Top > 第40話〜歪な仲間たち〜
HTML convert time to 0.006 sec.


第40話〜歪な仲間たち〜

Last-modified: 2013-04-23 (火) 00:06:57

「さてと、あの子達は何を選んだの?」
MSはこちらが用意したダガー。装備は向うに任せる事になっている。
「スティングがエール。アウルはランチャー。ステラはソードです」
スウェンの言葉に頷く。
「スティングはエールか……」
「アイツが厄介なのか?」
「まあね。個人の技量は分からないけど、アイツが頭なのは間違い無いわ。逆に残りの2人だと連携は
 怖くないでしょ」
途中で観察してたけど、スティングは兄貴分みたいな感じだった。それにステラは素直に、アウルは
文句を言ったりはするけど、何だかんだで従ってる。
3人の雰囲気からステラは論外。アウルはオルガ達に近い感性。この2人は連携なんかしてこないだろう。
つまり、スティングさえ先に倒せば……
「だが、アイツ等の動き、俺達ほどじゃ無いが、薬物の強化を受けてるぜ。速攻で決めないと」
「ええ。だからアズラエルさんが持ってきた新型のシュベルトゲベールを使う」
グリップエンドにビーム砲が付いている。それをダガーでも仕えるように改良していた。
「接近戦用のカラミティ用とか言ってたアレか?」
「そ。知らない奴にとっちゃ、不意打ちよね。アレって」
「それで最初に頭のスティングを叩くわけですか?」
「そのつもり。アイツさえ倒せば、こっちの機動力で掻き乱せるしね」
「なるほどね。そうやってコイツ等を倒したんだ」
「信じられねえ女」
シャムスとミューディーには、1人でも厄介なオルガ達を3人同時に倒した事を信じきれないでいたから
興味があったんだろう。
「じゃあ、ちょっくら倒してきますか」

第40話~~歪な仲間たち

シュベルトゲベールを肩に担いで前に進む。
「じゃあ、合図お願い」
さて…………開始の合図! シュベルトゲベールを肩に担いだまま、砲口はスティングに向けていた。
「まず1つ!」
完全な不意打ち。これを避けるなんてスウェンやオルガでも不可能。
「な! ふざけんな!」
「死人が喋っちゃダメでしょ」
「クッ!……チクショウ」
……悔しかったんだろう。なんか泣きそうな声。でも、これで指示も出来ないし……
「テメエ!」
アウルがアグニで砲撃……そう簡単に当たる…ステラ!?
「チッ!……速い!」
ステラがシュベルトゲベールを振り回しながら突っ込んでくる。こちらもシュベルトゲベールで受け、
鍔迫り合い……
「……やるわね」
その間にアウルが接近……狙いを付けてる。オルガなら味方ごと撃つ。ステラを盾にするか?
「退け! ステラ!」
「うん!」
アウルの砲撃と同時にステラが下がる……こっちがバランスを崩す事を見越しての攻撃だろうけど
当たってたまるか! アグニを回避…
「なっ!?」
「うぇえぇぇい!」
続けざまステラが戻ってきて斬撃! 戦闘中は人が変わったように……
「後ろがら空き!」
え!? アウルもビームサーベルを手に突っ込んでくる。
「やってくれる!」
ステラをいなしながら身体を入れ替えると、エールの推進器を全開にして距離を取る。
「逃げんな!」
肩の120mmバルカンを撃ってくる。
「調子に乗るな!」
シュベルトゲベールを左手に持ち、腰からビームライフルを外して撃ちかえす。
「チクショ!」
中距離での撃ち合いなら、こちらに分がある。このまま…
「えぇ~い!」
マイダスメッサーが飛んできた。こちらも回避に専念。
「この子達……連携を…いや、ちょっと違うな」
何処か違和感。普通の訓練で培った連携とは違う。私はそれが嫌だからスティングを先に沈めたんだ。
でも、オルガ達の敵の殲滅を優先する波状攻撃とも違う。あれは強力な分、隙も多い。
「この子達は……」
「うぇえぇぇい!」
ステラが突っ込んでくる。こっちも対艦刀に持ち代え迎撃……
「……スティングを…泣かした」
「え?」
ステラ?
「やっつける!」
そうか……それで……
「……仲が良いんだね。貴女たちは」
これが違和感の正体。訓練で培われた連携では無い。仲が良いから互いをフォローし合ってるだけ……
「でも、それが分かれば」
距離を取り、対艦刀は捨ててビームライフルは腰に戻す。そしてマイダスメッサーを2本ともステラ
目掛けて投擲……
「ステラ!」
一本ならステラでも簡単に落せるが、もう1本は厳しい。それをアウルが撃墜……
「アウル! 後ろ!」
「遅い!」
ステラを気にしすぎたアウルをビームライフルで落す。
「終わりね」
向うは射撃武器は無し。この時点で勝負は決まった。後は闇雲に突っ込んでくるステラに向け、トリガー
を引くだけ……

