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第6話_「キラとストライク・後編」

Last-modified: 2014-03-31 (月) 23:39:56
 
 
 

工区を逃げ惑うサイ達は、
どこのシェルターも一杯になっており彷徨い必死に逃げるが、
とうとう《ストライク》と《イージス》のある37工区の目の前まで来てしまった。
するとサイ達の後ろから「君達!」
と声をかけられると、後ろを振り返る。

 

「こんな所で何をしている?早く逃げろ、戦闘に巻き込まれるぞ!」

 

サイ達の後ろから声をかけたのはクワトロ・バジーナだった。
その後ろにはブレックスやヘンケンらが立っている。

 

「で…でも!友達とはぐれてしまって、
どこのシェルターも一杯なんです!!」

 

まずいな…という表情を浮かべるブレックス達の目の前には、
肩で大きく息をはいている少年と少女達が恐怖に震えている。
その近くを連邦軍の作業服を着た男が通ると、
ブレックスが慌ててその男に駆け寄り声をかける。

 

「おい!君、アークエンジェルとガンダムはどうなった!!」
「エッ…!?」

 

男がそう声をかけられピタリと立ち止まると、
後ろにいたクワトロやヘンケンが男の顔を見ていた。

 

「だ、誰です…?あなた達は…」

 

立ち止まった男が怪訝な顔でブレックス達を見てからそう聞いて来る。
ブレックス達は軍服を脱いでヘリオポリスに上陸していた為に
連邦兵にとっては機密事項を何者か知らない者に答えるつもりはなかった。
するとブレックスは迷わず男に自分達の正体を明かす。

 

「私はブレックス・フォーラ。エゥーゴの者だ。」

 

そう聞くと男は目を見開き口を大きく開けてから姿勢を正し
「エ…エゥー…?…し…しし失礼いたしました…!!
エゥーゴのブレックス・フォーラ准将閣下と知らずに…もも、申し訳ありません!!」
と敬礼しながら大きな声で謝っていると、
「そんな事は良い!状況はどうなっておる!!」
とブレックスが彼に怒鳴ると男は体をビクリとさせる。

 

「は、はい!…最初にアークエンジェルのあったドッグが爆発しました…
…その後、艦長のいた管制室との通信が途絶え…おそらくは…」

 

男がそう答えると下を向いて体を震わせていた。

 

「そうか…だが君は軍人なのだろう?
ならば少年達の前でそのような情けない姿を見せるな。」

 

ブレックスが男の肩を掴んでそう言うと、
「はっ!!」と男は背筋を伸ばして返事をする。

 

ブレックスと男の会話を聞いていたサイ達はぼそりと話をする。

 

「おい…あの人、エゥーゴって言ってたぞ」
「ああ…しかも准将とかなんとか…それってかなり偉い人だよな?」
「で、でも確かエゥーゴって…」

 

彼らはエゥーゴの名を聞いてすぐに
『反地球連邦組織』というワードが頭に浮かび、さらに不安になっていた。
クワトロは彼らを見て、連邦の作業員に近寄る。

 

「君、近くにシェルターは無いか?
あの少年達が逃げ遅れているらしい。」

 

クワトロが男にそう聞くと、
35番シェルターがまだ空いているはずだと言うが、
どうやらザフト兵達が戦闘を行っている場所の近くらしい。
それを聞いていたヘンケンは
少し考えサイ達の方へ目を送ると、トールと目が合う。
強面のヘンケンと目が合ったトールは少したじろいで
生唾をゴクリと呑んだ。

 

「そこを突っ切るしかなさそうだな…
民間人に被害が及ぶのはもっとまずい。」
ヘンケンが意を決した表情でそう言うと「確かにそうだな…」
と言って頷くとブレックスはさらに続ける。

 

「よし、おそらくはもうガンダムも奪われているはずだ。
危険だがそこを突っ切りあの子らだけでも避難させよう。」

 

