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00-W_土曜日氏_97

Last-modified: 2009-04-11 (土) 23:41:25
 

♪あれは誰だ 誰だ 誰だ
 あれはコーラ コーラサワー コーラサワー
 不死身のエースの名を受けて
 カティのために戦う男
 コーラボディは 安全性
 コーライヤーは 集音性
 コーラマウスは 愛語り
 コーラスペシャル フラグ砕く
 不死身の力 身につけた
 我らのヒーロー コーラサワー コーラサワー♪
 (元ネタ:デ○ルマンの歌

 
 

 辺塞に寧日無く、プリベンターにはあり。
 何処が辺塞かはともかくとして、プリベンターの面々はここのところ穏やかな日々を過ごしている。
 何しろアザディスタンの一件以降、さしたる事件がない。

 

「暇だなあ」
「最近そればっかりだな、お前」
「だってそうだろうがよ」
「いいこじゃねーか」
「俺にとっては良くない」

 

 平地に乱を起こしたがる輩と言うより、平地に乱が起こるの待つ輩というべきか。
 まあコーラサワーは言動がプリベンターにとって乱ではあるので、両方である気もする。

 

「なら議事堂の周りを走ってこいよ、少なくとも時間は潰れるぞ?」

 

 溜め息をつきつつ、デュオ・マックスウェルはコーラサワーに提唱した。
 これで目の前から消えてくれれば、いささかの静かな時間が訪れるはずである。

 

「やだよ、ナルハム野郎じゃあるまいし」

 

 が、コーラサワーさんはあっさり拒否。

 

「あんな脳まで筋肉な奴はそれでいいかもしれんが、俺は違うんだよ」
「あっちは一応トレーニングでやってるはずだけどな」

 

 暇を感じるのは、ある意味幸せの証拠でもある。
 何もすることがないのは裏返すと何にも追われていないわけで、そこは個人の捉え方一つなのであろう。

 

「よし、みつあみおさげ」
「何だよ」
「ジャンケンでもしようぜ」
「何でだよ!?」

 

 愛変わらず、もとい相変わらず、パスがどこへ飛んでいくかわからん男である、コーラサワー。
 受け手のいないキラーパス、こんなのに司令塔を任せたら間違いなくサッカーは崩壊する。
 ひたすら個人プレーで勝ちまくる可能性もあるが、それは多分「サッカー」ではないだろう。

 

「ジャンケンで時間を潰すのと、ジョギングで潰すのとにどう違いがあるってんだよ」
「走るのはしんどいだろ、ジャンケンはそうじゃない」
「お前の相手をする俺がしんどいつーの」

 

 嗚呼、やはりデュオはいい。
 会話においてコーラサワーの相手を任せられるのはプリベンターではこいつしかいない。
 60階建ての某塔の宝箱出現に必要な操作ばりに理不尽なコーラサワーの言動に対処出来るのは彼だけだ。
何度でも何度でも繰り返して言うが、それで褒められても絶対にデュオは喜んだりはしないが。

 

「別ににらめっこでもいいぞ」
「何が悲しくてお前とそんなことしなきゃならんのだよ」
「じゃあアヤトリでも」
「断る」
「ならメンコ」
「……なあ、想像してみろよ。三十男が半分以下の年齢の少年相手にそんな遊びしてる場面を」
「微笑ましいじゃねーか」
「んなわけあるか!」

 

 ここに卓袱台というものがあったらひっくり返したくなったであろうデュオだった。

 

   ◆   ◆   ◆

 

「だったら私がその暇をくっそみそに潰してあげるですぅ!」

 
 

「わっ、何だオデコ娘三号!」
「オデコ娘でもドリル娘でもツインロールパンでもないですぅ! ミレイナ・ヴァスティですぅ!」
「だーっ、ですぅですぅってうるせーよ!」

 

 と、ここで乱入してきたのはオデコ娘三号(一号と二号が誰かはもう説明の必要はあるまい)ことミレイナ・ヴァスティ14歳だった。
 歳はまだ若いが、これでも各種資格を取得しており、反省府組織カタロンに転出したシーリン・バフティヤールの後を継いでレディ・アンの秘書をこなす才女である。
 マイスター運送の重役である、おやっさんことイアン・ヴァスティの実の子供でもある。

 

「スペシャルさんが色々もてあましていると聞いて飛んできましたですぅ!」
「いや、お前はいい」
「またまた、照れなくてもいいですぅ。このミレイナが直々に遊んでやるですから、喜びを隠さず表現するべきですぅ」
「隠してねーよ!」

 

 そいでこの娘、ソーマ(マリー)に次いでコーラサワーの天敵だったりする。
 過去に彼女の趣味であるライトノベルで口論を交わしたことがあるのだが、どうにも趣味というかソリが合わない二人なのだ。

 

「スペシャルさんはとても強運の持ち主だと聞いてますけど、本当なのですか?」
「バッカヤロ、強運だけじゃねえ! 実力も兼ね備えたスーパーエース様だ」
「おっお~、やっぱりこれは対戦するしかないですぅ!」
「は? 対戦?」

 

 ソーマリーといいミレイナといい、何よりペースを握れない。
 ほぼずーっと持っていかれっ放しで、どうしても受身にならざるを得ないのだ。
 コーラサワー相手に主導権を握り続けるのは、結婚相手のカティ・マネキンですら出来ない芸当なのである。

 

「おいおい対戦つっても、ジュードーもフェンシングも本気で出来るわけないだろ。ガキの、しかも女相手に」
「むー、そんな肉体的な対戦じゃないですぅ」
「じゃあ何なんだよ」
「ふっふ~ん、ズバリ、コレですぅ!」
「……何じゃ、こりゃ」

