは小さく頷くカリウスを見ると
「ガンダム試作2号機…《GP-02A》 の資料をご覧下さい。」
と言って、パトリックは言われた通りに
該当する資料を開いて驚愕した。
そこには『核兵器』とそれに関する詳細なデータが記されていた。
資料を持つ彼の手は震え、
噴火寸前の火山かと思わせるような表情を見せていた。

 

「『血のバレンタイン』の悲劇を繰り返すつもりか…!」
パトリックは左の拳を太腿の上に乗せ強く握り締めていた。
そこへガトーはパトリックの言葉を被せるように、
「我々には秘策があります。
それを『星の屑作戦』と言います。」
とパトリックを見据えて言うと、
パトリックの目がガトーの方へ向けられた。

 

「『星の屑作戦』…とは?」
パトリックの問いに、ガトー頷きは無言で返事を返した。
カリウスは更にケースから、
新しい資料をパトリックに手渡す。
資料の見開きをめくると同時にガトーが口を開けパトリックへ、
事細かに『星の屑作戦』に関する説明をしていった。
普通ならばこれは超極秘事項であり、
作戦の詳細なども明かすべきでは無いのだが、
パトリック・ザラは必ず協力を承諾してくれる事を
親書を寄越したデラーズ中将は信じていたようだ。

 

パトリック・ザラはガトーからの話を聞いて、
そんな事が上手く行くのかどうかと懐疑的ではあったものの、
彼らを迎え入れる方へと、やや傾きかけていた。

 

そこで敢えて彼を揺さぶりをかけるかのように
ガトーは同盟を結んだ場合の一つの条件を提示した。

 

エゥーゴとは同盟、もしくは協力関係を結ばない事…
これが最大の条件だった。
真の独立をする為には打倒連邦という大義名分を掲げ、
ジオン再興を目的としたザビ派の集合体である残党軍と、
反ザビ派が多く在籍しティターンズの横暴を止める為や、
地球に住む者達を宇宙に上げるなどと
主張する『連邦政府』の一組織とは、
元々の目的が違うと言うのだ。

 

「閣下…。二つのサイド以上の規模を持つプラントと
我々が手を組む事が成ったならば、
間違いなく一瀉千里(いっしゃせんり)に事は運びましょう。」
自信に満ち溢れて言ったガトーのこの言葉に対して
一先ずは議会での決議が必要として、
パトリックは彼らへの返事は即決に至らなかったものの、
確かにプラントと残党軍が同盟を結び、
更にミネバ・ザビというザビ派の旗頭が、
地球圏に来るとなれば、各地に点在すると言われる
隠れザビ派の者達が蜂起するのは間違いない……
そうなれば硬直化した戦局も打破出来るのでは…?と考えた。
そして、クルーゼ隊から上がった偶発的なエゥーゴとの交戦は、
こうなる運命だったのかもしれないとも考えていたが、
しかし議会でよくよく議論すべき議題であると、
冷静さを取り戻すかのように自分に言い聞かせていた。

 

「とにかく、議会での決議が出るまでは
こちらで待ってもらうが宜しいか?」
「は…良い御返事を頂ける事を期待しております。」
パトリックはポーカーフェイスを装い、
ガトーらに言うと、この返事も予想の範疇(はんちゅう)と
言いたげなガトーは二つ返事で受け入れた。

 

 

「こいつらエゥーゴに比べりゃ相変わらず歯応えないね!」
ディアッカはティターンズを皮肉りながら
グリップボタンを押すと、
《バスター》の両肩部の6連ミサイルポッドから
12発ものミサイルが放たれ、その内の数発のミサイルが
《マダガスカル》船体側面に直撃する。
そこへとどめとばかりにニコルの《ブリッツ》が、
ミラージュコロイドを解くと、何もなかった宇宙空間から
突然現れビームガンを撃ち放ち、
ビームは《マダガスカル》の艦橋を撃ち貫き、
次々と大爆発を起こし宇宙の藻屑となって行った。

 

「《マダガスカル》轟沈!!
防衛ラインを突破されます!」
「なんだと!?」

 

ジャマイカンは《マダガスカル》轟沈の知らせを聞くと、
こめかみの汗が滴り落ちるのが分かった。
ティターンズ結成時でのバスクの御座艦だった艦が
沈んだと聞き、膝から下の力が抜けていた。

 

ミゲルは《アレキサンドリア》を守っている、
《ジム・クウェル》の、
カクリコン・カクーラー中尉と相対していた。

 

「くそっ…!ガンダムなんて聞いていないぞ!!」
カクリコンが吐き捨てながら、
モビルスーツを操り、ビームライフルを撃ち放つ。

 

「中々良い腕してるじゃないか!!…だがな!」
カクリコン機のビームをなんなく躱したミゲルは
《シグー》の左腕に装着されている。
シールドガトリングガンで反撃に出る。
3つの砲口が回転し数百発もの弾丸が撃ち放たれると、
シールドの裏から発射された弾丸分の
薬莢(やっきょう)が飛び散り、
《ジム・クウェル》に放たれた弾丸は熱を帯び、
赤く色を変えてその濃紺の機体を目掛けて襲いかかる。

 

カクリコンはシールドを構え攻撃をなんとか凌ぐが、
劣勢に立たされているのは明らかだった。

 
 

「なに!?帰艦はたったの2だと!?」
「は!《ボスニア》のガルバルディ隊だけのようで…」
「ええい、情けない…!!」

 

ジャマイカンはオペレーターの報告に
全身の血の気が引くような感覚に襲われた。
エゥーゴとの戦いで想像以上の損害を出した上に、
ザフトのモビルスーツの中には、
4機ものガンダムがいるという事実も一つの要因だった。

 

「高熱源体接近!!」
「なに…!?回避だ!!」
オペレーターが悲鳴のように叫ぶと、
ガティが操舵士にすかさず指示を出し、
回避運動を行うとブリッジ内が薄緑の光で照らされ、
ビームの光軸が掠めていた。

 

イザークの駆る《デュエル》の放った、
スナイパーライフルによる長距離ビーム攻撃だった。
ヘリオポリスを襲撃した際に回収した、
《デュエル》用の追加武装の一つでもある。

 

「通信機器が使用不能!!
レーダーやセンサーも一部が使えなくなりました!」
《デュエル》の狙撃により、
《アレキサンドリア》のブリッジ内部は、
各部の電子機器がスパークを起こし、
戦闘指揮所としての機能を失っていた。

 

「くそ…撤退信号を上げろ!!」
機能不全を起こした光景を目の当たりにした
ジャマイカンは堪らず声を上げた。

 
 

「ち…掠っただけか…!」
ブリッジへの直撃を損なったイザークが軽く舌打ちをする。

 

