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00-W_土曜日氏_17

Last-modified: 2008-09-17 (水) 18:13:13
 

「はあっはっはっは! ようこそガキども! 俺がAEUのスペシャルエース、パトリック・コォォォラサワァァァだっ!」

 

「うっせーよどけよー」
「ガンダムパイロットと話がしたいよー、おっさん邪魔だよー」
「えーんえーん、あのおじちゃん怖いよおおお」
「はーっはっはっは! 照れんじゃねーよ! ホントは嬉しいクセによ!」
「このおっちゃん、頭にウジわいてんじゃね?」
「てか、ようこそって僕たち呼ばれたわけじゃないよな」
「あーっはっはっは!」

 

 パトリック・コーラサワーは腰に手を当て、胸を大きく反らして笑っていた。
 幼い子供たちの輪の真ん中で。

 

          *          *          *

 

 モラリアの件が片付いた後、プリベンターは本部への撤収を開始した。
 輸送機なりヘリコプターなりでバラバラバラと本部まで飛んでいけば簡単なのだが、何せ統合政府は只今ド貧乏。
 裏方のプリベンターに移動用の専用機をあてがう予算などありゃしないわけで、わざわざ車で最寄の空港までエンヤコラと地べた這っていかねばならないのだった。
 で、その道中で運転していたデュオがとあるモノを発見した。
 タイヤ前輪の片方を側溝に落としてしまったバスで、中に乗っていたのは遠足返りの幼稚園児たち。
 表だって活動出来ないプリベンターとはいえ、人の苦難を見過ごすことは出来ない。
 ウインチでバスを引っ張りあげて無事に道路にバスを引きずり戻してあげたところ、子供たちはおおいに喜んだ。

 

「ありがとう、ガンダムパイロットのお兄ちゃんたち!」

 

 このお礼の言葉に、ピピピッとコーラサワーが反応した。
 いや、反応”してしまった”。
 ガンダムパイロットのお兄ちゃんたち、ということは俺は含まれてないんかいゴルァ、と。

 

「おおっと! このスペシャルで模擬戦二千回、超エースのパトリック・コーラサワーを忘れてねぇかい?」

 

 子供たちの前にずかずかと進み出て、自己アピールを開始するコーラサワー。
 が、子供は冷酷な生き物である。
 興味のある対象は壊すまでいじくりまわすが、無関心な対象は蚊トンボほどにも気にとめない。

 

「おっさん、誰?」
「おじちゃん、邪魔だよぅ」
「変な髪型だー」

 

 罵詈雑言の雨あられ。
 そりゃまあ、ガンダムパイロットと自称エースのコーラサワーでは、売れっ子アイドルと宴会回りの芸人ほどに差があるのは確かではあるが。

 

「はっはっは! お前らカワイクねーな! 遠慮すんな、サインならいくらでもしてやるからよ」
「いるかよ」
「おっちゃんキモーイ」
「バーカバーカ」
「ぐ……は、はっはっは、素直じゃねガキたちだぜ。ん? 記念写真撮るか?」
「あ! カメラに触るなよう! パパに買ってもらった最新型デジカメだぞ! 壊れたらどーすんだよ!」

 

 まったく相手にされないコーラサワー28歳独身。
 無残である。

 

          *          *          *

 

「アイツは何やってんだ……」

 

 そんなコーラサワーと子供たちの心温まる触れ合い(?)を横眼で見ながら、当のガンダムパイロットたちはひたすら溜め息。

 

「出番がまったくなかったから自己主張したいんでしょう」
「まぁ、先週は活躍らしい活躍もないまま退場したし、今週は今週で完全無視くらったからな」

 

 そうなのである。
 冒頭は蟻の人が大活躍、中盤は絶望ティエリア先生、終盤はテロ騒ぎでコーラサワーのコの字もなかった。
 願わくばモラリア市街に墜落していないことを祈るばかりだ、本編のコーラサワー君。

 

「わは、わははは、いい加減にしとけよぉお前らあ、俺が笑ってるうちに素直になっとくべきだぞぉぉぉ」
「バーカバーカ、コーラバーカ」
「えい、蹴ってやるー」
「キモイキモイキモーイ」
「あいて! マジで蹴る奴があるか! あ、だ、誰が空き缶投げつけた奴ぁ!」
「これでも喰らえー」
「な、なんじゃあこりゃあ!?」

 

 噛み尽したガム、ねるねるねるねの食い残し、バナナの皮、梅干しの種、ハンバーガーのレタス、ヤ○ルトのカップ……。
 コーラサワー、とうとう言葉だけでなくモノまで投げつけられる有様に。
 止めるべき引率の先生は携帯電話で幼稚園に必至に言い訳していて、まったく関知しようとしない。

 

「お、お、お前らあああ、いくら温厚な俺様だからって、そのうちキレるぞコラぁぁ!」
「わー怒ったー」
「へーんだ、そんなの関係ねー、そんなの関係ねーっ」
「かんけーねぇ! あ、そんなのかんけーねぇ!」
「はーいオッパッピー!」

 

 男の子も女の子も分け隔てなく、子供たちは一斉に小○よしおのモノマネ開始。
 あのリズムに乗ってコーラサワーを囃したてる。

 

「ぐ、ぐ、ぐおおおおお! もうドタマに来たぜ! ギッタンギッタンにしてやらああああ!」

 

 さすがに我慢の限界か、ブチギレたコーラサワーは頭から怒りの溶岩大爆発。

 

「お前ら、今から模擬戦だ! 一発くらわしてやるから覚悟しやがれ!」

 

 上半身裸になると、コーラサワーは子供たちの輪に飛び込んだ。
 蜘蛛の子散らしたように逃げだした幼い子を追いかけまわす彼は、側から見ると完全にアブナイおっさんそのものである。

 

          *          *          *

 

「……あのバカ、何しているんだ」
「子供たちも悪いけど、本気になるアイツはもっと悪いな」

 

 ガンダムパイロットたちは再度溜め息を吐いた。
 バカなのはわかっているが、ここまで暴走されるともうあきれ返るしかない。

 

「しかし、ついさっきまで精魂尽き果てて真っ白になってたクセに元気な奴だ」
「とにかく止めようぜ、怪我人が出る前に」
「よし、俺に任せろ」
「って、何拳銃取り出してるんですか五飛?」

 
 

 プリベンターとパトリック・コーラサワーの心の旅は続く――

 
 

 なお、現場部隊のまとめ役であるサリィ・ポォは何をしているかと言うと。

 

『奥さんそりゃダメですよ、それは奥さんも悪い、旦那さんも悪いけど奥さんも悪い……』
「あー、でもやっぱりオトコの方が悪いわよねえ、これ」

 

 車の中でみ○もんたの番組なぞ見つつ、外の騒動に完全無視を決め込んでいた。

 

『子供さんいるんでしょ? 可哀想ですよ、ね、子供に罪はないでしょ? もっとオトナにならなきゃ奥さん、ね、そうでしょ?』

 

 

【あとがき】
 ちゃんと出番のある乙女座と傷親父、大活躍の蟻さんに比べて我らがコーラはコンバンワ。
 次回こそは出てきてほしいものです、合計で五分以上サヨウナラ。

 
 

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