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鉄《クロガネ》SEED_2-1

Last-modified: 2008-02-28 (木) 20:38:15

「どうだ?ここまでたどり着けそうか?」

 

ネオ・ノアロークはブリッジ正面のモニターに映るスティングに若干の心配をこめた声で言った。
この顔の上半分を仮面で覆った男が彼らの上司であり、この地球連合軍第81独立機動群、通称『ファントムペイン』の指揮官でもある。
彼らの母艦であるこの『ガディー・ルー』は情報収集を重視して建造された特殊な艦である。
最新艦故、それなりの火力は有してはいるが、相手に真正面から挑むようなマネはあまりできない。
そのため、奪取した三機のG型を強引に回収するわけにもいかず、こうしてアーモリーワンのレーダー圏外ギリギリに身を隠しているのである。

 

「正直、心もとないな。アウルの機体の損傷が激しい。追撃されたら俺達だけじゃ捌ききれないぞ」
「ま、機体のことに関しちゃ、別に心配はしていないさ、三機全部手に入っただけでも百二十点満点なんだ。
 一機くらい乗り捨てても別にかまわんだろう」

 

ネオは軍人としては言ってはならないようなコトを平然と言っている。
それでもスティングはこの結果に怒りを抑え切れなかった。確かに作戦にイレギュラーが多すぎた。
確認されていない二機のMS、そしてそれらを操るパイロット……
しかし、作戦に想定外の事態が起こることは半ば当然のことである。
対応できなかった自分達、そして現場を指揮していた自分自身のミスである。
そんなスティングの心情を読み取ったのか、仮面の男は口元を緩ませた。

 

「そんな顔をするなよ、誰もお前を責めたりしないさ。
 悪いのはソースに対し何の裏付けもせずに齧り付いたアチラさんの方なんだからな」

 

ネオは艦長席に座る男のほうに顔を向けた。

 

「リー!! 『アレ』の起動状況は?」
「出力調整に手間取っていますが、短時間の起動には支障は無いそうです」
「よし上出来だ。スティング、お前らはそのまま『ガディー・ルー』に直行しろ、尻拭いはこっちでやっておくさ」

 

そう言うが早いかネオはその長身を軽やかに翻すとハンガーに向う。その仕草はまるで新しい玩具を自慢するようである
そう、彼は実際に新しい玩具を自慢しに行くのだ。

 

『彼等』から与えられた玩具を……

 
 

「申し訳ありません、三機とも取り逃がしてしまいました」
「それについては、此方側の警戒の甘さが原因なのだ。パイロットである君だけが負うではない。
 既に周辺から追撃部隊が出ている、後は彼らに任せて一度帰還したまえ」

 

申し訳なさそうに頭を下げる青年に対し、フォローを入れると通信を切る。

 

「彼には厄介な役を押し付けてしまったかな?」

 

部屋の隅のソファーに座るデュランダルは、デスクに座ったレーツェルに訪ねた。

 

「新兵のフォローは兵士が必ず通らなければならない道だ。
 それに先程に彼に言った通り、此度の事態は我等の危機管理能力に問題があったのだ。彼もそのことを理解しているだろう」

 

そう、全ての問題はザフト全軍の危機管理の無さにある。
辺境とはいえ、このアーモリーワンはプラント圏内、しかも軍事基地まで存在しているコロニーだ。
そのコロニーにあろうことか襲撃まで受け、しかも最新のMSまで強奪されたのだ。油断のしすぎも良いところである。

 

「民兵上がりの自衛組織とはいえ、これは少々深刻だな…… ところで諸君、各セクションの報告と行こう」

 

思考を中断させ、部屋を見渡す、ここはデュランダルと教導隊が会議を行なう『部屋』である。
厳密には部屋ではないのだが、この場所は教導隊とザフトでもデュランダル他数名しか存在を知らない密談にはもってこいの場なのだ。

 

「シン・アスカのインパルス、及び僚機のザクはミネルバに帰還した。既に修理とデータの処理および解析を開始している……」

 

部屋の中央で腕を組んで立っているゼンガーは無表情のまま現在の彼らの状況を端的に報告した。

 

「これで、『インパルス』システムのシルエット換装機能は完成に近い状態。ということかね? 」
「左様……」

 

デュランダルの問いにゼンガーは静かに頷いた。

 

「次は先程保護したオーブの使者の件だが、こちらに面会を求めている。」

 

壁に寄りかかったままの長い紫の髪の男が続けて口を開いた。

 

「恐らく、先程の事件についても情報を求めてくるだろう。恐らく例の事件との関連性も」
「『オーブ議事堂爆破事件』か……」

 

レーツェルは静かに呟いた。

 

「そうだ。あの事件でオーブは多くの人的被害を被った、ただでさえ親連合派の力が強くなりつつあったところにテロ事件、
 中立を守りたい代表としては此度の会談をなんとしても成功させたかったのだろう」

 

