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鬼ジュール_オムニバス-04

Last-modified: 2007-11-11 (日) 21:14:59

「ミーアってなんでいつも寒色系の服着てるんだ?」
「…え?だって明るい色は似合わないもん」
「そんな事ないって」
「…そう?」
「あぁ。髪形変えたらピンクでもいいんじゃないのか?」
「ピンク……」
ミーアはうっとりと目を細め、指を組む。
似合わないと思っていたのだが、ピンクは憧れの色だから。
シンもそれはわかっているので、ほんのり嬉しそうなミーアにシンも嬉しくなる。
「じゃ、ミーアがピンクの服買ったら外で遊ぶか」
「デ、デート!?」
素晴らしい反射で尋ねるミーアにシンは目を見張って驚くと、「そ、そうかな?」と曖昧に返す。

「ピンクの服でデートかぁ…」

ミーアは両手で赤く染まった頬を包むと部屋の中をスキップしていく。
そこまでのつもりの無かったシンは「どーしよ…」と頭を抱えて呟いた。

シンだって、女の子をデートに誘った事などないのだから。
しかし、ミーアの嬉しそうな顔を思い出すと、奮起するしかないなと心に決めた。

当分デートの下見に奔走しそうである。

「なぁ・・・レイ。お前デートに最適な場所って知ってる?」
アプリリウスにあるアカデミーでシンは何故かクインティリスシティのMAPを開きながら頭を抱えてうんうん唸っていた。
「何?シンがデート?女の子と!?」
直ぐに聞きつけたルナマリアがシンの机の前に回りこんで声を上げる。
「ルナには聞いてないだろ」
「いいじゃない。女の子の意見は貴重よ?」
「確かに、俺よりルナマリアの方が色んな所を知ってそうだな」
レイも軽くMAPに視線をやってルナマリアの言葉に同意する。
「多分メイリンの方が詳しいんだろうけど。何?クインティリスじゃないとダメなの?」
「あぁ、うん。相手の仕事の関係もあるし。遠出したら帰ってくる時間とか気にしなくちゃならなさそうだし」
「へぇぇぇぇ。シンにそんな女の子が居たなんてね。いつから付き合ってるの?」
「・・・・・別に、付き合ってない」
ルナマリアに言われてシンは再び頭を抱えてしまった。
確かに一緒に暮らしてはいるが、彼女ではない。
やっぱり彼女を普通デートに誘うものなのだろうかと考えるが、同居人なのだし深く考える必要も無いようにも思える。
「付き合ってないなら何でデートするの?」
「そんなのいいだろ?」
「馬鹿ね。それによって変わるでしょ。行く場所が」
ルナマリアはシンのMAPを勝手に広げて行きながらデートによさそうな場所をチョイスしていく。
シンはどう答えたものかと一瞬考えるが、そもそも言い繕う必要もなかったと正直に経過を話す。
「・・シンって女の子と同居してたの?同棲?」
「違う。・・・・ただのルームシェアの相手」
自分で否定しながら胸が痛い。

そうか、「ただの」なんだ。

きっと自分とミーアの間にある「特別」も他人にとっては「ただの」になってしまうのだという事にシンは落ち込みそうになる。
「ふぅん。でもシンが女の子にこんなに一生懸命になる人なんだって初めて知ったわ。どんな女の子なの?」
「根掘り葉掘り聞くなよな」
「いいじゃない。ただのルームシェアの相手なんでしょ?」
シンはレイに視線を向けて助け舟を要求するが、レイは特に口を挟もうとはしなかった。
彼もまたシンの同居人の存在が少なからず気になるようである。
シンは諦めたように自分の端末を開き、家でミーアと撮った写真を画面に出した。
うきうきと覗き込んだルナマリアは画面のミーアを見た瞬間硬直する。
レイは特に表情に変化をつけなかったが、画面をじっと見ている。

そこには照れて暴れるシンに後ろから抱きつく決して美人とも、可愛いとも、愛嬌があるとも言えない少女が居た。
褒められるところがあるのなら、唯一つ。

「・・・・・綺麗な黒髪の女の子だね」

だった。
シンだって分かってる。
ミーアの外見が可愛い部類に入らない事を。
それでもシンにとってミーアは唯一の癒しで、誰にも渡したくない程に大切な存在だった。
「声がラクス・クラインに似てるんだ」
シンの言葉にルナマリアは更に微妙な顔を見せる。

この外見で、声がラクス・クライン。

・想像がつかない。

「声もある」

聴いてみろよというシンは素早く端末を叩き、音声をONにした。
実はシンは以前ミーアが朝に留守電に入れてきた声を端末に移していたのだった。

『シン―――――。もう起きた?いつまでも寝てたら体が溶けちゃうから起きなさ――い♪今日も一日頑張ってね♪』

「うわ。本当だ!ラクス様そっくり!」
驚くルナマリアに、レイが意味深げに眼を細めた。
しかし、画像と声に夢中になっていた二人に、レイの表情は気付かれる事は無かった。
それからルナマリアがメイリンを呼び、そのおまけにヨウランとヴィーノがついてきて皆でわいわいとデートコースについて色々と考察するのだった。