「おいおい、イザーク。
慣れない事はするもんじゃないぜ?」
通信を開いて皮肉ってきたのはディアッカだった。
ディアッカの言葉にイザークは眉をピクリと動かすと
「…フン、次は外さん。」
と苦し紛れにも聞こえる言葉を返し、
コンソールの照準機に目をやると、
戦闘宙域に《アレキサンドリア》から信号弾が上がり、
漆黒の空間は数秒間だが鮮やかな光に照らされる。

 

「チ……腰抜け共め…」
好機を逸したイザークが毒づくと、
構えていたスナイパーライフルを下ろした。

 

「フン……準備運動は以外と早く終わったな。」
「はい。ガンダムの性能は驚くべきものです。」
尻尾を巻いて逃げる様を見ていたクルーゼが皮肉っぽく言うと、
アデスは初めて見るガンダムの性能に舌を巻いていた。

 

すると、ブリッジのセンサーから音が鳴る。
「エゥーゴのモビルスーツが近付いて来ます。」
索敵担当のオペレーターがそう言うと、
「フフフ…まんまと網に掛かったようだな……」
微動だにしないクルーゼが口元を釣り上げ小さく呟いた。

 

クルーゼの言葉が耳に入ったアデスが、
「…何か策でも?」と、伺う。

 

その問いに対して、
「まぁ見ていろ…アデス。」
と、彼の言動に相も変わらぬ冷酷さが垣間見えた。

 

 

《アーガマ》のモビルスーツデッキでは、
ノーマルスーツを着たデッキクルーや、
メカニッククルーらが忙しなく動き回っていた。

 

《Mk-II》1号機の足元にはエマ・シーン中尉が、
ドリンクのストローを口にして喉を潤していると
目の前をカミーユが横切り、思わず彼女は声をかける。
「カミーユ、あなたまだ戦うつもり?」
それがエマの率直な感覚だった。
母親が目の前で無残な死を遂げたというのに
尚も戦おうとするカミーユの姿勢が理解出来なかった。

 

「動いていないと気持ちが沈んでしまう気がして…」
俯き加減で言葉を返すカミーユを見てまずいと思い、
「ごめんなさい…そういうつもりではないの。」と謝ったが、
エマは彼の傷口に平然と触れてしまったと思い、
少し後悔したようでカミーユの背中を
ただ見守る事しか出来なかった。

 

そこへクワトロが後ろから「エマ中尉。」と
声をかけると、エマは直ぐにクワトロの方へ体を向ける。

 

「中尉、すまんが次の戦闘までは協力してくれ。」
「私は構いません。」
エマがクワトロに一言で返すと、
クワトロは頷いてヘルメットのバイザーを下ろし、
「先行した部隊がそろそろ戦闘に入る。
我々も急いで向かうぞ。」
と、言うと《リック・ディアス》のコックピットへ
体を泳がせると、エマも《Mk-II》へと向かって行った。

 

「先行しているフラガ大尉達は?」
《アークエンジェル》から補給を終え、
先行しているムウ達の動きをブライトがシーサーに確認する。

 

「まもなく接触します。
会敵予測時間は凡そ5分後です。」
レーダーに目を配らせながらブライトに答えると、
ブライトは「分かった。」と言って軽く頷いた。

 

「しかし…ザフトもギリギリの状況でよくやるものだ。」
隣に座るブレックスがボソリと呟くと、
「そうですね…こんな敵陣真っ只中に
あの残存戦力で艦隊規模の戦闘に横槍を入れたわけですからね…」
と、ブレックスの方へ顔を向けてヘンケンが応じた。

 

「まさかとは思いますが、
伏兵がいる可能性もあるかもしれませんね…」
ブライトはどこか予感めいた物を感じ、
ブレックスに徐(おもむろ)に口を開けた。

 

それも一つの可能性だとブレックスは考えながらも、
「ここはティターンズと、ルナツーの防衛圏内だ。
ザフトといえどあの2隻が侵入するのがやっとのはずだ。」
と、ブライトを否定する訳でもなく答え、
ブライトはそれに納得しつつも、
前方に広がる漆黒の海へと視線を向け直した。

 
 

「いたぞ!キラ、集中しろよ!?」
「はい!」
GAT-XナンバーズとZGMF-1017、515の計6機の
型式番号が表示されると、
ムウ達の操縦桿を握る手が自然と強くなる。

 

「フラガ大尉、自分は《バスター》を叩きます!!」
「了解だ!クワトロ大尉達が来るまで10分くらいだ!
それまで持たせるぞ!!」
ロベルトは先ず、中、長距離からの支援攻撃に秀でた
《バスター》へと攻撃の目標を定める。
これは元技術大尉のラミアス艦長からのデータによるもので
広域への攻撃能力を持つ移動砲台とも言うべき、
《バスター》は第一目標とすべきモビルスーツだった。

 
 

「ん!?…来ました!!」
ニコルがコックピットに鳴り響いたアラートに反応し、
コンソールに目をやって声を上げた。

 

「《ストライク》…!?」
アスランはモニターのHUDに拡大表示される、
《エールストライク》を見ると、心臓が強く脈動する。
それと同時に喉が妙に渇く感覚を覚え、
生唾を呑み、体に力が入っていた。

 

「ったく!なんでエゥーゴは仕掛けてくるかね!!」
「ガンダムを奪い返すつもりなんだろ!!」
ディアッカはエゥーゴを相手にするのは、
どうも嫌なようで命令とは言え、その気持ちを隠さずに
愚痴ると、イザークがすぐさま言葉を返す。
《デュエル》は両手に持ったスナイパーライフルを、
バックパックにマウントすると
右腰部にラッチされたビームライフルを手に取る。

 

「無駄話はよせ!奴らは強いぞ!!」
ミゲルがそう叫ぶと、
《メビウス・ゼロ》に向かって直進し、
右手に持つマシンガンを撃ち放つ。
《メビウス・ゼロ》はその機体を回転させて攻撃を躱す。
「あの《シグー》…クルーゼじゃないな!?」
ムウは《シグー》から、
いつもの不愉快さは感じていなかった。

 

距離を開けながらマシンガンで迎撃する《シグー》は、
その機動力を活かして《メビウス・ゼロ》との
ドッグファイトに突入する。

 

「さすが隊長の《シグー》だ…!スピードは申し分ないな!!」
ムーバブルフレーム式となっているクルーゼの
特別仕様である《シグー》のスピードは
セミモノコック式であるミゲルの《ジン》とは
比べ物にならないほどの機動力だった。

 

「相手はあの『エンデュミオンの鷹』だ…!
落とせば勲章モノだな!!」
ミゲルは自分を鼓舞するかのように、
興味も無い勲章などと口にして戦意を高揚させていった。

 
 

