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00-W_土曜日氏_ラノベ風超番外SS_03

Last-modified: 2009-06-20 (土) 21:30:10
 

 俺は長生きするつもりでいる。
 少なくとも、志半ばにして他人に哀惜の涙を流されながら天に召される、なんてENDは受け入れるつもりはまったくない。
 昔の偉い人は言いましたとさ、早く死んだらそれだけ他の連中に好き勝手に罵られる、と。
 容姿端麗頭脳明晰体力抜群精神頑健、スペシャル過ぎる俺は正直他人の嫉妬なんぞ気にしないが、
 それでも死人に口なし、俺が物言えぬようになってから心の狭い連中にアレコレ言われるのもシャクに触る。
 妬み深い凡人どもにグウの音も出ない程の実績を叩きつけ、そして寿命の果てに昇天する。
 これこそが俺のあるべき人生だと確信する次第である。
 文句あっか。

 

「……」
「……」

 

 さて、いくら俺が模擬試験二千点満点のエース学生でも、大望を一朝一夕で成せるとは思っていない。
 山あり谷あり、その全てを克服してこそ真の天才であり英雄であるだろう。
 逆境よ常に側にあれ、乗り越えんがための才能なり。

 

「えーと」
「はい!」

 

 や、つまりは試練と言うか、人生上の問題なんぞというモノは結構簡単に転がっていたりするのだなあ、と。
 今、俺の目の前にはケチのつけようのない美少女が椅子に座って微笑んでいる。
 これだけなら試練どころか大歓迎、今すぐ肩に手を回していざレッツゴーとなるわけだが、そうもいかない事情があるわけで。

 

「えー、それで……お前、ナニモン?」
「はい! 人間です!」

 

 今日の朝、この美少女はやってきたのだ。
 俺の腕の中へと、空を飛んで。

 
 

 彼女の名前は荘礼須樽恵空紗(それすたる・えくさ)、何でも転校生ということらしい。
 らしいと曖昧なのは、まだ正式に学校の方に確認を取っていないからだ。
 生徒会の正顧問であるアンフー(暗風先生)がこの場にいれば、すぐにわかるのだが。

 

「で、何の用?」
「はい! 私を助けてくれたばらばらさんにお礼を言いに来たのです!」

 

 彼女が不意に(今日二度目だ、まったく不意打ちの好きな女だ)生徒会を訪ねてきてから、十分余りが経過している。
 それからずっとこんな感じである。
 質問をしても、軸がずれているというか斜め45度というか、どうにも納得出来る答が返ってこない。
 だいたいばらばらさんって何だ。
 俺は英雄国原稲久斗、ばらばらなんて名前では断じてナイ。

 

「朝のことだけどな」
「はい」
「どうして空を飛んで来たんだ」
「はい、一人で飛んできました!」
「だからそーいうことじゃねーってんだろーが」

 

 あれか? コイツはあれなのか?
 ちょっと頭がおかしい可哀想な人なのか?
 それとも耳がおかしいのか?
 もしくは舌か?
 脳と脳を有線で直結して記憶や思考を吸いだしてやりてーよまったく。

 

「……ちょっと、稲久斗」
「何だよ、知恵」
「何よ、この子」
「俺に聞くな」

 

 俺の耳元で知恵が呟く。
 当然ながら生徒会は現在絶賛中断中。
 会議を進めるなら俺とこの子を生徒会室から放り出せば済むことなのだが、知恵がそうしないのは彼女もおそらく戸惑っているからか。
 どう扱っていいかわからない、と言ったほうが正しいかもしれない。
 なお知恵は生理痛とかで全校朝礼に出れなかったので、この青髪美少女と顔を合わせるのは初めてになる。
 他の面々は朝礼に出ていたから(生徒会のメンバーは集会時は必ず生徒の前に出るのだ)、あの信じられないような場面をしっかり目撃しているはずだ。

 

