Top > 00-W_土曜日氏_106
HTML convert time to 0.007 sec.


00-W_土曜日氏_106

Last-modified: 2009-07-04 (土) 19:11:16
 

 ♪重いテーマを詰めた 硬い調子のアニメキャラよりも
  天まで突き抜けるような コーラサワーが欲しい
  決められた筋の中 あまり出番が見られないのは
  二期で収めなかった 監督たちのせいです
  皆が笑う 癒しならば 恥じることはないのさ
  尺の陰に隠れた 幸せ探せ
  奇跡起こせ 戦場に
  遅れたコーラサワー
  巻き起こせ 熱い風
  冷めかけた展開に
  奇跡起こせ 戦場に
  不死身のコーラサワー
  叶えるのさ 誰もが
  望んでいた夢を♪
(原曲:遅れてきた○者たち

 
 

 ど真ん中一本の剛球男、パトリック・コーラサワー。
 高校野球漫画は三つの系統に分けられる。
 ドカ○ンの如き王道、タ○チの如き青春、緑○高校の如きハチャメチャ。
 ソースは友人。
 正味の話、どの系統にコーラサワーを放り込んでもあまり違和感ないのは気のせいか。
 ルー○ーズでもイケるよ多分。
 だんだんと前フリがガンダムと関係なくなってきたが、ネタが無いんですすいません。
 もうぼちぼち二部から三部に移行するので、そこで歌詞ネタも終わりにするとします。

 

   ◆   ◆   ◆

 

 世界は今のところ平和である。
 すなわち治安維持の最後の砦たるプリベンターも平和である。
 年間予算にして警備隊の十分の一以下、独自の施設も日中プログラムも無いプリベンターは、出動が無けりゃホントに暇なのだ。
 レディ・アンが5mmの穴に10mmのネジを突っ込むが如き強引さで設立した組織だけのことはある。
 何でも個人的に収集した政府閣僚の弱味を盾に迫ったとかナントカ。
 がっぽり予算を引っ張ってこなかったのは、さすがに組織の体質を考えたからなのか、それともOZの轍を踏むべからずと自制したためか。
 脅迫紛いで隠密同心を作ったんだから轍もクソも無いとも思うのだが、まあそれはそれとしておこう。

 

「もうぼちぼちじゃないのか」
「何がだよ」

 

 パトリック・コーラサワーはだらしなくソファに腰掛けながら、目の前に座っているデュオ・マックスウェルに質問した。
 テーブルにはヒルデ・シュバイカーが持ってきたお茶の湯のみがあるが、ちなみに言っておくと今日のお茶は玄米茶である。

 

「ポニテ博士の新型」

 

 ポニテ博士ことビリー・カタギリお手製の新たなMS(ミカンスーツ)は、現在組み上げの最終段階である。
 前代のネーブルバレンシアはほとんどパイロットごとに性能や特徴の差は無かったが、今度の新型はそれぞれの特性や戦法に合わせたものになっており、外見もどこかかつての彼らの愛機に近いものになっている。
 コーラサワーならイナクト、グラハムならフラッグという風に。
 尤も、まんまそのままではないが。

 

「ミカンエンジン自体は問題ないとか何とか。後は外装とか細々したものの調整だろう」
「何だよ面倒くせーな、ぱっぱと出来ないのか」
「あの博士一人でほとんどやってんだぞ、無理言うな」

 

 仕事が速いのか遅いのかわからないことに定評のあるビリー・カタギリ、つうか一人でほとんどやっちゃうんだからやっぱり天才ではあるのだが、何と言うか、変に職人気質なところもあって、『何故そこにこだわる』というところに力を入れちゃったり。
 まぁこれは恩師であるレイフ・エイフマン教授譲りな面もあるのだろうが。

 

「我が盟友は信頼出来る。任せておけば問題ない」
「毎日催促に行ってる人間の台詞と思えねーな」
「頭では理解していても、急く心を抑えることは出来ないものだ」
「要はお前も早く欲しいんだろ、新型」
「無論、当然至極」

 

 かみ合ってるのかかみ合ってないのか、判断つきかねるコーラサワーとグラハム・エーカーなのであった。

 

   ◆   ◆   ◆

 

 絹江・クロスロードは怒りに肩をふるわせつつ、歩いていた。
 彼女はJNNTVの報道アナウンサーであり、若いながら様々な現場に突撃取材を行い、局内ではやり手として認められている存在である。
 が、その一方で直線的過ぎるやり方が、局の上層部からおもしろく思われていないのも事実だった。

 

「冗談じゃないわ、こんなところで立ち止まっていられるものですか……!」

 

 つい数分前、彼女は上司に呼び出された。
 そして、今追いかけている取材を自重するように言われたのだ。
 つまりは『もうやめろ』という宣告だった。

 

「くっ、せっかく情報が揃ってきたのに」

 

 彼女の亡父もまた、マスコミに身を置く者だった。
 彼女と弟がまだ年少の頃、とある自然災害の現場を取材中に事故に巻き込まれてこの世を去ってしまった。
 身内の前では温かき家庭人であり、仕事場では妥協を許さぬ厳しい記者だった父を、彼女は尊敬していた。
 いつか、自分も父のような素晴らしい人間になりたい。
 そう思って、絹江は自身の職場にテレビ局を選んだのだ。

 

「おうおう、またお叱りを受けたようじゃのう?」
「……」
「ふむ、図星というわけか」

 

 廊下をドスドスと速足で歩く絹江に、一人の老人が話しかけてきた。
 この局の資料室を巣穴にしている非常勤職員で、局内で絹江が信頼を置く人間の一人でもある。

 