会敵と同時に《エールストライク》と、
《イージス》はビームサーベルを引き抜き、
互いは睨み合うとアスランが通信回線を開く。

 

「キラ!!」
「アスラン!?」
キラは《イージス》に乗っているのは、
アスランだと分かっていた。
だからこそ、《イージス》の下へとやって来たのだった。

 

キラはアスランの呼びかけに応答すると、
「剣を引けキラ!!僕達は敵じゃない!
そうだろう!?何故僕達が戦わなくちゃならない!!」
とアスランは声を荒げて、キラを説得にかかりに来る。
その言葉にキラはその気持ちは無意識に揺らいでいた。

 

「お前が何故エゥーゴに居る?
何故ナチュラルの味方をするんだ!?」
更にアスランがキラに対して言葉を続けると、
キラが堰を切ったように反論をする。

 

「ナチュラルとかコーディネイターとか…
そんなの僕には関係ないんだ!!」
キラは無意識に揺らいでいた気持ちを
振り払うかのようだった。
アスランは幼馴染であるキラのこのような表情を
今まで見た事が無かったのか、驚きを隠さなかった。

 

「あの船には仲間が…友達が乗ってるんだ!
君こそなんでザフトになんか……!
なんで戦争をしているんだ!
戦争なんか嫌だって…君だって言ってたじゃないか!
その君がどうしてヘリオポリスを…!」
キラもまた幼馴染の心優しく正義感に溢れていた
アスランが戦争に加担している事が信じられなかった。

 

その時ーーー
《エールストライク》に向けて、
ビームの雨が降り注ぐ。

 

「何をモタモタやっているアスラン!!」
「イザークか!?」
《イージス》の下へ駆け付けたイザークは
アスランへ怒声を浴びせながら、
ビームライフルを《エールストライク》へ乱射して
キラへ襲いかかった。

 
 

「壊さん程度にやらせてもらう!!」
一方、ロベルト機は左手に構えたビームピストルを数発放つと
黄色の光軸がバスターに次々と向かって行く。

 

「ファットマン…!あの時のオッサンか!?」
ディアッカはビームを躱しながら、
《バスター》の左腰部のサブアームを稼働させ、
94mm高エネルギー収束火線ライフルを
左手に構えると、《リック・ディアス》に撃ち放つ。

 

大口径の砲口から超収束されたメガ粒子の光は
《リック・ディアス》に向かって伸びて行く。
しかしそれをロベルトは読んでいるかのように、
躱し左手を前に出して構えると、手の甲の部分から
マルチプルランチャーを《バスター》目掛けて放つ。

 

放たれた小さな玉は白い硝煙を棚引かせ
《バスター》の眼前で爆ぜると、辺りに白い煙幕が広がる。
「スモークディスチャージャーか!?」
ディアッカは予想外の目眩ましに顔を歪ませると、
白煙の中からロベルトの《リック・ディアス》が現れ、
ビームサーベルを振り上げ《バスター》の目前まで迫る。

 

「うわっ!?」
ディアッカは反射的に操縦桿とフットペダルを動かし
ロベルト機が振り下ろしたサーベルを掠めるように回避した。

 

これを避けるのか…!?
ロベルトは《バスター》の異常な反射速度に驚愕した。
白兵戦用の武装を持たない、
《バスター》最大のウィークポイントを突いた
戦法だったがそれを見事に凌いでみせたのだ。
通常ならば勝負ありというタイミングだったにも関わらず
それを躱すコーディネイターへの驚異を感じていた。

 

すると、コックピットに警告音が鳴りロベルトが反応する。
「ディアッカ!!距離を開けて下さい!」
ニコルがそう叫び、《ブリッツ》から
ビームガンが撃ち放たれ、
《リック・ディアス》を《バスター》の前から引き剥がす。

 

《ブリッツ》か…
《バスター》の小回りの効かなさを補うには、
《ブリッツ》のような機動力のあるモビルスーツは
少しばかり厄介だと感じ、ロベルトが顔を曇らせながら
「チ…面倒だ!」と、
口中に吐き捨てビームピストルで応戦する。

 

そこへロベルト機の放ったビームとは違う方向から
ブリッツに向かってビームが襲うい、
左肩部を掠めるとアーマー部分が僅かに溶解する。

 

「ロベルト!援護する!!」
「アポリーか!?」
《アーガマ》のモビルスーツ隊が一足遅れて到着すると、
アポリーはロベルトへの援護に回っていた。

 
 

「当たるかっての!!」
ムウは持ち前の操縦技術を駆使して、
ミゲル機の攻撃を蝶のように舞い躱し続け、
《シグー》と《ジン》に対して渡り合っていた。

 

「すばしっこい奴め…!」
一方でミゲルは当たらない攻撃に苛立っていたその時ーー。
3発4発と、ビームの光軸が、
《シグー》と《ジン》に向かって迸(ほとばし)る。
回避運動に入った《ジン》だが、
確実にコックピット部分が撃ち抜かれると、
火球となって消えて行き、
ミゲルがビームが向かって来た方へ目をやると
モニターには赤い《リック・ディアス》と、
カミーユの《ガンダムMk-II》が視界に入った。

 

「大尉はキラ・ヤマト君の援護へ向かってくれ。
カミーユは《バスター》と《ブリッツ》を追い込め。」
「すまん!分かった!!」
駆けつけたクワトロがそう指示を送ると、
ムウは《ゼロ》のスラスターを噴かせて、キラのもとへ向かった。

 

「カミーユ、問題ないか?」
「わがままを言って出て来ましたから、
さっきのみたいに勝手な真似はしません。」
クワトロは随伴するカミーユを気遣うと、
カミーユはやけに大人しい返事を返した。
母親を殺されて落ち着かない気持ちを抑えようと、
クワトロやブレックスに懇願して出撃したという
本人の自覚はしっかりとあったようで、
決して突発的な行動と判断では無い事に少しだけ安堵しているが
あえて冷静に振舞っている彼をやはり心配していると、
カミーユもクワトロのもとを離れて、
アポリーとロベルトの援護に向かって行った。

 

わざわざ1対1を挑むとは舐めているのか…?
《シグー》は《リック・ディアス》に対して、
シールドのガトリング砲を放ちながら
距離を詰めて行くと、腰の重斬刀を手に取り斬りかかる。

 

《リック・ディアス》はガトリングを躱して、
重斬刀を振り上げる《シグー》を見極めると
ビームサーベルを引き抜き、攻撃を受け止める。

 

