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 SRW-SEED_ビアンSEED氏_第03.5話
 第三・五話 ラッキースケベ、それもある意味才能 
 
 「ああ、また負けた!」 
 「ごめんねえ、強くってさあ!」 
  ビアン邸のリビングで、勝ち誇るアウルと悔しげなシンの叫びと、画面の中で爆散する巨大ロボットの姿があった。家庭匡体用のバーニングMSに、アウルやスティング達と興じているところだった。 
  大会では優勝候補の常連だったシンも、強化人間たるスティングやアウル達には一歩譲っている。 
 「これで、シンは1勝9敗だな。どうしたシン? こいつは得意なんだろう」 
 「もう一回! もう一回だけ! よーし、今度はゴンバトラーⅤ」 
 「同じだって。じゃあ、おれはゲッダーワイバーン」 
 「負けず嫌いだな、シンは。ま、嫌いじゃないぜ? おれはジャイアント・ロボットBF」 
  モビルスーツのモの字も無いが、これは、開発・発案に携わったビアンの趣味がもろに反映されただけである。ソファに深く腰をおろして、真剣に3人のプレイを見ている貴方ですよ。ビアン総帥。 
 「ふむ。シンは接近戦にこだわりすぎるな。もっとも化ければスペシャリストへ変わるが。では、次は私もやろう」 
 「げ、おやじが!?」 
 「ビアンおじさん、そんなに強いのか? アウル?」 
  分り易く『げっ』と言ったアウルに、シンは訝しげに聞く。アウルは、シンが驚くほど真剣な目で語り始めた。 
 「強いってもんじゃないぜ? 鬼だぜ、鬼。おれがゲッダーカイザー、スティングがジェネシック・ガオガイザープラスゴルディオンブレイカー、ステラがグレートヴァンバスター使っても、おやじのぼん太くん相手に相討ちが関の山だった位だぜ?」 
 「いい!? どれも最強クラスの隠し機体じゃないか? それなのに、最小ユニットのぼん太くんで互角!? ……ビアンおじさんて人間か?」 
 「……多分」 
  微妙に空いた間が、アウルの心境を如実に語っていた。 
 「お、珍しいな、ビアン博士がコンパチブルキング使うなんて」 
 「少し本気を出そうかと思ってな」 
  シンは、ビアンのニヤリ、という笑みに、あ、この人本気だ、と悟った。意外と子供っぽいところのある人の様であった。 
 
 「あ~~、なんだよあれ。おれとアウルとスティングの三人がかりでノーダメージって。なんか一生勝てる気がしないなあ」 
  ぶつくさ言いながら、シンは廊下の奥にあるバスルームに向かって歩いていた。バーニングMSで、ビアンの容赦ない鬼プレイヤーぶりに、泣きたくなるほどボコボコにされた後だ。あまりに圧倒的な負けに、むしろ清々しい位だ。 
  極めて近く限りなく遠い世界では、トップクラスのニュータイプが乗ったモビルスーツをスーパーロボットでろ獲する化け物相手なのだから仕方ないかもしれないが。 
 
  気分転換を兼ねて風呂を借りようと、とぼとぼ歩きバスルームの前に辿り着いたシンはm扉の向こうから聞こえてくる足音に気付くのが遅れた。 
  ガラっと音を立てて引かれるドア。引き戸だ。 
  ザ・ワールド!! 時よ止まれ!! 
 「……」 
 「シン?」 
  シンは……世界の全てを忘れ、視覚・嗅覚・聴覚・触覚・思考の全てを眼前の存在に集中させていた。 
  ああ、純金から極上の職人によって細く紡ぎ出され、一本一本を繊細な作業で磨き上げたような金色の髪は透明な雫に濡れて、誰にも踏みしめられていない新雪の煌めきと細やかさを持った肌に張り付き、かすかに桃色に色づいた白肌に輝いている。 
  つぶらで大きな瞳の中では星でも煌めいていそうで、純粋無垢な瞳で見つめてくる。固まるシンが、その瞳の中に映っていた。 
  あんなに華奢で、乱暴に扱ったらすぐに壊れてしまいそうな、整い過ぎて神の手からなったような均整のとれた体なのに、その胸には蜜をたっぷりと孕んだ水蜜桃が二つ重々しく、しかし若さゆえの張りと弾力に恵まれて、ステラが呼吸する度にかすかに揺れ動く。 
  蜂みたいに大胆なくびれを描く腰は、思わず心配になってしまうほど細くしなやかなのに、胸に揺れる女性の象徴ときゅっと吊り上がり、肉が付き過ぎず、女の脂がのりすぎていない尻をつないでいる。 
  暖められた水の雫に祝福された天上世界から間違って生まれ落ちてしまった天女か天使か。シンの目の前で、生まれたままの姿を惜しげも無く晒している。 
  きょとんとした表情をどう取るかは、人それぞれだ。 
 「ごごごごご、ごめん、ステラ! ふ、ふく服早く着て!」 
  ぎゃあああ、と自分でも良く分からない悲鳴を胸の中で挙げて、シンは光の速さで顔を真っ赤に染め上げ、両手を前に突き出してステラに早く服を着てくれー! ああ、でもやっぱりそのままでー! と内心葛藤しながら叫んだ。 
  だがしかし、視線はばっちりステラの裸身を網膜に焼き付けている。 
 「? シン、顔真っ赤。ステラ、服忘れちゃったの。だから、これから取りに行こうと思って」 
 「ああ、そそ、そっか。それじゃあ、おれが……。ってそれもだめか!? ……そ、そうだ! ミナさん、ミナさんなら」 
 「私がどうかしたか?」 
 