この言葉にクワトロとヘンケンが大きく頷いて
「了解。」と言ったその時だったーーー。

 

「あっ!!」とサイが声を上げて指を差した方向を見ると
50mほど先で爆発が起き、2機のモビルスーツ、
《ストライク》と《イージス》が飛び上がり、着地をする。

 

「まずい…!とにかく彼らを!!」

 

そう言ってクワトロ達はサイ達を連れてシェルターに向かって走る。

 

《イージス》のもとへミゲル・アイマンの乗る
《ジン》が近寄り肩を掴み接触回線を通して声をかける。

 

「アスラン!」
「失敗だ!ラスティがやられた!」

 

アスランの言葉に心臓がドクンと強く動いたミゲルが
「何っ…死んだのか!?」と声を荒げると
《ジン》のコックピットに弱々しい声で
「ばぁか…なんとか生きてるよ。肩が痛っえ…」
と聞き慣れた声が聞こえてミゲルはホッと肩を撫で下ろす。

 

「向こうの機体には連邦の士官が乗っている。」

 

アスランがそう続けるとミゲルが
前方でぎこちない動きをしている《ストライク》に目をやり

 

「ならあの機体は俺が捕獲する。
実はイザーク達が連邦軍のモビルスーツと交戦中でな。」

 

ミゲルはそう伝えアスランとラスティが驚いていると、
続けて「お前はそいつを持ってあいつらと合流して先に離脱しろ。」と言うと、
右手に持つマシンガンを腰部背面のラッチにマウントすると、
腰部側面にマウントされた重斬刀を右手に掴んで構える。

 

(…キラ、いや違う。あいつがあんなところに居るはずは…)
ミゲルの言葉を聞きながらOSの立ち上げを行うアスランは、
さきほど出会った少年の顔を思い出していたーーー。

 

ミゲルの《ジン》は重斬刀を右手に構え、
おぼつかない足取りで動く《ストライク》に向かって、
機体を走らせ突っ込んで行く。

 

《ジン》がよろよろと動く《ストライク》の左側面から重斬刀を振り下ろす。

 

「くっ…!?」

 

ラミアスは重いフットペダルを踏み込み、
スラスターを作動させると《ストライク》が飛び上がり、
後ろに下がってなんとか《ジン》の攻撃を回避する。

 

「うわぁ!」

 

着地の激しい衝撃で《ストライク》のコックピットが揺れると、
ベルトの無い状態のキラは体制を崩して
ラミアスの豊満な胸に向かって顔面ごと倒れこんだーーー。

 

クワトロやブレックスらはサイ達を連れて、
動き回るモビルスーツの足元をくぐり抜けながらシェルターを目指す。
目の前で重い動作で動く《ストライク》を見ていたクワトロは、
なんとか1機だけが奪われずに済んだ事と、
そのモビルスーツのOSが立ち上げられていない事に気づいていたーーー。

 

倒れたキラは柔らかいものに顔が包まれている事に気付き、(ヤバイ…)
そう思っていた彼にラミアスが叫ぶ。

 

「ちゃんと後ろに下がってなさい!死にたいの!?」
「す…すいません!」

 

慌てて立ち上がりラミアスから離れて、
顔を赤くしていたキラは内心それだけで良かった…そう思っていると、
目の前まで迫っていた《ジン》が、
《ストライク》に再び重斬刀を振り下ろすのが視界に入る。
ラミアスは咄嗟にコンソール右側にあるボタンを押し、
レバーを操作すると、《ストライク》の腕をクロスさせて防御体制をとる。

 

その瞬間《ストライク》はトリコロールの機体色に包まれて、
《ジン》の重斬刀を腕だけで受け止める。

 

「うわぁぁ!」

 

《ストライク》は火花を散らす重斬刀の振動効果で激しく揺れると、
キラとラミアスが舌を噛まないように歯を食いしばる。

 

「あっ!!」
「何ぃ!?」

 

