Top > 00-W_土曜日氏_42
HTML convert time to 0.008 sec.


00-W_土曜日氏_42

Last-modified: 2008-11-23 (日) 21:02:08
 

 パトリック=コーラサワーは人間である。

 

 何を当たり前な、と思われるだろうが、では改めて今までを振り返っていただきたい。
 なお、アニメ本編のことなのでご了承を。
 まず、栄えあるテレビデビューは00の初回、まだ皆がこのガンダムは海のものか山のものか判別ついていない頃のことだった。
 AEUの新型MSイナクトのお披露目の最中に、主人公の刹那が駆るガンダムエクシアに文字通りバラバラにされてしまうという、ガンダムの優位性、CBという組織の特殊さを視聴者に強く印象付ける展開であったのだが、さてこの時、イナクトはボコボコだったわけだが我らがパトリックさんはどうだったか。
 やられた直後にコクピットから飛び出ると、空を行くエクシアに思いっきり吠え倒し、その後検査入院したようだったがどー考えても無傷、まったくの無傷。
 グラハムとビリーがイナクトの安全性に感心していたが、あれはもしかするとパイロット込みで言ってるんじゃないかと今になって思えたり何かして。

 

 次はモラリア。
 この軍事産業国家にCBが介入すると予見したAEUは“エース”パトリックさんの派遣を決定。
 イーヤッフーゥ! でよろしくなモラリア空軍! そして見つけたぜガンダム! なんじゃーそりゃー!
 多分これで合計一分も画面に映っていまい。
 対ガンダムで一番致死率が高いと思われるヴァーチェの絶望ビームをすんでのところでかわし墜落、その派手(?)な活躍に、我々の心はガッチリと掴まれ、さらに改めて、「出オチ」「調子乗り」の漂いを感じ取った次第であった。

 

 お次はAEU空軍基地。
 CBを認めようとする世論に対し、三国の政府は対決姿勢に傾向、連携して一大包囲殲滅作戦を取るべく、それぞれの陣営にトップガンが集められる……の中でパトリックさんは何をしていたか。
 そう、基地の横、新橋色のオープンカーで金髪さんとちゅっちゅくちゅしていたのである。
 断言してしまってもいい。
 このシーンとそこから続くマネキン大佐の鉄拳講座、そして惚れたぜのコンボで彼のファンは間違いなく増えた。
 ネタキャラ街道突っ走り、一人だけ世界から浮いた空気を振りまくこの男から、目が離せなくなった機会は間違いなくここであろう。

 

 さてさて、マネキン大佐にいいとこ見せたいパトリックさんの次の出番はタクラマカンである。
 だだっ広いところに誘き出し、物量揃えてひたすら遠距離からドコドコ砲弾撃ち込み敵が疲弊するのを待つという、嗚呼諸葛孔明も武田信玄もアーサー王も一度はやってみたかったろうなあこのゴリゴリ力押し作戦(長い)でガンダムを追い詰める三国軍。
 パトリックさんも弱ったガンダムたちに突撃撹乱、現場レベルで意外に良い手際を見せ、メタボことヴァーチェを確保したわけだが、さぁお立ち会い、この次が彼の真骨頂。

 
 

 ここでいきなり問題です。
 あたなはMSに乗っていますが、目の前から回避できない凶悪ビームが飛んできます。 
 間違いなくドテッパラに命中します。
 どうなると思いますか?
 三択で答えて下さい。
  ①死ぬ
  ②死にはしないが大怪我
  ③何それ? 痛いの?

 

          *          *          *

 

「……遺体、いや痛い」
「不謹慎な言い間違いだな」

 

 コーラサワーの頭には、ぐるりと鉢巻のように包帯が額に巻かれている。
 先日のユニオンデパートの一件で、何度目かの五飛ロケットを食らわされ、デパートの外壁とフロアの床にしたたかに頭を打ちつけた時に負った怪我だ。
 ちなみに、外壁と床はボロボロに崩れ、修復にはかなりの金額がかかるとのこと。
 人の命は地球より重い、などという与太を人権主義者カブレはよく使うが、さて、人の頭はコンクリートより固いとなると、これは与太などというレベルではないだろう。

 

