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舞乙337氏第09話

Last-modified: 2008-12-12 (金) 10:06:43

第九話 開かれたゲート~運命の黝廉石~

 ルナマリアとインフィニットジャスティスの間に入るそのMSはどこかで見たことのあるもの。そしてそれは懐かしくもあり、ずっと捜し求めていたもの。
「こちらシン・アスカ。みんな戦闘をやめろ!」
「シン!?本当にシンなのか!?」
 アスランは画面に向かって言う。
「…アスラン。えぇ…なんとか無事にね」
「シン!お姉ちゃんが!!お姉ちゃんが!!」
 メイリンがアスランの前にでるようにして叫ぶ
「メイリン!?生きていたのか!そうか…よかった」
 シンは安堵した表情で息をつき、もう片方にいるルナマリアのほうを見る。
 黒く染まるルナマリアにシンは語りかける。
「ルナなんだろ!?おい!シンだ!シン・アスカだ!!」
「…」
 ルナマリアはエレメントを振り下ろし、ディスティニーとインフィニットジャスティスを吹き飛ばす。二機はそのまま市街地に叩きつけられる。

「シン!!」
 駆けつけるミドリのスレイブ、愕天王とともにやってくるアリカ。
「私はラドを探す。お前はマシロ女王のところにいけ」
「はい!ありがとうございます頭領」
 アリカはそのままシンのMSのほうを一度見つめてからそのまま城内にへと入っていく。
 
ヴィントブルーム城内…玉座

 それは一度戴冠式で利用した場所。マシロ女王とニナはそこに隠れていた。いたるところに兵士の遺体がある。先ほどの戦艦からの機銃照射によるものだろう。サコミズ、アオイは無事であろうか…。我が民は無事であろうか。
 マシロは目を閉じ唱え続ける。
「…マシロちゃん。いるんでしょ?」
 その声…ナギ・ダイ・アルタイ。
 すべての元凶…わらわが対峙しなければならない相手
「わらわはここじゃ」
「マシロ様!?」
 立ち上がるマシロとそれを護衛するニナ。
「久しぶりだね?こうして君と出会えるのは…ヴィント事変以来かな?」
「…何をたくらんでおるか知らんが、お前の思い通りにはならんぞ!」
「どうかな?」
 ナギは窓から入る月光に照らされそのどこか白く鋭い目をマシロに向ける。
「殿下…もうこれ以上はおやめに」
「ニナちゃん。君がまさかマシロちゃんのオトメになっているとはね。驚いたよ。セルゲイのことですっかりオトメには関心をなくしたものだとばかり思っていたんだけどね」
「…私に力があり、それが贖罪としてできるのであるならば…」
 ニナはナギを見つめつぶやく。ナギの野望に加担した自分の罪滅ぼし。
「そういう世界もあれば、ニナちゃんがオトメにならなかった世界もある」
「?」
「なにをいっておる!」
 ニナとマシロは不思議そうな表情でナギを見る。
「…世界は様々な側面を持っている。たとえばヴィント事変で僕が勝った世界もあれば、ヴィント事変さえ起きなかった世界。もっと以前、十二王戦争ですべての戦争を終結させた真祖フミさえいない世界」
「そんな世界などありえん!」
「ありえない?なら彼女たちはなんなのかな?君たちがそう呼ぶ異邦人たち」
 ナギはマシロを見つめる。ナギの言っている意味がなんとなくだが理解でき始めていた。世界は様々な可能性を持っている。本来交わることの無かった世界がハルモニウムというものによってそのバランスが崩れたのだ。
「僕はこれを偶然とは思わない。いや、これは定められた運命なのさ。交じり合った世界はいずれ崩壊する。それを止めるには片方の世界を消し去ればいい」
「ナギ、そなたは一体…」
「絶望、復讐と憎悪、あまりにも強大な負の感情を持つ主を迎えたあの輝石はやがて暴走する。そのとき、ゲートが開くのさ。次元をつなぐ橋…」
「次元を繋ぐ橋…」
「世界の崩壊を救うにはそれしかないんだよ」
「なぜじゃ…なぜそなたはいつもいつもそうやって己の力一つで、こんなことをする!」
 マシロは首を大きく振ってそして怒鳴りつける。
 いくら成長したとはいえそういうところは相変わらずか…。ナギはおもう。
「お前が一言でも皆と相談してくれれば!わらわたちだってバカではない!協力する。こんな争いではない!きちんと話し合って…」
 マシロが一方的に批判するのではなく自分のことを考えて言う事ははじめて。
「…フフ、惚れ直しちゃうねマシロちゃん」
「はぐらかすな!!今からでも間に合う!皆で協力すればなんだって解決できるんじゃ!」
「…それは夢だよマシロちゃん。現実はそんな生易しいものじゃない」
「かまわん!それでも誰かを傷つけなければいけないことよりずっと、ずっといい」
「世界の崩壊が起こる前までに話し合いがつけられると思うかい?オトメ拡散防止条約が停滞し、逆に軍拡の動きまである。ルーテシアでは国境紛争の再燃が危惧され、エアリーズは国際社会を台頭し、やがて世界を治めようとするだろう。それでもマシロちゃんは夢を持ち続けるのかな?」
「…わらわは、みんなが笑顔になれる国を作る。そのために…できることをする。わらわは、そのために今からやっていくのじゃ!それがアリカやニナ、みんなとの約束なんじゃ!!」
 ニナはマシロのその力いっぱいの言葉を聴き、やっぱりこれがアリカのマスターなんだと思った。マシロ様のいっていることは確かに夢であってそれを現実にするのは難しい。だけど誰もがマシロ様と同じ夢、願いを持つことが出来るならば…。時間がかかったとしても。きっと叶う。アリカやマシロ様は無理であろうとしたことを実際かなえたのだから。

