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鬼ジュール_オムニバス-17

Last-modified: 2007-11-11 (日) 21:19:05

―― セントラルホテル 63階

到着したシンは部屋がどこなのか知らないと思ったが、何も問題は無かった。
フロアに扉が一つしか無かった。
庶民には考えられない場所だったのかとカードキーを通すとロックが外れる音がする。
直ぐにキーを隠しに入れるとドアを開ける。
中に入るとその広さに一瞬クインティリスの家と比べてしまった。
比べても仕方がないのだが。
それでも窓の高さや大きさは気になるし、その向こうに見える景色の美しさには思わず深く息を吐いてしまった。
高価そうな調度品なども目には入ったのだが、こちらの価値は全くと言っていいほどわからない。
それにしても、いつもレイが急いでザフトを出ている姿を見ていると、てっきり彼女は先に来て待っているものだと思っていたのだが、違うのだろうか。
ざっと見渡してみても彼女の姿は見えない。
奥に寝室らしき扉がある。
その向こうで彼女が待っていたらどうしようかと思うと中々奥に行く気持ちになれなかったが、じっと待っているだけというのもシンの性分に合わなかった。
覚悟を決めて寝室のドアをノックしたが、中から返事はなかった。
それにどこか安堵しながらシンはドアを開ける。
中はキングサイズのベッドが二つ並んでいたが、誰の気配もなければシーツにも乱れはない。
やはり彼女はまだ来ていないのだと思いながら念の為浴室とトイレの位置も確認する。
それも終わると今度こそやる事が無いと窓辺に寄って外の景色をじっと見つめた。
何か「カタン」と、音がする度に反応してしまう自分に苛々しつつ、暗くなり夜の時間に移行したプラントをじっと見ていた。

しかし、完全に暗くなり、プラントの外の宇宙が見えるようになっても誰も来る気配がない。
長時間同じ場所にじっとしておく事はシンには何の苦痛でもないが、これは何かおかしいともう一度室内を探す事にした。
寝室は二つあった。
どちらもキングサイズのベッドが二つ並んでいるが、そのどちらもシーツに皺一つない。
応接室もあったがソファとテーブル、そしてその上に一輪差しがあり、ピンクの薔薇が花開いているだけで他には何もない。
衣裳部屋らしき物もあった。
鏡と、化粧品が並べられる小さな棚に沢山のクローゼット。
ミーアの匂いが残るその場所から離れ難くてクローゼットの一つ一つを何気なく開けて行くと一番奥に何か大きな物が有り、思わず手が止まった。
大きくクローゼットを開けて明かりを中に取り込むと、その正体に息を呑んだ。

ミーアだ。

寝ているのか静かな寝息が聴こえ、顔をそっと覗き込んで見ると小さく蹲ったその頬には涙の跡があった。
こんな広い部屋でずっとこんな暗くて狭い場所に居たのだろうか。確実にシンが来てからの時間はずっと此処でじっとしていた筈だ。
人の気配があればシンだって気付く。
それがなかったのだから彼女はずっと此処に居たのだろう。
いつもこうなのだろうか?
それならばレイが訓練が終われば急いで着替えてザフトを飛び出していた理由がなんとなく分かった。
見つけるまでじっと隠れている彼女を守る為だったのだ。

「馬鹿じゃないのか・・・?」

昔はそんな癖は無かった。しかし何か辛い事があると風呂場から中々出て来なかった事がある。
クインティリスの部屋で一番狭い場所はトイレの次が風呂場だったから、これはその名残かもしれないと思うと胸が苦しかった。
シンはその涙の跡を袖で拭うと起こさないように抱き上げて一番奥の寝室の窓側のベッドに寝かせる。
仰向けに寝かせたその顔にまだ涙の跡が見えるから、もう乾いた跡に袖で拭っても消える物ではないかと唇を寄せる。
舌先で舐め取り、袖で拭う。
近付けば強く香るミーアの匂いに離れ難くなったシンは一度は顔を上げたが直ぐにその肩口に顔を埋める。
首筋に鼻を押し当て鼻先で触れたミーアを見上げ、すっかり変わったミーアの横顔にシンは目をぎゅっと閉じた。

どれくらいそうしていただろうか。

身動ぎしたミーアの腕がシンの背に回った。
久々の抱擁にシンは歓喜で胸を高鳴らせ、喉が一気に緊張で干乾びる。
しかし、耳に届いた言葉は「レイ・・」であったのだから何処まで残酷なのかと恨み言を言いたくなる。
思わず強く抱き締めると、彼女は「くっ」と、苦しそうな声を上げ、シンの肩をぽんぽんと二回叩くと「レイ、ごめんね。あたし大丈夫だから」と、また改めて抱き締められた。
シンはその手から逃れるように体を起こすと、ミーアがつられて目を開けた。

