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Zion-Seed_ガルvsバル_第01話 の変更点


  第1次リビア会戦 ~ガルマvsバルトフェルド~ 
 
 
  MSの動力炉変更による作戦の遅れを取り戻すべく、破竹の勢いで進撃していたガルマ・ザビ率いるジオン地球方面軍は、ついに 
 ユーラシアからアフリカへと侵攻した。 
  しかしこの地には、地球連合軍アフリカ駐留部隊を手も無く蹴散らし、いまや“砂漠の虎”の異名で恐れられるザフト軍北アフリ 
 カ駐留軍司令官、アンドリュー・バルトフェルドが待ち構えていたのである。 
  バナディーヤ攻略へ向け、カイロで戦略を練っていたガルマは、ザフト接近の報を受けリビア砂漠へと進軍を開始した。 
 
 「“砂漠の虎”……お前はどう見る?」 
 「そうですな。ガルマ様はどうお考えで?」 
  質問を質問で返されたガルマは、しばしの黙考の末、小声で自分の考えを述べた。 
 「正直、分が悪いと考えている。数ではこちらが上回っているが、我々は砂漠を知らなさ過ぎる」 
  マ・クベはその答えに「ほう…」と内心で唸った。ガルマの考えが彼のそれと同じだったこともあるが、それ以上に、自分だけに聞 
 こえるよう、わざわざ声を絞ったことについてである。司令官として、味方の士気を落としかねない発言を控える、と言う判断ができ 
 ていたからだ。 
 (このお方は、案外化けるかもしれない) 
  そんな心中をおくびにも出さず、マ・クベはガルマへと、やはり小声で話しかけた。 
 「私の考えも同じです。今日のところは様子見と考えて、適当なところで引き上げるのがよろしいかと」 
  当然のことだが、ジオンにもプラントにも砂漠は存在しない。砂漠の陽炎による照準の狂いや、砂地による接地圧の変化など、ジオ 
 ン軍は進軍しながら調整を試行錯誤するしかなかった。未だ全ての兵器の調整が終わらぬ現状では、砂漠という地形での勝利を重ねて 
 きたバルトフェルドに対しての勝機は非常に少ないだろう。 
  ガルマはマ・クベの進言に硬い表情で頷くと、今回の戦略について確認を始めた。 
 
  それから1時間後、ガルマの眼前にはザフトの先鋒部隊の姿があった。 
 「あれは地上戦車か?」 
 「ザウートと呼ばれるMSです。安定性の高いキャタピラと高い火力で制圧戦を想定しているのでしょう」 
 「なるほど、あれがザフトの砂漠戦の答えと言うわけか。無限軌道で砂地に対応し、機動力を火力で補う。確かに理に適ってはいるが、 
 当たらなければどうと言うことは無い。砂漠の虎、噂ほどではないな」 
  ガルマはふっ、と笑うと、高らかに宣言した。 
 「ミノフスキー粒子撒布終わり次第、マゼラアタック大隊は攻撃を開始せよ! ドップはアジャイル(戦闘ヘリ)を墜とせ!」 
 「MS部隊はどういたしますか?」 
 「敵の旗艦の姿が見えないからな。まだ温存する」 
  もちろんこの命令は、砂漠戦の調整が終わっていないMSよりも、安定性の高い戦車部隊の方が良いという判断にもよる。 
  かくして、ガルマとバルトフェルドの長い戦い、その第1ラウンドが始まった。 
 
 
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 「ええい、ふざけているのか、ジオンは!」 
  ザフト先遣隊隊長のダコスタは、そのあまりに一方的な戦いに怒りをあらわにした。 
  戦いは圧倒的にジオン有利で展開している。 
  ミノフスキー粒子によってレーダーとロックオンを封じられたザウートは、その最大の武器である火力を事実上封じられ、機動力に 
 勝るジオンに翻弄されていた。 
 
