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00-W_水曜日氏_07

Last-modified: 2008-12-01 (月) 19:25:29
 

 プリベンター達の中には、別の仕事と掛け持ちをしている者もいる。
 トロワ=バートンもその1人だ。
 今日は午前中だけ休みを貰って、サーカス団の公演内容のミーティングに参加している。

 

「というわけで次回は《ニホン》の《トーキョー》で公演をする。誰か目玉になる演目はないか?」

 

 団員達を見回して団長が問いかける。

 

「はーい!私に良いアイディアがあるわ」

 

 キャスリンが元気よく手を挙げた。
 途端に彼女以外の団員達の顔が曇る。

 

「あー、キャスリン。いったい今回はどんなものなのかな?」

 

 団長が遠慮がちに聞いた。

 

「うふふ、それはね――」

 

          *          *          *

 

 午後。プリベンター本部。
 バタンッと勢い良くドアを開け、トロワがやってきた。
 かなり切羽詰まった顔をしている。

 

「コーラサワー。アルバイトだ」

 

 入ってくるなりコーラサワーの両肩を掴み真剣な顔で言う。

 

「あ?アルバイトぉ?」

 

 おやつのスルメイカをしゃぶりながらコーラサワーが聞き返す。

 

「ああ、以前言っていたサーカス団のバイトだ。勿論、やってくれるよな?」
「へへん、あたぼーよ。客の拍手が俺を待ってるぜ!」

 

 内容も聞かずに了承するのは相変わらずのコーラサワー。
 彼の頭には『行動を起こす前に考える』という行動パターンは存在しない。

 

「ついでにジョシュア、お前にも頼みたい」
「嫌だ!俺は絶対嫌だ!関わりたくない!」

 

 ソファのクッションを抱き抱え、駄々っ子のように首をブンブン振りながらジョシュアは拒否反応を示した。
 彼の経験上、こういう類いの申し出は必ず嫌な事が起こると予測済みなのだ。
 流石、3馬鹿の中で、いやプリベンターの中で一番常人に近いだけある。

 

「そうか…残念だな。俺の見込み違いだったか。エリートのお前にしか出来ないと思ったのだが」
「なに!このアラスカのジョシュアに出来ない事なんてない!!!」

 

 前言撤回。3馬鹿は3馬鹿でした。
 『エリート』の文字に乗せられ、ジョシュアも了承。
 トロワはニヤリとほくそ笑んだ。

 

「今度は何処で公演するんだ?」

 

 3人のやり取りを聞いていた五飛が問いかける。
 ガンプラの塗装中なのか顔にはマスク、手にはビニール手袋をしている。

 

「ニホンのトーキョーだ。チケットはとってあるが、観に来るか?」
「ニホンの料理。特にスシは美味い…」

 

 ピンクのヒラヒラエプロンを付けたヒイロも話に加わる。
 どうやら料理の途中のようだ。
 しかし、元ガンダムパイロットの中でも割と無口な3人が揃うとは珍しい。

 

「…」
「…」
「…」

 

 暫く無言のまま見つめ合う3人。

 

「…」
「…」
「…」

 

 ~1分経過~

 

「…」
「…」
「…」

 

 ~2分経過~

 

「…」
「…」
「…」

 

 ~3分経過~

 

「よし、決まりだ」
「カトル達も誘うべきだろう」
「案内は任せろ」

 

 脳内で何か電波を送りあっていたらしい。
 お互いに頷きあい、五飛は塗料を乾かしていたガンプラの元へ、ヒイロは夕食の準備を再開させるため台所へ消えていった。

 

「そういう訳だ。前回と同じようにお前達はなんの準備もいらない。時間等の詳細はこの紙に書いてあるからよろしくな」

 

 そう言ってトロワは、無口3人脳内会議の結果を伝える為に、書類を片付けているカトルとデュオの元に行ってしまった。

 

「なぁ、炭酸」
「どうした、アラスカ野?」
「このギャラに書いてある『カロ○ーメイト3ヶ月分』というのは、ギャラとしてふさわしいのか?」
「あっ!俺がチーズ味好きなのアイツわかってるかな!?」
「人の話を聞け!!あ…でも、俺はフルーツ味が好きなんだが、後で言った方が良いのかな」