大きく目を見開き、息を呑んだミーアの変化に喉が引きつった。
星明りで青白いミーアの顔が益々生気を失ったように変化する。
その顔を見下ろしながらシンはじっとその変化を見つめていた。
無表情に。

何と声を掛ければわからないのは互いに変わらないのか、瞬き一つせずシンはミーアを、ミーアはシンを見つめた。

不思議な物で、じっと見つめていると分かる。
微妙な表情の作り方が本人だからというのがあるのかもしれないが、目の前の顔は確かにラクス・クラインの物なのだが、その表情はミーアにしか見えない。

なんだかごちゃごちゃ考えていたのが馬鹿みたいに思えて来た。
シンはミーアを捨て、ミーアはレイの手を取った。
そしてシンはミーアを完全に捨てたのかと言えばそうではなく、ただ過去のミーアとの思い出に耽り、しがみついている。
変わってしまったミーアが再びその姿を変え、シンの元に戻ってくれるという保証も確証もなければその前にシンがミーアを捨てたというのに。
ミーアがその後レイを選んだというのなら、シンが過去のミーアにしがみ付いている事に意味があるのか。
無益だと言ったレイの言葉を実感する。
一度捨てたなら、その後のミーアはどうでもいいのかと言えばそうじゃない。
過去のミーアも、現実のミーアも、未来のミーアも。
すべて手に入れたいと今でも思っている。
この気持ちに偽りはない。
なら、今この場で一番頑張らなければならないのは自分なのだろう。

ミーアへの腹立たしさはあっても。
それでも彼女を愛しているという気持ちがあるのなら。

自分が手を放してはならなかったのだ。

なら、最初に言うべき言葉は一つしかない。
それしか思いつかない。
硬直しているミーアを安心させる為、怒りたい訳じゃないと微笑む。
緊張している為それが上手く出来ているか自信はないが。

「好きだよ」

ミーアが更に目を見開き、次の瞬間眉根を寄せて顔をくしゃりと歪めたミーアの瞳が大きく揺らぎ、目の端から涙を流した。
自分の身勝手な言葉に泣いてくれるミーアに、シンは頬を叩かれるのだって覚悟していたというのに、相変わらずお人好しな姿につられるように泣き笑いの表情を見せた。
しかし、きちんと伝えなければならない事はある。

「でもやっぱり、その姿は嫌なんだ。だから、話合いに来た」

<終>

ミーアが何を言うかじっとシンは待っていたのだが、何かを言うよりも先にうろうろと視線を彷徨わせたミーアにシンは「レイなら居ない。代わって貰ったんだ」と、隠しからカードキーを見せた。
それを知った瞬間、ミーアはシンから逃げるように腕を使って体をずらした。
直ぐにそれをシンが追いかける。

「もう、俺の事は嫌い?」

同時に問い掛けるとミーアはそれ以上逃げる事はせず、おずおずとシンの首に腕を回し、引き寄せた。

「・・・・そんな事無い」

小さくミーアが言った言葉にシンは一度体を離す。
ちゃんと顔を見て言って欲しい。

「もう一度」
「そんな事無いよ」

涙を堪えた小さな声は掠れていたが、それでもはっきりと耳に届く。
唇だけ動かして「良かった」と伝えると、ミーアはシンを抱き寄せていた腕を放し、自らの顔を覆った。

「でも、もう遅いの。あたし、もう元に戻れないの」
「・・何で?プラントの技術があれば・・・」
「色んな所、骨から削ってたりしてるの。だから、もう無理なの」

それに、契約があるから。

骨格から変えてしまったミーアの顔は、また元に戻すというのなら顔にメスを入れ、大掛かりな手術になると聞かされ、シンも流石に顔を青褪めさせた。
女の子の顔に余りメスを入れるのはシンも好ましく思わない。
それが元に戻る為と言われたとしても、それでも可哀想だという思いがある。
シンが一番拘っているのは変身してしまったミーアの顔がラクス・クラインの物であるというこの一点なのだから。
そこまでして無理に元の顔に戻さなくてもいいとも思える。
どうしてこんな事になる前に一言相談してくれなかったのかと恨み言を言いたくなる気持ちはぐっと堪える。
もう過ぎてしまった事だ。それを責めてももうどうにもならないのだ。
取り敢えずこの問題は今急にどうこうできる物でもないので置いておく事にする。

「契約・・・?」
「あたしが、ラクス様の身代わりになって活動するっていう、契約」
「どうしてそんな事に・・」

そこからミーアは淡々とシンがアカデミーに通っている間の身の回りの出来事を話し始めた。

全てのきっかけはアカデミーの文化祭に赴いた時だったという。
あの時は・・・と、シンは苦虫を噛み潰したような顔をする。
ミーアに色々と不安な想いをさせてしまって、可哀想な事をしてしまった一日で。
クインティリスの家にレイに買って貰ったというビーズの指輪が飾られていたのも覚えている。
あの指輪はまだあの棚にあっただろうかと考えたが、それどころでは無かったので記憶にはない。
とにかくあの時、偶然にギルバート・デュランダル議長と出会った事をきっかけにして時々クインティリスのミーアが歌う店にお忍びで通って来てくれるようになったという。
そして何度か話をする内にギルバートが仕事が中々上手く行かないのだとミーアに打ち明けるようになり、その姿が余りにも悲壮だったので「何か手伝える事はありませんか?」と、懸命に尋ねたのだという。

