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第29話〜格納庫の思い出〜

Last-modified: 2013-04-22 (月) 19:34:47

「突入角度、合わせ………突入するぞ!」
「はい」
大気圏の壁が輸送艦を襲う……もうすぐだ。もうすぐ離れられる。
3日かかった。この人と3日間も2人きりだった………
「キラ?」
「だ、大丈夫………突破した」
大気圏突破後の角度を調整……各システム異常なし……自動操縦の目的地をオーブに………
オーブの領海内で停止……っと。
「あとは……」
「オーブにこの輸送艦を送るのですか?」
「え?……はい。何か問題が?」
「ふむ………カガリ・ユラ・アスハなら……ん……」
何か悩んでるが無視………オーブ領域に入る直前から、信号を発信……
内容はリョウケンヨリウタヒメノヒモヘニモツヲウケトレ。これを繰り返せば気付いてくれる。
「よし、フリーダムに乗り込む」
「わかりました」
フリーダムのコクピットに座り、機体を起動させる。
「もう、攻撃が始ってるみたいだけど、まだ深くまでは侵入していないはず。急ぐぞ」
「任せます。アレックスさん♪」
「……どうも」
誘拐実行犯の名前、アレックス・ディノの名前で呼んでくる。
どうせ、未来での偽名なんだし、拝借しても大丈夫だろうってことで使用した。
それに、この後、アレックス・ディノはオーブに脱走するアークエンジェルを乗っ取ろうとして、
殺害されるシナリオなんだし、問題は無いだろう。
「じゃあ、フリーダム、発進する!」