「ご苦労様です。アルスター大尉」
「……ありがとう。ヤバン中尉」
「…………大尉?」
「何かしら? バンヤ中尉?」
「……バヤンです。それに何時も通りスウェンで結構です」
「気にしないで、私の事もフレイと呼ばなくて良いから」
「…………あの?」
「そう、苛めんなよ」
オルガが呆れて口を挟む。
「ゴメン。ちょっと八つ当たりした」
「いえ……」
「まあ、子供を苛めたようにも見えたからね……気にしたのかい?」
ミューディーが気を使ってタオルを頭に被せてくる。
「まあね……」
「だが、これであのガキ共は、これ以上の強化はされずに済む。今なら間に合うさ」
「オルガ……」
オルガ達は、すでに薬物無しでは生きられない。摂取量を減らして精神の崩壊を引き伸ばしてはいるけど
それでも、直る可能性はゼロに等しい。
「気にすんな。テメエは間違っちゃいねえ」
「うん。アリガト」
「それで、アイツ等はどうすんだ?」
離れた所でアズラエルさんがジブリールと話している。悔しそうに項垂れるジブリールの様子から、
約束は守ってくれそうだ。
「うん。多分、どっかの施設に引き取ってもらって、戦争とは関係の無い生活を…」
「そりゃあ、無理だろ」
「なんで?」
「そうね。フレイ、アンタは少し誤解している」
「誤解って、何を?」
「そうだな……本人に聞くが手っ取り早いか……おい! 小僧共! こっちに来い!」
オルガの呼びかけに、項垂れていたスティング達がノロノロと近付いてくる。
「何だよ? 笑いてえのか?」
「あ? 舐めた口利いてんじゃねえぞ小僧。首を捻じ切ってやろうか?」
「止めろオルガ」
「チッ、じゃあスウェン、テメエが説明しろ」
「分かった……君達は、この施設から開放される」
「は? どう言う事だ?」
「やはり聞いていなかったか。最初からその約束だった。アルスター大尉が勝てば、ナチュラルを
 薬物で強化する事無く、コーディネイターを上回る事が出来る証明になる。その為の戦いだ。
 そして、実際に彼女が勝ち、この施設は閉鎖されることになる」
「じゃあ、俺達は?」
「自由の身だ。もう戦わなくていい。このまま、一市民として…」
「ふざけんな! なんなんだよ!」
え? スティング……
「じゃあ、今までのは何なんだ!? もういい!? 一市民になれ!? 納得できるか!」
「だろうな。その気持、理解できる」
何でスティングは怒ってるの? もう戦わなくても良いのに? それにスウェンまで理解できるって?
「スウェン?……どう言う事よ?」
「アンタの気持……嬉しいし、感謝もしてる。でも、アリガタ迷惑って部分もあるんだよ」
「ミューディー?」
「アンタから見たら、私らの人生、悲惨で可哀想なんだろうけどさ、それでも私らはこれまで
 生きてきた。それが今になって急に生き方変えろって言われてもね」
「だから、俺達はアンタの部下になったんだよ。こいつ等も一緒さ」
「………スティング、アンタは戦いたいの?」
「他の生き方なんか知らねえ。それに、こんな屈辱を受けたまま終われねえ!」
「戦争に行けば死ぬかもしれないのよ?」
「死ぬのがどうした?」
コイツ……!
「……何すんだよ?」
「な、殴られなさいよ!」
殴ろうとしたけど、避けられてしまった。考えてみれば、コイツの反射神経って並じゃ無いんだ。
「と、とにかく! その命を軽く見るのは止めなさい!」
「………なんで? 人間なんざ、死ぬときゃ簡単に死ぬだろ?」
どんな感性してんのよ。コイツ……
「大尉、私達…俺達は、こんな生き方と価値観しか知らないんだ」
「スウェン?」
「それに大尉は、戦後の生き方を考えてるのか?」
言われて見れば戦争が終った後の事なんか考えてもなかったな。ある意味、私も同じか。
お互いに今は戦うことしか出来ない。だったら、他の奴に好きにされるよりも、私の元に居た方が……
「スティング。私に付いて来る?」
「テメエなら俺を強くしてくれるのか?」
「……私は死にたくないなら強くなれって言われてきた。そして、部下には死んで欲しくない。
 だから厳しい訓練をやらせてる」
「だったら行く」
「アウルは?」
「スティングだけだと寂しいだろうから付き合ってやる」
捻くれた性格……まあ、良いか。
「じゃあ、ステラは?」
「ん?」
この子なら、戦いたく無いって言うかも……
「戦うの嫌でしょ?」
「うん……でも、みんなと一緒がいい」
「…………そう」
ある意味、一番辛い返答。この子達は知らないんだ。普通の生き方ってやつを……
「じゃあ、アンタ等が……スウェンも、ミューディーもシャムスも、別の生き方を見つけるまでは
 私が面倒見て上げる。良いわね?」
「ああ。よろしく頼む。大尉」
「砕けた口調になったのは良いけど、どうせならフレイって呼んだら?」
「……それは…努力はする」
「かてえ奴」
「……お前等が適当すぎるだけだ」
「まあ、フレイには良かったんじゃ無い? お堅い奴が少しはマシになったし、可愛い妹分も
 出来たしね」
「そうね。今まで私が一番年下だったし……」
「ん?……♪…」
ステラの頭を撫でてると、嬉しそうに頬擦りしてくる。何だかお姉さん気分で嬉しくなる。
それにしても随分と大所帯になったな……それに全員が何処かにキズを抱えてる歪な集団。私も含めて。
でも何時か、普通に生きれるようになろう。みんなで……だから絶対に死なせない。
もう、キラの時のような苦しみを味わうのは2度とゴメンだから。
キラ……私、生きるから、みんなと一緒に……キラの所へは、まだ行けないけど……寂しいかもしれない
けど、許してくれるよね。