現在のオーブの状況は実に不安定なものになってきている。先の大戦により疲弊したかの国は戦後、連合による干渉を強く受けていた。
そのため、オーブ政府内の親連合派の影響が強くなっているのである。

 

「そして現在における最大の問題は……」
「三機の強奪された『G』型だな。もうそろそろ追撃隊から報告が上がるはずだが……」

 

デュランダルの声は突如室内に入ってきた男によって中断された。

 

「カイ少佐……」
「おいおい、今の俺は『少佐』じゃないぞ。それより、まずいことになった」

 

入室してきた日系の中年らしき男、カイ・キタムラはデュランダルの方に向き直すと手にしたレポートらしき紙を読み上げた。

 

「追撃隊が敵部隊と接触、交戦…… 全滅した模様です」

 

カイの報告にしばしデュランダルは拳で口元を隠したまま無言なり

 

「……不味いな」

 

たった一言呟いた。

 

「敵の数は?」
「確認されたのは一機だけだ。それも『今まで確認されたことの無い機種』だったそうだ」

 

その一言でこの場に居た全員が緊張の面持ちになった。
追撃隊には各コロニーからザクファントム等の最新鋭機18機とナスカ級を当たらせたはずだ。
いくら『G』型といえど短時間で全滅させることは不可能に近い。ともすれば……

 

「奴らが…… 行動を始めた様だな」

 

ギリアムが苦虫をかみ締めたような顔をする。先手は取られてしまった。
しかも強力な一撃…… 巻き返すにもこちらの準備は未だに整っていない。パイロット、機体共に。

 

「少しプランのスケジュールを早めねばならないようだね」

 

そう言うとデュランダルは静かに立ち上がると彼等の顔を見渡した。

 

「ミネルバを発進させよう、現状で追いつく可能性のあるのはあの艦だけだ、それに、彼らばかりに美味しくされるのも癪だ。
 そろそろ反撃と行こうじゃないか?」

 

デュランダルはそう言うと『艦長室』を退出した。

 
 

「ミネルバを発進させる!ホントなの!?」

 

ルナマリアは驚いた様子でレイを見返す。

 

「ああ。どうやら追撃隊は全滅したらしい。この付近に残った戦力で奴らに追いつけるのは……」
「俺たちだけ。ってことか」

 

レイのことばをシンが引き継ぐ。どうやら相当頭にきているようだ……
いや、シンだけではない。この場にいる殆どのクルーは先程の襲撃に対するリベンジマッチを望んでいるのだ。

 

「今度こそ『コイツ』で……」

 

シンは自らの愛機が背負っている巨大な鉄の棒状の武器を見上げた。そう、コイツがあれば、どんな奴にだって負けはしない!!

 

「満足するな、シン・アスカ!! いくら先の戦闘で『後の先』を見極めたとしても、次に通用するとは限らん!!」

 

高揚するシンの心の内を見透かしたように、強烈な威圧感を伴った声が格納庫に響き渡る。瀑布の如きその声を聞いた時、
シンの心に芽生えていた慢心の二文字は綺麗さっぱりに吹き飛ばされてしまった。

 

「教官……」
「今回の敵はただ機体に対し不慣れだったため優位に立てたかもしれん。
 しかし、次に立ち塞がる奴は先の戦いと同じ動きをするとは限らんのだ。」

 

先程とは違い小さく、だが威圧感はそのままでゼンガーは続ける。

 

「ミネルバは直ぐにアーモリーワンを離れる。それまでに、今までのモーションパターンを纏めて応用を利かせておけ。
 でなければ、今後の戦いを生き抜けることは適わん」

 

それだけ言うと、シンたちに背を向け歩き出した。去り際、

 

「『後の先』見せてもらった。次に稽古を付ける時は。覚悟しておけ」

 

その言葉を聴いたシンは『あの日』以来の達成感を感じた気がした。
しかし、その感情は文字通り一瞬であった……
『あの日』の悪夢の象徴が目に留まったからだ。

 

忌まわしき『アスハ』の姿が

 
 

「で、彼には連合に新型の情報をリークしてあげるのと、『ADO-2』の実戦データを取ってもらうお仕事をしてもらっているわ」

 

「…………」

 

「ご不満?」
「奴の能力に関しては問題ない。しかし……」
「彼の性格? それこそ問題無しよ。彼、主義主張関係無しに自分の求めるものに関してしか考慮しないから……
 それにあの子達の面倒もしっかりみてくれるし」
「ブーステッドか…… もうあの様な失敗作を出すことは許されんぞ」
「あの子達とナンバーズは全く異なる存在よ。
 彼等は同一ロットに対して連帯感…… つまりある種の家族としての結束を持たせたんだから」
「それも、あの男の齎した『アイスドール』からの遺伝子データ……というわけか」
「……その名で読んだらあの子、怒るわよ?」
「事実をして語ったまでだ。それにしても、不完全なシステムにより呼ばれた男……か」
「まるで運命?」
「私は神など信じん、ただ在るのは原因と結果のみ」

 

そうだろう…… ヘリオス。

 
 