「…私はマシロ様を信じます。ナギ大公。抵抗をやめおとなしくしてください」
 ニナはエレメントを握り締め、ナギにむける。
 瞬間、窓のガラスが一斉に割れる。それは巨大な風…。ニナはマシロをガラスからかばう。その間にナギはその場から逃げていく。
「しまった」
「かまわん。それよりも…」
 外ではルナマリアの黒き分身たちが他のオトメとの戦闘を始めていた。
「マシロちゃん!!ニナちゃん!!」
「アリカ!?」「アリカ!」
 だいぶ汚れたマイスター服のアリカは疲れた表情で二人の下に駆け寄る。
「認証して!」
「…よし。蒼天の青玉を持つ我がオトメよ。そなたの力を解放する。蒼天の力もセットじゃ」
 認証を受け、アリカは視線を黒く染まる強大なオトメにへと向けた。
「マテリアライズ!!」

 マシロの前に立つその二人のオトメは敵陣の中にへと向かっていく。マシロはそこで見守る。世界の存亡をかけ…ユメノツヅキのために。

「くそ!これじゃルナマリアにちかづくことさえできない!」
 インフィニットジャスティスとディスティニーは背中合わせで迫りくる攻撃を防いでいた。ルナマリアの体から湧き上がったその分身たちはアークエンジェルを撃破したものに間違いは無い。だがそれが複数現われたと言うなら話は変わってくる。
「シン、機体は大丈夫なのか?」
 アスランは攻撃を防ぎながら問いかける。謝るつもりは無い。だけど心配だったことにはかわりはないから。
「アリカっていう子と他の人たちに直してもらいましたよ。うまく機動部分だけだったんで。修理は意外と簡単でした」
「…そうか」
「今のルナは前の俺と同じです」
 シンは画面をアップにしてヴィント城の頭上に位置するルナマリアを見る。彼女は力無くその場に浮いている。目は開かれているが光は無い。
「…俺は妹を失ってそれを誰かのせいにしたくてしょうがなかった。無力だった自分への怒り、そして何もしなかったオーブ政府、そして俺を裏切ったあなたへの恨み、憎しみ。今のルナはそれと同じなんだ」
「シン…」
「もう、戦争はイヤだ。俺は見たんです。戦争によって傷ついた人たちの姿を」
 それはシンが見たアスワドの人たちのこと。黒い谷といわれ避けられた彼らはみんな身体のどこかを失っていたり、機能不全だったりしていた。それの原因がシンにはわかった。
『放射能』
 シンはそこでいつ自分が死ぬかもわからないのに笑顔で笑っている子供たちを見て、シンは彼らの笑顔に今までの自分を打ち倒された。彼らは砂の中からディスティニーをだしてくれることを手伝い、そしてアリカやミドリ頭領によってこの機体は生まれ変わった。
 今までの俺の憎悪やそれらすべてを洗い流して…。
「…わかった。メイリン、シンとともにいけ」
「え?」
「…お前たち二人がルナマリアを説得しなければ意味が無い」

