Top > 00-W_模倣の人氏_11
HTML convert time to 0.008 sec.


00-W_模倣の人氏_11

Last-modified: 2008-12-11 (木) 22:54:09
 

~前回のあらすじ~
 ダーツ。

 

 

 ホストクラブ『リ・ヴォンズ』
 店の裏側にある事務所の応接室で、ラッセと箱詰めコーラサワーが頭を下げていた。

 

「「何卒ご一考を!」」

 

 二人の向かいには、この店のオーナーが腰掛けて腕を組んでいる。

 

 リボンズ=アルマーク
 若いながら卓越した経営手腕で店を切り盛りするだけでなく、自身もホストとして表舞台に立つ、やり手の男だった。
 リボンズは箱から首を出したコーラサワーに目を向け、眉間に皺寄せて唸った。

 

「確かに、容姿だけなら申し分ないのですが」

 

 あまりに子供っぽい言動のため忘れられがちだが、コーラサワーは公式でハンサム設定である。
 詳しくは角○ス○ーカー文庫より発売されている、ノベライズ版を参照されたし。
 しかし、とリボンズは続けた。

 

「生憎、現在は従業員の新規募集はしていないのですよ」
「そこを何とか。裏方仕事でもいいですから、こいつを引き取っちゃくれませんかね」
「そうですね……。それだったら僕は」

 

 曰くありげな笑いを含んで、リボンズが立ち上がってこちらに回ってきた。

 

「彼より貴方が欲しいな」

 

 傍へ近寄ってきた彼は、ラッセの逞しい上腕二頭筋や大胸筋を怪しい手つきで撫で回し、陶然としたように頬を上気させ、

 

「貴方の身体は実に素敵です。よろしければ僕のところに来ませんか?」

 

 とのたまう。
 ラッセは心の底から怖気だった。
 全身に凄まじい勢いで鳥肌が立つ。

 

「俺は! 普通で! ノーマルで! ノンケなんだよぉぉぉぉぉ!」

 

 全力で部屋の隅まで退避し、全身全霊で訴える。
 彼がよそのスレでどのような扱いを受けてきたか、それによってどれだけ傷ついてきたかがよく窺える台詞であった。
 ラッセの突然の行動に一瞬呆気に取られたリボンズだったが、すぐさま可笑しげにくすくすと笑い出した。

 

「嫌だなあ。僕は、貴方ならいい用心棒になってくれそうだと言いたかっただけですよ」

 

 だがラッセはその言い分をすぐには信じようとしなかった。

 

「そ……そうなのか?」
「ええ、そうですよ」
「本当に?」
「本当に」
「○ァイナル○ンサー?」
「ファイナ○アン○ー」

 

 そんなやり取りを繰り返し、み○もんたもかくやという長い時間を置いて、ようやく彼は警戒を解いた。

 

「誤解してすまなかった。だが、その誘いは断らせていただく」
「そうですか、残念です」

 

 肩を落とすリボンズの言葉に偽りはないようで、どことなく表情にも翳りが見えた。
 後ろを向いて何事かをぼそぼそ呟いているので、ラッセとコーラサワーは揃って耳をそばだてる。

 

(ちっ、あの鬱陶しいストーカー野郎を撃退できるチャンスだと思ったのに。エンジェルとか抜かしてキモいんだよ泥野郎が)

 

 これまで見せていた物腰柔らかな態度から豹変し、せっかくの美貌も台無しにするようなそれはそれは酷い表情でしきりに毒づいていた。

 

「……なんか」
「鬱屈してんなあ。ホストってのも大変なのな」

 

 二人は顔を見合わせ肩を竦めた。

 
 

 しばらくして気が済んだのか、いつもの調子を取り戻したリボンズが振り返る。

 

「失礼いたしました。それで、そちらの彼についてですが――」

 

 と言いかけたところで、控えめなノックが部屋に響いた。
 リボンズが席を立って扉の方へ行き、わずかに開けた隙間から表に立つ何者かと小さな声でやり取りをする。
 どうやら相手は従業員のようで、聞こえてくる内容から察するに、リボンズに上得意から指名が入ったらしい。
 こちらに戻ってくると、申し訳なさそうに頭を下げた。

 

「申し訳ありません、少々店の方へ顔を出さなければならなくなってしまいました。ここでお待ちいただいても構いませんが、よろしければ貴方方も店に来てみませんか? 招待客ということで、特別にサービスさせていただきます」
「ホストクラブつったら男ばっかりじゃねーか。何が悲しくてそんなとこに行かなきゃなんないんだよ」

 

 女好き男盛りのコーラサワーの言い分はもっともである。
 が、流石に客商売に慣れているだけあって、リボンズの方が一枚上手だった。

 

「うちにくるお客様は皆揃って美人の女性ですよ。そんな方たちと杯を傾けるのもオツだと思いませんか」

 

 コーラサワーの目が大きく開かれた。
 どうやら、美女という餌に釣られたらしい。

 