「ほう…接近戦を挑んで来るとは自信があるようだな。」
「なに…?」
接触回線を通してクワトロがミゲルに言って、
「だが接近戦は一撃で仕留めねば意味が無い。」
と、言葉を重ねると頭部バルカンファランクスを
《シグー》の頭部に放つとメインカメラを潰される。
ーーーメインカメラを…!?
ミゲルはしまったと焦ると、更に右腕を溶断された。

 

「まずい…!引くしかないか…!!」
隊長から借りている《シグー》を大破させられないと
感じたミゲルはガトリング砲を撃ち、
距離を開けると、すぐさま反転して離脱した。

 
 

「くそ…!当たれ!!当たれ!」
「そんな攻撃!!」
キラはビームライフルを乱射して、
《デュエル》を狙うが攻撃を当てられずにいた。
アスランが目の前にいる気持ちが冷静さを狂わせていたが
何よりも、経験値の差が如実に現れていた。
ヘリオポリスのコロニー内での戦闘時と違い、
足枷の取れたイザークは水を得た魚のように
《デュエル》を自分の手足のように操っていた。

 

アスランは劣勢に立たされる自軍の戦いに参加せず、
《エールストライク》を追い詰める《デュエル》を見ながら、
彼のその表情は曇っていた。

 

しかし、戦場でそのような無防備な姿を逃さなかったのは
エマ機の《ガンダムMk-II》だった。
本来は保護観察の身になるが、ブレックスの判断により、
今回は特別という事で戦いに出ていた。
エマにとっても信用してもらう為のチャンスでもあった。

 

エマは動かない《イージス》を照準に定めると、
《Mk-II》はハイパーバズーカを撃ち放つ。

 

完全に不意を突かれたアスランは、
迫り来る砲弾に気付いたものの回避は間に合わず
《Mk-II》のハイパーバズーカが直撃する。
《イージス》のコックピットは激しく揺れ、
アスランは衝撃に耐えようと、全身に力が入る。

 

エマは《イージス》に直撃弾を当て、
これ以上ないほどの手応えを感じていた。
しかし、爆煙の中から現れた《イージス》を見て驚く。

 

「直撃だったはず…普通の装甲じゃない!?」
通常のジム系モビルスーツなどに装備される
バズーカとは威力も違う攻撃を物ともしない
《イージス》を見てエマは思わず声が出ていた。

 

「アスラン!ボケっとするな!!」
イザークの怒声がコックピットに響き、
アスランは唇を噛み締め、操縦桿を動かし
ビームライフルを構えて《Mk-II》へと反撃を試みる。

 

エマはメガ粒子の光軸をぎりぎりで躱すと、
ムウの《メビウス・ゼロ》が、
リニアガンを《イージス》の背後に撃ちつける。

 

再びコックピットが揺れると、
アスランの表情に焦りの色が出て来ていた。

 

その時ーーー。
戦闘宙域を大きなメガ粒子の光軸が漆黒の海を切り裂いた。

 

「なんだ!?」
クワトロは、ビームの発射源に目を送りモニターで
ズームをすると、そこには思いもよらぬ物が映っていた。

 

「あれは…ザンジバル級?」
ミノフスキー粒子の影響下でハッキリと見えないものの、
その特異的な寸胴な船体を見て、
クワトロは間違いなくザンジバル級だと認識できた。

 

 

ザンジバル級《リリー・マルレーン》の
ブリッジの艦長席には、
元ジオン軍のキシリア・ザビ少将の子飼いだった、
シーマ・ガラハウ中佐が腰掛けていた。

 

「おや?もう始まっていたようだね…」
シーマは歯に衣着せぬ口振りで口元に扇子を当てながら、
通信を用いて《ヴェサリウス》のクルーゼへ言う。

 

「随分と遅い到着だったようだな、シーマ・ガラハウ中佐。」
クルーゼはいつもの調子で皮肉っぽく言った。
シーマ艦隊は一年戦争終結後に宇宙海賊として海賊行為や
時には傭兵やスパイ活動を行って、自らの口を賄っていた。

 

「野暮用があってね…だが、
主役は遅れて登場するのが定石だろう?」
シーマがクルーゼの言葉をさらりといなすと、
それに対してクルーゼはフン…。と、
鼻で一つ笑ってから口角を上げて言う。
「ご覧の通り私の部下が少々手を焼いてな。
そちらには安くない報酬を払っている…
早速、元海兵隊の実力を拝見させて頂こうか。」

 

クルーゼとシーマのやり取りを、
ブリッジで見ていたアデスやブリッジクルーは
怪訝な顔でそれを見ていた。

 

この男は一体何を考えているのか…ーーー。
下劣で悪名名高い宇宙海賊と関わるとは…ーーー。

 

ブリッジにいる部下達の何人かはそう考え、
ラウ・ル・クルーゼという男の真意を計りかねていた。

 

「せっかちな男だね…まぁいい…アタシも出るよ!」
「よし、モビルスーツ隊発進!
《アトモス》と《テュポーン》は前進!!」
シーマが鼻で笑いながら言うと、
副官のデトローフ・コッセル大尉が、
その凶悪な顔と威圧的な声を上げて指示を送り、
随伴するムサイ改級から先駆けて、
次々と《ゲルググ・M》が、
スラスターを煌めかせ戦闘宙域へと突き進んで行く。
シーマ・ガラハウは立ち上がり、
ブリッジを後にして行った。

 

 

クワトロの視線の先から、モビルスーツが近づいて来ると、
クワトロの《リック・ディアス》にマシンガンの鋼弾が襲う。

 

「マリーネ…やはりあれはシーマ・ガラハウの…」
クワトロはマシンガンを軽々と躱すと、
攻撃を仕掛けてきた《ゲルググ・M》を見て、
クワトロは即座に相手が誰なのか勘付いた。
これだけの数の《ゲルググ・M》を搭載している
地球圏に残るザンジバル級と言えば、
リリー・マルレーン以外に無いと読んでいた。

 

次々と現れる《ゲルググ・M》はカミーユ機にも襲いかかる。

 

「クワトロ大尉!こいつらはジオン軍ですよね!?」
カミーユは攻撃を躱し、
ビームライフルで反撃をしながらクワトロへ聞く。

 

「落ち武者が海賊になっただけだ!敵に変わりはないがな!」
声を若干荒げながら言うクワトロも、
カミーユ同様に攻撃を躱して反撃を試みる。

 
 

《ゲルググ・M》は合計12機、3機4隊編成を組み
クワトロ達やアポリー達にマシンガンの集中砲火を浴びせる。

 

「こいつら…!」
「狙いは俺たちか!?」
アポリーとロベルトが吐き捨てるように言いながら
マシンガンを躱し反撃をするが、
素早く動き周り《リック・ディアス》の攻撃を避けて行く。
だが、ここでアポリーは違和感に気付きつつあった。
彼らの前で《ゲルググ・M》が見せている機動力を目にし、
まさかな…と、交戦しながらも考えるアポリーに
クワトロからの通信が入る。