 一方、ミネルバの武装をすべて沈黙させた舞衣たちにかわりマリューたち率いる条約機構軍がヴィントにはいってきていた。オトメ部隊は残党を処理しつつ、マリューやミリアリア、ラクスたちはミネルバにへと突入していく。
 近衛兵の銃による攻撃もデルタオトメ隊により無力化されていく。
「…艦首に突入します」
 チエ・ハラードが最初に室内の扉を開け、そこを他の隊員が銃撃し、近衛隊を打ち倒す。
室内は荒らされていた。そしてそこで目に入るもの。
「タリア…グラティス」
 そこに横たわるもの。タリア・グラティスは銃弾を受け、倒れていた。血が壁を染め流れている。かすんだ視界の中に入るどこかで見た顔にタリアはよく目を凝らす。
「マリュー・ラミアス…。こんなところであたなにあうなんて…つくづくね」
「待っていて。今、治療を」
 そういうマリューの手を握るタリア。
「…」
「…元の世界に帰ったら議長に伝えて、私たちは間違っていたと」
 振り返るマリュー。タリアは小さく息をしながら告げる。
「クルーを全員、死なせてしまって…私だけ生き残ることなんかできないのよ」
「…私たちの艦もたくさん死んだわ。仕方が無いことなの。戦争だから」
「…そうね。私ったら…なにをいってるのだろう。お願い…レイとルナマリアを…」
 タリアは壁にもたれたままマリューにそう告げてゆっくりと目を閉じる。

「…もし、生まれ変わることが出来るのなら…そのときは…デュランダル、私…」

 タリアの言葉がとまる。マリューは立ち上がり、彼女に向け敬礼をする。それは異世界にわたり、元の世界にかえろうとしながらも、世界の流れに巻き込まれ、それでもなお抵抗しようとした彼女たちの勇気に対して…。

「もうやめるんだ!!異世界にきてもこんなことを続ける気か!」
 ストライクフリーダムは撃ちだされるビームの閃光をかわしていく。それを執拗に追うレジェンド。
「お前さえ、お前さえいなければ!!議長の新世界が実現できる。それが僕とラウの求める世界なんだ!!」
「君は君だ!君は議長に利用されているだけなんだ!」
「うるさい!!お前なんかになにがわかる!!なにが!!」
 レジェンドのビームの乱射に対して、キラも反撃に出る。振り返りざまに撃ちだすビームライフル。そしてその勢いのまま、ビームサーベルでレジェンドに向かう。
 交錯する二機。
 キラのストライクフリーダムの右腕が切られる。ちぎれた右腕はそのまま落ちていく。
 反対にレジェンドはメインモニターの頭部を切られ、そのままバランスを崩し、落ちていく。
「くそぉ!!くそおお!!覚えておけ!!ストライクフリーダム!!」
 恨みに満ちた声を吐きながらそのままレジェンドは地上に激突する。
「…すまない。でも僕はいかなくちゃいけない。二つの世界を救うために」

 条約機構軍本隊
「クリサント大統領。敵防衛部隊を撃破。異邦人の旗艦も奪取したとのことです」
「…わかりました。やはり彼女たちに協力してもらって助かりました」
「はい、条約機構軍の異邦人戦艦奪取間際に搭乗員と機械人形の移動。こんな形で役立つとは」
 ボーマン中将は前もってデルタオトメ隊とともに戦艦の乗員移動を命令されそれを実行していた。最初は異論もあったのだが、最終的には命令に従った。
「あとはナギ大公を拘束すれば問題は解決します」
「大統領!?ヴィントブルーム城の真上で異常な高次物質化反応。数値が異常です」
 ユキノはヴィントの方角を見る。それはヴィント事変で見たような黒いもの。

