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00-W_土曜日氏_88

Last-modified: 2009-04-04 (土) 17:53:59
 

 “イノベイター”は、現在世界でナンバーワンと言っても過言ではない超人気アイドルグループである。
 リーダーのリボンズ・アルマークを筆頭に、リヴァイヴ・リバイバルヒリング・ケアリジェネ・レジェッタブリング・スタビティ、デヴァイン・ノヴァと揃って美形ばかり、しかも雰囲気が妙に中性っぽいということで、奥様方から幼稚園児の女の子までとにかく心を掴みまくりなのだった。

 

「大将のおかげで商売が楽になりそうだぜ、しかし」
『いや、持ちつ持たれつというやつさ』

 

 年齢を始め、一切のプロフィールが謎のイノベイター。
 だが。

 

「しかしよ、あのソンナコト・アルケーってMS(ミカンスーツ)はなかなかだな」
『乗り心地は上々かい?』
「おうよ、快適なんでうっかり寝ちまいそうなくらいにな」

 

 リーダーのリボンズ・アルマークは、世紀のいらんことしいヤンチャ丸のアリー・アル・サーシェスと繋がっている。

 

 この一点のみで断言出来る。
 イノベイターはただのアイドルグループではない。
 何かとんでもない陰謀を彼らは隠している、と。

 

「しかし、よくもまあミカンエンジンなんてモンをパクれたもんだな。確かアレは世間様的には未発表の試作中の試作ってやつだろ」
『ふふ、まあね。ちょっと強引な手段を使ったまでさ』

 

 ……まあ普通陰謀というものは隠されているから陰謀というのではあるが。
 それはともかく、まだ世に出ていないミカンエンジンを密かに入手し、ソンナコト・アルケーというMS(ミカンスーツ)を組み上げ、そして裏の世界でバリバリ伝説なアリーにそれを託し、何ぞいらんことをさせようとしている。
 どこからどう考えても悪い奴である。
 なお、外見からしてケチのつけどころがないリボンズ・アルマークには、ただ一つ分かりやすい欠点がある。

 

「ほう? 強引な手段?」
『ああ、日○君のドリブルなみのね』

 

 それは、“例えがミョーに古い”こと。
 どう見つくろっても十代という容姿なのに、その例えの内容は果たしてプラス何歳でアロウズいやあろうか。
 彼と話した人間は皆、新人のつもりが超ベテランと相対している気分にさせられることになるのだ。

 

「大将は今仕事中かい?」
『いや、今日はオフだよ。他のメンバーも思い思いにくつろいでいることだろうね』
「ふうん、なるほどねェ……」

 

 アリー・アル・サーシェスはいろんな意味でバカである。
 が、流石にそのギョーカイじゃ有名な悪人さんだけあって聡いところももちろんある。
 今の「他のメンバーも思い思いに~」というリボンズの言葉から、ちゃんと嗅ぎとるところは嗅ぎとっている。
 無論、リボンズがワザと臭わせているのもあるが、それに気付くか気付かないかは、やはり聞いた側の頭の回転次第であろう。

 

「まぁいいさ、金は貰った、乗るモンも貰った。ならば俺はちゃんとお仕事するまでさ」
『心強いね』
「ああ、イノベイター……、いや、アンタの依頼のためにな」

 

 アリーはニヤリ、と笑った。
 そして、モニターの向こう側のリボンズも笑った。
 時代劇で言うなら「お主も悪よのう」「いいえお代官様程ではありません」というところだろうか。

 

「じゃ、行ってくら」
スーパーフ○ミコン発売前日の子供のようにワクワクと期待して報告を待っているよ、アリー・アル・サーシェス』
「……おうよ」

 

 ちなみにスーパーファミ○ンの発売日は西暦1990年11月21日。
 この時代から300年以上前である。
 念のため。

 

   ◆   ◆   ◆

 

「各員、警戒をレベルEに移行。そろそろ目的地に到着よ」

 