後方でミゲルの戦いを見ていたアスランとラスティが声をあげると、
ミゲルも思わず声をあげて驚いていた。

 

それはシェルターを目指して走るクワトロ達も同様だった。

 

「あれは!!」
「あれがフェイズシフト装甲か…!?」

 

新型のガンダムのデータを予め読んでいたブレックスだが、
彼もその変化を目の当たりにして驚いていた。

 

驚いたミゲルが重斬刀を《ストライク》から離して、
飛び上がって距離をとる。
「こいつ!どうなってる!?こいつの装甲は…!!」
「こいつらはフェシズシフトの装甲を持つんだ!
展開されたらジンのサーベルなど通用しない。」

 

後ろから肩を掴んで通信してきたアスランがそう言うと、
ミゲルは唇を強く噛んで《ストライク》を見やる。
「ち…!分かったからお前達は早く離脱しろ!
いつまでもウロウロするな!」

 

嫌な汗を肌で感じているミゲルは、
アスランへ離脱するように大声で叫ぶと、
OSの立ち上げが完了した《イージス》も機体色が赤に変わる。
その横から、ミサイルが飛んでくると
《イージス》の75mmバルカンで撃ち落とすと、
その先から特攻をかけてきたミサイル搭載トラック《ブルドック》を破壊し、
離脱を開始するーーー。

 

奪われた《イージス》がスラスターを噴かせて、
離脱する様子を見ていたキラとラミアスだが、
コックピットにアラート音が鳴り、
モニターを見ると《ジン》が地面を滑空して正面から迫る、

 

「くっ…!」

 

ラミアスはグリップのボタンを押して、
《ストライク》の75mmバルカンで迎撃する。
武器を使っても動かない《ストライク》を見ていたキラが
この機体の違和感を感じる
(…これってまだ!?ーーー。)

 

「ふん!いくら装甲が良かろうがぁっ!」
「あっ!?うわぁぁ!」

 

《ジン》は三たび重斬刀でストライクに斬りかかると、
相変わらずぎこちない動きでなんとかかわす《ストライク》ーーー。

 

「そんな動きで!」

 

ミゲルは叫ぶと、《ジン》が一文字に
《ストライク》に斬撃を浴びせると、
追い打ちをかけるように右肩部にも斬りかかるーーー。

 

ミゲルの無駄の無い波状攻撃で《ストライク》はその衝撃により、
機体ごと後ろのビルに倒れ込むと、ビルが倒壊するーーー。

 

そのビルの近くを走っていたサイ達やブレックス達に思わぬ事態が起きる。

 

「うわああぁ!?」

 

倒壊して来たビルの瓦礫の大きな破片がトールとミリアリアに飛んで来るーーー。
「…危ないっ!!」そう叫んだ声が聞こえた。

 

思わず目を閉じてしまっていたトールとミリアリアが目を開くと、
そこにはヘンケンが目の前に倒れ込んでいた。

 

「あ…あぁ…」
「お…おっさん……」
「ヘンケン艦長!!」

 

サイやトール達が、その光景を見て体を震わせていると、
クワトロが叫びながらヘンケンのもとへ駆け寄る。

 

「ヘンケン艦長…大丈夫ですか?立てますか?」
「あ…あぁ…大…丈夫だ。大尉、すまないが肩を貸してくれ…。
お…お前達、怪我はないか…?」

 

意識のあったヘンケンにクワトロが肩を貸して立たせると、
ヘンケンがトールとミリアリアの身を案じ、
そう言うとトールが大きく頷きミリアリアは涙を流してコクリと小さく頷いた。
ヘンケンは「そうか…良かった…」と言って口元を上に上げて笑顔を見せる。

 

その横でブレックスは「よし…とにかく急ぐぞ!」
と言うとトールもヘンケンに肩を貸して、その場を離れて行く。

 

《ストライク》のモニターが離れて行くサイ達や、
怪我をしたヘンケンを支えて走る
クワトロやトール達の様子が映り込んでいた。

 

