Top > 08_種を蒔く人before_第01話
HTML convert time to 0.002 sec.


08_種を蒔く人before_第01話

Last-modified: 2013-12-23 (月) 16:41:06

 誰もいない公園。
 アイナはブランコに座りぼんやりと空を眺めている。
 行きつけのスーパーマーケットではそろそろタイムサービスが始まる時間だと云うのに、アイナは行く気になれなかった。
 漏れてしまう吐息を白い薔薇に変える事が出来たなら部屋中に飾る事が出来るだろう。
 ――おめでたですよ。まだ二ヶ月ですが、確かに。
 アイナは先程訪れた病院の医師の言葉を思い出しながら自分の腹に手を当てた。
 思い当たる節はある。初めてシローと仲良しになった夜だろう。確かにあれ以来来なかったが、生理不順かと思っていた。
 風がアイナの肌を撫でた。若干の湿り気を含んだ風が夜の気配を運ぶ。
 シローに話せば喜ぶだろう。目尻を下げてアイナの腹に手や耳を当てるシローの姿がアイナには容易に想像できる。
 だからこそアイナは数え切れない数の溜め息を吐くのだった。
「あの人には私の気持ちは判らないわね、きっと……」
 アイナは不安なのだ。
 本当に自分が母親になれるのだろうか?頼れる人がいない世界でどうやって出産、子育てをすれば良いのだろうか?
 浮かんでは消えて行く悩み事を思い返しては眉間に皺が寄る。
 アイナはそれらを拭い去る様にブランコを漕ぎ始めた。
「えいっ」
 勢いが乗った瞬間、アイナは靴を飛ばした。靴は綺麗な放物線を描き表向きに地面に落ちた。
 ――明日は晴れかしら?
 片足でぴょこぴょこと飛ばした靴の元へと向かった。
 アイナはちょっぴり胸が軽くなったような気がした。

戻る