  聞こえてきた救いの女神の声に、シンは背後を振り返ろうとし、声の出所が背後ではない事に気づいた。ついでに言えば、救いの女神とは関わらない。悪戯好きな妖精の上王かもしれぬ。 
  ぎぎぎ、と錆びついた機械の音を再現して、シンはステラの背の奥、檜の大風呂にゆるりと漬かるミナを見た。 
  シンは知らなかった。自分達がゲームに熱中している間、ステラがミナに 
 「ミナお姉ちゃん、一緒にお風呂はいろ」 
  と誘い 
 「分かった」 
  とミナがまんざらでもなさそうに答えていた事を。 
 「ななななな、なんでミナさんがステラと一緒にお風呂入ってんですか!?」 
  もうわけが分からない、と脳細胞が異常な活性化をし、背後で桃色の種が虹色の花弁を裂かせているシンは、目を血走らせてミナに問い質した。 
  対してミナは、あくまで悠然と落ち着いた様子で答える。 
 「ステラは一人では髪を洗えぬのだ」 
 「へ?」 
 「えへへへ。シャンプーの泡がね、目に入って痛いの」 
  ああそう、シャンプーハット使ったら? とはいえずに心の中にそっとしまったシンは、恥ずかしそうに体を縮こまらせて、(湯気で)潤んだ瞳で自分を上目づかで見上げるステラに、思わずいろんなものが暴走しそうになり、また血管がブチブチと切れかけて、死にかけた。 
 「ところで、シン。いつまでステラの裸を見ているつもりだ? それに、お前の視界の中には私もいるのだが?」 
 「!?」 
  ミナのどこか、甘い香りで誘い込む食虫花の様な心地よく危険な響きを孕んだ声が耳朶を打ち、シンは思春期の少年ならではの想像力豊かな妄想世界から帰還し、妄想を凌駕する現実に、死んでまた生き返ってまた死んだ。 
  無邪気な、見つめられるシンの方が悲鳴を上げしまいそうな無垢な瞳のステラの、みずみずしさと少女から大人へと変わりつつある女肉の、眩いまでの可憐さと艶やかさが入り混じった肢体。 
  そしてその奥には、大人が5,6人は入れそうな大きな湯船につかり、ステラと同じかそれ以上に豊潤な蜜をたっぷりと溜めた白い水蜜桃が、上半分の肉のラインを白濁の湯から晒している。 
  星明りの無い闇夜に妖しさを混ぜたような黒い髪は湯の中に垂らされてゆらゆらと揺れ、ミナの冬の雪も黒ずんで見える肌に、魔性の者が伸ばした影の手の様にどこか淫靡に貼りついている。 
  その先に淡く色づいているであろう肉粒が、かろうじて覗かぬ湯面から覗く半球には、温められ流された汗と湯気の造る水の雫が珠を結び、照明に煌いては揺れ落ちる。 
  紅を落としてもなお艶然と赤い唇をからかう形に変えて、ミナはシンの瞳を見つめている。 
  シンは陸に上げられた俎上の魚の様に、ぱくぱく口を開口させて、息をする事さえ忘れた。 
  道端に咲き、その可憐さと儚さで見る人に笑みを浮かばせる花の様なステラ。 
  太陽の下よりも闇夜に燦然と輝く月の光を浴びて咲く月下美人の様なミナ。 
  対照的な、しかし、その魅力という点では負けず劣らずの共演に、シンの脳細胞は完全に停止していた。そうしていれば今目の前の光景が続きそうな気がしたからかもしれない。まあ。それ位の下心は仕方ない。 
 
