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491_プロローグ

Last-modified: 2007-12-02 (日) 17:47:32

プロローグ:『悪夢の始まり』





「――メイリン、ソードシルエットを!」

 しぶとくこちらの攻撃を避け続ける青いMSを見据えたまま叫ぶ。

 前大戦の英雄、ヤキンのフリーダムという畏怖の対象として語り継がれる存在。

 それが今や片翼をもがれ、さらにはライフルまでもが破壊されて背を見せて逃げ回っている。

 だがシンにはそれに対する優越感に浸るでもなく、ただただ怒りを携えた瞳で睨んでいた。

 ――守ると誓った少女を殺したモノに対する怒り、止めようとしたところで邪魔に入ってきたモノに対する怒り、彼を突き動かしているのはそれだけだった。

 極度の緊張状態で息苦しさを感じたのか、シンはヘルメットを乱暴に脱ぎ捨てる。

「……来た!」

 インパルスの背後に射出されたソードシルエットが迫る。

 フライヤーに装着されたままのシルエットからフラッシュエッジを引き抜いて海面すれすれを飛行するMSに対して投げつけた。

 その挙動に気付いたフリーダムはシールドでなんとか防いだものの、反動でバランスを崩す。

「もらった!」

 勝機を悟ったシンはフライヤーからパージさせた対艦刀――エクスカリバーを掴み、一気に突進する!

「うおおおおおおおおおおおおおっ!!」

 狙うは胴体、苦し紛れにシールドを構えていたが構わずさらに加速する。

 もっと速く、もっと強く、

「これでぇ、終わりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 フォースシルエットの加速とエクスカリバーの切れ味、その二つを合わせた一撃が盾ごと胴体を貫通した。

 (勝った!)

 だがその手応えを感じた瞬間に、フリーダムの持つビームサーベルに頭を貫かれていた。

「っ、メインカメラが!?」

 一瞬にしてコクピットが暗転する。サブカメラに切り替えようとスイッチに手を伸ばそうとしたとき、それは起こった。

「……なんだ?」

 ――蛍の光を想起させる緑の光。

 いつの間にかコクピットを満たしたそれは徐々に明るさを増していき、遂には目を開けていられないほどに眩いものとなった。

「いったい、これは……」

 そう呟いた直後、爆発にも似た衝撃に意識が吹き飛ばされた。



 ――何か、壮大なものを垣間見たような気がした。

 何故自分が生まれてきたのか、何故自分が生き残ったのか、

 何故家族が死んでしまったのか、何故ステラが死んでしまったのか、

 それらの真理が嵐のように精神の中に吹き荒れ、そしてそのすべてが霧散した――





「…………う」

 自分の呻き声で目が覚めた。

 視界に広がっていたのは今にも降り出しそうな分厚い雲、どこか懐かしさを感じる草の匂いが鼻に届く。

(――草の匂い?)

 上体を起こして周りを見渡す。生い茂った木々、そして山と鉄塔が見えた。

「どういう、ことだよ」

 自分は確かにフリーダムとアークエンジェル追撃の任務を受けて北海にいたはずだ。戦闘に集中してたとはいえ周囲が一面に広がる雪景色と流氷が浮かぶ海であったのは見間違えるはずもない。


 だというのに、この状況は何なのか。

「そうだ、インパルスは?」

 まだぼんやりとしたままの意識をどうにか覚醒させて立ち上がる。

 とりあえず体に異常はないようだった。軽く軋む感じはするが特に問題はない。足元に目を向けると、コクピットで脱ぎ捨てたはずのヘルメットが転がっていた。拾い上げて調べてみたものの特に変わった様子はない。




 ――ズン!



「うおっ!?」

 突然襲ってきた震動に倒れそうになる。断続的に聞こえてくる爆音から近くで戦闘が行われているらしい。

「戦闘……むこうか?」

 斜面を慎重に上っていく。ここがどこなのかも分からない以上、せめてどちらかがザフトであってくれと願う他ない。



 ――視界が開ける。

 その光景は予想した通りのものであり、

 そして、思考を凍りつかせるほどのものであった。



「…………な」

 意識しないまま言葉が漏れる。

 瞬きを忘れた目はそれを網膜に焼き付けようとするかのように見開いたまま固まった。

「なん、だよ……あれ」

 思考が徐々に解凍されていく。

 インナーが噴き出した汗で湿り気を帯び、肺は狂ったように酸素を求めているのにうまく呼吸ができなくなっていた。

 ――眼前に広がる光景、それは確かに『戦闘』ではあった。ただし彼が知るMSや戦艦を用いたものではない。

 どれも全長は40m近く、あのデストロイに迫るほどの巨大な存在。

 白い人型のロボットの集団が人型に似て否なる禍々しい姿を持った巨人を相手に襲いかかっている。

 白いロボットは全部で四体。スタンダードな体形のものや細いシルエットを持つもの、下半身がキャタピラのようになったものと統一感のない形であり、中には銃器や斧などの武器を持ったものもある。


 そして巨人、全身は金属質の皮膚で覆われながらもどこか生物じみた表情を持った怪物。鋭い牙と爪を持ち、額に生やした角が『鬼』という印象をシンに抱かせた。

「なんなんだよ、あれはっ!?」

 何もかもが夢現から覚めないまま、自身の理解を超えた光景にシンは絶叫していた。




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