「ミーア・・・どうしてそんな大それた事簡単に言うんだよ」
「だって・・本当に思い詰めていらして、顔色も悪くて元気が無かったんだもの」

そういう人間がわざわざアプリリウスからクインティリスのミーアの所に通うのか?
それも歓楽街に。

と、シンは疑問に思ったが当時の様子を知らないシンは、まだこれを言うのは早いかとぐっと我慢する。
ミーアのお人好しは今に始まった事ではない。
シンだってミーアのそのお人好しの性格に拾って貰った一人なのだから。
それにしても相変わらず天然で他の男に親切にしていたのかと思うと苛々する。
これはもう今に始まった事ではないのだが。それでもギルバートにどういうつもりがあってミーアに会いにクインティリスまで通ったのかは気になる。
実はミーア目当てで口説き落としに来たとか、実は口説くどころかレイだけじゃなくギルバートとも何かあったんじゃないだろうかと穿った見方をしてしまう。

「・・・・シン?」
「・・・・それもこれも・・・」

ミーアが大人しくクインティリスに居てくれないからだ!

と、叫びたい心は辛うじて抑えた。
それももう言っても仕方がない。
しかし話が終わったら絶対にギルバートの事は問い質そうと心に決める。

そしてある時、ミーアの元に黒服の男が二人、ギルバートからの迎えだという言葉に従いアプリリウスに向かったのだという。
そこで宛がわれたのがこのホテルの一室で、先に待っていたギルバートと対面し、やはり悲壮な様子でラクス・クラインという存在の必要性と影響力を切々と語り、ミーアに「私のラクス・クラインになってくれないか?」と、告げられたのだという。

「あたしはシンと一緒に住んでたから家の事もあるし、シンの事も言ったの」
「そうしたら何て言ったんだ?」
「家は管理してくれるって言うし、シンにはあたしがラクス様の姿になっても本当の事言っていいって言って下さったの。だったら、こんな事あたしにしか出来ないと思ったの。
ラクス様はこのプラントにはどうしても必要な方で、そのラクス様が行方不明のこの現状で代理が出来るとしたらあたししかいないの。このプラントの何処を探しても。それって・・・凄い事じゃない?」

あたしには家族居ないし、声はラクス様に似てるし。
それに、綺麗になりたかったから。

ミーアの言葉にシンはそっと目を閉じて傍らに座るミーアを抱き寄せた。
溢れそうになる涙を堪えて。
言いたい事は沢山あった。
「俺達はもう家族じゃなかったのか」とか「ミーアはもう十分綺麗だった」とか。
しかしミーアの声に涙の気配があった。
これ以上何を伝える事があるだろう。後悔している心があるからこそ静かに涙を流し、小さく蹲るのだろう。
まだ怒っているかと問われたらそれは当然怒っているのだが、しかしそれ以上に愛している。
此処で怒鳴り散らすのは簡単だ。
しかしそれは一時的な憂さ晴らしでしかならない。
それでシンが納得出来る訳でも無ければ、ミーアを精神的に追い詰めるだけ事にしかならない。
そういう事がしたいのではないとシンはミーアを抱き寄せる手に力を入れる。

「だから、世界が平和になるまでって契約、してるの」
「世界が、平和に・・・・?」
「うん。ずっと拘束してるつもりは無いって、ちゃんと契約書にも書かれてるの。だから」
「その前に本物が現れたら?」
「そうしたら・・・・・厳密にはどうなるのかな。でも、それでも終わると思う。だって、本物のラクス様の方が良いって思うよ。誰だって。あたしだってそうだもん」

終わったら淋しいだろうけど、今あたしに出来る事があるならそれをしたいの。
世界が平和になったら、シンだって戦いに出る必要無いんだもん。
方法は違っても、一緒に頑張れるの。

懸命にミーアは訴え、そしてシンに答えを求めるように視線を向けた。
しっかりと決意はしているのに心細そうなその視線に、シンは溜息を吐いた。
少なくとも完全にラクスに成り代わろうとしている訳では無いのは分かった。
姿は変わってしまっても「ミーア」を完全に捨てたつもりも無い事も分かった。
ラクスを装っていても「ミーア」が「ミーア」を捨てる事無く今の道を選んでいるのなら・・・・。