第29話~~格納庫の思い出

アラスカのジョシュア基地が見えてきた。すでに交戦状態だ。
「時間が無いですわ。最後にもう1度キラ……」
俺を見上げて目を瞑る………え? キス? こんなところで?……ま、迷ってる時間は無い!
「何をしてますの?」
ヘルメットを取ろうとするとラクスからストップが……
「え? キスするんじゃ?」
「え! ち、違います! パンチ! パンチですわ!」
「へ? 殴れって!?」
「良く見てください。痣が消えかかってますわ」
「ま、まあ……」
どうして、こうも徹底するんだ? なに考えてんだか……
「じゃあ、いきます」
「どうぞ♪ 3箇所ほどお願いしますわ♪」
………怖いんだよ。その笑顔がさ……でも…………………………オワッタ。
「ウフフフフ♪ 血が……口の中が鉄の味がしますわ♪」
もう、勘弁して欲しい……報復とか無いよな?
現実を逃避……じゃ無くて戦場に集中………ん? 戦場から離れる船団が?
「あれは……?」
「なんですか?」
「アラスカから出てる船……どれかに起爆スイッチが、あるはずだけど」
アラスカに向かう最中、脱出している船団があった。多分、大西洋連邦の兵士が乗っている。
「どれか、分かれば良いんだが……そうすればサイクロプスは起動しない」
「探して当てるあても、時間もありませんわ。それに急なシナリオの変更は困ります。すでに
 後の計画を立ててるんですから」
なんか、怖いこと考えてるんじゃ?
「さあ、イザークさん…デュエルを探しますわよ」
「はい……」
そうだ。そう言えばイザークはラクスのファンだって聞いた事が…………
イザークは何処だ?……あ! アークエンジェルを見つけた。攻撃を受けながらもアラスカから
離れてる。じゃあ、気付いたんだな………だったら少佐も?……居た。スカイグラスパーだ。
アークエンジェルを守ってる。
それより、今はデュエルだ。何処に居る? アイツならアークエンジェルを狙いそうだけど……
「居た! デュエルだ!」
アサルトシュラウドを装備していないが……そういや、前回の戦闘で外したから、その後の
補充が間に合わなかったんだろう。
「キラ? 急に張り切って?」
「喋るな! 舌を噛む!」
見つけたぞ。イザーク! アンタが粘った所為で俺がプラントに行く原因になった事は水に流す!
だから………ラクスとのフラグを受け取れ!
「周りのディン! 邪魔だ!」
「こ、殺しては!」
「俺は凶悪犯だ! 不殺なんか出来るか! それにここで動けなくなった奴はサイクロプスで死ぬ!」
ディンを撃ち落しながら突っ込んでくるフリーダムにデュエルが気付いた。
ストライクの面影があるフリーダムを見れば、アイツも突っ込んでくる。
「来た!」
ビームライフルを撃ってくるが、こっちは近付く必要がある。ライフルを腰にマウントして、ビーム
サーベルを抜くと、ライフルのビームを回避しながら接近……ここで1発喰らっとく……左足をビームの
射線に……良し命中! さらに距離が縮まると、デュエルもサーベルに持ち帰る。
「上手くやれよ!」
自分に言い聞かせながら交差………デュエルのビームサーベルが、フリーダムのサーベルを持った右手を
斬り飛ばした。
良し……上手く行った! 後は……
「待て! ここには、ラクス・クラインが居るんだぞ!」
「な、なんだとぉぉ!? う、嘘をつくにゃっ!」
良いノリだイザーク。笑うなよラクス。
「いくぞ?」
小声で語りかける。最後の仕上げだ。
「はい。どうぞ」
頷くと、コクピットを開ける。
「どうだ! これが見えるか!……って、おい!」
いきなり、コクピットから出ようとする……ちょっ! 高度を取らせろ! デュエルより高い位置に
居ないとダメだ……ろ?
「マジかよ!」
何の躊躇いも無く飛び降りた……大丈夫かイザーク?……落下するラクスをデュエルが追う……
「間に合った」
ラクスの身体はデュエルの手の中に……続いて、コクピットに収容される。
「……カッコ良かったぞイザーク」
敵の手から脱出した姫。だが、このままでは海面に落下して死んでしまう。そこで颯爽と救った
若きパイロット。うん。ヒーローとヒロインだ。もうプラントではお似合いカップルと話題になること
間違い無し。
これでラクスのフラグはイザークのものだ。
「大丈夫だ。信じろ俺!」
この場を離れ、アークエンジェルへ………デュエルもザフトの司令部に移動してる。
後はラクスに任せ、俺はアークエンジェルの周りにいるザフト軍を撃ち落しながら接近。
「そ、そこのMS! 何を!?」
見た事が無いMSが、急接近してきて慌てた艦長が、通信を入れてくる。
一応、ザフトのMSを落してるから敵とは思わないだろうが……
「悪いけど、返事は出来ないんだ」
通信を使って傍受されたら不味い。何しろ俺は、連合のアレックス・ディノだから、会話をザフトに
聞かれたら困るんだよ。
「ゴメンな!」
アークエンジェルのカタパルトハッチを切り裂いて、強引に艦内へ入る。
奥まで片足でふらつきながら進み、格納庫前でコクピットを降りる。
銃を構えた兵士の出迎え……まあ、当たり前だけどね。強引に艦内に潜入した上に、今の俺はザフトの
パイロットスーツを着てる。
「撃つな! キラ・ヤマトだ!」
「ぼ、坊主だと!?」
マードック曹長が居てくれて良かった。ヘルメットを脱いで顔を見せる。
「艦長に伝える事がある」
それだけ伝えて、格納庫内の通信機を取る。
「艦長、キラです」
「キ、キラ君!? どうなってんの!?」
「説明は後で! もうすぐラクスがザフト軍に撤退を促しますから、それに合わせて全速で離脱を!」
「ラクスって……どう言う事よ?」
「説明は後でしますけど……とにかく、ジョシュア基地は自爆します」
「そ、それは少佐も言ってたけど」
「だったら、お願いします。こっちが逃げれば、ラクスの話に説得力が高まる。急いで!」