  シンの様子に満足したように新たな微笑みを浮かべて、ミナがぱしゃんと湯を打つ。白魚の手が生んだ響きに、シンはかろうじて正気を取り戻した。 
 「すすすす、すいません。すぐに出て、でて、出ていきます!」 
 「まあ、待てシン。そうだ、ステラ。シンに洗ってもらったらどうだ? たまにはそういうのもいいのではないか? どうだシン。いっそのこと一緒に浸かっていかぬか?」 
 「シンに?」 
  これまたキョトンとした顔でステラは背後のミナを振り返り、それまで視界に入らなかったステラの尻肉としなやかな背のラインを見て、シンは沸騰したと思っていた脳が更に沸騰するのをはっきりと感じ取った。体温が100度くらい行ってそうだ。 
  ステラは少しばかり黙りこみ、シンを振り返って満面の笑みを浮かべた。 
  いやな予感、いや、だいぶ違う予感が……。 
 「シン、一緒にはいろ」 
 「s★♪$&%dp!?」 
 ぎゅっと、ステラの湯に温められ火照った柔らかい手が、シンの手を握りしめ、この細腕のどこに、と思わせる力でシンをぐいぐいと風呂場に引っ張り込もうとする。 
  シンの中の何かが、なんとかこれを堪えた。こらえない方が男としては幸せだったろう。だが同時にここで負けるのは男が廃るのも確かだった。ああ、なんとも悩ましい矛盾。 
 「だだだだだ、ダメだってステラ!? おお、女の子は、男の子とは一緒にお風呂に入らないんだって!?」 
 「そうなの? ミナお姉ちゃん」 
 「概ねはな。だが、好き合った者なら構うまい。つまり、シンはステラが好きではないという事だ」 
 「ちょ、何言って!」 
 「そうなの? シン、ステラ嫌い?……ごめんなさい」 
  先程まで可憐に咲いていた花が唐突に萎んで枯れてしまった。シンは、人生最大レベルで慌てた。欲望と興奮と葛藤と苦悩に湧く脳みそをフル回転させ、状況を打開すべく、指向の海にダイブする。 
  ――結論。無理。ホ! そんな経験も知識もあるわきゃないっての。 
  なんだよ、この眼付の悪い奴は!? 
  シンの脳みそは時空を超えた。 
  あ、と小さな声をシンは挙げた。ステラの手が、弱弱しくシンの手を離したのだ。 
 「まま、待ってステラ」 
 「なに?」 
 「お、おれは、ステラの事は嫌いじゃないよ。むしろ好きというか、とても守ってあげたいというか、一緒にいると胸がドキドキすると言いますか裸を見せつけられるともうたまらないと言いますか夜は眠れそうにないと言いますか」 
 「? ミナお姉ちゃん、シン、何言っているの?」 
  やれやれ、とミナは溜息をつき湯の雫を纏う髪をかきあげて、言った。 
 「つまり、ステラの事は好きだ、という事だ」 
 「本当?」 
 「ほほ、本当」 
 「シン!」 
 「ス、ステラさん!?」 
  シンの名前を嬉しそうに呼び、ステラは……大きく腕を広げてシンの首を掻き抱き、そのまだ少女の年齢でありながら豊かに実り育った二つの女肉をこれでもかと押しつけてきた。 
  完全に不意をつかれたシンは、ステラを支えきれずに後ろ向けに倒れてごちん、と頭を打った。 
  意識が遠のく。 
 「シン?」 
  不思議そうなステラの声が、かすかに聞こえた。気絶しそうになるシンを、譲はン氏を起こしたステラの瞳が覗きこみ、シンのぼやける視界にはステラの釣り鐘の様なむーねーの先で淡く色づく……まあ、なんだ。あれが入り、ついつい更に視線はステラの体を堪能してしまった。 
 (ステラって、はえて、な……) 
 「ふふふ、お前達は実に愉快だな」 
  ミナの背筋が妖しい電流にぞくりとする様な声が、最後に聞こえた。 
 かくて、現場に駆け付け、着替え終えたミナとステラから、事情を聞いたアウルとスティングに、シンはラッキースケベの称号を与えられる事となった。 
 なお、シンの『もっこり』を見て、アウルとスティングが負けた、と呟いたのは、どうでもいい話だった。男にとっては尊厳にかかわりかねないけれど。 
 
 
 
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