結局自分がミーアを許してやるしかない。

「ミーアは、ミーアなんだな?」
「うん。・・・・あたしは、ラクス様にはなれないの。ラクス様の気分は味わってるけど、あたしはラクス様の代理人。ラクス様ならきっと誰よりも平和を願ってると思うから、それに負けないようにラクス様に代わって皆を元気付けて、沢山歌うの」

お人好しだと思い続けてきたが、今度は何人の人に手を伸ばすつもりなのか。
昔は自分にだけ手を伸ばしていた手を今度は何百万という人間に向けようとしている。

馬鹿だと思い続けて・・・・。
でも、そんなミーアだからこそ好きなのだ。
甘えて、ずっと傍に居たいのだと願ってしまう。

「・・・なら、仕方ないよな」
「シン?」
「ミーアが、俺の好きなミーアのままなら、俺も傍に居たい」

改めて向き合って。
ぎこちなく微笑みあって。
口付けようかと顔を近付けた時・・・・。
もう一つの問題にぶつかった。

「レイとは・・・・寝たんだろ?」

じっと互いの瞳を見詰め合ったまま呟かれた言葉に、ミーアは肩を大きく跳ね上げた後、背後の枕を手に取ってシンの顔に押し付けた。

突然視界が真っ暗になり、シンは直ぐに動けなかった。

・・・・・何で枕?

<終>

シンは枕から逃れようとまず背を逸らした。
しかしミーアはどうしてもシンの顔から枕を外したくないのか、枕が付いて来る。
シンの視界は暗いままだ。
どうしようかと思っていると、今度は何かが当たる感触がした。
ミーアが枕の向こうでシンと同じように枕に顔を押し当てているようだ。
二人の顔の間に挟まった枕の存在が煩わしくて枕を外そうと思うのだが、体が自然と枕を持つミーアの手を掴んでいた。

ミーアの口から直接真実を聞くのが怖い。

レイとミーアが寝た事はシンの中では確定していたが、それを認めたくない気持ちは当然あるのだ。
クインティリスで過ごしていたあの頃、ミーアを手に入れられる機会が幾らでもあったというのにそれをしなかったのは、「ミーアはいつでも手に入れられる」という安堵感があったからだ。
誰にも渡したくないと思う一方で、もう既にミーアは自分の物で、誰にも取られる事は無いと思い込んでいたからだ。

どうしてあの時手に入れておかなかったのだろうか。

もう後悔しても遅いのに、それでも考えてしまうのは今でも手に入れたいと思っているから。
だからシンはミーアの手を取る。
どんな真実だろうと、それでもミーアが欲しいから。

枕の向こうで頷く気配があった。そして小さな声で「・・・うん」
顔に伝わった感触に、シンは項垂れる。
覚悟はしていても辛いものは辛い。
自分から聞いた癖に、どうしても知っておきたいと思っていたのに、やはりどう大人ぶってみても嫌な物は嫌だ。

ずっとミーアは自分一人のものだったのに。

枕を顔に押し当てているおかげで簡単に涙が出た。
ミーアの手を強く握り締めると「ごめんなさい」と、小さく掠れた声が耳に届いた。

「・・・何回?」

聞いた瞬間ミーアの動きが止まり、指を折りだした。その指が一度は閉じられ、再び開かれたのを指先で確認したシンは、それ以上はもう知りたくないとミーアの手を包み込んでその動きを止めた。

要は沢山、だ。

「でも・・・。あたしも、レイも寂しかっただけなの・・・。だって・・シンがいなかったんだもの」

涙ぐんだ声が枕を通じて聞こえる。
震えた羽毛の向こうで泣いているのを感じてシンは目を閉じる。
胸がぎゅうぎゅうと締め付けられて息をするのも苦しくてミーアの体を抱き寄せた。
今すぐ口を開けば文句しか口に出なさそうだ。
本当なら此処で絞め殺してしまいたいとも思う。
罵倒して、なじって、その細くて白い首に自分の指の形を付けて「ミーアは自分のものだ」と主張してやりたいと心底思う。
しかし、それをしてどうなる?
その後に残るのは虚無感だけだ。
ついさっきどうしても彼女を愛しているのだと自覚したばかりなのに、そのすぐ後にミーアを永遠に失う事など出来ない。

全てを失った後、何も持っていない手に新たに手に入れた宝物が彼女なのに。

柔らかな枕の感触が恨めしい。
シンは枕に顔を押し付けたまま静かに泣いた。
時々肩が震え、ミーアの手を握り締めた手が嗚咽の声を抑える為に強くなっても、それでも必死に声を殺して泣いた。
最初にミーアの手を放したのは自分で。
ミーアに別れを告げてからもう2ヶ月は経っていたから、自分にも責任はある。ミーア一人が悪い訳じゃない。
枕の向こうでミーアの嗚咽も聞こえて来て、二人は気の済むまで泣いた。