シン・アスカは自室で唸っていた。発端は二十分ほど前、現オーブ首長国連邦代表、カガリ・ユラ・アスハを
MS格納エリアの上段通路にて見つけてしまったことから始まる。
シンは先の大戦中まで前述のオーブという赤道付近に点在する島国の連合国に家族で住んでいた。
しかし戦争後期に起きたオーブ侵攻作戦により父と母は死に、妹も左腕を残して閃光に消えた。
家族を奪ったオーブのアスハ、『戦争を終結した』とかでもてはやされた英雄気取りのアスハの娘……
気がついたらシンは彼女に対して怒りの声を上げていた。

 

「この偽善者!!」、「英雄気取り!!」あらん限りの力で叫んでいたら、カイ教官が近付いてきて……

 

「いってぇ……」

 

拳で三mぐらい吹っ飛ばされた。その後ヨウランとレイに自室まで引きずられ、

 

「コンディションレッドが発令されるまで頭を冷やせ」

 

というわけである。

 

「……教官は解ってないんだ、アイツ等は俺達を裏切ったんだ、オーブは戦争なんかしないっていったくせに!!」

 

シンは一人誰と無く呟いた、はずだった……

 

「いや、カイ教官は正しいことをした、少なくとも先程のお前の行動よりはな」

 

突然シンの背後から声がした。振り向くと紫の長髪の男が壁際で腕を組んで立っていた……

 

「うわぁっ!! 誰だアンタ!! どうやって入ってきた!! なんなんだ一体!!」

 

一瞬の間をおいてシンが後ずさる。
男はシンをちらりと見ただけで一人語り始めた。

 

「オーブという国家は戦争をしないという理念の基に成立していた」

 

男は再度シンを見つめた…… どうやら同意を求めているらしい…… シンは慌てて首を振る。

 

「しかし、その理念は平静の世にあって始めて機能するもの。
 なぜなら相手にとってそんな理念など、何の脅威にもならないからだ。
 まして相手は巨大軍需産業体をバックにした強大な国家だ…… 正義など後から如何様にでも創れるからだ」
「正義が後から創られる……」
「そうだ。そしてオーブはその理念と当時の首長、ウズミ氏のある種賞賛すべき強靭なる精神によって、攻撃を受けることになる」
「なんで、強い精神のおかげでオーブが焼かれなきゃいけないんだよ!?」

 

精神とは強く在ればこそ良い方向に働くものではないのか?シンは男の発言に疑問を拭い切れない。

 

「例を出そう…… ある国にリーダーが居た。強く賢く、強い意思を持った男だ。男は長く続く平和に危機感を感じた」
「何でだよ?平和が続けばみんな幸せだろう?」

 

シンのまっすぐな答えに男は端正な顔に少し悲しい顔を浮かべた。

 

「平和…… という言葉には美しい響きがある。
 しかし、その裏では人口問題、技術の低下、人々の堕落など、
 上げればきりが無いほどの愚行が行なわれているものだ」

 

シンは愕然とした。しかし考えてみればそうなのかもしれない。とシンは感じた。

 

「男は誠実すぎた。そして考えた。戦争が続けばいい、戦争が続けば技術は進む、腐敗も起きない…
 男は高いカリスマを使って世界に戦争を挑んだ。
 人が大勢死んだ。強靭なただ一人の純粋な男が考え付いた方法で…… 人類を存続するために」

 

男は語り終えた。シンはうつむいたままだ。なにせ与えられた情報が多すぎるのだ……

 

「どうやら話しすぎたな、元に戻そう…… 一人の正義は時として不幸を創る。
 オーブの場合はウズミ氏が自国の理念を頑なに通そうとした事、
 そして戦場の狂気を感じることが出来なかったことだ」
「戦場の…… 狂気」

 

シンは誰にとも無く繰り返していた。戦場の狂気……いつか自分も知ることになるのだろうか?

 

「どうかな? この中で彼女に関係することは有ったか?」

 

シンははっと気付いた…… そう、オーブが焼かれたことにおいて、カガリは何も関係が無いのだ。

 

「もちろん、お前のような家族を失った人間の悲しさや無力感も解る。それに代表もアスハの一族としての責任がある……
 先程のお前のような中傷を言われることも有るだろう。
 だがそれでも彼女は罪を償って行くのだろうな、オーブを託された者として……な」
「……俺、あの人に大変なことを言っちゃったんだな」

 

シンは俯いたまま口を開いた。自分が何も知らず、ただ怒りばかり吐き出していたことに若干の後悔を感じていた。

 

「言い方は悪いかも知れんが、過ぎたことはもうどうしようも無い。後はおまえ自身がどう受け止め、どう立ち向かうかだ」

 

男が言いった直後、艦内に放送が入る、どうやら敵を捕捉したらしい……

 

「さあ、謹慎は解かれた……ここからはお前の戦いだ。生きて帰ってカイ教官に謝って来い!!」
「はい!!」

 

そう言うとシンは駆け足で自室を後にする。残された男、ギリアムは一人過去に思いをはせていた……
死は償いとはならない…… 生きることこそ償いなのだ。そうだろう…… コウタロウよ!!