 さて一方、プリベンターご一行はアリーとその一党が隠れている(と思しき)アジトの近くまでやってきていた。
 現地の警備隊が不審集団の情報を囲っていたためにスタートが遅れたが、結局首魁のアリーがまだ残っているうちにここまで詰めてきたのだから、この辺りはさすがにプリベンター、そしてサリィ・ポォの手腕であろう。
 もっとも、アリーとタッグを組んでいる「アイドル」の存在までは知り得ていないが、そこまでは神ならぬ身ゆえに仕方なし、というやつである。

 

「オデコ姉ちゃん、俺を行かせろ! 今すぐ出せや!」
「私も出る! 出ると言った! 有言実行! 出るのみ!」
「あのー、この二人とっとと放り出してくれよ。うるさくてたまらんのだけど」

 

 そしてプリベンターの誇る三バカはとっくに元気である。
 何だか日本語がヘンだが気にしない。
 我らがエース、パトリック・コーラサワーはすっかり意欲を取り戻し、滾りに滾ったその感情をはやくぶっ放したくてしょうがない様子。
 ミスターお面のグラハム・ブシドー・エーカーはどの道最初からやる気マンマン。
 アラスカ野ことジョシュア・エドワーズはあまりノッていないが、まあこの二人の側にいたらそりゃ気力も減退しようてなもんである。
 コーラとグラハムの半ば独り言な身勝手発言は、ふしぎな踊りのパペットマン2000体に相当する。
 かも、しれない。

 

「いいんじゃない、適当に落とせば」
「デュオ、酷いですよ」
「ああまでテンションが高いと統一された作戦行動が取れるとは思えん。俺もデュオに同感だ」
「違うぞヒイロ、もとからあいつらに統一的行動なぞ出来るか。邪魔されないうちに遠くにやっておけ」
「俺は五飛の意見を支持する」

 

 ガンダムパイロット、とことん容赦なし。
 彼らのコーラサワーとグラハムブシドーに対する気持ちがよくわかるやりとりである。
 何だか最近出動がある度にこのかけあいやってる気もするが。
 とは言え、ガンダムパイロットたちがけなす程、コーラサワーとグラハムはダメなパイロットではない。
 両者ともに軍ではエースと呼ばれた男、単純な操縦の腕前ならむしろヒケを取ることは決してないであろう。
 それに出会い頭でも単なる幸運でも、二人してそれなりにプリベンターのメンバーとして結果を残して来ている。
 偶然は必然の落とし子という言葉を信じるなら、あの巨大カツオノエボシ事件も彼らだからこそ解決したとも言えるのだ。

 

「はいはい皆静粛に。とにかく指示通りにやるのよ、わかった?」

 

 溜め息をつきつつ、サリィ・ポォはマイクを通して改めて釘を刺す。
 すっかり額を指の先で抑える仕草が板についてしまった彼女である。
 まだ三十もいくつか手前、まだまだ顔にシワを増やしたくはないであろうが、何とも哀れなことではある。
 ちょっぴり小学校の教師っぽくもあったりなかったり。

 

「このまま直進して、情報にあった地点の2㎞前でMS(ミカンスーツ)を発進させる……ん?」
「なんだあ、どうしたオデコ姉ちゃ……んあ?」
「前方より飛来する機体があるぞ!」
「こ、これは……!?」
「まさかモビルスーツ!」
「違うぞ、この甲高い駆動音は!」

 

 サリィは輸送機の指揮室で、コーラやガンダムパイロットたちは待機中のMS(ミカンスーツ)のコクピットで。
 それぞれに見た、レーダーの反応と、そして。

 
 

「わざわざノコノコ御苦労さんってなあ! ところがぎっちょん、茶なんぞ出してやんねえから覚悟しやがれ!」

 
 

 モニターに拡大で映っている、深紅に彩られた、禍々しい造形の。

 
 

「ミカンスーツは貴様らだけのもんじゃねえ! アリー・アル・サーシェス、“ソンナコト・アルケー”だってんだよお!」

 
 

 ミカンエンジン搭載の人型ロボットを。

 
 

 プリベンターとパトリック・コーラサワーの心の旅は続く―――

 

 

【あとがき】
 コンバンハ。
 ではまた次回までサヨウナラ。

 
 

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