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00-W_土曜日氏_76

Last-modified: 2009-02-24 (火) 18:22:48
 

「と、言うわけでだ」
「ジョシュア、熱燗を取ってくれないか。熱燗と言った」
「はいはいわかりましたよ隊長殿」

 

 プリベンターは今日も暇だった。
 昨日も一昨日も暇だった。
 一週間前も暇だった。
 二週間前も暇だった。
 三週間前も暇だった。
 四週間前も暇だった。
 五週間前も暇だった。

 

 なに、仕事がないのを嘆くことはない。
 プリベンターの暇は世界の平和の証明だから。

 
 1 :通常の名無しさんの3倍:2007/10/09(火) 18:48:40 ID:???
 お前をスペシャる!
 

 ここから始まって早一年、一話で華麗にデビューしたにも関わらず、二期でここまでまったく出番がないとは誰が想像し得たであろうか。
 いや、んなもんわかるわけねーよな、さすがパトリック様、コーラサワー様、神様仏様稲尾様バース様。
 ねぇ、そろそろ出てくるだろうけど、何かねえ、何時まで待ちガイルかねぇ。

 
 

 二期このかた笑いの涙に在り処なく
 世界は均しく針地獄の様呈し居り候
 尽きせぬこの世の歪み一切
 如何様なりとも癒しの儀請け負い申し
 二千回に一つもしくじり有るまじく候
 但し右の条々パイロット稼業の定め書き
 口外必至のスペシャルエース

 
 

   ◆   ◆   ◆

 

「ううう、さすがに冷えてきたな」
「うむ、もう十一月だからな」
「月がキレイだな、背中から狙い撃たれるくらい」

 

 パトリック・コーラサワー、グラハム・エーカー、ジョシュア・エドワーズ。
 人呼んでプリベンターのジェットストリーム三バカは今、秋風吹きすさぶ公園にいた。
 ドラム缶の焚き火で談を取り、ブロックを組み合わせた手造りの囲炉裏で鍋を煮て酒を温める。
 どこのホームレス中年だ、と突っ込みたくなるが、もちろんこれには事情がある。

 

「しかしあいつら酷いな、無理矢理追い出すかよ」
「少々騒ぎ過ぎたのかもしれん」
「主にあんたら二人がな」

 

 プリベンターは秋の夜長を鳴き通す、じゃなくて鍋パーティに興じていた。
 まあ、そこで色々とすったもんだがありまして宮○りえ、じゃなくて本部から放逐されてしまったのだ。
 理由はグラハムも言っている通り、ちょっとばかし派手に騒ぎ過ぎたため。
 未成年が多いプリベンターであるが、そこに酒を持ちだしてはしゃいじゃったのだ。
 で、現場リーダーのサリィ・ポォの逆鱗に触れた形で追いだされ、流れてこの公園に来たという次第である。
 まあ何と言うか、親戚一同集まってる時に場違いに騒ぐいい歳こいたおっさんつうのは何処にでもいますが、そんな感じだと思ってもらえればいいのではないかと。

 

「……で、ナルハム野郎」
「どうした」
「いや、何だよそれは」
「お面と陣羽織だ。見てわからないか」
「俺が聞いてるのは、何で今それを身につけてんのかってことだよ」

 

 本部にいた時は素顔のグラハム・エーカーだった。
 が、何処から出したのか、仮面と陣羽織を装着し、今はすっかりミスター・ブシドー状態になっている。

 

「薄寒いからな、防寒具だ」
「……お面と陣羽織がかよ」
「特注だ、夏は通気性に富み、冬は暖かい。実に便利だ」
「隊長、ついでにそこの角にある自販機でコーヒー買ってきましょうか」

 

 まあ、素顔よりかは寒さを凌げるのは確かではあろう。
 でも普通だからと言ってこういうモノをつけない気もするが、まぁそこはそれ、グラハム・エーカーであるらして。
 彼独特の感性である、ということで納得するしかない。
 つーか悩んでたら先に進まない。

 

「ま、いいや。それよりアラスカ野」
「何だ自称スペシャル」
「コーヒー買いにいくならよ、確かここに来るまでにコンビニがあったはずだから、そこで鍋の具材を手に入れて来いよ」
「自分で行け」
「やだ。面倒臭い」
「じゃあ隊長……」
「断固辞任する」

