Top > 虚空、果てなく_〜SEED OF DOOM〜_AT-3
HTML convert time to 0.005 sec.


虚空、果てなく_〜SEED OF DOOM〜_AT-3

Last-modified: 2008-03-01 (土) 21:46:19
 

         CLIMAX AVANT-TITLE Ⅲ

 
 

「キラは無事なのか」

 

アスラン・ザラは親友との会合を果たせなくなりそうな事を焦慮していた。
愛機インフィニット・ジャスティスを大きなデブリの影に潜ませたまま。

 

「ミーティアを失ったのは痛いな……」

 

目前を半壊したMSと、同様に半壊した戦闘機械が浮遊している。
アスランは名を知らないがそのMSの名は「クロスボーン・ガンダムX-3」
乱戦にまぎれて空域の突破を目指したアスランのインフィニット・ジャスティスを真っ先に発見して喰らい付いて来た。
こちらの攻撃は当たらず、逆に向こうの攻撃は確実に命中する。
強化武装ユニット・ミーティアを装着していたため、速度は上がったが旋回性能が極端に落ちていたのだ。
それでも通常のMSはものともしないが、どうやら「αナンバーズ」所属らしい機体相手にはミーティアは致命的デッドウェイトだった。
幸い被弾はすべてミーティアが蒙っていたため、このままでは勝ち目がないと判断したアスランはミーティアを分離して敵機に叩きつけた。
止めとばかりに大型のビームサーベルで斬撃をかけようとしていたそのMSは避けられなかった。
単なる物理的衝撃でも、PS装甲ではないらしいMSには充分で、機体は下半身を押しつぶされた。
パイロットは分離した移動能力を持つコックピットで脱出したが。
ちょうどその時、二機のαナンバーズMSが近接していた。
一機がビームライフルで牽制している間に、もう一機がビームの斧を手にして迫ってくる。
その瞬間、アスランの中で「種」が弾けた。
ビームライフルをシールドで防御しつつ、迫ってきたモノアイのMSの斧をサーベルで受け、同時に膝のビームカッターで腕を切り落とし、さらにはビームブーメランをライフルを放っていたMSへと投げつけた。
ブーメランはライフルに命中、爆発し、そのMSは腕を失う。
しかしアスランは二機に止めを刺すよりも今はまず身を隠す事を選んだ。
そして撤退する二機のMSのカメラの死角にちょうどいいデブリが浮遊しているのを見つけた。

 

「こんなことなら、やはりキラに使わせるべきだったか……」

 

本来なら「フリーダム」「ジャスティス」用に開発されたミーティアは、その後継たるストライク・フリーダムとインフィニット・ジャスティス用にも使用できる。
しかし、ミーティア改良型を製作していた「ターミナル」が潜入していた工作員によって破壊工作を受けた上にプラント官憲に摘発され、二機達できる予定だったミーティアは一機しか手に入らなかった。
このミーティアをどちらが使うかでキラとアスランは譲り合いになったが。
結局エターナルを中心地するザフト離反組と、アークエンジェルを中心とするオーブ艦隊の二手に分かれての突破作戦という性質上、
ラクス・クライン一党の参謀格である元ザフト軍人アンドリュー・バルドフェルドの判断で対多数攻撃兵器がストライク・フリーダムよりも少ないインフィニット・ジャスティスの方にミーティア装備し、その代わり敵陣の厚い方をアスランが突破することに決まった。
その「厚い」とは数のみにあらず。
ラクス・クライン一党の前に立ちふさがってきた最大の敵「αナンバーズ」の二隻の戦艦が配備されているのだ。
もっともキラの進路の方にもサウス・バニング率いる分遣隊が配置されていたのだが、さすがにそこまでは知りようがない。
アスランはエターナルに先行することとなったのだが。

 

「いるな……」

 

肉眼で視認できる位置に、二隻の戦艦が見えた。
どちらも常識を超越した艦形だった。
帆船のような形状で舳先には女神像まである戦艦と。
角の生えた骸骨のような艦首で、しかもその艦首が分離して別の機動兵器の主要構成部分となる戦艦。
特に後者はアスランの常識を完全に逸脱していた。
コンセプトとしてはラクスの乗る「エターナル」の艦首に設置されているミーティアを分離して使用するのと似てはいるが、インパクトが違いすぎる。
そして二隻の戦艦を直衛するかのように、六体の巨大な人型兵器が控えている。

 

「特機が七機もあるのか……」

 

その特機という用語を、アスランは聞き知っていた。
ラクス・クラインの一党の中でアスランほど「αナンバーズ」を知る者はいない。
彼が一時的にザフトに復帰していた時期、乗艦ミネルバには常にその構成員のうち数名が臨時に編入されていたからだ。
そのうちの一機「グルンガスト」だけは、特機の中では比較的小型という事もありミネルバに搭載されていたことがあった。
パイロットもその時と同じならば知っている。
あの男、イルムガルト・カザハラだ。 
肌が合うとは言い切れなかったが、妙に憎めないところのあった飄々とした男のことを、
ほんの数ヶ月前なのに無性に懐かしく感じたアスランは、あわててその思いを封殺すると「敵」を観察する。 
その他の特機は見た事はあるが名前の知らない「ガイキング」
そして初めて目にする「エヴァンゲリオン初号機」「同弐号機」「同零号機」「大雷鳳」「龍虎王」だ。 
あれらを相手にするにはミーティアの大火力が必要だった。
しかしそのミーティア装着状態では、同じαナンバーズの高機動部隊には鈍重な獲物にされてしまった。
硬軟取れ混ぜた編成で攻守共に完璧、穴らしい穴がない。
それがαナンバーズだった。

