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00-W_土曜日氏_112

Last-modified: 2009-08-13 (木) 18:04:05
 

 修行、というものに果たして諸氏はどのようなイメージを抱いておられるだろうか。
 護摩行、滝行、断食、エトセトラセトセトラ……。
 そういったものがすぐに頭に浮かぶのではないだろうか。
 修行とは仏教用語で、【人間的な欲望から解放され、あるがまま生きることに充足を覚える状態を追及する行為である】、とされている。
 つまりは絶対的幸福への道であり、負の感情を捨て去り、心を穏やかに保たねばならず、なまなかにたどり着ける境地ではない、という。
 その過程は困難を極めるので、修行=苦行とも言えるだろう。
 まぁ凡人である身からすれば、ゲームはしたいしテレビも見たい、おいしいものを食べたい、かわいい娘ともつきあいたいわけで、ぶっちゃけやりたくありません、てのが修行ってもんじゃないかな、と思うわけだが、さて。
 まあ絶対的幸福にしろ相対的幸福にしろ、成果を得るためには何らかの試練を乗り越えなければならないのは確かっちゃ確かなところ。
 楽して目的達成したい、というのはおそらく地球に生きる八割以上に人間が思っていることだろうが、実際のところ、大なり小なり、苦労せにゃ人間は成長出来ないので、人生これ全て修行とも言えるはずである。

 
 

 さて。
 00において修行と言えば、まず誰を思いつくだろうか。
 正直、愚問であると思うが、しばしの間考えていただきたい。

 

 <シンキングタイム・ご随意にご休憩下さい>

 

 では答え合わせ。
 はい正解、あなた大正解。
 ですよね、あの人しかいませんよね。

 

「ぬうううううう、心頭滅却すれば熱いコーヒーもまたぬるし」

 

 ご立派にも、堂々と作中で滝に打たれていた人がいましたね。
 あれを見たときは思わずひっくり返りそうになりましたが。

 

「ナウマク・サンマンダ・ボダナン・ア・ビ・ラ・ウンケン・ホンワカテレビ!」

 

 センチメンタル大暴走。
 ダイナミック乙女座。
 鬼の仮面はサムライの証。
 私色に染め上げマッシュポテト。
 黒き翼で大空を舞うあのお方以外に誰がいるのか。

 

「喝ッ! 喝ッ! 敵に勝ツッ!」

 

 そう、ミスター・ブシドーこと、グラハム・エーカー氏である。
 ガンダムの中で堂々と修行(訓練や覚醒にあらず)したの、この人とドモン・カッシュくらいなもんじゃないのかねえ、しかし。

 

 ◆ ◆ ◆

 

 場所は極東の島国のとある山中、木々を分けてやっと辿り着く卑怯、じゃない秘境の地。
 最早誰が建てたか、そして宗派すらわからなくなった一軒の寺がある。
 そこに最近、明らかにアジア系ではない人間がやってきた。
 まぁ所有者がいないわけだし、近くに住人もいないし、不法占拠にもなりゃせんだろうが。

 

「よし! 滝行終了! 次のプログラムに移る!」

 

 で、その人間とは当然グラハム氏なのだが、さて彼が果たして修行のなんたるかを理解しているかと言えば、正直怪しい。
 密教とか神道とか、多分彼にとってはどーでもいいことだと思われる。
 要は“修行した”という実感が大事なのだ、彼には。
 あくまでマイペースに物事を進める彼らしいっちゃ彼らしいことではあるが。
 ま、病は気からとも申しますし、成果が得られりゃそれでいいってことでしょうな。
 勘違いのトレーニングであっても、ホームラン打てりゃそれが正解ってことですわ、きっと。

 

「今より瞑想を始める! むんっ!」

 

 瞑想かそれとも迷走か。
 しかし気合いを入れて荒れ寺の本堂で座禅を組む金髪人間てのもミョウチキリンではある。
 や、ヘンケン・ベッケナー、もとい偏見かもしれないが。

 

「……」

 

 目を瞑り、結跏趺坐でピクリとも動かないグラハム。
 形から入っているとはいえ、ここまでやれりゃある意味立派ではある。
 ちなみに、彼の一日の“プログラム”はこうなっている。

 
 4:00  起床
      清水で口を濯ぎ、日が昇るまで崖の上で東の空を眺め続ける。
 7:00  朝食
      マッシュポテトとコーヒー
 8:00  読経
      般若心経をひたすら繰り返す
 12:00 滝行
      白衣(ビリーのではない)を来て決意を込めた言葉を滝の音に負けない声量で唸る
 14:00 瞑想
      心を無にする
 17:00 鍛練
      竹林の中で体術と剣術の稽古
 19:00 夕食
      マッシュポテトとコーヒー
 20:00 読書
      五輪の書とか柴田錬○郎とか司馬遼○郎とか池波正○郎とか、そんなの
 22:00 仏像製作
      カッターナイフでカリカリと
 23:00 就寝
      一日を反省しつつ、寝る
 

 うーん。
 そのうち栄養失調で倒れてしまわないか心配ではある。
 ま、彼が納得しているならそれでいいってことでしょう。
 さっきも述べたが、本人がそう思っているならそれが正しいのだ。
 そもそもこの果てしない勘違いを正せる人間など、今の彼の側にはいない。

 

「……」

 

 グラハム・エーカー、別名ミスター・ブシドー。
 アザディスタンでとった不覚の汚名を晴らすため、自己研鑽の真っ最中。
 盟友が作りし新たなMS(ミカンスーツ)に乗るのに相応しい漢(おとこ)になるために、
 そして憎き敵を倒す力を得るために、奮闘努力の日々を送っている。
 方向が斜め上どころかもう四次元の彼方でどっち向いちゃってるかわからないが、繰り返す、本人がそう思ってりゃそれでいいのだ。
 で、いずれプリベンターに復帰する時、新たな何かを加えたニュー・グラハムを拝めるはずだ、きっと。
 周りが何て言うかわからんけれども。

 

 ◆ ◆ ◆

 

「う、う、うーん、うーん……」

 

 追記。
 修行のパートナー(無理矢理連れてこられた)であるアラスカ野君は、初日の滝行で体調崩して療養中。
 医者がいないので、布団にくるまってただ病が過ぎ去るのを待つのみの彼である。
 嗚呼、この愛すべきヘタレに愛の手を。
 そいで、グラハム氏に仏かなんかわからんが、何らかの加護があらんことを。

 
 

 プリベンターとパト……グラハム・エーカーとジョシュア・エドワーズの修行は続く―――

 

 

【あとがき】
 コンバンハ。
 お盆は投下出来そうにないので前倒しです、コーラさんの第三部登場はまだ引っ張りますのでよろしくサヨウナラ。
 では、皆さま良いお盆休みを。

 
 

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