「だ、大丈夫?」
帰ってきたキズだらけのシンを介抱する。
マユちゃんは買い物に出かけてる。まあ、護衛がついてるし、心配はいらないけど、シンのこの姿を
見れば驚くだろうな。
「ああ、平気だ……それにアイツが手加減出来なくなってきた証拠だ。名誉の負傷ってやつさ」
もう、あのバリー・ホーをそこまで追い詰めてるなんて……
「でも、あまり無茶は……」
「ステラは、もっと苦しんでるかもしれない」
「シン……」
「言ったっけ? 俺がロドニアのラボで見たこと?」
「うん。聞いたことがある」
「そうか……だったら、俺の気持、分かるだろ?」
「うん……」
「俺はステラを守れなかった」
「ゴメン……僕が」
「アンタの所為じゃ無い! ステラを、あんな目に合わせたのは……」
「でも、ムウさんは」
「分かってる。アイツでも無いんだ。元凶はステラを強化した連中だ。俺はそいつらの手からステラを
 助け出したいんだ」
「シン……そうだね。助けてあげよう。今度こそ」
「ああ……任せろ。その点じゃ、この身体に感謝するよ」
「僕は、その身体が人の役に立てる事が凄く嬉しい」
目頭が熱くなる。大切な女の子のためにキズだらけになって、それでも前に進もうとする漢の姿。
そう! それに感動してるんだよ!
そ、そのはずだ……別に道化臭いとか、シュールな空気を感じてるのは気のせいだ!

続く

】【戻る】【