 

 そんな他愛もない話をする2人。
 この後何が待ち受けているかなんて知る由もない。
 地獄ショーの開催は刻一刻と迫っている―――

 

          *          *          *

 

 ショー当日、サーカスの舞台裏にて。

 

「うひょー!!流石大都市トーキョー!客でいっぱいじゃねーか!!おいアラスカ野お前も覗いてみろよ!!」
「うう、きききき緊張してきたたたたた。それにこの服…は、は、恥ずかしいいい」
「煩いわね!」
「「ぼへぁっ!?」」

 

 コーラサワーとジョシュアにに鉄拳ストレートを食らわせるキャスリン。
 一説によると、彼女の鉄拳はヒルデのフライパン攻撃に勝るとかなんとか。

 

「トロワもトロワよ。準備したならショーにも参加しなさいよね。もう、本当困った弟なんだから」

 

 キャスリンは頬をおさえる2人の横でふぅと溜め息をついた。

 

「ヘックシュンッ」

 

 その頃、トロワは客席でくしゃみをしていた。

 

「トロワ、大丈夫?風邪?」
「風邪薬ならここにあるぞ」

 

 さっと風邪薬を出すヒイロ。

 

「いや、大丈夫だ。大方キャスリンが舞台裏で俺の愚痴でもこぼしていたんだろう」
「それよりトロワはショーに出なくていいのかよ?」

 

 売店で買ったポップコーンを口に放り込みながらデュオが突っ込む。

 

「彼は下準備を頑張ったから出演は免除らしいよ。隣、いいかな?」

 

 トロワの代わりに答えたのは、なんとビリー=カタギリ。
 今日は何時もの白衣ではなくスーツ姿だ。

 

「ポニテ博士!?なんでサーカスなんかにいるんだよ」
「私も何も聞いていないぞ、カタギリ」

 

 驚いた拍子に落としそうになったポップコーンを慌てて持ち直し、デュオが訪ねる。
 グラハムも突然の友人の登場に驚きを隠せない。

 

「それは勿論、僕が提供した発明品の出来を観るためさ。ねぇ、トロワ君」

 

 一同の視線がトロワに集まる。

 

「ああ。今回は人以外にも舞台装置が必要だったのでな。急いでカタギリ博士に作って貰った。さぁ、そろそろショーが始まる時間だ」

 

 トロワが言い終わると客席の照明が落ちた。
 舞台の中心にスポットライトが当たり、団長が入場してくる。

 

「紳士淑女の皆さん、ようこそおこしくださいました。どうか本日の楽しい一時を、我がサーカス団でお過ごし下さい」

 

 簡単に挨拶をすませると、観客の拍手と共に団長は退場していった。
 猛獣ショーに空中ブランコ、一輪車、ピエロのお芝居等様々な演目が披露されていく。
 トロワは何時も謙遜して何も言わないが、トロワの所属しているサーカスのレベルはかなり高い。
 演目はどれも見応えがあり、プリベンター達をはじめ、観客達は割れんばかりの拍手を団員達に贈った。
 そして本日の目玉、コーラサワーとジョシュアの登場する番となった。

 

「ねぇ、トロワ。コーラサワーさん達は何をするの?」

 

 パンフレットから顔を上げカトルが問いかけた。
 何も書かれていなかったらしい。

 

「見ればわかる。あれだ」

 

 下準備として筋肉質な男達が運んできたものは、オレンジ色の……

 

「…大砲?」
「ああ」
「あっ!そうか、五飛の‘アレ’をアレでやるのか」
「成る程。それはアイツ等にしか出来ない」
「今回はどの位行くんでしょうかね」
「ふん。今後の参考にするか」

 

 道具で何をやるのか納得したプリベンター一行は、各々感想を述べ舞台に視線を戻した。
 そうこうしている内に、舞台袖からキャスリンとコーラサワー、ジョシュアが入場してきた。
 キャスリンは何時もの舞台衣装だが、コーラサワー達は以前着ていたピエロ服ではなく、オレンジ色の全身タイツ姿だった。
 頭には同じくオレンジ色のヘルメット。
 てっぺんには蜜柑のヘタを思わせる緑色のペイントが施されていて、制作者の遊び心を感じる。

 

「モ○モ○君……」

 

 誰かが呟いた。

 

 舞台の上では、キャスリンがグーパンチで気絶させたコーラサワーとジョシュアを大砲の中に詰め終わって、導火線に火をつけていた。
 ジジジ…と火は導火線を辿り大砲へと近付く。

 

 ドカンッ!