 

「おかしい」

 

戦況を冷静に分析しているうちに、アスランは自分が今まで根本的な疑問を感じていなかったことに思いをはせた。
あれほどの兵力が、一体どこから生み出されたのだと。 

 

「まさか……」

 

オーブで「再会」したシン・アスカの言葉が蘇る。

 

「αナンバーズのみんなは別の世界から来たんだ」

 

その時はシンの言葉に彼の精神状態が相当危険なレベルになっていると危惧したのみだが。
よく考えればラクスが言うようにデュランダル議長が秘密裏に用意した、と解釈するよりもまだ辻褄があう。
オーブ戦以来、次から次へと現れるαナンバーズの機体の数。
そしてその一機一機が粒揃いのパイロットつき。
これらを「ひそかに用意」出来る力が議長にあっただろうか。
こんな簡単なことを、どうして今まで気がつかなかったのか。
信頼していた議長を信じられなくなった事から視野狭窄になっていたにしても、自分自身であまりにも不可解だ。
まるで見えない手で目隠しをされ、耳を塞がれていたかのように思える。
だがもう遅い。
自分はあの時議長を信じられず、キラやラクスの元に戻った。
二人は一度はカガリを裏切ってザフトに復帰した自分を迎え入れてくれたのだ。
最後までラクス・クライン一党として戦うしか、アスラン・ザラに残された道はない。
たとえシンの言っていた事が正しくてもだ。 

 

「うっ」

 

デブリの向こうから、こちらへと突っ込んでくる機体があった。
その名は「鋼鉄ジーグ」MSよりも一周り小さな異能の特機だ。
その異能のひとつは、アタッチメント交換による変化。 
今のジーグは両腕をドリルに換装している。
こちらに一直線に向かってくる以上、隠れている物の存在に気がついている。
ドリルはそのままデブリを貫通、やむなくアスランはインフィニット・ジャスティスを晒す覚悟でデブリの影を飛び出した。
αナンバーズの目前にだ。
三機のMS系統の人型兵器がこちらへと向かってくる。
万事休す。
降伏は受け入れられるかもしれない。
しかしそれだけはしたくなかった。
命を粗末にするつもりはなかったが、このままでは自分はただの裏切りものだ。
国を捨て、その国に舞い戻り、再び逃げ。

 

(その上命乞いなんて出来るわけがないじゃないかっ)

 

ふと、馬鹿げたことを思いついたアスランは、回線をオープンにして叫んだ。

 

「αナンバーズへ告ぐ、君たちの誰かと一対一で戦いたい」

 

恐らくは一笑にふされるだろうと思っていた言葉に。

 

「いいぜアスラン」

 

返事は来た。
奇しくも先ほど思い出した、イルムガルト・カザハラの声。
しかし通信を送ってきたのはグルンガストではなく別の機体だった。
MS、もしくは同系統と思われる、ガンダムタイプに似た頭部の機体。 

 

「それもあなたの機体なのかイルム?」
「ああ、こいつはヒュッケバイン、どちらも俺が預かってるが、今回の任務にはこっちの方が向いてるんでグルンガストは舎弟に貸したんだよ。
 まあ都合がよかったな、決闘するにはサイズがあわなきゃ始まらないからな…」
「中尉、いいんですか勝手に?」

 

回線から少女の声が聞こえる。

 

「コイツは敵のエースパイロットだ、そいつを俺一人が相手にすることはその分戦力の有効利用になる
「……筋は通ってますね、了解、わたし達は空域警戒に戻ります、いくわよラト」
「はい姉様、中尉、お気をつけて」
「お前らもな、さて、そういうことだから、お前さんも他の敵を見つけてくれ、宙」
「ちっ、しょうがねえな、負けんなよイルム中尉」

 

イルムの列機二機と、ジーグは二機の側を離れた。

 

(どうしようもないな、もう)

 

自分が先陣を切って突破するはずだった地点で、敵に与えた損害はMS三機のみ。
この「決闘」に勝ちもう一機を倒したとしても焼け石に水。
無傷の大型特機七体を始めとする敵陣の前にエターナル部隊は砕け散るだろう。
ラクス一党としてのアスランはこの状況に絶望した。
一方で、狩りの獲物のように追い回されて果てるのではなく、
一対一の戦いで命を散らせるかもしれないことは、戦士としてのアスランにとっては僥倖だった。

 

(議長、あなたの言うとおりだ……)

 

結局すべてデュランダルが正しかったかどうか、それはわからない。
しかし少なくとも彼が言った「アスラン・ザラは戦士であり、
戦士として生きるのが幸福なのだ」という言葉は真実だったなと納得していた。

 

「いくぜアスラン」
「受けてくれてありがとうイルム、だが負けはしないっ」

 

ラクスのことも、カガリのことも、一緒に脱走してきたメイリンのことも、亡き両親のことも。
今のアスランの脳裏からは消えていた。
キラ・ヤマトのこと。それすらも。

 
 

前へ  戻る  次へ