 
 

ガシャン、という小気味良い接続音と共に六つの子機が両肩の接続端子にドッキングされエネルギーを再チャージする。
マゼンダに染められた機体の周りにはMSや戦艦だったものの成れの果てが数百もの残骸となってかつての主達の墓標となっている。

 

「短時間運用には支障は無いみたいだな……っと」

 

彼、ネオ・ノアロークの新しい『玩具』…… 『ADO2』は二つ目を模したセンサーで周辺を見渡すと生存機の有無をチェックする。
無論この機体の目撃者を生きて帰すわけには行かないためである。
案の定残骸の陰に生き残ったザクが脱出の機会を窺っている……

 

「悪いが、生きて返すわけには行かないんでな」

 

そう呟くと左腕に装備した荷電粒子砲『ハルバード・ランチャー』を構え、トリガーを引く。
暴力的なエネルギーを内包した渦は残骸ごと敵を消滅させた。
一瞬の閃光の内、ネオは改めてこいつの馬鹿らしさを感じ取っていた…… この機体はMSではない。
全高は約21メートル、標準的なMSのサイズを祐に超える大きさである。
そしてこのパワー、搭載される核融合炉の生み出す高出力はこの世界のパワーバランスを覆すほどの可能性を秘めている。
パワ-・武装・装甲の何もかもが『有り得ない』、存在してはならない機械なのだ。そう考えた所でネオは皮肉な事実に気がついた。

 

「なるほど…… 『存在しない部隊』に『存在しない人間』、
それに『存在しない兵器』か……あのオッサンも洒落たことを考えるね。そう思わないか、お前も?」

 

新しき鋼鉄の相棒は黙したまま何も答えない。ネオは仮面に隠された顔を不満そうにしてモニターを小突いた。

 

「全く、アシュセイバーなんて妙な名前が付けられたもんだなぁ、お前も……」

 

その時、センサーが遠方に熱源を捕らえた。瞬時に戦場の感覚に自らを馴染ませる。
数は一機、もしくは一隻…… 熱源の分布から恐らく後者だろう。

 

「追撃隊は足止めだとしても、早すぎるな。ナスカ級じゃ無い、例の新型か? ……リー!!」

 

先に撒いておいた中継器を使い即座にガディー・ルーに通信を送る。一秒も経たない内に神経質そうな副官の顔が現れた。

 

「敵の新造艦だ!! 予想より早い、相当な足自慢な様だな…… 回収した三機は?」
「全機の回収は完了。カオス、ガイアの二機は概ね修理を完了しております、ただアビスの方は右腕の欠損が大きく、代用は難しいと」
「構わん、いざとなれば砲台代わりになればいい、ここで後方の憂いを断つ!!」

 
 

格納庫内で人があわただしく駆けてゆく…… 流れに逆らい、シンはコア・スプレンダーの搭乗口に何とかたどり着くことが出来た。
コア・スプレンダーは迅速な発進、合体を行なう為、通常とは異なったカタパルトからの発進となるのだ。
専用カタパルトは現時点ではこの「ミネルバ」にしか搭載されていない。
ここで、この艦、「ミネルバ」について説明をしておこう。
この『ミネルバ級(クラス)』一番艦「ミネルバ」は本来は新型万能戦艦として設計されたものを。
ギルバート・デュランダルが構想する『教導隊』構想による特殊作戦用MSを運用する為の艦として再設計された、万能強襲邀撃艦である。
彼等教導隊が齎したデータにより、特殊機関『テスラ・ドライブ』や大型プラズマジェネレーターを試験的に搭載し、また重力下の砲撃戦を考慮し艦首に陽電子砲を搭載している
こうした半ば強引とも呼べる改修のためか、その膨大な機密のせいか、艦内スタッフも教導隊内から派遣されたスタッフが多く居るのも特徴である。
艦長はタリア・グラディス、副長はアーサー・トライン
そして、戦術オブサーバーとしてレーツェル補佐に当たっている。

 

「敵艦、距離二万!!会敵予想時刻まであと30!!」
「コンディション・レッド!!パイロットはMSの登場準備!!」
「了解!!コンデション・レッド発令!!」
「ブリッジ遮蔽、全戦等システム起動!!」
「全戦等システム、オールグリーン」

 

ブリッジ各員が職務を全うすべく慌しくなる。

 

「艦長…… どうかね?我々が作り上げた艦(ふね)は」

 

艦長席の左前方に座るレーツェルはその様子に満足しながらタリアの方を向いた

 

「もう何回か外に出ていますが、驚きますわ…… 例の『テスラ・ドライブ』という機関のおかげかしら?」

 

タリアは驚き半分、疑問半分な口調で答えた。

 

「艦長、『テスラ・ドライブ』の詳細な情報はAAの機密に属するものだ…… 私たちがここで口に出来るものではないんだ」

 