「まさか一日の入院で戻ってくるとはな」
「あの看護婦さんにとったら、不幸中の幸いでしたね」

 

 『あの看護婦』というのは、コーラサワーがプリベンター加入直後に無茶する度に入院していたのだが、院長の陰謀かそれとも看護婦長の不手際か、彼のマンツー、所謂“番”に任命されてしまった新人一年目の若いナースのこと。
 病室でも傍若無人なコーラサワーにさんざん手を焼き、時には涙を流して遁走することもあったカワイソウな人である。
 これからもコーラサワーに振り回される可能性大だが、是非とも乗り越えて強い看護婦になってもらいたい。
 ガンダムと生身で戦えるくらいに。

 

「でもあの姉ちゃん泣いてたぜ。俺、何かしたっけな」
「自覚ないのかよ」
「ああ? 色々頼んだ覚えはあるが、患者の世話するのが看護婦だろ」
「理屈はあってるが、お前の頼みは極端すぎるんだよ」

 

 泣いてたのは、またコーラサワーがやってきたという悲しみと、
 一日で出ていってくれるという嬉しさの合わせ技一本の結果なんだろうな、とデュオは会話しつつ想像した。
 ズバリ大正解なわけだが、答え合わせをしてくれる神様はいないので、誰も誉めてはくれないのが残念ではある。

 

「バカは死ななきゃ治らない、という言葉があるが」
「うん?」

 

 梅昆布茶の湯気を顎に当てつつ、五飛が呟く。
 基本、プリベンターのメンバーが飲んでいるものは日本茶・中国茶系が多い。
 コーヒーや紅茶等はあまりない。
 ぶっちゃけレディ・アンやサリィ=ポォの趣味である。

 

「逆から考えると、治らないバカは死なないってことだな」
「……いや、それは何か違う気もするが」
「屁理屈ここに極まれりだ」

 

 自販機にお金を入れたら缶コーラは買えるが、自販機に缶コーラを入れてもお金は戻ってこない。
 そういうことである。
 あ、店の人に言うとかいうのはナシで。

 

「そういやナルハム野郎はどこに行ったんだよ、朝から姿を見ないぞ」
「ああ、『愛だ!』とか言いながら車検に行ったぞ」
「……あいつってそんなにカーキチだったか?」
「さあ。でも改造はしてあるそうですから、こだわりはあるんでしょう」
「エコカーならぬエゴカー、なんてな」
「笑えねーよ」

 

 ついでに言うとアラスカ野ことジョシュアもお休み。
 誰も話題にしてくれないが、どうやら故郷に墓参りに行ったらしい。
 さぞかし、線香あげながらご先祖様に色々愚痴るのであろう。

 

「まあ、プリベンターには俺がいなきゃダメだろ! おちおち休んでられっかって!」
「ついこの前『愛しの大佐』とかに会うために有休取ろうとしてたくせに」
「大佐は別だ!」
「ケーキは別腹と同じみたいに言うんだな」

 

 どこまでもマイペースなコーラサワーに、デュオもトロワも呆れ気味。
 自分のペースで物事を進めたがることに関してはヒイロも五飛も同じなのだが、どうもそのベクトルが違うというか何というか。

 

「へっ、これからもスペシャルで模擬戦二千回、富士見のコーラサワーに期待しろってことだ!」
「富士山見てどうするんだ、この男」
ファンタジアな人間ってことだろ、もう」
「……ちゃんと不死身の間違いだって突っ込んであげましょうよ」

 

 吠えるコーラサワー、突っ込むガンダムパイロット。
 今日も賑やかなプリベンターなのだった。

 

          *          *          *

 

 はい、答え合わせ。
 普通は①か②でしょう。
 しかしコーラサワーは違います。
 彼に限っては③が正答なのです。
 隕石と抱き合っても乗ってるMSの上半身を吹っ飛ばされても帰ってくる男に理屈はいりません。
 屁理屈もいりません。
 パトリック=コーラサワーは人間である。
 人間だからいつか死ぬ、軍人だから危険性もある。
 だがしかし、コーラサワーはコーラサワーである
 小難しい御託は不要、これが全て―――

 

 

【あとがき】
 さあ二期へコンバンハ。
 半年間色々と生殺しですねサヨウナラ。

 
 

 【前】 【戻る】 【次】