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00-W_土曜日氏_02

Last-modified: 2008-09-08 (月) 16:56:58
 

 マリーメイア・クシュリナーダの軍事蜂起は、プリベンターとガンダムたちの活躍、そして真に平和を希求する世界人類の抗議行動によって失敗、終結した。
 この世にある軍事兵器としてつかわれるMSは、ことごとく姿を消すこととなり、世界は恒久的平和を手に入れることが出来た。
 だが、かと言って争いの火種は完全に消失したわけではない。
 人が感情と理性という、相容れない要素を持った生き物である限り、紛争の導火線は残り続ける。
 いみじくも改心前のマリーメイアが語った通り、人は戦うことで人足り得た面が、確かにあるのだ。

 

「さて、次の仕事はシベリアに残る軍事施設の取り壊しよ」

 

 プリベンターのメンバーであるサリィ・ポォは微笑みながら言った。

 

「無人なのか?」

 

 サリィの目の前、切れ長の鋭い目つきをした少年が言葉を受けて質問を返す。
 少年の名前は張五飛(チャン・ウーフェイ)といい、シェンロンガンダム、アルトロンガンダムを駆って戦場をかけぬけてきた猛者だ。

 

「一応はね。せわしないけど、すぐに現地に飛ぶわよ」
「シベリアは広い。確認出来ていない施設もあるんじゃないのか」

 

 さらなる五飛の質問に、サリィは首を縦に振った。
 プリベンターのトップであるレディ・アンは広い情報網を持っているが、さすがに世界の全てをカバー出来る程ではない。

 

「まあ、行ってみてから調べるしかない部分はあるけどね」
「それにしても、効率が悪い」
「うーん、ゼクスとノインが抜けてからこっち、人手不足だから」

 

 プリベンターはその役割の重さに比べて、極端に構成人員が少ない。
 平和を維持するために争いの火種を摘むという仕事なだけに、信頼の置けない人間を簡単に参入させることは出来ないにしても、である。

 

「あ、でも今度、新しいメンバーが来ることになってるのよ」
「本当か?」
「ええ。それで、今日ここに来ることになってるらしいの」

 

 ここ、とはちなみに空港のことである。

 

「突然だな」
「まあ、そこら辺は話の都合上」
「ふん。しかし、そいつは出来る奴なんだろうな?」
「さあ……レディ・アンは意味深に笑って教えてくれなかったけど」
「名前は?」
「確か、パトリック・コーラサワーとか何とか」
「コーラサワー? コードネームか?」
「違うみたい」
「……」

 

 妙に不安になってくる二人なのだった。

 

          *          *          *

 

『ピンポンパンポン♪ サリィ・ポォ様、サリィ・ポォ様、その、迷子の青年をお預かり……キャッ!』
『誰が迷子だコラァ! 迎えひとつ地図ひとつよこさずに空港に来いっていう方が悪いんだろうがあ!』
『ちょ、やめて下さい! 暴れないで!』
『うるせー! 俺は! スペシャルで! 二千回で! 模擬戦無敵の! パトリック・コーラサワー様だぞぉ!』
『お願いです! サリィ・ポォ様! 早く、はやく迎えにきてー!』

 
 

 空港中に響く大音量。
 固まる空気と行き交う人たち。

 

「プリベンター・ウォーター」
「なあに?」
「御指名だ」
「……行きたくないわね」

 

 サリィも五飛も、気遅れとか尻ごみとかいう単語とは無縁の人物だが、その二人をして、進んで新しいメンバーを迎えに行こうという意思は起こらなかった。

 

「プリベンター・ウォーター」
「……コードネームで呼ばないで」
「プリベンター、今ここで抜けていいか」
「ダメ。私ひとりであのスペシャルなコーラなんとかの面倒を見ろっていうの?」

 
 

『うおおおーっ! どうしたプリベンター! はやくこのスペシャルエース様を迎えに出てこいやー!』
『助けてー! きゃあああああああ』

 
 

「……」
「……」

 

 このコーラサワーこそ、新たなる争いの火種でなはいのか。
 今ここで消しておくべきではないのか。
 そうサリィと五飛は思ったが、立場上あえて言葉には出さなかった。

 
 

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