 

「この《ゲルググ・M》は普通じゃない!
おそらく改良が加えられている。気をつけろ!!」
クワトロはそうは言いつつも、
クレイバズーカで敵機に直撃を喰らわせると、
早々に《ゲルググ・マリーネ》1機を撃ち落とす。
海賊め…やってくれるな…。
と、クワトロは心の中で吐き捨てると、
カミーユも負けじと敵機を撃ち落としていた。

 

アポリーはクワトロの言葉で、
自分が感じていた違和感と合点がいった。
クワトロの言うように、シーマ艦隊の《ゲルググ・M》は
ムーバブルフレームを内臓しており、
従来の《ゲルググ・M》とは、
比較にならないほどの性能向上を遂げていた。

 

「何!?ザンジバル級だと?」
クワトロからの暗号通信を受け取ったトーレスの報告に
ブライトが踵(きびす)を返す。

 

「ムサイ級4隻が随伴。
モビルスーツ部隊と既に交戦中との事です。」
トーレスはクワトロからの報告を続けて読み上げると、
まさかジオンとザフトが手を組んだのか?
などとブライトは考えていると、
再びトーレスがブライトへ《アークエンジェル》から
通信があると伝えると、「繋げ。」と一言だけ返す。

 

すると、通信用モニターからラミアスが
真剣な眼差しをこちらに送り口を開ける。
「ブライト艦長、艦を前に出します。」
ラミアスの言葉にブライトは即座に
艦隊戦力が違い過ぎる上に、
集中砲火を浴びて堕とされる可能性が高いと返すが、
ラミアスは上官であるブライトに物怖じする様子もなく

 

「ここで退いても後ろを撃たれます。
敵艦隊の足を止め、その後で撤退がよろしいかと。」
と、淡々とブライトへ進言するが、
主砲の射程圏外にいるこの状況でどうするのかと伺う。
すると、彼女は大胆な作戦を発案した。

 

それは《アークエンジェル》に装備されている。
陽電子砲ローエングリンの試射を兼ねて、
敵艦隊に向けて発射するというものだった。

 

ヘンケンは正確な座標が分からないのに、
どうやって狙うのか?と、質問をしたが、
ローエングリンの威力はカタログスペック通りであれば、
直撃はせずとも、掠めただけで通常クラスの艦艇ならば
戦闘能力を奪い去るほどの威力があるとして、
座標に関しては、おおよその位置が分かれば問題ないらしい。
発射後に敵に隙が生まれる可能性がある為、
それをきっかけに撤退するべきだとの意見だった。
彼女の考えではあくまでも敵に対する牽制であり、
このような強力な兵器があれば、
下手に戦闘を仕掛ける事が出来なくなる…。
と、考えての事らしい。

 

「どちらにせよピンチである事には変わりは無い。
君の策に賭けてみよう。」
ブレックスは考える間も無く即決するとブライトが、
「決まりだな…。」
と言うと、ヘンケンやレコアが大きく頷き、
各セクションのブリッジクルー達の顔が一気に引き締まる。

 

「よっしゃ!ローエングリンの発射まで
《アークエンジェル》を死ぬ気で守るぞ!!」
「了解!」
ヘンケンがCICのキースロンや、
操舵士のサエグサに檄を入れると、
サエグサ達も気合のこもった返事を返した。

 

やはり彼女は有能な人材だとブライトは改めて感じ
今すぐ自分の部下として側に起きたい気持ちだった。

 

「よし、艦隊前へ!
これより最大船速で戦闘宙域に突入!!
主砲副砲発射準備!両舷部メガ粒子砲準備、ミサイル全弾装填!」

 
 

エゥーゴのモビルスーツに対して猛攻を仕掛けている
ジオンのモビルスーツを見て、
アスランやイザーク達はその光景をただ見ているだけだった。

 

「おいおい!ありゃゲルググってやつだろ!?
なんで俺達を援護してやがる!」
ディアッカが驚きを隠さずに声を上げていると、
《ヴェサリウス》から電文が届くと、
コンソールにその内容が表示されるーーー。

 

“傭兵と共にエゥーゴを叩け。”

 

《ヴェサリウス》からの電文の内容はこれだけだった。

 

「傭兵?一体何なんだ?」
簡潔な指令内容に、
理解出来ないアスランは怪訝な顔で呟くと、
「何であろうとこれは命令なんだ、行くぞ!」

 

イザークはそう言うと、再び《ストライク》に向かって行く。

 

「まぁやるしかないよな!!行くぞニコル!」
「分かりました!!」
ディアッカとニコルは仕切り直しといった感じで、
操縦桿を強く握りフットペダルを踏み込み
ロベルトとアポリーの《リック・ディアス》に向かって行った。

 

《ストライク》のキラは、
《ゲルググ・M》の頭部をビームライフルで撃ち抜く。
《ゲルググ・M》のパイロットは初めて剣を交える
コーディネイターの実力に驚愕していた。
当てられる攻撃のハズが、紙一重の差で躱され続けた上に
僅か一発のビームライフルで、
メインカメラを破壊されるという
状況に、
《ストライク》のトリコロールの機体を一年戦争の時に
“白い悪魔”と呼ばれたそれと重ね合わせていた。

 

キラの援護に回っている、エマとムウも、
《ゲルググ・M》を追い詰めていた。
ムーバブルフレームの飛躍的に、
旧式モビルスーツの性能すらも向上させていたが、
新鋭機である《Mk-II》などに比べれば、
所詮は一年戦争時代のモビルスーツに
手を加えた骨董品に過ぎなかった。

 

一方、アポリーとロベルトは初めこそ《ゲルググ・M》の
通常とは違う性能に驚いていたが、
《リック・ディアス》の性能と、彼らの持つ実力は
海賊に成り下がった者など敵ではなかった。

 

クワトロはアポリーとロベルトに露払いを任せ、
《バスター》と《ブリッツ》を相手にしていた。
ディアッカとニコルはアポリー達とは比べ物にならない、
クワトロの実力に翻弄されていた。
「くっそ!この赤いヤツ…バケモンかよ!?」
《バスター》は既に右腕に構えていたガンランチャーを
ビームサーベルで溶断され広域への攻撃を封じられていた。
全力で距離を開けようにも、信じられない速度で
追い付かれて、白兵戦を仕掛けられ防戦一方だった。

 

「ディアッカ…!…どうすれば……!!」
《バスター》に常に離れない《リック・ディアス》に対し、
ニコルは《バスター》への被弾を恐れて、
トリケロスに内臓されたビームガンや
ランサーダートを使えない状況だった。
有線アンカーのグレイプニールも、
既に一撃のもとに切り捨てられており、
選択肢はビームサーベルのみとなっていたが、
下手に攻撃を仕掛ければ返り討ちに合うのは目に見えていが
そんな隙を見せる《ブリッツ》に襲いかかるのは、
カミーユ機の《ガンダムMk-II》だった。