「……とりあえずイチからもう一回聞くぞ、お前は転校生なんだな?」
「はい、本日をもってこの田古王学園の一年に編入することになりました」
「それで、お前の名前は荘礼須樽恵空紗、と」
「はい、間違いありません」
「で、何で空を飛んできたんだ」
「はい、遅刻すると困るからです」
「……じゃ、どうやって空を飛んだんだ」
「はい、一人で飛びました!」
「だーっ!」
「ありがとうございました! 受け止めていただいて、私は感謝感激しています!」

 

 どうする、おいどうするよコイツ。
 ああ、風楽が口を押さえて震えていやがる。
 ちくしょうめ、笑うならハッキリ笑えよ。

 

「すまないが、生徒会を続けないというのなら僕は退出させてもらうよ」
「あん?」

 

 俺と荘礼須樽恵空紗、時々知恵。
 この十分、三人だけが会話を交わしていたのだが、ここに至って別に人物が割り込んできた。
 二年生代表の一人、アルバート・蟻馬だ。

 

「少し用事があるものでね。それに」
「んん?」
「彼女に聞くより教師に事情を聞いた方がこの際早いような気がするのだがね」
「はあ?」
「何、ここでこうやって出口の無い喋りを続けていても時間の浪費ということさ。では失礼……」

 

 ペコリ、と形だけは丁寧に挨拶をして、蟻馬は生徒会室を出ていく。
 あー、まったくヤな野郎だ。
 たいした才能もないくせに態度だけはデカイし、事あるごとにこうやって俺に下手な皮肉をぶつけてくる。
 ぺっぺっ、とっとと帰れ帰れ。

 

「あ、ちょっと蟻馬君!」

 

 止める必要ないぞ知恵。
 奴のちっぽけな自主性を最大限に尊重してやれ。
 どうせあんな奴がいなくても、生徒会は俺がいる限りちゃんと回る。

 

「どうする? 稲久斗」

 

 と、蟻馬の奴が扉の向こうに消えたのを確認してから、鉄人が俺に声をかけてくる。
 この場合のどうする? は蟻馬が出て行ってしまったことではなく、
 青髪美少女をどうする? ということを聞いているのだ。
 鉄人は無口なタチで長々と喋ったりしないので、言葉の意図をはっきりと読んでやる必要がある。
 まあ、こいつとは友人付き合いも長いので、言いたいことの九割九分はちゃんと理解してやれる。

 

「いや、どうするったってなあ」

 

 部屋中の視線が俺に集まる。
 目の前の青髪美少女もそうだが、コイツの場合はきょとんとどこか他人事な感じである。
 おい、本当にナメとんのかコイツは。

 

「知恵」
「え、あ、何?」
「ちょっと隣の会長室、使っていいか?」

 

 会長室とはこの生徒会室の隣にある部屋のこと。
 呼び名からして会長専用のご立派な部屋か、と言えばさにあらず。
 もともと物置だった小さな部屋で、今は生徒会の記録文書がそこに保管されている。
 一応会長専用の机と椅子もあるが、何、どこのクラスにも置いてある普通の学級机と学級椅子で、何も特別なことはない。
 資料室とするよりは会長室と名前だけでも格好つけておきたい、と何代か前の生徒会長が決め、
 別に誰にも実害がないのでそれからずーっとそんな扱いになってるだけのことだ。
 あ、あとコーヒーメーカーがあるので、生徒会の費用でコーヒーが飲めるという利点がある。

 

「……どうするの?」
「コイツを尋問する、マンツーマンで」

 

 俺には知る権利がある。
 俺は関係者なのだ、この事件の。
 向こうも礼を言いにきたということは、感謝の念があるということだろう。
 ならば、事情を掘り下げて聞いても全然問題がないはずだ。

 

「え、ダ、ダメよ!」
「だってここだと会議が止まっちまうだろ。俺とコイツはそっちに移るから、議題をこなしていってくれよ」
「ダメ、却下!」
「何で」
「どうしても!」