「まぁでも実際、色々ヤバくはないか?」
「どういうことです?」
「相手はあの今をときめく『アロウズ』じゃろう?」
「……ええ」

 

 絹江が今追いかけているのは、巨大企業《アロウズ》の内部関係について。
 急成長を遂げているアロウズには、以前からキナ臭い噂がついてまわっていた。
 曰く『アロウズ内部に特別な部署があり、その部署が真っ当ではない方法を使って自社の利益と勢力を伸ばしている』と。
 その手の話は言わばお約束とも言うべきもので、根拠の無い一方的なバッシングや、他社のやっかみが大抵根元にある。
 が、火の無いところに煙はたたないものまた事実。
 そして、アロウズの場合はその煙の量が半端ではないのであった。

 

「お前さんの猪突猛進主義じゃあ、ちょっと厳しいんじゃないかと思うんだがの」
「取材は適切な手段で行われるべきです、でないと……」
「裏口を漁るような方法で真実を解き明かしても意味がない、と言いたいのはわかる」
「……」
「だが、正面突破が通じるかどうかは、相手による」
「それは……」
「巨人に真っ向から挑んでも叩き潰されるだけじゃ、向う脛を蹴り飛ばすやり方が正しい時もある」

 

 絹江は何か反論しようとして、やめた。
 相手の正しさを認めたからだ。
 彼女だってわかってはいる、世の中は単純ではない。
 魚を釣る時は釣り竿を、獣を狩る時は猟銃を。
 正門が閉まっていたら裏門を……。

 

「お前さんが高潔だった親父さんを尊敬しているのは理解出来る」
「……」
「しかし、親父さんみたいになりたいと願うのだったら、尚更挫折するわけにいかんだろうに?」
「でも……」
「ペンは剣よりも強し、それを信奉するなら、剣に倒れるような真似はしたらダメじゃな」

 

 絹江は頷いた。
 父は不幸にも、報道者としての人生を断たれた。
 父の場合は完全に事故だったが、自分の場合には事故でなく人為的な事件が降りかかってくるかもしれない。
 真実を暴こうとする者は相手が消えてしまうと困るが、真実を隠そうとする者は相手が消えてしまえば都合がいいのだから。

 

「じゃあ、どうすれば……?」
「そうだの」

 

 老人は顎に手をあてて考え込むポーズを取った。
 小指が立っているのがソレっぽいが、このイカツイ風貌に合っているように思えるのだから不思議である。

 

「まずは、昼食でもしてきたらいい」
「え?」
「つい十分程前からから、お前さんを待っている人がロビーに来ている、ってコトじゃ」
「……あ!」

 

 絹江は思い出した。
 弟とその彼女と、昼食を共にすることを。
 慌てて胸のポケットから携帯電話を取りだすと、そこには十回程、同じ相手からのコールの記録が入っていた。
 上司に呼び出されたために消音にして振動機能も切っておいたのだが、それが仇になった形だ。

 

「腹が減っては戦は出来ん。ほれ、まずは目の前のことから片づけて来い」
「は、はい!」

 

 老人に一礼をすると、絹江はエレベーターに向かって一直線に廊下を走った。
 これが学校ならば、先生に間違いなく叱られていたであろう。

 

「やれやれ」

 

 絹江の後姿を見送ると、老人は苦笑気味に一つ息を吐いた。

 

「熱くなると周囲が見えなくなるのは、父親にそっくりじゃな」

 

 そして、人差し指でサングラスの位置を直すと、アロハシャツの裾をはたき、歩き出した。
 絹江が去った方とは、逆側に。

 

   ◆   ◆   ◆

 

「愛、まさしく愛だ、これは」
「俺の大佐に対する気持ちも愛だぜ」
「愛は全てを超越する、純粋で単純で、同時に無限の広がりを持っているのだ」
「七面倒臭い理屈を並べなくても、好きな気持ちは好きって言葉でしか表現出来ないってこった」

 

 プリベンターにおけるグラハムとコーラサワーの漫才はひたすら継続中。
 つうか、漫才とも言えない様相を呈してきた。

 

「目を閉じれば目蓋の裏に浮かぶ、フラッグに乗って駆けたあのどこまでも続く蒼き天空が」
「思い返せば俺も色々な女性と付き合ってきた、小さい頃から何十人何百人と」
「あれはまさに至福にして至高。基地に戻るのが惜しいと思ったくらいだ」
「その一人ひとりに俺は真剣だった。適当に付き合ったことは一度もねー」
「今はフラッグはこの手の届くところにない。しかし、その面影を受け継ぎし機体が生まれようとしている」
「この掌は、彼女たちの柔肌の感覚を今でも覚えている。しかし、俺は大佐に出会ってしまった」

 

 果たしてどこで空き缶に躓いてしまったのやら、ポエムなんだかそうでないんだか、どう表現していいかわからん『語り合い』の場になってしまっていた。
 最早、デュオも五飛も突っ込めない。
 つうか、彼らにしてどう突っ込んでいいのかわからない領域にコーラサワーとグラハムは今、いる。

 

「だから私は声を高らかにして請う! 盟友よ! その新たな剣を我に、一刻も早く我に与えよと!」
「だから俺は声を大きくして言う! 大佐ぁ! 大好きです、子供は三人欲しいですと!」

 

 今日も今日とて、プリベンターは平和も平和、三十路男がゴーイングマイロード。
 そこに、騒乱の陰りは、まだ一片たりとも落ちてはいない。
 そう、まだ。

 
 

 プリベンターとパトリック・コーラサワーの心の旅は続く―――

 

 

【あとがき】
 サングラスでアロハと言ったらあの爺さんですコンバンハ。
 ま、いずれまた出番がねサヨウナラ。

 
 

 【前】 【戻る】 【次】