「…あっ…!?」

 

さらに拡大されるモニターには、
涙を流しながらヘンケンの様子を見ていたミリアリアが映るーーー。

 

「生意気なんだよ!ナチュラルの雑魚共が!!」

 

ミゲルはトドメと言わんばかりに《ストライク》へと突進をかけて行くーーー。

 
 

 
 

「ち…しまった!」

 

カミーユの乗る《ガンダムMk-II》がビームサーベルを振り下ろすと、
《デュエル》の左スカートアーマーが溶断される。

 

「はあ…はぁはぁ…」
「イザーク!大丈夫ですか!?」

 

イザークの心臓の鼓動が少し早くなっており、
肩で息をしていたーーー。
(俺で無ければやられていた……)
そう感じたイザークだが次に彼を襲ったのは
まるで火山の噴火が起きる直前のような己の感情だった。
彼はその感情を抑える事もなくそれを表に出すと、
右のこめかみから汗が垂れてくる。
ニコルの声も既に彼には聞こえていない様子だった。

 

「おの…れぇ…よくも俺に恥をかかせたなぁ!!」

 

そう言うと《デュエル》はビームライフルを手に取り、
《ガンダムMk-II》や《リック・ディアス》に向かって手当たり次第に乱射する。

 

「こ…こいつは…!」
「あ、あの野郎!めちゃくちゃやりがって!!」

 

慌てて、ビームライフルをかわすが、
コロニーの地表面に3つ、4つと穴が空いていく。

 

「馬鹿!?イザーク!!」
「よして下さい!コロニーが壊れますよ!」
「うるさぁい!!こんなコロニーなど…!」

 

ディアッカとニコルが通信でイザークを宥めるが、彼の爆発した怒りは収まる事を知らずに
ビームライフルを撃ちまくる。

 

「くっ…貴様!いい加減にしろ!!」

 

カミーユがそう叫ぶと、腰のマウントラッチに装着した散弾式のバズーカを手にして、
《デュエル》に向かって撃ち放つーーー。

 

一直線に飛んでゆく砲弾がやがて弾けると砲弾の中に詰められた榴弾が扇状に拡がり、
《デュエル》のビームライフルの熱線とぶつかり合い、あちこちで爆発が起きる。

 

「うっそぉ!?」
「うわああ!!」

 

拡散した榴弾が《ブリッツ》や《バスター》にも襲いかかり、
榴弾の雨をかわす事も出来ずに直撃を受け、機体に衝撃が走る。

 

「あのガンダムの野郎もカミーユのやつも頭に血が昇ってやがる!」
「アポリー!これ以上の戦闘はマズイぞ!!」

 

アポリーとロベルトはそう言うと、カミーユを止めに入っていく。

 

「カミーユ!よせ!!もうこれ以上はまずいぞ!」
「あいつらは逃がせませんよ!!」

 

アポリーがカミーユに叫ぶと、異常ほどにアドレナリンが出ているカミーユがアポリーに噛み付く。

 

「馬鹿野郎!敵の1機がこちらに向かってる!!これ以上戦ったらこっちもコロニーもダメになる!」
「……くっ!?」

 

ロベルトが熱くなっているカミーユに一喝する。
カミーユはレーダーに目を向けるとかなりの早さでこちらに向かってくる機影を捉えていた。
その時アポリーが突然オープン回線を使用する。

 
 

「聞こえるか!ザフト!!」
「お…おいアポリー!?」

 

イザーク達は驚いた表情で、
コックピットに映し出されたアポリーを見ている。
イザーク達のもとへ向かう《イージス》にも
《リック・ディアス》からの回線が入り込んでくる。

 

「俺たちはエゥーゴだ。」

 

「エゥーゴ…!?」
「反地球連邦組織の……」

 

アポリーの言葉にディアッカやニコルは、
彼らは相手が単なる連邦軍だと思っていた分
ティターンズや腐敗した連邦という、
敵を同じくするエゥーゴだと聞いて少し動揺していた。