「行くー! 行くよ行きますとも是非行こう、なあ兄貴!」
「えー、俺は面倒くさい」
「なによ兄貴、女に興味ないの? やっぱガチホm」
「その台詞を最後まで言ってみろ、アンタの耳から指突っ込んで脳みそ全部掻き出してやるからな」
「うわぁん暴力反対ぃ!」

 

 とはいえ乗り気のコーラサワーを店まで搬送するのはラッセ以外おらず、結局二人揃ってリボンズの店に厄介になることにしたのだった。

 

          *          *          *

 

 『リ・ヴォンズ』店内。
 リボンズが己を指名した得意客にお辞儀をし、テーブルまでエスコートする。

 

「ようこそおいでくださいました、マリーメイア様」
「お久しぶりですね、リボンズ殿」

 

 高く澄んだ声で返答するその女性客を見て、コーラサワーとラッセの顎が外れたのは無理もない話である。
 リボンズを指名した客、その名はマリーメイア=クシュリナーダといった。
 そう、Endless Waltzでおなじみの、まだ10歳にも満たない ょ ぅ ι" ょ である。
 本名をマリーメイア=バートンという彼女は、現在はレディ・アンと共に生活しているはずであるが、レディ自体が当スレ本編にろくすっぽ登場しないため当然マリーメイアの出番もこれまで一切なく、コーラサワーをはじめとするプリベンター新規メンバーとは全く以って面識はない。
 面識あるなしはこの際関係なく、二人が驚いたのはもっと別の、常識レベルでの話である。

 

「なんでこんな子供がこんな店に出入りしてんのよ!?」
「風営法、風営法ー!」

 

 驚愕の声を上げる二人に対し、リボンズはわずかに眉を顰めた。

 

「お二方、他のお客様のご迷惑となりますのでもう少し声を抑えていただけると」
「なに悠長なこと言っとるかッ! こんな小さな子を連れ込んで、摘発されても知らんぞ!」

 

 ラッセの指摘に、リボンズはこう切り替えしたのだった。

 

「女性に年齢を問うのは野暮ですよ」
「いやその、そういう話でなく」
「じゃああれです。『外見は少女に見えますが成人の設定です』ということで一つ」
「無理あるからそれ」

 

 のらりくらりと追及を躱すリボンズに付き合いきれなくなって、それ以上言及するのはやめた。
 でないとこちらが疲れるばかりである。

 

「うーん、確かに将来は美人に成長しそうな有望株だけど、いくらなんでも青田買いが過ぎるよなあ」
「そこ、女と見たらなんでもかんでも観察するんじゃないッ!」

 

 女好き属性を如何なく発揮するコーラサワーにツッコミを入れてから、本気で疲れたように肩を落とした。

 

「で、こちらの方々は?」

 

 マリーメイアが興味深そうに箱詰めコーラサワーを眺める。
 子供特有の好奇心だろう、瞳がきらきらと輝いていた。

 

「こちらの方たちはラッセ=アイオン氏とパトリック=コーラサワー氏です。パトリックさんの引き取り手を捜している最中だとか」
「そうなのですか」

 

 リボンズの説明に頷いて、マリーメイアがコーラサワーの顔をじっと凝視する。しばらくそのままでいたが、
 不意に相好を崩して呟いた。

 

「かわいいー。ペットにしたいー」

 

 道端で見かけた猫に対してするように、小さく可愛らしい掌でコーラサワーの頭を撫で回した。

 

「おおっ、じゃあお嬢ちゃんが俺を貰ってくれるか?」

 

 喉をごろごろされながらコーラサワーが問うた。
 マリーメイアは当初かなり乗り気だったのだが、でも、と表情を曇らせた。

 

「勝手に拾って帰ったらレディに怒られるかもしれません」
「レディって?」
「レディ・アン。私の後見人であり、現在はプリベンターのリーダーを努めている女性です」
「ああ、それは……俺もちょっとお断りしたい」

 

 自身もプリベンターに籍を置いている身としては、リーダーにこんな姿(箱詰め)を見られたらどんな大目玉を食らうか知れたものではない。
 下手をすれば免職されかねない勢いである。
 マリーメイアは非常に残念そうにうなだれた。

 

「お力になれず申し訳ありません……」
「いいよいいよ気にすんなって! そのうちどうにかなるってもんよ」

 

 このコーラサワーの言葉に、マリーメイアは思い出したように顔を上げた。

 

「あ、そうだ。どうにかして下さる方に心当たりがあります」
「へ?」

 

          *          *          *

 

 というわけで。

 

「てなわけで頼むよぉぉぉぉぉ、いい加減この箱から開放されたいんだよぉぉぉぉぉ」
「それはそれは、ご苦労だったね」

 