そして涙が収まった頃、シンは二人の間の枕を外した。
まるで初めて対面したような目の前の少女は涙で化粧も完全に崩れてぼろぼろで、恥ずかしそうに見上げる蒼い瞳がとても可愛かった。

「キスがしたい」
「でも・・・・」

戸惑う理由は分かる。
レイの事が気になっているのだろう。
しかし、そんな言葉でシンの欲求は収まる気配を見せなかった。

欲しいものは欲しい。
何故なら、どうしようもなく彼女が好きだから。
改めて自分の片思いを打ち明ける事からしなくてはならなくても、もう一度口説き落とす事から始めなくてはならなくても。
その労力が惜しいと思えないから。

「ちゃんと嫌がらないと続けるから」
「あの・・・っ!」

目の直ぐ下の少し赤く腫れ上がった所に口付ける。
次に頬に口付けて、もう一度頬に。
反対側の頬にも口付けて、見詰め合うと彼女の目がとろん、と柔らかくなっていて、瞳もきらきらと輝いていてどきりとする。
昔はキスをしてもくすぐったがってばかりで色気のような物は全くなかったのだが、今のミーアはとても艶っぽく見えた。
これはレイの功績なのだろうかとふと考えると腹立たしさが再び沸いて来るが、それよりも食欲の方が勝った。

ミーアを手に入れたいという食欲の方が。

頬に添えた手でもったいぶるように彼女の頬を撫でると、ゆっくりとミーアの瞳が閉じられる。
その瞬間、まるで初めてキスをするような胸の高鳴りに思わず自分の胸を鷲掴む。
触れるのが勿体無くて、しかし触れないのはもっと勿体無くて。
だからこそシンは恐々と、まるでヒビの入った硝子細工に触れるように丁寧に口付けた。

涙で蕩けた唇は柔らかくて温かかった。

一度目は恐々と。
二度目は丁寧に。
三度目は優しく。
四度目は嬉々として。

次第にミーアの体から力が抜け、その体を支えながら押し倒す。
ベッドの上に散らばったピンク色の髪が何とも複雑な気持ちにさせたが、目の前の彼女がシンの大切なミーアである事に変わりはない。間違いもない。
余計な物は視界に入れないようにしようと思い直して唇で彼女の顎のラインをなぞって、首から肩口へと移動する。
首筋に歯を立てるように噛み付いた後、シンはミーアの耳の後ろに唇を寄せて恐る恐る「・・・したいんだけど」と、告げた。
他に何か気の利いた台詞が浮かべば良かったのだが、パイロットとしての才能はあっても文学的な才能には恵まれなかったシンにはこれが精一杯だった。
これでも努力した方だ。
しかしこの言葉を聞いたミーアはそれまでのうっとりとした表情を一変させて「だ、ダメ!」と、叫んだ。

「はぁ!?」
「ヤダ!ダメ!」
「何だよ!レイは良くて俺は駄目なのか!?」
「そういう問題じゃないでしょ!」
「結局はそういう問題だろ!」

断言されると「そうなのかな?」と、迷いを見せたミーアだったが、シンが文句を言う為に体を起こした隙を突いて逃げ出す。
まさかこの期に及んで逃げ出されるとは思っていなかったシンは慌ててミーアに手を伸ばすが、僅かに長さが足りず空を掻く。
しかし当然運動神経でミーアがシンに敵う筈もなく、シンは直ぐにミーアの腕を掴んで隣のベッドに放り投げるとその上に覆い被さる。

「逃げなくてもいいだろ!」
「逃げなきゃするでしょう!?」
「当然だろ!」
「だ、だって、あたしまだレイとは何も話してないの!」
「・・・この機会をくれたのはレイだ」

こうなる事位とっくに承知の上だろう。
レイが何も考え無しに行動に出るとは考えられないから。
必ずこうなるとまでは思ってなくても、考えうる可能性の一つとして頭にあった筈だ。
そうでなければどうしてシンにカードキーを渡すだろう。
シンの言葉にミーアは考え込むように自分の膝を見つめていたが、何かを決意したように顔を上げてシンにひたと視線を当てた。

「それでも、あたしが納得出来ないもの。・・・シンだってこんな中途半端でいい筈ないし」
「二人きりで会うのかよ・・・」
「・・・うん。どうしても二人だけの話があるから」

二人だけの話。
それがどんな物か想像しようとして「最後に一度だけ・・」と、睦み合う二人の姿が浮かんでぷるぷると頭を振った。
美味しそうなミーアが目の前にいて、それも以前より三倍以上は魅力的になってシンの下半身に訴えかけて来ている。
今だって結構頑張って堪えているのに、これ以上堪えろというのは酷という以上に拷問だ。
それも友人に再び取られるかもしれないと思うと、取り敢えずミーアの意思は無視して襲ってしまいたいとも思うのだが・・・・。
片想いでも口説き落として見せようと決意したばかりではそれも出来ない。
シンは俯き両手で拳を作るとベッドを殴りつけた。
熱が上がる体を強引に抑え付ける。
目の端に涙も浮かんでいたかもしれない。
情けなくも少し体も揺すってみたりして、とにかく強引に諦める。