艦長後方のサブシートに座るデュランダルが口を挟んだ。

 

(AAクラス、ニュートロンジャマーと同クラスの機密か…… 何にせよここで言える秘密じゃないよなぁ)

 

全くタイミングが悪すぎる。機密を満載したこの艦の初出撃によりによって他国のVIPが紛れこむなんて……
艦長席の前方に座るアーサーは艦長席後方に座るオーブの代表を見ると小さくため息をついた。
だが、事態はアーサーの予想する以上の事態となってゆくのだった

 

「ゲイツ、ショーン機・ゲイル機発進完了を確認、続いてザク、ルナマリア機・レイ機発進どうぞ!!頑張ってね、お姉ちゃん!!」

 

パイロット管制を担当するのはメイリン・ホーク、ルナマリアの妹である。

 

《任せときなさい!! ルナマリア・ホーク、ザク!! 出るわよっ!!》
《レイ・ザ・バレル、続けて出るぞ!!》

 

艦橋の正面スクリーンからミネルバを飛び出すニ機のザクが見える。メイリンはその様子を心配そうに見つめている……

 

「心配するなって!! 皆無事に帰って来るさ、君が心配な声だと皆も心配するよ!!」

 

メイリンの心象を察したのかアーサーが声をかける。その声に発破をかけられたのか、メイリンは目元を拭うと管制を続ける。

 

「中央カタパルトを展開、コア・スプレンダー、チェスト、レッグの接続を確認」

 

スクリーンのサブモニターにシンとカイの顔が映る

 

《シルエットは『ソード』でいいんだな?》

 

若干暗い表情のシンが口を開きかけた瞬間にカイはそれを遮った

 

《言い訳や弁明は後で聞いてやる…… 今は目の前の戦場に集中しろ。必ず生きて帰って来い。いいな!!》
《ハイッ!! シン・アスカ!! コア・スプレンダー行きますっ!!》

 

中央カタパルトから戦闘機と胴体、脚部、武装の各パーツが発進する。
前回とは異なりオートでインパルスに『合体』すると戦列に加わった。

 

「敵は!?」
「前方4000に一機、後続から三機、追撃隊を壊滅させたのは恐らく前方の一機だろう」

 

シンの問いに対しレイは母艦から得たデータを元に判断する。

 

「俺たちと交戦したG型はかなりのダメージを受けたはずだ。奴らに追撃隊を相手にする余裕は無かったはずだ」
「ってことは目の前に居るのが」
「敵の主力ってワケね……」

 

パイロット達に緊張が走る…… 敵は得体の知れない新型なのだ。
どのような攻撃を行い、どういった撃が有効なのか検討が付かない。正に『出たとこ勝負』なのだ

 

「よし、シンがフォワード、ルナマリアがバックアップ、ショーン、ゲイルはルナマリアのガード、俺はシンの援護に回る」
「「「「了解!!」」」

 

各MSがそれぞれのフォーメーションに就いてゆく……
それをモニター上を見ていたアレックスは自らの疑問を隠すことは出来なかった。

 

「通常のMSのフォーメーションは三機一グループの小隊制のはずだ……」
「興味が有るかね?」

 

思わず口に出すアレックスにデュランダルは口元を綻ばせながらアレックスの方を向いた。
その顔は他人に宝物を自慢する少年のそれに良く似ていた。
アレックスが恥ずかしさを隠す様に咳払いを一つすると、デュランダルはしてやったりといった表情をした。

 

「議長である私が言うのも難なのだが、もはや連合と我々プラントの技術的な優劣は付けがたいものになってきている。
 ハードが同等ならばどこで優位に立つか?」
「ソフト…… スペックを引き出すパイロットと、それらが扱うスキル」

 

アレックスは思わず答えてしまう。アレックスの呟きを聞いたデュランダルは満面の笑みを浮かべた。

 

「その為の『教導隊』だよ。流石は元レッド…… 良い洞察眼をお持ちだ」

 

デュランダルの呟きは、アレックス、そして傍らに座るカガリにしか聞こえないものだった。
しかし、その言葉の意味は彼らを驚愕させるには十分であった。
MS隊の交戦開始の報を聞き、すぐさまスクリーンに向き直るデュランダル。
アレックスは彼の後姿を唯見ていることしかできないでいた。

 

「くそっ、何なんだコイツっ!!敵は一機じゃ無いのかよ!!」
「あわてるなシン!! ドラグーンだ!!」
「にしては精密すぎるわよ!! 人が乗ってるんじゃないの!!」

 

シン達ミネルバMS部隊は先程からドラグーンによる物らしき攻撃を受けていた…
360度雨霰と絶え間なく降るビームの雨をシンやレイ、ルナマリアはギリギリで回避してゆく。
既に二機のゲイツは撃墜さている…… 生き残っているのは彼等三人のみである。
敵機を射程内に収めようとしたとした直前、ルナマリアのフォローに付いた二機のゲイツが『同時に』落とされた。
敵が無線式誘導兵器使う為にこちらを引き付けていたのだった。
作戦に気がついたのは既にそれによる包囲網が完成してからの事だった。
現時点の状況は防戦一方、最悪ジリ貧で全滅もあり得る状態である……