「ギル、見つけました。・・・・・・・・丁度いい傀儡を」

その夜、レイがそう報告する事など、誰も気付かずに。

シンがデートコースをある程度練り上げた夜、ミーアから通信が入った。
隣に同室のレイが居たが気にする必要はないと音声をスピーカーONにしていた。
「ねぇシン。買ったよ、ピンクの服」
「へぇ、どんなの?」
嬉しそうなミーアにシンも苦笑で応えると、ミーアは勿体ぶった含み笑いを見せた。
「それは当日のお楽しみ♪でも髪形だけ決まらなくて」
「で、その髪形なんだ」
「そうなの。どうかなぁ?」
いつもとは違い、横髪を後ろで束ねているミーアにシンは唸る。
「前髪ちょっと切って耳が出るようにすればいいんじゃないか?」
「適当に言ってるでしょ~?」
「服見てないんだから仕方ないだろ」
「本当?」
「本当」
「誓って?」
「…しつこい」
モニタ越しに見つめ合ってから吹き出すと、取り留めもなくじゃれあうような会話に変わる。
結局ミーアの方から「自分で決める!おやすみ!」と通信を切った。
通信を切っても機嫌のよさそうなシンにレイが何気なく声を掛ける。
「仲良さそうだな」
「んあ?そうか?」
「…それに本当に歌姫に声がそっくりだ」
このレイの言葉にはシンは顔をしかめる。

「ミーアの声だよ」

ミーアはミーアだ。
誰の代わりでもない。

シンはアカデミーの休日に合わせてミーアとデートの約束をした。
「仕事があるなら…」と言ってみたが、ミーアはシンの休日に合わせて自分も休日を取るらしい。
「クビになっても知らないからな」
『真面目だもん。ならないよ♪別の日休み返上するから♪』
「…ならいいけど。それじゃ」

笑いながら通信を切ろうとして…。

「ちょっと待った!」
『ん?どうしたの?シン』
慌てて止めたシンにミーアもまた通信を切ろうとした手を止めた。
「逆に俺はどういう格好してけばいいわけ?」
『…いつも通りでいいよ?何処に行くのか分かんないけど場所に合った服ならいいんじゃない』
何処に行くのか暗に教えて欲しいというミーアにシンはそっぽを向いてむくれて見せる。
それは当日まで秘密だ。
「…いつも通りで行く」
『あ、あたしミニスカートで行くから♪』
「…それ駄目」
『何?突然』
「駄目」
『何で!?』
「とにかく駄目」
『理由くら…』
「問答無用で駄目。ミニスカートだったら俺帰るから。じゃ、おやすみ」
『何で――――――!?』
ミーアの絶叫を無視してシンは通信を切った。
ベッドにつっ伏して拳を作る。

「ミーアの馬鹿」

男心もちょっとは分かれ!

『問答無用で駄目。ミニスカートだったら俺帰るから。じゃ、おやすみ』
「何で――――――!?」

シンが少し不貞腐れたような顔で問答無用に通信を切って。
残されたミーアは通信機の前で拳を作っていた。
居間のソファの上にはピンク色のミニスカート。
そう、ミーアが選んだ「ピンク色の服」がミニスカートだったのだ。

ピンク色のミニスカートが駄目だったら、もう一度あたし別の洋服選び直さなくちゃならないって事!?

勝手に通信を切られたのだから、もう一度抗議の為にアカデミーに通信を入れようかと思う。
しかし時間を見ればアカデミーの消灯時間間近で、同室の男の子が居る筈だと思うと喧嘩をする為に通信を入れるのは少々ひんしゅくを買ってしまう。
ザフトに入りたいのだと、「ザフトレッド」になりたいのだと頑張っているシンの邪魔をするのは本意ではないので悔しいと思いながらも通信機の前から離れた。

折角のデートなんだから、お洒落したいっていう女心がどうして分かんないかな!?

「シンの馬鹿」

ミーアは頬を膨らませると、ピンクのフレアミニのスカートを腰に当てて鏡の前に立つ。

可愛いの見つけて嬉しかったのに。

しかし、シンが理由も無く反対するとも思えなかったので、そこでふと冷静になってみる。

もしかして高い所に行くとか。
風が強い所に行ってスカートがめくれ易いという理由なら思い切り反対するかもしれない。

「・・・・それなら仕方ないのかなぁ・・・・・」

自分だって下着を見せ回る趣味は無い。
もう少し時間がある事だし選び直すか、と、ミーアは残念そうに溜息を吐き、同時に企む。

「だったら、セクシー路線で行こうっと♪」

スタイルだけは自信あるし!
こうなったらとことんシンを驚かせてやるんだから♪

ミーアの思惑がシンの反対の原因から大きく外れている事を注意する者がこの場には誰も居なかった。

デート当日

シンは約束より少し早い時間に待ち合わせ場所に来ていた。
近くのアミューズメントパークに行こうと考えていて(結局そこが無難だろうと言われてしまった)実はもうチケットも取って来てある。
ヨウランに「デートは気配りだ」と、言われてきたのだが、そういうのは余り自信がない。
どのアトラクションが面白いのか、待ち時間は大体どれくらいなのかという下調べはして来たのだが・・・・。