 

「…そのエゥーゴが俺たちに何のようだ!!」

 

イザークが少しの沈黙ののちに、語気を強めて言うと、
アポリーが落ち着いた様子で

 

「これ以上ここで戦えばどうなるかって事くらいは、
お前達もスペースノイドなら分かるだろう?」

 

そう言うと、すぐさまイザークが反論する。

 

「中立と名乗っておいて連邦と手を組んで、
モビルスーツをコソコソと作る国のコロニーなどどうでもいい!!」

 

イザークはそう反論すると、
アポリーの《リック・ディアス》へビームライフルの銃口を向ける。

 

「ここには亡命したコーディネイターだって住んでいるんだろう!?
同胞を殺す事を厭わないわけじゃないだろう!」

 

アポリーが彼を説き伏せるように声をあげると、
イザークは何も言い返せなくなった。

 

「国と国の問題はあるだろうが、
民間人には何の罪もないんだ。
俺たちはこれ以上ここでは戦わない。
だからとっとと、ここから出て行くんだ。」

 

「なっ…!!」
「なに!?」
「アポリー中尉!!」

 

アポリーの言葉にイザーク達だけでなく、
カミーユも驚愕するがロベルトだけが黙ってアポリー言う事を聞いていた。

 

「どうせ、後ろから撃つんだろう!?そんな言葉に惑わされるものか!!」

 

イザークは声を荒げて尚も食い下がるーーー。
が、その時アスランとラスティの乗った《イージス》が
イザーク達のもとへと辿り着く。

 

「イザーク!!」

 

「アスラン!?」
「良かった…!……もう1機は…ラスティはどうしたんですか!?」

 

ディアッカとニコルがアスランの到着に喜ぶが、
ニコルはもう1機の《ストライク》が到着していない事に気付き、
アスランに慌てた様子で聞くとラスティが彼らに返事をする。

 

「す…すまない…失敗しちまった…」

 

イザーク達はモニターに映る、
痛みで表情の歪んだラスティを見て驚くが、
オープン回線でアスランがアポリーに語りかける。

 

「エゥーゴの士官の方、お話は聞いていました。
あなた達の言葉を信じて宜しいんですね?」

 

「…!…アスラン貴様なにを……
イザークが驚きアスランに食ってかかろとうと言いかけ
「イザークは黙って聞いててくれ!」
と彼は語気を強めると、アポリーから返答が帰ってくる。

 

「当たり前だ、お前達の会話が聞こえたが負傷兵がいるんだろう?
早く帰って手当てしてやるんだな。」

 

「……」

 

そう言うと、何故かアポリーに妙な感覚を覚えたアスラン達は
黙っていると、ロベルトも通信に割り込んでくる。

 

「怪我をしてる若造の背後を撃ったんじゃあ、
一年戦争をくぐり抜けてきた俺達のプライドが傷付く。
分かったら気が変わらんうちにとっとといけ!!」

 

その時、彼らの言葉を聞いたアスランは信用したという証明を見せる為に、
《イージス》のフェイズシフトを解除するーーー。
それを見たニコルもアスランと同じ事をすると
「みなさん…行きましょう。」

 

と言って《イージス》と《ブリッツ》が
スラスターを全開にして離脱して行くと、イザークが叫ぶ。

 

「そこのガンダムのパイロット!
俺に勝ったと思うな!次は手加減などせん!」

 

そう言うとそのまま離脱して行き、最後に残ったディアッカが
「あんたらカッコいいぜ。敵ながらあっぱれってやつだな!」
と言ってアスラン達の後を追うように離脱していったーーー。

 

「……良かったんですか?逃がしちゃって…」
「さあな…分からん。」

 

しばしの沈黙の後にカミーユがアポリーにそう聞いたが、
彼からは気の抜けた返事だけが帰ってきた。

 

「カミーユ、お前はアーガマに
准将たちが戻っているか連絡を取ってくれ。」
「あ…は、はい。」

 