 

「よそ見をするなんて!」
《Mk-II》からビームライフルが撃ち放たれると
《ブリッツ》はすかさず功盾ユニットのトリケロスで
ビーム攻撃を防ぎ、ビームガンで反撃をする。

 

「当たれ!当たれ!」
ニコルはビームガンを撃ち、
間髪入れずにランサーダートを《Mk-II》に放つと
カミーユはビームサーベルを左手に持ち
襲いかかる3連装貫通弾を切り払った。

 

《アーガマ》と《アークエンジェル》、
そして《モンブラン》は戦闘宙域に到着した。
すでに宙域は火線が飛び交い、
あちこちで大小の爆発が起きていた。

 

ブライトが緊張した面持ちで、
ブレックスやヘンケンと目を合わせ、
コクリと互いに頷くと声を張り上げ指示を出す。
「ローエングリン発射まで
モビルスーツ隊への援護射撃を行う!!
《モンブラン》にも通達、撃ち方始め!!」
「よぉし、主砲照準!目標、前方のムサイ級!!
その後、メガ粒子砲と対空ミサイル、CIWS一斉射!!」
それに呼応するかのようにヘンケンが
CICオペレーターのキースロン達に指示を送ると、
両舷カタパルト側部に張り出た砲塔と、
全部中央上層部の砲塔から単装の大型の
メガ粒子のムサイ改級に向けて、
合計3門の主砲が発射されて行く。
その後、両舷のシャッターからせり出した砲塔から
メガ粒子砲と艦橋後部のミサイル発射管から
対空ミサイルが次々と発射されて行く。

 

《アーガマ》や《モンブラン》から発射されたメガ粒子砲が、
真空の宇宙を突き抜けて行き、
艦隊の防衛ラインを引く《アトモス》と《テュポーン》の
シーマ艦隊の色であるブロンズ色の船体を掠める。
対空ミサイルは敵モビルスーツめがけて進んで行き、
艦隊に取り付こうとする《ゲルググ・M》に直撃すると、
瞬く間に爆散して火球となって行く。

 

《アーガマ》と《モンブラン》のアシストを受けていよいよ、
《アークエンジェル》はローエングリン発射シーケンスに入る。

 

「前方にムサイ級2隻!
後続に複数の艦影を確認しました!!」
「よし、ビーム撹乱幕を展開!
CIWS作動、敵を艦に近づけるな!!
ヘルダートは自動発射にセットしろ!」
トノムラの報告を受けると、
ナタルが次々と指示を送った。
ビーム撹乱幕は横一列に並ぶ艦隊を包んだ。
それに合わせて《アーガマ》と《モンブラン》は
ビームが撹乱される数十秒の間は、
艦砲射撃をミサイルや副砲を実態弾頭に切り替え撃ち放つ。
ローエングリン発射に伴う最大のリスクは、
発射シーケンス中の敵機による攻撃の被弾である。
その時に被弾しようものならば、
たちまちシステムダウンを引き起こし、
艦の運用に多大な支障をきたす可能性があった。

 

「前方ムサイ級2隻、距離630に接近!
間もなく本艦の有効射程距離圏内に入ります!」
チャンドラが報告すると、ラミアスは拳を強く握る。
それはナタルも同じようで、二人の顔は少し強張っていた。

 

「ラミアス艦長、ここから指揮権は君に移す!頼むぞ!」
通信モニターの向こうにいる
《アーガマ》のブライトからラミアスへ、
指揮権を移されるとラミアスは息を大きく吐き、応じる。
「は!慣性航行に移行!
バジルール中尉は射線上にいる味方機に離れるよう通達!」

 

指示を受けたナタルは真っ直ぐに前を見据えて口を開ける。
「全艦及び、作戦展開中の各機、
本艦は60秒後に敵艦隊に対しローエングリンの斉射を行う。
本艦の射線上にいる各機はただちに離脱せよ!!繰り返す、
本艦の射線上にいる各機はただちに離脱せよ!」

 
 

「射線軸…?ここじゃないか!」
《デュエル》と交戦中だったキラは、
《アークエンジェル》からの警告と共に、
コンソールに表示されたローエングリンの
射線軸データを見ると慌てて、
フットペダルを踏んで離脱を開始する。
「逃げるつもりか《ストライク》!」
イザークは離脱を試みる《ストライク》へ
《デュエル》は右肩部にマウントされた、
スナイパーライフルを手にして《ストライク》を
その照準に捉えようとした。

 

その時ーーー。
キラの乗る《ストライク》は、背後から強い衝撃に襲われた。
キラはなんだ?と、視認する間も無く
続く衝撃に全周囲モニターの各パネルの映像が乱れる。
衝撃に耐えながらなんとか機体を反転させると、
紫の胴体に黄土色の四肢を持つ機体色の、
通常のF型ではなく、Fs型と呼ばれる
シーマ・ガラハウ専用の《ゲルググ・M》が
MRB-110型と呼ばれる大型ビームライフルを手に、
マシンガンモードへ切り替えて撃ち放っていた。

 

「あの白いやつからやるよ!!」
「は!」
シーマは戦闘宙域に到着し、
《ストライク》の背後を取ったシーマが
随伴する3機の《ゲルググ・M》は、
マシンガンを構え、シーマの指示により
《ストライク》へ集中砲火を浴びせる。

 

「あのゲルググ…指揮官機か?」
イザークは突然獲物を横取りされたような気分で、
シーマ隊が《ストライク》を追い詰めるその様を見ていた。

 

「うわぁぁぁぁぁぁ!!」
「フフフ…頑丈だねぇ…!
でもそれがいつまで持つのかねぇ!!」
シーマ隊による一斉射撃で、
《ストライク》はシールドを構えるものの、
四方を囲まれての攻撃で機体にも、
マシンガンの光弾がぶつかる。
PS(フェイズシフト)装甲によって、
ダメージはなんとか免れていたものの、
揺れ続けるコックピットで、
キラはエネルギーゲージに目をちらと送ると
エネルギーがみるみる内に減って行くのが分かった。

 

「ぐ…っ!!」
コックピットを揺らす激しい衝撃にキラは顔を歪ませる。
反撃を試みようにもシーマの《ゲルググ・M》が
撃ち放つビームの光弾の乱射と、マシンガンの攻撃を防ぐだけで精一杯だった。

 