 

 ミレイナが取りだしたのは、トランプより少し大きめのカードだった。

 
 

「トレーディングカードゲーム、ですぅ!」

 
 

 トレーディングカードゲーム、またはコレクタブルカードゲーム。
 プレイヤーが集めたカードの中から、ルールに則って組んだデッキ(カードのセット)で優劣を決めるゲームである。
 ひとつのトレーディングカードゲームには何百、多くて千の単位のカードがあり、それぞれのカードごとに異なった能力・効果・数字が付記され、単体だけでなく組み合わせによってゲームに与える影響も変わってくる。
 中には「レア」と呼ばれるカードも存在し、その価値の高さから時には目の飛び出るような金額で取引されることもある。
 またカードには有名なイラストレーターによる絵が描かれているものもあり、コレクターズアイテムとしても珍重されたりもする。

 

「と、言うわけで、今日スペシャルさんとガチンコしたいのはこのゲーム、『Noir et blanc』ですぅ!」
「……黒白、ってか? 何だそれはってオイ! まだ俺はお前と何かするって決めたわけじゃねーぞ!」
「はいはい今からルールを説明するですぅ」
「聞けよ! お前とは遊びたくもねぇって言ってるんだよ! バーロー!」
「あ、スターターパックを用意したのでプレゼントするですぅ。すでに構築済みなので、とりあえず悩まなくてもいいですぅ」
「いや、だーかーらー!」

 

 ガンダムもののSSなのに『ガンダムウォー』じゃないんだ、とツッコまないでいただきたい。
 正味の話、わたくし、トレーディングカードゲームをほとんどやったことがございません。
 何しろカードを集めた記憶が、遥か昔幼き日々のSDガンダム・カードダスくらいしかありませんので。
 なのでここから先はほとんど妄想珍想の類であり、真面目にカードゲームに取り組んでいる方からすれば噴飯ものでしょうが、平にご容赦の程をお願いする次第。

 

「とりあえず『フォーリンエンジェル』仕様でいくですぅ。それ以降のシリーズだと拡張パックが必須になるですから」
「何だそのどっかの作戦名みたいなのは」
「えーとですね、このゲームのカードですけど、まず色に注目して欲しいですぅ」
「色?」
「はいそうですぅ。縁の部分が五色に分かれてるですぅ」
「……黒、白、赤、青、黄か」
「ピンポーン。で、それぞれ特徴があるですぅ」
「特徴?」
「黒のカードは主に攻撃能力に長けてるですぅ。で、白はその逆で防御ですぅ。赤は攻撃の補助で、青は防御の補助、黄色は特殊効果ですぅ」
「わけわからん」
「そのうちわかるようになるですぅ。スペシャルさんは頭もいいんじゃないのかですけど?」
「当たり前だろうが」
「なら心配ないですぅ」

 

 ああ、最早完全にミレイナのペース。
 転がり出したら止まらない、まさにローリングストーン・ミレイナである。
 いつの間にかコーラサワー、ゲームをやることになってしまっている。

 

「で、右上の数字がレアリティを示しているですぅ。この数値が小さい程偉いってことですぅ」
「つまり大将みたいなもんか」
「そう思ってもらって結構ですぅ」

 

 この世界において、語りだしたら止まらない人物は二人いる。
 東の横綱がポニテ博士ビリー・カタギリ、西の横綱がこのミレイナ・ヴァスティ。
 専門はまったく違うが、得意分野についての語りはそれこそドラ○もんのコエカタマリンを飲んだとしたら、
間違いなく地球が半分埋まるであろう。

 

「そして左上の文字が属性ですぅ」
「属性?」
「風・土・火・水・光・闇・無の七つあるですぅ。それぞれに得手不得手があるですぅ」
「ジャンケンみたいなもんか」
「そんな感じですぅ」

 

 いつの間にか、部屋からはコーラサワーとミレイナ以外の火トカゲ、もとい人影が消えていた。
 お守をミレイナが買って出た、と見たデュオがこれ幸いとトンズラこいたのだ。
 隣の事務所に逃げ込み、ちゃっかりと鍵までかけていくオマケつきである。

 

「属性とレアリティの間にあるのがそのカードの名称で」
「ほぉ」
「イラストの下にあるのが効果の説明、さらにその下にあるのがレベルゲージとコストですぅ」
「ふーん」
「ちなみにこのカードゲームのイラストは有名な絵師さんたちの手によるものですぅ」
「このやたらと目がでっかかったり乳がでっかかったりする女の絵がかあ?」
「そのカードはそんな絵柄ですけど、他にもいろいろあるですよ」
「こいつは騎士か何かか? おい、こんなに素肌を晒してたら鎧の意味ねーじゃねーか」
「んー、わかってないですぅ。そこが逆にミソなんですぅ」
「八兆味噌か?」
「つまらんですぅ、スペシャルさん」

 

 デュオ以外にコーラサワーの相手を出来る人物、一人追加。
 それはミレイナ・ヴァスティ14歳。
 彼女のカードゲーム地獄、今ここに開幕せり。
 次回、コーラサワー本気でキレるの巻でござる。
 ニントモカントモ。

 
 

 プリベンターとパトリック・コーラサワーの心のドロー俺のターンは続く―――

 

 

【あとがき】
 アホでごめんなさいコンバンハ。
 本当に何も知らないけれど勢いがあればどうにかごまかせるよねサヨウナラ。
 しかしミレイナ、気をぬくと台詞が翠○石になりやがるです。

 
 

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