「シン・・・?・・・・怒ってる?」
「怒ってない!・・・・ただ、レイと二人きりで会うのは嫌だ。話は聞かない。隣の部屋にいるとかでもいいから俺も一緒に居る」

それを了承してくれるなら今日は諦める。

シンの唸るような呟きにミーアは体を起こして何度も頷き、了承した。
「あの、・・・怒ってる?」
「怒ってない!」
再び尋ねて来るミーアに、今だけは触れて欲しく無いと気遣わしげに伸ばして来た手を払いのけ、背を向け横になる。
さっさと静まれとただ念じているとミーアがシンの背後でやはり寝転がったのを感じた。

どうして手を出さないように頑張ってるのにくっ付いて来るんだよ!

本当に男心を理解してくれないんだからとシンが別の所に意識を持っていこうとした時。

「ちゃんとレイとお話した後でも、友達として普通に会うのは駄目かな?」

駄目。

そう言いたかったのだが、レイはラクス=ミーアである事を知っていて受け入れられる数少ない人物だ。
寄り添っている事で深く感じるミーアの甘い匂いにシンはぎゅっと眉根を寄せてからミーアに向き直った。

甘いとでも何とでも言え!

「ミーアを味見させてくれたらいいよ」
「あ、味見?」
「お臍の裏の黒子が見たい」
「や、やだ!シンってば!」
「我慢出来ない」

くるりとミーアの体も反転させて背中のチャックを引き下げる。
そして一番反り返っている背中の黒子を見つけて口付ける。

「やっ・・・ぁぁっ!」

突然聞こえた甘い声にシンの動きが一瞬止まる。
今まで一度としてそんな甘い声を彼女から聞いた事は無かった。
いつも色っぽさよりもくすぐったさを強調する声ばかりだったから、突然の甘い声にシンの背筋に電撃が走る。

これもまたレイの功績なのだろうかと思うと苛々は募る一方だ。

「・・・・・クソッ!」

欲求不満でどうにかなりそうだった。

<終>

翌日、シンとレイが「ラクス・クライン」に呼ばれた。
場所は同じくセントラルホテルの63階。
昨日はレイのように日を跨いだりせずに帰ったシンを、レイは不思議そうに見ていたものだが、それは一切無視した。

再び互いの想いを確認しあいました。
なのにミーアにはえっちを断られました。
レイはOKなのに、俺は駄目なんだって。

なんて決して言えないと思うと無視したというよりも顔を合わせる事が出来なかった。
これで「どうだったか?」などと聞かれたら絶対一発殴りそうだった。
その為訓練中も、移動中も、63階のドアの前に来るまで会話らしい会話は一つもなかった。
昨日と同じようにキーを挿し、鍵を開けると待っていたらしいミーアがソファから立ち上がり二人に駆け寄って来た。

「こんにちは、二人とも」

今日は隠れていたりしないのかとシンはほっとするとミーアを引き寄せ抱き締める。
その力が少し強かったのか、苦しそうにミーアが伸び上がったのを感じて手の力を少し緩める。
しかし、抱き締めた手を放す気は無い。
会って1分もしない間に大いに主張されてしまったミーアは心底困ったようにレイを見ると「とにかく中に入って」と、促してシンにも「こんな所に立ってないでソファに行こう?」と、囁いて促す。
するとシンはそのままミーアを持ち上げてソファまで移動する。

「紅茶淹れるから、手を放してくれないかな?」
「やだ」
「シン、いい子だから。あ、そうだ。後でチョコアイス買ってあげる」
「子供かよ」
「ね、今紅茶淹れる練習してるの。だからシンにも飲んで貰って、感想聞かせて欲しいんだけどなぁ」

そう言われると悪い気がしない。
文句も言わずぱっと手を放してソファに腰掛ける。
頭を撫でられて「また子供扱いか!?」と、思ったが、ミーアは楽しそうにキチネットに移動すると紅茶セットを持って戻って来る。
そして少しぎこちない手つきで紅茶を淹れるのをじっとシンもレイも見ていた。
3人もいるのに静かな空間で紅茶を淹れるのは緊張するのか、ティースプーンを持つ手が震えている。
シンもそれには気付いていたのだが、だからといって言葉が浮かばない。
どうしてもレイの存在が気になって仕方なくて、何も言えなかった。

「えっと・・・・ジャンピングをさせたら少し蒸らすんだったかなぁ・・・」
「合ってる」
「ありがとう」

悩みながら紅茶を淹れるミーアにレイが簡潔に答える。
レイの肯定の言葉に安心したミーアが微笑む。
紅茶の淹れ方など知らないシンは少し負けた気分になる。
こんな事で争っても仕方ないのだが、それでもやはり負けたくはない。