アポリーはそう言うと、そそくさと地表面に開いた無数の穴を塞ぐ為に
ロベルトと共に《リック・ディアス》を再び稼動させていた。

 
 

 
 

《ジン》が全速力で突っ込んでくるのを見たラミアスは距離を取ろうと、
《ストライク》を後退させる。

 

しかし怪我をしたヘンケンを抱えたクワトロ達に、
下がり続ける《ストライク》が迫るのをキラが見ていた。
そしてミゲルは《ジン》の右手に持つ重斬刀を
《ストライク》のコックピット部分めがけて突き刺そうとしたその時ーーー。
「あぁ…っく!!」
キラは咄嗟に左のグリップレバーを動かして
《ストライク》の体勢をしゃがみ込ませて、
《ジン》の攻撃が右肩部あたりをかすめると、
キラが続いてレバーを力いっぱい押し出す。

 

「うわあぁぁぁ!!」

 

スレスレで攻撃をかわした《ストライク》は全身を前に踏み込みんで、
《ジン》へ体当たりを喰らわせると大きく後ろへふき飛ばされて、
地面に大の字に倒れる。

 

「…君!?」

 

ラミアスが彼の行動に驚いていると、
キラは身を乗り出してコンソール周辺の機器を操作して行く。

 

「ここにはまだ人が居るんです!
こんなものに乗ってるんだったら何とかして下さいよ!」

 

ラミアスに愚痴をこぼしつつもキラはOSの状態を確認する為に、
OSのデータを開いて行く。

 

「くぅぅっ……!!」

 

倒れ込んだ《ジン》を起こそうと、
ミゲルはグリップをおもいきり引き込んで体勢を立て直していくーーー。

 

「無茶苦茶だ!こんなOSでこれだけの機体を動かそうなんて!」
「まだ全て終わってないのよ…!仕方ないでしょ!」

 

キラはOSデータを確認していたが、
その内容に呆れた声でラミアスに言うと、
彼女はキラの言葉にムッとしながらもそれを見ていると
倒れていた《ジン》が起き上がるーーー。

 

「…どいて下さい!」
「え…?」
「早く!!」

 

起き上がった《ジン》を見たキラは慌てて、
ラミアスをリニアシートから退かせて、
キラがシートに座り込み、異常な早さでコンピューターを操作して行く。
その姿を見たラミアスは何かを感じ取った様子で彼を見ていた。

 

「……(この子…!?)」

 

起き上がり、再び《ストライク》に突進をかける《ジン》に対して、
キラはグリップのボタンを押すと、
75mmバルカンを正面から来る《ジン》へ命中させる。

 

「なに…!?」

 

ミゲルは《ストライク》の再三の反撃に違和感を感じ始めていたが、
そのまま直進して重斬刀を突き出すと、
《ストライク》はそれをかわして《ジン》の頭部にカウンターの形で右のパンチを叩き込む。

 

「ぐわあぁぁぁぁっ!!」

 

先ほどの体当たりよりも、激しい衝撃にミゲルはリニアシートごと体が強く揺らされ、
吹き飛ばされるとビルに機体が埋もれる。

 

「ああぁぁ…」
「なんだ!?」
「…動きがよくなった…?」

 

なんとかその場を離れたブレックス達やカトーゼミの少年達も、
先ほどとは違う展開になって来ている事に気付き、
いつの間にか足を止めてその戦いの行く末を見ていた。

 

(キャリブレーション取りつつ、ゼロ・モーメント・ポイント及びCPGを再設定…、
チッ…なら疑似皮質の分子イオンポンプに制御モジュール直結!
ニュートラルリンケージ・ネットワーク、再構築!
メタ運動野パラメータ更新!
フィードフォワード制御再起動、伝達関数!
コリオリ偏差修正!
運動ルーチン接続!
システム、オンライン!
ブートストラップ起動!)