 

「ショーンとゲイルはっ!! ……脱出っ!! ……出来たかしらっ!!」
「判らんっ!! ……彼らをっ!! ……信じるしかっ!! ……ないっ!! シン!! 左八時の方!!」
「うおっ!! ……助かった!! サンキュー!!」
レイは自らの機体を操りつつ的確に他の二機に指示を下す。
理解は不能だが、何故かレイには先程から敵の考えているイメージが伝わってくるのだ。

 

(このまま敵の増援が来ると…… いささか不味いな……)

 

レイは背中を走る冷や汗を感じながらも、冷静にコクピット内の戦術コンピュータにデータを入力する……
そう、自分が冷静にならねば誰が二人を抑えるのだ!?
レイ・ザ・バレルは自分の頭の中に入ってきた情報を素早く、的確に処理していく……

 

「ルナマリア!!今から座標を送る!!『ソイツ』でなぎ払え!!」
「……なんだか良くわからないけど、アイツをどうにかできる訳?」
「シンも俺もこれ以上回避し続けるのは無理がある、一気にカタをつけるぞ。シン、合図でルナマリアの射線軸から退避しろ!!」

 

「……ポイントに入った、今だ!! ルナマリア!!」

 

ルナマリアのザクの背部左側、本来ならばオルトロス用のエネルギータンクが設置されている其処に、彼女の『秘密兵器』が存在する……

 

「落っちぃろおおおっ!!」

 

二つ折りになった砲身を展開し、給弾ベルトを接続する。
全長15メートルにも及ぶ巨大な回転砲身式モーターキャノン…… 所謂ガトリング砲である。
オルトロスとガトリング砲を両脇に構えたまま、指定された座標に火力を叩き込む。遠慮などしない、してやらない。
過剰な火力を叩き込まれた『ソードブレイカー』は間髪置かずにその半数を失うこととなった。

 
 

「あちゃ~っ調子に乗りすぎたかな?ブレイカー1、5、6を接続。
 『ドラグーン』より火力と機動性はいいが、その他の火器システムが一時的にダウンするのはどうかと思うんだよな~」

 

ネオの駆るアシュセイバーの最大の特徴、脳波操作式無人攻撃システム『ソードブレイカー』
これは未だ『彼等』の齎した技術とこちらの技術の融合が上手く行っていないことの表れでもあるため、
ただの兵士であるネオにはどうすることも出来ないのだが。

 

(それにしてもアレは一体!?)

 

彼は先程から頭に響くものを感じていた。それはあの男と相対した時に感じていものに酷似していた……

 

「考えている暇は無いな、今は……」

 

アシュセイバーは腰にマウントしてあるビームサーベルを抜き取ると、自機に対しまっすぐに突っ込んでくる機体に迎撃を仕掛けた。

 
 

弾丸のごとく突進するインパルスはデブリに浮ぶ赤紫の機影を射程に納めた。

 

「コイツが追撃隊をやったのか!?」

 

正体不明の機体はサーベルを構えたまま左に構えたライフルを連射する。
シンは四肢とスラスターを巧みに操り、自らのレンジである接近戦に持ち込もうとする……
が敵機の背後から新たなMSが現れた。

 

「カオス、ガイア……敵の増援か!?」

 

一機に手間取りすぎたため、増援が間に合ってしまった…… シンは奥歯を噛締めた。

 

「ネオ!!大丈夫!?」
「心配かけさせやがって!!」
「スティング、ステラ、間に合った様だな。アウルは!?」
「大丈夫だ、アイツは留守番してる」

 

宥めるのに苦労したけど、と付け加える。それを聞いたネオはあいつらしいなと苦笑を漏らす、

 

「さあ、仕切りなおしだ!! ステラ、お前は赤い機体、スティングは白の指揮官機、俺は例の新型だ!!」

 

ステラは頷きスティングは不平を漏らす、どうやら先程のリベンジを希望のようだ。
年上の言うことは聞いとけよ、と諌めると三機は散開した。

 

「さあ来い新型クン!!コイツは『ソードブレイカー』だけじゃないんだぜ」

 

従来の機体を凌駕するスピードで駆け回るマゼンダのボディはシンのインパルスを翻弄していく……
インパルスも腕に装着されているビームキャノンを撃つが、機体に当たる直前で霧散してしまう。

 

「なんで!! ビームが効かないのか!? ……だったら!!」

 

シンはインパルスの背中に装備された巨大な鉄の棒を抜き取った。
全長にして15mほどの『ソレ』は一見すると、大型のビームライフルとも取れるだろう。
しかしソレはビームライフルではなかった……

 

「展開!!」

 

鉄棒の上半分がスライドし、長さが倍になり、根元から先端までに2本が並列した長いビームの弦が張られる、さらに先端からコーティングされた流体金属の刃が現れる……

 

大型対艦用ビームブレイド『エクスカリバー改』開発コードはお馴染みの

 

「『斬艦刀』で…… バリアごとぶった切ってやる!!」

 

光の塊を下段に構えたインパルスは背部の展開式ブースターで一気に距離を詰めると敵に踊りかかった!!