 これまでの経緯の説明を受けて、ポニテで白服の眼鏡男が穏やかに微笑んだ。
 そう、マリーメイアの『心当たり』とは、天才科学者ビリー=カタギリのことだった。
 彼女からビリーのみかん農園を紹介され、こうして足を運んだ次第である。
 ホストクラブから退去するとき、オーナーのリボンズからまたも大量の土産を渡されたことも追記しておこう。
 ちなみにこの土産、実はリボンズが某アレハンドロから貢がれたものの処分に困っていた代物である。
 体良く押し付けられたといったほうが正しいか。無論リボンズはそんなことを一言も言いはしなかったが。
 さて、話を聞いたビリーはラッセに顔を向けて言った。

 

「僕が彼の次の送り先としてプリベンター本部を指定するのは有りなんだよね?」
「あ、ああ、もちろん有りだ」
「きゃっほーいマジで感謝するぜイーヤッホォォォォォウ!」

 

 あっさり解決したことに全身全霊で感謝の意を表し、段ボール箱のままぴょんぴょんと飛び跳ねた。
 むしろ、これまで誰一人としてこの考えが浮かばなかったことの方がおかしいのである。

 

「それにしても、凄い量だねぇ」

 

 コンテナに積み上げられた数多くの土産が詰まった箱を見て、ビリーが感嘆したように呟く。

 

「まあ、俺が貰ったわけじゃないがな。プリベンターの人たちがどうにかしてくれるだろ」

 

 するとビリーは何を考えたのか、くすくすと含み笑いをした。

 

「そのままプリベンターに送るんじゃ面白くないよねぇ。ちょっといたずらしちゃおうか」
「……なんだって?」

 

 ビリーの説明はこうだ。
 まず現在コーラサワーが入っている段ボール箱を、五飛の筆跡も含めた全てを再現して量産し、コーラサワー本人とこれまで貰った土産をこの箱に移し替える(現在コーラサワーの箱は首用の穴が開いているため)。
 それらを一気に送るのではなく、初日は一箱、翌日は二箱、翌々日は六箱……と少しずつ数を増やしながら、誰も見ていない深夜のうちにプリベンター本部へと運ぶのである。

 

「どうせだから僕も箱に詰めて運んで貰おうかな。彼らがどんな顔をするのか見てみたいしね」
「ガキかアンタ」

 

 ラッセのツッコミもどこ吹く風で、ビリーは実に楽しそうに箱の量産を始めた。
 そもそも00のキャラクターは歳相応の振る舞いをする者が少ないのである。
 ラッセよりも年上であるはずのコーラサワーやグラハム、そしてこのビリーの精神年齢がどうして大人といえようか。
 ビリーは五飛の筆跡をインクの成分から分析して再現する徹底振りである。
 才能の無駄遣いとはまさにこのことであろう。
 天才とは何を考えるかわからないものである。
 こうして、大量の段ボール箱が完成した。
 次はこれに土産を詰め替える作業である。
 が、山のような土産の数々を移し替えるのに、今いる三人だけではどれだけ時間がかかるかわからない。
 明らかに人手不足である。

 

「俺ばかりが苦労するのはもうこりごりだ。こうなったらあいつら全員巻き込んでやる」

 

 といってラッセはリヒティをはじめとする『マイスター運送』の配送係全員に連絡を取り始めた。
 ビリーはビリーで、

 

「じゃあ僕も労働力を増やす手伝いをしようか。ああ君、ちょっと細胞を提供してくれるかい?」

 

 コーラサワーの皮膚と髪の毛を少量採取し、実験室らしき部屋へと引っ込んで行った。

 

 そして、数時間後。
 ラッセとビリーと箱から出されたコーラサワーと、ラッセが呼び寄せたメンバー(リヒティ、刹那、ロックオン、アレルヤ、ティエリア)と、それから新たな働き手が一堂に会した。
 その働き手とは。

 

「あ、どもよろしくお願いします」
「我々のことは『みかんコーラ』とお呼び下さい」
「貴方がオリジナルですね、はじめまして」

 

 コーラサワーの遺伝子と農園自慢のみかんをかけ合わせた、みかん星人のような出で立ちの奇妙な者たちであった。

 

「人体実験なんて何を考えてるんだ? アンタには倫理というものがないのか!」

 

 ビリーにラッセが詰め寄るが、ラッセの指摘は空回りするばかりであった。
 なぜなら、ここにいるのは揃って変人ばかりだからだ。

 

「うん、俺に似ていい感じに可愛いじゃないか!」

 

 これはコーラサワー。

 

「美味しそうっすねー。この子たち使ってクリスさんにお菓子作ってもらったら最高だろうなぁ」

 

 これはリヒティ。

 

「アンタはこのことに疑問を感じないのか? そこ、よだれ垂らすな!」

 

 こんなやり取りを交わしながら、その日は夜遅くまで荷物の詰め替え作業が続けられたのであった。

 

 

【あとがき】
 アーヤッフー皆様ご機嫌麗しゅう。
 どうにか段ボールコーラ旅路編を終わらせられました。長かった……!
 この後に前スレの記録係さんの話に続きます。
 上手く繋げられたかどうかわわかりませんが。
 これでようやく違う話に移れそうです。
 それでは。

 
 

 【前】 【戻る】 【次】