ラクスの声が全軍に響き渡った。ジョシュア基地にサイクロプスがある事実を伝え、撤退を促す。
タイミングを合わせ、アークエンジェルが強引にオーブ方面へ向かった。
目立つアークエンジェルの行動は、ラクスの話の信憑性を高め、また彼女独自の異常なカリスマが
発揮されたのか、アークエンジェルは追撃される事無く、ザフト軍も、ユーラシア連邦も撤退を
開始した。
そして……
「おい!? ジョシュア基地が……」
……サイクロプスは起動し、逃げ遅れた兵を巻き込みながら、ジョシュア基地を崩壊に導いた。
どれくらい逃げ遅れたのかな? 多くは無いはずだが……
「疲れた………」
ぐったりと、その場に座り込む。しばらく考え事はしたくない。
「おい、坊主、どうなってんだ!? 説明しろや!」
「後で言いますから……今は少し休ませて…」
本当に疲れた。この状態でフレイが突っ掛かってきたら……
「スカイ…グラスパー」
格納庫には整備が行き届いていながら、使われた形跡の無いスカイグラスパーが……
「そうか……居ないんだ」
何時もここでフレイと会話していた。ここでアイツの姿を見る事が当たり前になっていた。
「あ?……フレイ嬢ちゃんのことか?」
「ええ…」
「3日前にパナマに向かった。嬢ちゃん、お前さんを死んだと思ってるぜ」
「……でしょうね」
フレイをそうしたのは俺だ。戦場での出来事を冷徹に受け取れる人間に……師匠の俺より、遥かに
優秀な彼女は、きちんと受け止められたんだ。
「ねえ、曹長」
「なんだ?」
「ここの格納庫って、こんなに広かったっけ?」

シンから僕宛に荷物っていうからフリーダムかと思ったんだけど違った。何なんだろ、あれ?
取り敢えずはMSのパーツらしいけど、詳しくは分からないから、シンが戻ってくるまで、手を付けずに
いるけど……
「教官。ジョシュア基地が爆発したようです」
「そうですか……」
サイクロプスが起動したか。まあ、それは覚悟していたし、問題はこの後。
この作戦に地上軍のほとんどを投入したザフトは、たいして役に立たない総合本部のジョシュア基地と
引き換えに戦力のほとんどを失った。
だからこそパトリック・ザラは、慌ててラクスに罪を擦り付けると同時に、連合が宇宙に出られない
ようにパナマを攻略。もっとも攻略する戦力も残ってないから、グングニールでマスドライバーを
破壊する。
でも、所詮は悪あがきなんだよね。もう戦局は決まった。後は残された少ない戦力で耐えるザフトの
地上軍と、それをあっさりと潰し、或いは無視して宇宙へ向かう連合。
ついでに中立を唱える小賢しいオーブは巨大な連合に一飲みにされる。マスドライバーは切欠に
過ぎない。だからマスドライバーが無くても、半端な力を持ったオーブは必ず攻撃されるって、シンも
言ってたな。
「……困ったな」
「どうしたのです?」
「いや……ザフト軍が壊滅した以上は、次はオーブも危ないかなって」
「は?……ザフトが壊滅って、何の事です?」
「え? ジョシュア基地が爆発したって?」
「はあ……確かに巻き込まれた者も居るでしょう。ですが、その前にほとんどは撤退した模様ですが」
「そ、そうなの!?」
「はい……爆発での被害は、ほとんどが守備側の連合兵で、ザフト側は1割にも満たないかと」
ど、どういうことさ? シンの仕業なの? たしかに僕の時もザフトに撤退を促したけど、誰も
聞いてくれなかったのに…………何をやったんだ?
と、とにかく情勢が変わった。いや、変わらないんだ。最初の目的通り、カガリが動く時間を稼げる。
いや、これでフリーダムが来れば、最初の予定より良い状態に…………
「本当に何があったんだろ?」

続く

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