 
 

差し迫るガイアに対して、紅のザクは弾幕を張り続ける。
背部換装式の『ウィザード』に搭載されたレールガンやミサイルポッドなど
18メートルクラスのMSおいて過剰ともいえる程の砲身を備えたこの機体に対して
高機動による白兵戦を得意とするガイアは、敵機との距離差も相まって自らの得意とするレンジに持ってこれず、
けん制しつつ回避に専念するしかなかった。
だが裏を返せばルナマリアはガイアに対し致命的なダメージを与えては居ないという事を意味していた。

 

「「ええぃ、鬱陶しい!!」」

 

一進一退の攻防が続く中、奇しく二人のパイロットは相対する敵に対し同時に全く同じ感想を述べていた……

 

(このままじゃらちがあかないわ……)

 

いい加減弾薬も怪しくなってきた、そろそろ勝負を決めないと味方のバックアップどころか弾切れになった所を目の前の敵機にやられるがオチになってしまう。
ふと、ルナマリアは先日組み込んだあるプログラムを組み込んだ事に気が付いた。
ソレは当人からすれば荒唐無稽も良い所なのだが、享受した本人からすれば「使いどころは必ずある」だそうだ……

 

「ダメで元々…… やってやろうじゃない!!」

 

ルナマリアは手元のコンソールから特殊行動パターンのプログラムを起こすと、
火器管制システムの標準調整をオートからマニュアルに変更する。

 

「さあ…… 来なさい!! 捩じ切ってやるわよ!!」

 

その覇気を感じたか、はたまた弾幕が止んだことを好機と感じたかのか、
ガイアはその姿を四肢獣に変え、ウイングから青白い炎を引きながら突撃した。

 
 

「『緑撃破プログラム』!?なんすか?コレ」

 

なんともネーミングセンスの無いそのプログラムの入ったディスクを持ちながら、ルナマリアは自らの前を歩く女性に問いかけた。

 

「まぁ、もっときなって!! いつか必要になるから」

 

褐色の肌の女性は人懐っこい笑みを湛えたままルナマリアの前を歩いていく。
ミネルバに乗艦する直前にカーラと名乗る女性に呼び出され、
このアーモリーワン第六工場ブロックに来たのは教導隊との演習お終えて直ぐの事であった。
彼女は彼等教導隊直属のパイロットであり、主に砲撃戦のデータ収集と火器システムの構築を任されているという。

 

「でもあたし、MSでの射撃…… あんまり得意じゃないですし……」

 

ルナマリアは何故自分が選ばれたのか疑問だった。
彼女は士官アカデミーでも優秀であったが、事MS搭乗時の射撃センスは、お世辞でも良いとは言えないものであった。
しかし、その他の技能で彼女と同格もしくは上回るパイロットは同期の中では、
シン・アスカとレイ・ザ・バレルのみであったことも又事実であった。
ルナマリアの疑問を聞き終えた後、カーラはルナマリア自身の操縦データを見た。

 

「で、ルナマリア。あんた…… 『生身での』射撃の成績はどうなの?」

 

何かを含んだ口調でカーラが問いかけた。

 

「自慢じゃ無いですけど、アカデミーではトップでしたよ」
「じゃあ才能はあるわけだ……」

 

ふとカーラが立ち止まる、気が付くとルナマリアの目の前には巨大なゲートが聳え立っていた……
褐色の女性はルナマリアに向き直る。その顔は先程とは打って変わり、真剣そのものである……

 

「もし…… あんたがこれ以上の力を欲しがるなら、ココを開ける。
 そうすれば、アンタは力を手に入れられる。多分『アンタが大切に思っている人』を守ることが出来る……」

 

先程とは違う彼女の雰囲気にルナマリアは無意識に唾を飲みこんだ。気が付くと、扉のその奥から異様なプレッシャーを感じていた。

 

「でもそれは、アンタが背負える以上の重さを持っている……
 この重さに耐え切れるかは、あんた自身の強さと、アンタを支えてくれる人間の多さに懸かっているんだ、」
「…………」
「アンタはコイツを使いこなすことが、出来るかい?」
「あたしは……」

 

ルナマリアはただ一言だけ言い、その言葉にカーラは満足したように微笑み、扉を開いた……

 
 

「来たわね!!」

 

ミネルバMS隊に所属するザクの背負った『EXウィザード』は各パイロット用に調整された専用のバックパックである。
コレはパイロットの適正、要望などから最適とされる武装を選別し、各員のスペックを最大限に引き出すのを目的とした試作装備である。

 

目標との相対距離…… 四百
システム起動…… コンデンサ容量、作動範囲内。

 

ルナマリアの『EXウィザード』は遠距離からの直接砲撃支援『ダイレクトサポート』に特化した物である。
MSの背中を甲羅のごとく覆うこの装備は、6つの火砲を器用に折り畳んで詰め込んだ正に弾丸と砲身の塊とも呼べる代物だ。
当然、ザク自体から得られる出力も限りがあるため、機体各所に増槽とスラスタを追加し若干のカスタマイズされている。

 

距離…… 三百
プログラム…… 起動!!