 
 

地面に着地した《ジン》と《ストライク》ーーー。
《ストライク》アーマーシュナイダーを両手に、
バーニアスラスターをブーストさせて
《ジン》のマシンガンを動き回りかわして行く。

 

「くっそぉ!!チョロチョロと!」
先ほどまでと動きがまったく違う《ストライク》

 

既に対応しきれていない上に性能に劣る《ジン》目掛けて
スラスターを全開にした《ストライク》が目の前に接近したーーー。

 

「こんなところでっ!…やめろっー!!」

 

キラはそう叫び両手のレバーを動かすと、《ジン》の右腕、
右肩部辺りと頭部にアーマーシュナイダーを突き刺すと
《ジン》の右腕がダランと下を向くと、機体の動きも完全に停止するーーー。

 

「…ハイドロ応答無し!多元駆動システム停止…!?…っえぇい!!」

 

ミゲルは各部チェックを行うが、《ジン》の機能自体がやられたと判断して、
レバーを引くと、コックピットハッチが開き、
機体を残してミゲルだけが脱出していった。

 

最後までその戦況を見つめていたブレックス達。
ブレックスが独り言のように呟く
「終わったな…」

 

その言葉にクワトロが応える。
「はい…ですが色々と問題がありそうです。
とにかくアーガマと連絡を取りましょう。」

 
 

 
 

ヘリオポリスの外では未だにムゥ・ラ・フラガが
なんとか持ちこたえていたが、旗艦であるフロッグが《ジン》に
攻撃されて沈もうとしていた。

 

「そ、操舵不能ぉ!!」
「ぬおわぁぁ!!」

 

フロッグはそのまま、コロニー外装部に激突して轟沈して行く。

 

旗艦であるフロッグを沈めた《ジン》を
ムゥの《メビウス・ゼロ》が追いかけるーーー。

 

「くそ…!やはりこの戦力差ではどうにもならんか!!」

 

必死に《ジン》に追いすがるムゥは照準に敵を捉えると、
ガンポッドを展開して行く。

 

「ちい!あのメビウス・ゼロは厄介だ!」

 

緑服のオロール・クーデンベルクはメビウス・ゼロの性能をよく知っていた。
そして相手は指揮官のラウ・ル・クルーゼと幾多も死闘を繰り広げ、
未だに生きているあの『エンデュミオンの鷹』が乗っているという事も知っていた。

 

オロールはその難敵をなんとか振り切ろうとするが、
ムゥに完全に捉えられていた。

 

「そこだ!!」

 

グリップのボタンを押すと、
展開していたガンポッドから放たれる鋼弾が火を吹き、
《ジン》の右腕を完全にもぎ取る。

 

「しゃあ!!」
「くそっ…!!離脱する…!」

 

オロールはなんとか《ジン》の体勢を立て直すと、
母艦のヴェサリウスへ帰艦して行ったーーー。

 

ヴェサリウスのブリッジではオペレーターが
オロールからの通信を受け取っていた。

 

「オロール機大破、緊急帰投。
消火班、Bデッキへ。」
「オロールが大破だと!?隊長、一体どういう事でしょうか?
イザークの奪ってきた機体も損傷していましたし…」

 

外ではオロールの《ジン》がやられ、
中ではイザークの持ち帰ったガンダムまでダメージを負って帰ってきたとなれば、
アデスにとっては不測の事態と言わざるを得ない状況だったーーー。

 

「ふん…どうやら外ではいささか五月蠅い蠅が一匹…
中では野良犬が数匹紛れているようだ。」

 

アデスの言葉にクルーゼは慌てる様子もなく、ただ冷静に戦局を見つめていたーーー。
と、その時

 

「ミゲル・アイマンよりレーザービーコンを受信。エマージェンシーです!」

 

オペレーターがそう報告すると、クルーゼの表情が少し硬くなった。

 

「なるほど…ミゲルが機体を失うほどに動いているとなれば…
最後の一機も、そのままにはしておけん。」

 
 
 

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