「はぁー!!」
 舞衣の格闘戦も幻影に近いそのルナマリアの分身にはダメージを与えることが出来ない。舞衣は相手の攻撃を避けながら、体力がじょじょに減ってきていることを感じてきていた。
「舞衣さーん!」
アリカとニナが駆けつけ、黒いそのオトメに攻撃するが身体がすけ、あたらない。
「な、なんなんですか!?」
「どうやら普通の格闘戦じゃ無理みたいね」
「本体に攻撃しなければ意味は無いわ」
 他のオトメ部隊もエレメントの攻撃を受け付けないその分身に苦戦を強いられている。その間にも中央ではルナマリアを中心に黒い光が広がり始めていた。
「舞衣!あいつ、橋を作る気だ!」
「橋?」
「二つの世界を繋げる橋だ!」
 夜の闇を貫く一閃の閃光。
 それは時空を繋げる橋。
 光がまばゆく輝く。
「な、なんじゃ!?あの穴に吸い込まれておるのか!?」
 風が巻き起こり、その穴に吸い込まれていく。まるで掃除機…、大きな音が鳴り響く中、様々なものを吸い込んでいく。マシロは建物の奥に隠れるが、手が離れ宙に浮く。
「うわぁ!!」
 そのマシロの手をつかむもの。それはレジェンドを倒したミユである。
「…はじまってしまいましたか」
 ミユは次々とものを吸い込んでいくその黒い穴を見る。
「一つの世界に二つの世界は同時に成り立ちません。このままではやがて」
「まさか!ナギのいうことがはじまってしまったのか!」
 マシロは頭上を見上げる。黒く染まった異邦人のオトメ…。心を閉ざし、憎悪に駆られてしまったものを。

戻りたい。

メイリンやシン、みんながいる世界に。

私が私でいられたときに。

「ルナ!!聞こえるだろ?目を覚ましてくれ!」
「お姉ちゃん!!」
 ルナマリアの傍に接近したディスティニーからメイリンとシンは声をかける。
 だがその声も巨大な暴風の前にかき消される。
 シンはディスティニーのハッチを開ける。
「お姉ちゃん…こんな風になって…私のこと怒ってるだろうね。勝手にでていって、勝手に行方不明になって…お姉ちゃんにどれだけ心配かけたか」

『…』

「…お姉ちゃんは私やみんなのために一人でがんばってくれてた。知らなかったわけじゃないんだよ?でも私、どうしていいのかわからなくて…でも今ならわかる」
 メイリンは宙に浮き、黒きオーラを身にまとうルナマリアに抱きつく。
「メイリン!!」
 その行動に危機を感じたキラのストライクフリーダムがとめようとするが、ディスティニーがとめる。
「…邪魔はさせない」
 シンはモニターにうつるストライクフリーダムをにらむ。

 ルナマリアの巨大なエレメントを握った手が動き、しがみついているメイリンに向けられる。近づいたオトメたちやMSたち誰もが彼女たちを見守る。

「ごめんなさい…お姉ちゃん」

 メイリンは一言、告げる。今までの人生の中で自分を支えてくれた姉に対して…。
 そしてシンはルナマリアに手を差し伸べる。

「…帰ろう。ルナ…みんなのところに」

 シンの差し伸べられた手を握るルナマリア。シンとメイリンはルナマリアを見つめる。黒きオーラがルナマリアから消えていく。ルナマリアのオトメのローブにひびが入り崩れ始める。それはかつてニナ・ウォンが体験したハルモニウムからの浄化である。黒く輝いていたGEMも本来の色、輝くオレンジ色の元の色にへと姿を変える。
 ルナマリアの身体がローブの力を失い落ちていく。
「きゃ!!」
 メイリンの叫び声とともに二人はディスティニーの手のひらに落ちる。駆け寄るシン。
「ルナ、ルナ…目をあけろ。ルナ…」
「うぅ…シン?メイリン?」
 ルナマリアはゆっくりと目をあけて二人を見る。死んだと思っていた二人。でも夢の中で二人は私に呼びかけてくれていた。ずっと…。
「これは、夢?」
「夢じゃないよお姉ちゃん!」
「そうだ、夢じゃない」
 シンはそういうとルナマリアに顔を近づけそっと唇を重ねる。
 そこでルナマリアの緊張の糸が切れた。今まで一人でがんばってきた、寂しかった、怖かった、それらの感情が一気にあふれ出す。
「あぁぁぁ…」
 声を出して涙を流すルナマリアを支え、ともに涙を流すメイリン。そして笑顔で二人を見つめるシン。

「…これで無事解決じゃな」
 マシロは天を見上げつぶやく。だが、その風の勢いは収まるどころかさらに勢いを増し始めている。
「ど、どういうことじゃ!!とまらぬではないか!?」
「…」
 ミユは赤く輝く空を眺める。
 
ヴィントブルーム城を中心に今二つの世界の崩壊が始まろうとしていた。