「シ――ン!」

呼ばれて「結構早く来たな」と、腕時計を確認し顔を上げると「ぶっ」と、シンは噴き出し、瞬時に顔を真っ赤に染めた。

「ミーア!?」

周りの男がミーアを振り返り、時々茶化すような口笛が吹かれる。
ミーアの格好は髪はポニーテールで前髪はシンに言われたのを気にしてか少し切っているように見える。
上は白いレザーのジャケットの下は赤いビキニ(見せブラという奴か?)のみ。
下はローライズのピンクのホットパンツ。
靴は茶色のカウボーイのようなロングブーツだった。

臍は出しているわ、腰骨は見えそうだわ、胸の谷間は見えるわ・・・・・・!!!

いつもTシャツとジーパンという格好だったミーアの姿を考えると全く別人のようだ。
シンの姿を見つけて駆けて来たミーアは、最近大きくなってきているように見える胸をこれまた大きく揺らしながらシンに抱きついた。
見せブラからはみ出した胸がシンの胸板で潰れたのが良く分かる。
(シンも薄いノースリーブのシャツ一枚にやはりノースリーブのロングパーカーを羽織っただけの姿だったからだ)

気持ちいい・・・・。

と、思ったのは一瞬で「何を考えてるんだ、俺は!」と、ミーアの体を引き離した。

「ちょ・・・なんて格好だよ!」
「頑張っちゃった♪・・・・似合わない?」

シンは答えに困る。
ミーアにはミニスカートは反対した。

だからって確かにパンツになっているが、ミニスカートよりも短いホットパンツかよ!
股関節近くまでばっちり見えるじゃないか!

ジャケットを脱げば見せブラ一枚で。
肋骨から臍まで丸見えで。

此処に来るまで他の男がさっきみたいに舐め回すようにミーアの姿を見ていたのかと思うと腹が立つ。
ミーアもその視線に気付かなかったのだろうかと思うともっと腹が立つ。
(先程駆けて来た時の様子を見ると気付いていないようだ)

ジャケットのボタンを全部留めたって臍は隠れても胸の谷間は見えるだろう。

もう帰るか?

と考えるが、もうチケットだって取って来ている。
自分だって楽しみにしていた。

「似合わなかったかな?」
もう一度尋ねるミーアにシンは正直何といえばいいのか分からない。

何せ歩くグラビア誌だ!

「・・・・似合うけど・・・・正直こま・・・」
「嬉しい!」

目のやり場に困る・・・と、続けようとしてミーアが言葉を遮り再びシンに抱きついてきた。

「人の話を・・・!」
「あ、シン背が伸びてる!あたしより高い!」
「それはこの間聞いた!」
「あったか~い♪」
「そんな薄着してるからだろ!」
「違うよ!シンが温かいんだもん♪」

駄目だ・・・完全に舞い上がってる・・・・・!

悩んだシンは徐にミーアを引き剥がすと、ミーアのジャケットを脱がした。

「シン!?」

驚いて叫んだミーアは無視して、続いて自分のロングパーカーを脱ぐとミーアに着せて前のチャックを上まで引き上げる。

「卑猥な格好禁止!行くぞ!」

ジャケットはロッカーにでも突っ込もうと決めてミーアの手を取り歩き出す。

折角初めて二人で外で遊ぶのに中止にするのはシンが嫌だった。

「・・・・ねぇ、シン」
「何!?」

恥ずかしさで、照れ臭さで、手を繋いでいる事を何か言われたらどうしようかと思うとつい声を荒げてしまった。

「・・・・このパーカー長いから・・・・・まるでこの下何も着てないみたいに見えるんだけど」

シンのロングパーカー一枚で歩いているみたいと言うミーアにシンはこれまでで一番顔を赤くし(憤死するかと思った)、
アミューズメントパークに行く前にショッピングモールに向かう事となった。

折角色々考えたのにミーアのせいで予定が狂った!

シンがこの後とりあえずベビーTシャツを買い(ホットパンツは仕方ないのでそのまま)、散々遊んでから家でミーアに説教した。
(何か分からないが悔しかったので予定していた乗り物は全部制覇した)

「そういうのは俺の前でだけ着てればいいの!」

と、言えれば格好良かったのだが、ミーアは自分の彼女では無いと思うとそれは言えず、ただただ唇を噛み締めた。

それをアカデミーに帰って報告したシンは、何故か皆からブーイングを受けた。
告白の一つでもして来いと言われるのかと思えば、どうやら記念に撮った画像が見せブラではなかったかららしく、シンはそれを知って大暴れしたという。

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