すると最悪の事態はすぐにやって来た、
既に《デュエル》や他の《ゲルググ》との戦闘で
消耗していた《ストライク》のコックピットに
警告を知らせるアラートが鳴り響き、
コンソールに『FUEL EMPTY』と表示されると、
キラの顔は一気に青ざめさらに汗が流れ出る。

 

「エネルギー切れ…!?…まずい!」
《ストライク》のボディが出撃前のように全身が灰色になる、
フェイズシフトダウンを引き起こしていた。
その時《ストライク》を攻撃していたシーマ隊に
ビームライフルが次々と放たれたーーー。

 

「ん…!?」
シーマがそちらへ目をやると、
《イージス》がビームライフルを構え、
銃口をシーマの《ゲルググ・M》へと向けられていた。

 

(キラ……)
アスランは自分が何をしているのか理解できていなかった。
キラの危機を目の前にした事により、
無意識の内に彼の体を突き動かしていた。
それを見ていたイザークは通信モニター越しに
アスランへ詰め寄るも、イザークの怒号など
アスランの耳には入らなかった。

 

どういう事だ…!?
ヤツはザフトのガンダムのはず…
シーマは眉間に皺を寄せると、歯をギリと噛みしめた。

 

《ストライク》への攻撃がピタリと止むと、
「…攻撃が止んだ…!?」
射線軸から離れなくちゃ!!
キラは止まった攻撃に安心せず、
フットペダルを一気に踏み込むと、
《ストライク》のバーニアを激しく噴かせ、
急いで射線軸からの離脱を始める。

 

「なっ!?逃がすな!打て!」
《イージス》を睨みつけていたシーマは、
動き出した《ストライク》に気付き、
声を上げると、シーマ隊は再び一斉射撃を行う。
シーマはビームライフルモードに切り替えて、
照準を《ストライク》の背中に定めて、
コックピットごと撃ち抜こうと考え狙いを定め、
いざトリガーを引こうかというその瞬間だったーーー。

 
 

「有効射程圏内に入りました!
射線軸から全ての友軍機の離脱を確認!」
「よし!ローエングリン、1番2番、斉射用意!」
「陽電子バンクチェンバー臨界!マズルチョーク電位安定しました!発射口、開放!」
CIC席のトノムラ、ナタル、チャンドラの報告で
ローエングリン発射の準備が整った事を知ると、
前を見据えてラミアスが大きく叫ぶ。

 

「ローエングリン、てぇーーー!!」
ラミアスの号令と共に両舷カタパルトの発射口から、
電気を帯びた反粒子の巨大収束火線が突き進んで行く。

 

射線軸ギリギリで躱したはずの、《ゲルググ・M》は
ローエングリンの放出する膨大なエネルギー量により
掠めた程度でその機体は爆散し、1機だけでなく
5機ほどが、ローエングリンによって消え去った。

 

その陽電子は勢いを止める事なく、
宇宙空間に浮かぶ小さなデブリや隕石を
飲み込み、幾つもの火球を発生させ
陽電子は轟音と共に敵艦隊に直進して行く。
その光景を見たムウが唸り声を上げていた。

 

《リリー・マルレーン》や、
《ヴェサリウス》の前に出ていた、
《アトモス》と《テュポーン》は、
ローエングリンの直撃を受けた。
艦艇の主砲などどは比べ物にならない破壊力を見せる
陽電子エネルギーは、瞬く間に2隻のムサイ改級を
飲み込み爆散するも、陽電子の粒子は爆ぜる事なく
更に突き抜けて行く。

 

ローエングリンの射線上には、
ヴェサリウスも僅かながらそれに乗っていた、
アラートがけたたましく鳴るブリッジでオペレーターが声を上げる。
「…熱源接近!!方位000、到達まで3秒!!」
「右舷スラスター最大!躱せっ!」
思わず身を乗り出したクルーゼが叫んで指示を送る。
操舵士は指示通りの操艦を行ったが、
ブリッジが白い閃光に晒さられ、
全員が強い衝撃に備えて身を構えた。
左舷スラスター部分を掠めたもののその威力は絶大で、
装甲は溶解し、内部の構造物ば爆発すると、
ノーマルスーツを着たクルー達は爆発に巻き込まれ、
巻き込まれなかった者は、宇宙空間に飛ばされた。

 

「状況報告!!」
アデスは顔を真っ赤にしながら各部のチェックを急がせる。
各セクションのブリッジクルーから入る報告は
惨憺(さんたん)たるもので、
ブリッジに響く報告はまさに阿鼻叫喚だった。
死者何名…行方不明者何名…負傷者何名…戦闘続行不可能…
ありとあらゆる報告がもたらされ、
クルーゼは忸怩(じくじ)たる思いで、
決断を下し撤退命令を出した。

 

《ヴェサリウス》から撤退を告げる信号弾が打ち上げられると、
ローエングリンの射線軸から命からがら脱した
シーマの《ゲルググ・M》にも、
リリー・マルレーンからの報告が届く。
「アトモスとテュポーンが沈んだ…?」
その報告にシーマの目付きが更に鋭くなると、
舌打ちをして「チ…クルーゼめ…!
追加料金を貰わないと気が済まないよ!!」と、
口中に吐き捨てて撤退していった。

 
 

《アーガマ》からも帰艦信号が打ち上げられると、
展開中のクワトロ達は撤退を始め、
キラも動揺に《アークエンジェル》を目指した。

 

「帰艦信号!?させるかよ!あいつだけでもっ!」
イザークは撤退命令に従おうとせず、
フェイズシフトダウンを起こし、
《アークエンジェル》へと向かう《ストライク》を追う。

 

《ヴェサリウス》とは逆の方向へと行く《デュエル》に
アスランはイザークへ声を上げ、
《デュエル》と、《ストライク》のもとへ急ぐ。

 

「おい!あいつら何をしてやがる!?」
ディアッカが《イージス》と、
《デュエル》の動きに気付いて叫ぶ。
「と、とにかく行きましょう!」
ニコルは慌てた様子で、ディアッカに言った。
《ストライク》がピンチとは言え、
既に《ゲルググ・M》は全機撤退を始めており、
《デュエル》を下手に突っ込ませれば、
撃ち落とされる可能性があったからだった。

 

「イザーク!?撤退命令だぞ!」
「五月蠅い!!貴様は引っ込んでいろ!」
イザークは今すぐにでも、
アスランを殴り倒してやりたい衝動に駆られるが、
《ストライク》撃破のチャンスを逃すまいと、
《デュエル》がビームライフルを構えて
《ストライク》に狙いを定める。

 

もらった!ーーー。
《デュエル》がトリガーを引こうとしたその時、

 