 

 寒空の下、やけに元気な三人。
 なお、酒場に繰り出さなかったのは放り出された時に酒と鍋を一緒に押しつけられたから。
 飲み屋で問題起こされたらたまらんと敢えて行動を縛ったわけで、なかなかサリィ、策士である。
 実際、かつて飲み屋でコーラがソーマと一揉めしたことがあったので、これは結構正しい判断だったと言えるだろう。

 

「しかし、国営放送にも出たっていうのによ、このスペシャル様が夜に屋外で男と面を突き合わせて……ブツブツ」
「文句を言うな、酒と鍋をほったらかすわけにはいかんだろう」
「わかってるっつの、だからちゃんと食べてるし飲んでるだろ……おいコラ、とっとと行けよアラスカ野」
「……わかったよ、行けばいいんだろう、どうせ俺は一期だけの男だよ!」

 

 ドスドスと足音荒く公園の外へと買出しに行くジョシュア。
 彼も生きてりゃアロウズに呼ばれたであろうし、アロウズの制服に身を包んだ彼も見てみたかったところではある。
 が、その機会も永久になかろう。
 中の人は端役で二期にも出てるが、まさかジョシュアシンデナイヨとはならないだろうし。

 

「しかし、野良犬のいなけりゃ浮浪者も変質者もいないんだな、最近の公園ってのは」
「仮にもこの街は世界政府首都だ。その辺りはしっかりしている。していると言った」
「野良猫をさっき一匹見ただけだな」

 

 ぼうっと灯る街頭の下、コーラとグラハムは酒を飲み、鍋を突く。
 これでも彼らはかつては軍を代表するエースでした。
 さて、これは落ちぶれたのでしょうか、そうではないのでしょうか。
 俄かには判断つきません。

 

   ◆   ◆   ◆

 

「さっきの野良猫が金髪のカワイコちゃんだったらなあ、呼んで酌をさせるのに」
「愚にもつかん妄想だな」
「くそ、ハッキリ言いやがって……おい、そのツミレは俺のだ、手ぇ出すんじゃねー」
「断る。私が狙いをつけていた」
「ならトレードだ、そっち側にあるその巾着と厚揚げをよこせ」
「断る。それも私が狙いをつけていた」
「どんだけ我儘なんだよお前!」
「その言葉、そっくり返そうそのままで!」

 

 ギャアギャアとうるさいコーラサワーとグラハム。
 仲がいいのか悪いのかで言ったら間違いなく悪いのだが、
 何処か野良猫同士がじゃれあってるようにも見えるのは、さて二人の愛嬌と言うヤツなのだろうか。

 

「豆腐は俺のだ!」
「ならこの長ネギは私のものだ!」
「白菜は俺のだ!」
「ならこの糸コンニャクは私のものだ!」
「大根は俺のだ!」
「ならこのゴボ天は私のものだ!」

 

 嗚呼、男二人が鍋の具のことで醜い箸争い。
 しかしどんな鍋食べてんだよ、ごった煮寄せ鍋か?

 

「……はいはい、アラスカのジョシュア只今戻りましたよっと」
「遅ぇぞアラスカ野!」
「ジュシュア、パイロットは常に迅速に行動しろ! 我慢弱く!」
「なっ、せっかく鍋セットとビールも買ってきたというのにその台詞! 背中から狙い撃つぞ!」

 

 虫の鳴き声をBGMに、バカ三人の秋の夜鍋は続くのであった。
 なお、この三十分後に「公園で許可なく焚き火と飲食をしている変質者がいる」と市民に通報され、警察に職務質問を受けることになるのだが、それはまた別の話。

 
 

 プリベンターとパトリック・コーラサワーの心の旅は続く―――

 

 

【あとがき】
 まさかN○Kで先に出るとは予想外コンバンハ。
 明日は仕事で出張なので今のうちに投下しておきます、予告で出番があったらいいですねサヨウナラ。
 ラノベ風味はね、またそのうちにね(もうヤケになってます半分)イヤッフー。

 
 

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