 

6つの砲身を構えた巨人の単眼が紅く染まり、肩のミサイル発射筒から白煙が吹き上がる……
その数六つ、飛び掛る瞬間の出鼻を挫かれたガイアは人の姿に戻り、頭部のバルカンを巧に使い迎撃してゆく。

 

「かかった」

 

その瞬間、ルナマリアは勝利を確信した。
彼女から預かったプログラム…… それは所謂「流し撃ち」のデータである。
ミサイルを予め想定したパターンで飛ばし、敢えて逃げ道を作り上げておく
そして相手が進路上に入ってきた処で…… ルナマリアは引き金を引いた

 

ステラの駆るガイアの異変と、パイロットの悲鳴をいち早く反応したのはスティングであった。
それが彼の災いであり、彼の命を救った要因でもあった。
スティングはステラの声を聞いた瞬間一瞬だけ機体を向けた
だが、そこにあったのは機体を醜く凹凸にされたガイアの姿であった……
思わずステラの名を叫ぶスティング、その直後、彼のカオスの背面を閃光が掠めていった

 

「つっ!!」

 

視線の先にロングライフルを構えたままの白いザクはモノアイを妖しく光らせながら、薬莢型のカートリッジを排出した。

 

「……上等じゃねぇか」

 

カオスはビームライフルを連射しながら機体の背部にある自立機動ポッドを射出した。
トリッキーな動きで攻撃するポッドに対し白いザクは的確に攻撃を回避しながら機械の様な正確さで反撃を繰り返す……

 

「コイツ…… ホントに人間かよ!?」

 

今更ながらスティングは相手のパイロットの反応の速さにある種の恐怖感を覚え始めていた。

 

「こうなったら一か八かだ!!」

 

そう決心すると、ポッドを直接相手に当てるコースを取った。対するザクは回避しようとするが、
反対側から現れたポッドの体当たりを喰らい、大きくバランスを崩す……

 

「取った!!」

 

破壊されるポッドを盾代わりに至近距離まで近付いたカオスはシールドとライフルを捨てて、
腰のラックからビームサーベルを両手に構えそのまま大上段の構えのまま一気に振り下ろす。
いや、『振り下ろそうとした』といったほうが良いか……
カオスのコクピットの前面にビームの刃が形成されていた。
白いザクの構えたライフルの銃口の下から銃剣のごとくビームサーベルが突き出ていた。
互いに一歩も動けぬ状態が続くと思われたその時、一本の閃光が二機の間を割った。

 

「ネオか!!」
「スティング、ステラを連れて撤退だ!!」
「でも!! こいつらを野放しにしておくのかよ!!」
「返り討ちで全滅…… なんて格好悪いだろ。
 安心しろ、例の作戦が第二段階に入った。コイツらとはそこで決着をつければ良い!!」

 

なおも食い下がるスティングに対し、ネオは安心させるように言った。

 

「……判った」

 

よし、良い子だといわんばかりの笑みを返すとネオは通信を切った

 

「全く……ザフトもトンでもないものを作ったよなぁ」

 

アシュセイバーのコクピット内でネオはひとりごちる。彼の愛機の左肩はごっそり削げ落ちていた。
先程スティングを援護した瞬間の一瞬を付かれ、あの新型の巨大な太刀でやられたものであった……
アンカーに捕縛された時はさすがの自分も二度目の死を感じてしまった…… あと一瞬遅れていたら真っ二つなっていたのは間違いない

 

「ふっ、くくく……ふふふははははっ!!」

 

しかしネオの胸のうちにこみ上げてくるもに恐怖はなかった。
其処にあるのは戦士としての高揚感とこの機体と自分に立ち向かうあの機体とパイロットに対する興味である。

 

「さて、楽しくなってきた!!」

 

内なる高揚感を曝け出しながら高らかに笑いあげるネオは機体を母艦に向けた。

 
 

「逃げたのか」

 

小さくなってゆく光を見つめるシンは、小さく息をつくとサブモニターを見た。
機体と斬艦刀のエネルギーは無に等しい状態である。もしこのまま続いていたら、
エネルギーの尽きた自分の負けは確実であっただろう。
いや相手がドラグーンに集中した時に仕留め切れなかった自分の未熟さか、とシンは自嘲した。
結果的に、敵の逃亡を許しあまつさえ味方を二機に失った自分たちの敗北である。
シンは近くに漂う敵の左腕を掴むと、ミネルバに帰還した……

 

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