「どうぞ」

と、砂時計が落ちてから注がれた紅茶を飲んでみると桃の香りがした。

「ピーチティ?」
「そう!いい香りするでしょう?」
「でも香りの割には桃の味はしないんだな」
「乾燥させてるからね、そういうもんなんだよ」

ふぅん。と、何気なく言いながらもう一口飲む。
紅茶の味などよく分からない。
これは飲める。という認識程度だ。

「美味しい。随分上達したんじゃないのか?」
「え!本当!?嬉しい!」

そこにレイの賛辞の言葉が聞こえてシンが焦る。
今が誉めるタイミングだったのだろうかと慌て、負けずに何かいいたかったのだが、レイと同じ事を言うのも嫌だ。
しかし紅茶の味はよく分からない。他に気の利いた事も言えない。
結局は「ご馳走様」と、それだけしか言えなかった。
そして今日はレイとミーアの話し合いの日であるから、シンは「隣に居る」と、立ち上がり寝室のドアを閉めた瞬間、その場に座り込んだ。
俯き絨毯の模様をなぞったり、ドアに後頭部を当ててみたりと落ち着きが無かったが、それでも構わなかった。
誰に見られるという訳ではない。
折角寝室にいるのだから寝てしまおうかとも思ったが、それは完全に二人きりにしてしまう事のような気がして立ち上がる事が出来なかった。
しかし何もせずにいると先程の失敗を思い出す。
人と同じでもいいから何か感想を言えば良かったかなと、思う。
ミーアはシンの感想が聞きたいと言っていたから自分だって嬉しくなって、ミーアが紅茶を淹れるのをじっと見ていたのだ。

「・・・・美味しかった、と、思う」

今更ミーアの居ない所で言っても仕方ないよなと、溜息ばかりが零れる。
自己嫌悪に陥り、どうしようもなくて背にもたれた扉に耳を当てるとぼんやりとミーアとレイの声が聞こえる。

何を話しているのだろうか・・・・・・。

こんなことで誰かを疑ったりするのは好きではないが、それでも気になって仕方なかった。

30分程した頃だろうか、二人の話している気配が消えた。
しかし、シンを迎えに来る気配もない。
「まさか・・」と、嫌な予感がして飛び上がるように立ち上がってドアを開けるとソファの上にはミーアの姿しか見えなかった。

「話、終わったのか?」

静かに尋ねると、ミーアがシンを振り返って唇の前に人差し指を立てる。
何だろうかと近付いて見ると、レイがミーアの膝の上で寝ていた。

「・・・なんだよ、これ」
「最近余り眠れてなかったみたいだから寝かせてあげて」
「何で?別れの話、してたんじゃないのか?」
「したよ。ごめんなさいって言い合って、これからは友達として宜しくって、言ったの」
「じゃあ何で!?友達がする事なのか?これって!」
「シンとただのルームメイトだった時、膝枕してあげたよ」
「あの時と状況違うだろ!」
「ねぇ、シン。レイに親切にしちゃ駄目なのかな?」

怒鳴るシンをミーアが困ったように微笑んで抱き寄せる。
本当はミーアも怒鳴りたい心があるだろうに、それを堪えているのが表情で分かった。
きっと膝の上に眠るレイを起こしたくないのだろう。
シンもこれがミーアの膝の上で無ければ怒鳴ったりはしない。ミーアの膝の上だから嫌なのだ。
そこは自分の専用席だ。
「嫌だ」。そう唇だけ動かしたが、それは音にしなかった。抱き締められているから、これはミーアにも見えていない事だろう。
ミーアに対する我侭を全て通せると思える程、シンも子供になりきれなかった。

「信じて。もうあたしとレイはお友達だから」

「信じて」そう言われてしまうと信じるしかない。
シン自身もレイとミーアを信じたいのだから。

「今日、ルームサービスとかじゃなくてミーアがご飯作ってくれるなら許す」

あと、ミーアが俺だけのものだって神様に誓ってくれるなら。

シンは無信仰だが、何か少しでも拘束力を持つ言葉が欲しくて宣誓を求めた。
その言葉にミーアはシンから僅かに体を離すとシンに右手の掌を見せるようにして左手は胸に置いた。

「あたしは、シンだけのものです。神に誓って」

宣誓の後、シンがミーアの手を取る。
じっと見詰め合って「今度は俺に誓って」と、吐息で訴えると、ミーアはシンの手を引き寄せ口付ける。

「シンも誓って、あたしに」
「じゃあ一緒に」

シンはミーアの。
ミーアはシンの。
ただ、互いという存在の為の自分なのだと交互に近い、口付けた。

そしてうっとりとする程長いキスの後、恥ずかしそうに視線を落としてミーアが呟いたのは「でもルームサービスの方があたしの料理より美味しいよ?」だった。
照れ隠しのそれにシンは「いーんだよ。俺、ミーアの不味い料理が食べたいんだ」と、同じように照れながら笑った。