 

 盛大な音をたててコーラサワーとジョシュア、そして大量の紙吹雪が大砲から飛び出し、空を飛んだ。
 観客から「おおぉっ」と歓声があがる。
 空に飛び出たコーラサワー達はそのままサーカスのテントを突き破り、空の彼方へ飛んでいってしまった。
 アニメだったらピカーンと飛んでいった先が光りそうな感じ。
 もうお分かりだろう。
 『人間大砲』それが本日のメインイベント。
 普段から五飛に飛ばされ慣れているコーラサワーさん達にしか出来ない芸当だ。

 

「飛んでいっちゃった…」
「テントに穴を開けてしまった…後で団長に怒られるな」
「ちょっと予想より、勢い良く飛び過ぎちゃったかなぁ。うーん、今回は大砲よりも爆発時の衝撃に耐えうる衣装作りの方がメインだったからねぇ。帰ったら改良しないと。人間を飛ばすかは別として、あれは君達のMS(ミカンスーツ)にも応用出来そうな素材だからね」
「大体予想はついたが、あれは全てカタギリが作ったのか」
「そうだよ、基本的な構造は従来からある―」

 

 ビリーがべらべらと大砲と全身タイツの説明を始めだし、グラハムはその説明を右耳から左耳に聞き流す。
 流石長年の付き合い。扱いに慣れている。

 

「ところで、飛んでいったあいつ等はどうやって回収するんだ?」

 

 ヒイロの質問に待ってましたとばかりにビリーが答える。

 

「もしもの時の為に衣装に発信機をつけておいたんだ!だから僕のラボに戻ってそれを辿れば大丈夫。それに」
「それに?」
「あの衣装、非常時にオレンジジュースが飲めるようになっているんだよ。いやぁ、あのピッチリした衣装にオレンジジュースを仕込むのは大変だったよ。もう少し改良したら任務時の君達の制服として提供するから楽しみにしていてね」

 

 ヒイロはオレンジの全身タイツを着た自分を想像して頭を振った。
 スパッツは平気でも、オレンジ色の全身タイツは流石に無理がある。

 

「……てことは、暫くアイツ等をほうっておいても平気なんだな?」

 

 デュオが楽しそうに言う。

 

「うん、3日位なら大丈夫だと思うよ」
「そうか、なら行くか」

 

 五飛が荷物を纏めて立ち上がった。

 

「行くって、何処に行くんだい?」
「僕達これからヒイロの案内でトーキョー見学するんです。良かったらカタギリ博士もどうですか?」
「いいのかい?では、ご一緒させていただくよ」

 

 ガンダムパイロット達とビリーは出口に向かって歩きだす。

 

「おい、私は誘わないのか!?誰か、ちょ、ちょっと待て。カタギリお前も私を置いて行くのかー!…む、無視は行けないと学校で習っただろう!!!本当に置いていくのか!?ま、待ってぇー」

 

 涙目になりながらグラハムも出口へと向かっていった―

 

          *          *          *

 

 トーキョー郊外、とある公園。

 

「ママーあれ見てー」
「しっ、ユミちゃん見ちゃいけません」

 

 地面にオレンジの全身タイツが2人、頭から突き刺さっていた……

 

「「誰か…助けて…」」

 
 

 今日も地球は馬鹿を除いて平和でありましたとさ…

 

 

【あとがき】
 携帯からアクセス出来なくてかなり焦りました。
 何とか水曜日です。こんばんは。
 プリベンター本部はいったい何処にあるんでしょうかね?
 毎回、次こそは『プリベンターの仕事をしているプリベンター達』を書こう!と何時も思うんですが、どうも出来上がるのは『任務の無い日のプリベンター達の日常』ばかりです。
 もう自分はそういうお笑い系担当だと思った方がいいのかもしれません…
 次が来週になるか、来月になるかはわかりませんが、では。

 
 

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