キラは突然衝撃に見舞われると、
4本の鉤爪のようなモビルアーマー形態に変形した
《イージス》が捕獲しているのに気付く。
イザークはアスランが再び起こした不可解な行動に驚愕した。
キラは操縦桿とフットペダルを動かすが、
《イージス》から逃げる事は叶わず、
慌ててコンソールのキーボードを出してタイプする。

 
 

「捕獲された…!?…《ストライク》…
《イージス》に捕獲されました!
フェイズシフトダウンを起こしています!!」
キラからの無電がCICに届くと、
トノムラが慌てて報告する。
それを聞いたブリッジに緊張が走り、
メインモニターにその光景が映し出されると、
ラミアスは即座にムウへ援護を要請する。

 
 

「《ストライク》がザフトに捕獲されただと!?」
「そのようです!フラガ大尉とエマ中尉が追っています!」
《アーガマ》のブリッジにブライトの声が響いた。
レコアも慌てた様子で、ブライトに報告すると
モニターに映る《イージス》に捕まった《ストライク》が映る。

 

「クワトロ大尉達は!?」
「向かいました!!」
ブライトは椅子の手摺を叩くと歯を噛み締め、
頼む…間に合ってくれーー。
と、願いを込めるかのように
モニターに映っている様子を見届けるほか無かった。

 

「チィ…!あの馬鹿!!」
ムウは《アークエンジェル》からの命令を受け取り、
捕獲された《ストライク》の姿を見て口中に吐き捨てた。

 

「エマ中尉!ヤツらを止めるぞ!」
「分かりました!!」
と言ってムウがエマと共に、
フットペダルを一杯まで踏み、急ぎキラの救出へと向かう。

 
 

「何をする!?アスラン!」
「この機体、捕獲する!」
「なんだとぉ!?」
イザークはもう何回目かと言うくらいに、
アスランへ怒声を上げる。

 

アスランからは捕獲するなどという受け応えが返ってくると、
《ブリッツ》と《バスター》が追い付き、
それを聞いていたディアッカがアスランに言葉を返す。
「命令は撃破だぞ!勝手なことをするな!」
と語気を強めるものの、
アスランは即座にディアッカの言葉に被せる。
「捕獲できるものならその方がいい。撤退する!」

 

イザークはアスランへの怒りを感じ、
ニコルはいつもの冷静なアスランとは違うことに
違和感を感じずにはいられなかった。

 

「キラ!!一緒に来い!」
「ふざけるなっ!僕はザフトの船になんかいかない!」
「お前はコーディネイターだ!僕達の仲間なんだ!」

 

爆発寸前の感情を抑えるように、
アスランは、
キラを引き入れようとする。
彼と戦いたくないという、戦争に参加しながらも、
元は心優しい少年のせめてもの情けにも近かったが、
これはアスラン・ザラ個人の独断で、
軍人としての行為では無かった。

 

「違う!僕はザフトなんかじゃぁ…」
「いい加減にしろ!キラ、このまま来るんだ!!」
コーディネイター=ザフトというアスランの
強弁にも似た理屈にキラは拒絶の意思を口に出すが、
アスランは畳み掛けるように言葉を重ね、
「でないと…僕はお前を討たなきゃならなくなるんだぞ!」
声を荒げアスランが心の底から、
気持ちを吐き出して行くと
次第に彼を苦しめている、記憶が彼の脳裏に浮かぶ。

 

「血のバレンタインで…母も死んだ…!僕はっ……!」
声は震え、顔を俯かせたアスランは、
まるで聖母マリアのように温かい母の顔を思い出していると、
コンソールの熱源反応が目に入り警告音が鳴るーーー。

 

「行かせないわ!!」
エマは《ストライク》を捕獲し、
離脱をはかる《イージス》に向けてビームライフルを撃ち放つ。

 

「くそ!追いつかれたぞ!」
「アスランの援護を!!」
ディアッカは声を荒げて叫ぶと、ニコルと共に
エマの《Mk-II》に対して攻撃を開始する。
《Mk-II》は《ブリッツ》のランサーダートを回避すると
ビームライフルで反撃をする。
その横から《バスター》は
94mm高エネルギー収束火線ライフルを放つ。
それをなんとかエマは躱すと《バスター》に対しても
ビームライフルを撃ち放つが《ブリッツ》も《バスター》も
見事に攻撃を回避する。

 

「行かせるかよ!」
ムウはガンバレルを展開して、
《イージス》を包囲するとガンバレルポッドから
マシンガンの雨を降らせ、
《イージス》は《ストライク》を掴んだまま、
回避を行うが機動力の増すモビルアーマー形態とはいえ
スピードは思うようには上がらず、
被弾を許すと、機体に激しい衝撃が走る。
堪らず《ストライク》を離して、
モビルスーツ形態に戻るとガンバレルを回避して行く。

 

「キラ!離脱しろ!!」
ムウが通信モニター越しにそう叫ぶと、
キラは再び《アークエンジェル》へと向かう。

 

だが、それを狙っていたのはイザークだった。
《デュエル》はビームサーベルを右手に斬りかかると
《ストライク》はシールドを構えて防ぐが、
シールドは真っ二つに溶断されると、
防御力はほぼ皆無という状態に追い込まれたーーー。

 

「トドメだぁ!!」
イザークはそう叫び再び斬りかかる。
討ち取ったーーー
そう思ったその瞬間、
ビームサーベルを振り上げた右腕にビームが直撃する。

 

なんだーーー?
何が起きたんだ?と、考えていると、
どこからともなく放たれたメガ粒子の光軸が、
《デュエル》や《イージス》に降り注いで行く。

 

「キラ君!下がれ!!」
聞き慣れた声がコックピットに聞こえると、
コンソールのレーダーに映る方へモニターを見る。

 

そこにはクワトロの《リック・ディアス》と、
カミーユの乗る《Mk-II》に《リック・ディアス》2機が、
アスラン達を追いかけて来ていた。

 

「引け!イザーク、ディアッカ!これ以上の追撃は無理だ!」
状況を完全に不利と見たアスランはそう叫んだ。

 

「何っ!?」
イザークはアスランに対し、どの口がそう言うのだと、
腑(はらわた)が煮え繰り返る思いだった。
「アスランの言うとおりです!
このままだと今度はこっちのパワーが危ない!」
ニコルはイザークの声色と顔色を見て、
諌めるようにイザークへ言うと、大きく舌打ちをして、
《ストライク》を一瞥し撤退して行った。

 
 

アスラン…僕はいかないよ…
復讐なんかの為に戦う君とは一緒に戦えないから…
キラは去って行くアスランの姿を見ながら心の中で誓った。
ムウとロベルトと交わした言葉を
曲げる訳にはいかない。
契(ちぎ)りを交わした仲間への思いにより、
たとえ親友が敵であろうと自分の決めた道を信じるとーーー。

 
 
 

 戻る