「酷い。不味いはないんじゃない?」
「俺だけが美味しいと思えればそれでいいから、不味くていいの」
「良く分かんないんだけど」
「大丈夫。俺も言っててよく分かってないから」

いいんじゃないのか?と、軽いノリで笑うと、ミーアもつられて笑った。

「じゃあ俺パン屋行って来る。近くに美味しいって言われてる所があるんだけど食べた事無くて。俺が戻って来たらレイを叩き起こして3人で作るぞ」
「何が食べたいの?」
「そうだなぁ・・・・。ビーフシチュー」
「分かった。厨房から材料持って来て貰うようにお願いするね」
「あぁ、行って来る」

頭の中で先程の誓いを思い出すと段々気恥ずかしくなって来たので、素早く段取りを決めると外に出た。
また二人きりにするのは少し嫌だったが、そんなのは自分が直ぐに戻ってくれば済む話だ。
走れば15分で戻って来れるかなと、シンは走り出した。

戻ってくると、レイがミーアの腰に抱きついて寝ていたのでそれには相当腹が立ったのだが、寝ている間の事だからと、ミーアが嬉しそうに宥めて来るのでそれにも不機嫌になる。
しかし、「何で嬉しそうなんだよ」と、むくれると「シンがヤキモチ妬いてくれるから♪」と、直ぐに返してくれるので、これはちょっとやられた。
面では「馬鹿だろ」と、言いながら内心ではちょっと気持ちよかった。

レイも起こして料理をするという話を聞かせた時には、何がどうしてそういう話になったのか理解出来ていないようだったが、意義は無いようなので上品な造りだが狭いキチネットに3人でぎゅうぎゅうになりながら料理をした。
レイが案外料理が作れる事に驚いたと、アカデミーからの付き合いだというのに意外な一面を見たシンは素直に感想を漏らすと「俺もシンが料理を作る姿は初めて見た」と、負けじと返してくるのでお互い様だったかと笑いあった。
クインティリスで二人で住んでいた時には毎日のように食べていた少し不恰好な料理が上品なテーブルの上に並ぶ。
そのアンバランスさを3人で見つめると、誰からともなく笑い出した。

「やっぱりミーアの料理は下手くそだ」
「違うよ!3人で作ったんだから皆下手なんだよ!」
「味が良ければいいんじゃないのか?」

腹の中に入れば見かけは関係ない。

淡々としたレイの結論に、シンとミーアは目を合わせて大笑いする。
「ホテルの高級食材なのに!」
「ある意味贅沢な食べ方かも!」

一人シンとミーアの笑いのツボが分からないレイは戸惑いがちに二人の笑いが収まるのを待った。
食卓は調理中と同じくらい賑やかな物となった。
皮を綺麗に剥いていないジャガイモを見つけると騒動が始まる。
罪の擦り付け合いになり、無口なレイが一番の被害者だ。
「言い返さなきゃ、野菜が不恰好に切ったのもレイのせいになっちゃうよ」
「味付けがちょっと薄いのとかも」
と、ミーアとシンがレイをフォローするように言うが、レイは特に気にした様子を見せない。

「口ではなんと言おうと皆真実を知ってるんだからいいんじゃないのか?」

野菜が不恰好なのはシンのせいで、
味が薄いのはミーアのせいだ。

淡々とした返事にシンとミーアがまた噴出した。

食事が終わり、片付けも終えるとシンとレイはザフトの宿舎に戻ると玄関の前に立った。

「明日から夜もお仕事入る事が多くなるから、その時は護衛を頼んでもいいかなぁ?一応事務所からもボディーガードが来るんだけど」
「今まで通り人事を通せば問題ない」
「あぁ、呼んでくれたら行く」

レイとシンの返事を聞いて安心したミーアが、「おやすみなさい」と、二人の頬に口付けた。
シンもレイもそれに返すと、部屋を後にした。

帰りのエレベーターの中、やはり二人きりになると特に話す事がないと、シンが戸惑っていると、レイがデジタル表示を見つめながらシンに声を掛けた。

「彼女が俺に親切にしてくれたのは・・・・、俺にも両親がいなかったからだ」

自分と同じ境遇の人間だったからだ。

ぽつり。と、告白されて突然の事に直ぐに言葉が出なかった。
しかし、懸命にレイを庇っていたミーアを思い出してすぐに納得する。

「そんな所じゃないかと思ってた」
「そうか」

自分を気遣ってレイが告白してくれたのだと分かったシンは、場を誤魔化すように大きく伸びをした。

「また、料理しような。3人で」

レイが驚いて振り返る。
それに「別に変じゃないだろ」と、笑うと、レイも「・・・そうだな」と、微笑んだ。

<終>

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