 

 何なんだ今日のコイツは。
 いくらあの日だからと言ってもプリプリし過ぎだ。
 別にイカガワシイ行為に及ぼうというわけじゃない、単純に事情が知りたいだけなんだ俺は。
 俺と青髪美少女、そして生徒会を分けて進めた方が効率がいいに決まっている。

 

「二人きりなんて許さ―――いいえ、生徒会としてもこの件については無視出来ません」
「は?」
「学校運営に関わる者として、生徒会のメンバーも知る権利があるはずです」
「はあ」

 

 何じゃそりゃ。
 別に俺が聞きだして、そして後から俺が皆に話せば済むことじゃないか。

 

「と、いうわけで荘礼須樽恵空紗さん」
「はい!」
「あなたが転校生ということはわかっています、そして空を飛んできたのも」
「はい」
「ならば、何故空を飛んできたのか、ということを説明して欲しいのだけれど」

 

 おい、俺を置いて話をするな。
 お前はその場にいなかっただろ知恵、身体を張った俺こそ、スペシャルな俺こそが会話をリードするのに相応しいはずだろう。

 

「それについては、私が話そうか」
「え?」

 

 俺を含め、全員が驚いた。
 生徒会の誰でもない声が、不意に(また不意だ、まったく!)聞こえてきたからだ。

 

「遅れてしまって失礼、ちょっと用事があってね」

 

 その声、落ち着いたトーンで、冷静さと同時に温かさも感じさせるような声の持ち主が、扉を開けて生徒会室へと入ってくる。

 

「あ……アンフー!?」
「英雄国原、本人を目の前にした時は実名で読んで欲しいな。ちゃんと『先生』もつけて」

 

 白衣、腰まで届く艶やかな黒髪、そして知的な眼差し。
 生徒会正顧問、アンフーこと暗風華化学教師その人だった。

 

   ◆   ◆   ◆

 

「……そうか、引き続き連絡を頼むよ」

 

 暗い、暗いとある部屋。
 昼間だと言うのに、カーテンが閉め切ってあり、灯りも薄暗くしか点いていない。

 

「彼女はやはり無事だったそうだ」

 

 携帯電話を切ると、その薄暗い部屋の主は、すぐ背後に控えている人物に語りかけた。

 

「そして、目標の人物と接触したんだとさ」

 

 声は男のものだった。
 高くもなく低くもないが、どこか挑発的で嘲弄的なイントネーションである。
 声質からしても、年齢は決して高くない。

 

「……」

 

 男は数秒、考え込んだ。

 

「彼女を―――双神君を呼んでくれないかな」

 

 そして、背後の人物に指示を出した。
 依頼というより、それは命令に近いものだった。

 

「はい、ウィンガーズ様」

 

 背後の人物はそれに答えた。
 こちらは、女性だった。
 『命令』を実行すべく、主の側を離れて、部屋を出ていく。

 

「……ふふ」

 

 薄暗い部屋に一人きりになり、ウィンガーズと呼ばれた男は小さく笑った。
 楽しくて仕方がない、という風に。

 
 
 

 ―――続く

 

 

【あとがき】
 謎の組織は出番が早ければ早い程言い。
 どうも土曜日です。
 お約束として敵は必要でしょう、ということでWのMSの方々にはその役を担ってもらいます。
 そして早速ゼロカスとナタクを使わせてもらいました。

 

 さて、私はここ最近のラノベがどんなものかほとんど知りません。
 なのでこのベタベタ悪ノリネタを続けるにあたって、どうか皆さんにご協力を仰ぎたいのです。
 つまりは今後の展開や設定、さらにはタイトルも考えて下さい、と。
 バカをやるには独りでは寂しいです、酒の力だけじゃ限界があります。
 どうぞよろしくお願いします。

 

 では、次は新機動炭酸にて。

 
 

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