 「裏切り者のジオンめ、舐めるな!」 
  キャノン砲での攻撃をあきらめ、重突撃機関銃で突貫したザフト兵は、マゼラアタックの「的にしろ」と言わんばかりの、砲塔と一 
 体化した高いコクピットを狙う。しかしそれは、突如宙へと浮かび上がった砲塔により回避された。そして死角となった頭上から、マ 
 ゼラトップの175mm無反動砲が襲い掛かる。 
 「な、なんだそりゃあ~!?」 
  それが彼の断末魔となり、また1機のザウートが沈んだ。 
  砲塔を宙に飛ばせて戦車の頭上を狙うという常識外れの機構を持つマゼラアタックは、相手が動きの鈍く巨大なザウートであることも 
 幸いし、意外にもその特性を最大に生かして多大な戦果を挙げていた。 
  ザウート部隊の唯一の希望であった有線制御式ミサイルを持つアジャイルは、空力特性を度外視して広い視界を確保したドップにドッ 
 グファイトに持ち込まれ、援護もままならず撃墜されていく。 
  もはや完全に趨勢は決まったかに思われた。 
 
 「マ・クベ、指揮を頼む」 
  ガウ攻撃空母のなかでその様子を見ていたガルマは、おもむろに艦長席から立ち上がるとそう言った。 
 「ガルマ様何を? すでに大勢は決しました、増援が来る前に手はずどおり引き上げるべきでは」 
  後退を進言するマ・クベにガルマは前髪をクルクルといじりながら、 
 「敵の戦力を削っておくに越したことは無い。引き上げはこの部隊を壊滅させてからでも遅くはないさ。それに、私も勝ち戦で敵の1機 
 も墜としておかないようでは、シャアに笑われてしまうからね」 
 と言って、ブリッジを出て行ってしまった。 
  間も無く、専用のドップで出撃したガルマは、すぐにその判断を悔いることになる。バルトフェルド隊旗艦レセップスが、砂塵をあげ 
 て向かってきたのである。 
 
 
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  レセップスの登場によって、戦況は一変していた。かの艦から出撃した4足獣型MSバクゥは、圧倒的なスピードと機動力によってま 
 たたくまにマゼラアタックを駆逐したのである。何機かのマゼラトップは残っているものの、数分しか飛行能力を維持できないため、遠 
 からず全滅するであろう。 
  この事態に慌てて繰り出されたザクとグフは、転倒こそ無かったもののその動きはぎこちなさを隠せず、調整が間に合った機体も、コ 
 ーディネーターの反応速度とバクゥのスピードについていけず次々と破壊されていった。 
  また空中においても、機動力と小回りの良さを併せ持つディンの前に、ドップもドダイに乗ったザクもついて行くのが精一杯であった。 
 
 「ちぃっ! おふざけでないよ、この犬っころが!」 
  シーマ・ガラハウが毒づきながらマシンガンでバクゥを狙う。しかし、バクゥはそれをあざ笑うかのように鮮やかにホバーをふかして回 
 避した。 
  初期型のバクゥには、ビームサーベルは装備されていない。そのため、バクゥ部隊は常に距離をとってレールガンで狙撃する、アウト 
 ボクシングのような戦い方を徹底していた。接近してくればまだチャンスはあったものの、その高い機動性を生かした戦い方の前では、 
 最古参兵のシーマですら翻弄されるしかなかったのだ。 
 「仕方ない……コッセル、クルト、一旦後退するよ」 
  言うが早いか、シーマはけん制の弾幕を張りながら下がり始める。 
 「いいんですかい!?」 
 「このままじゃいずれやられちまう。まともな指揮官なら、ここいらが引き際だってわかるはずさ。ザビ家の坊ちゃんが何考えてるか知 
 らないが、それに付き合って無駄死にすることはないよ」 
 
  無論、「まともな指揮官」たるマ・クベはすでに撤退の判断を下していた。しかし、これほどの劣勢においてなお、彼らが撤退できない 
 理由があったのだ。 
 「だからあの時、引き上げるべきだと言ったのだ!」 
  マ・クベは歯軋りをしながら、作戦前、わずかでもガルマを認めたことを恥じ、彼の出撃を止められなかった自分を罵った。彼が敬愛す 
 るキシリアの弟でなかったら、当の昔に適当な理由をつけて見捨てていたかもしれない。 
 「ガルマ様は!?」 
 「ダメです! 未だ、敵MSの包囲網に捕らわれています!」 
 「ええい、あのお坊ちゃんめ……! 何故私は、あれを力づくでも止めなかったのだ!」 
  マ・クベは苛立ちもあらわに拳を叩きつけた。 
 
 
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 ドップで出撃したガルマは、制空権を取り返すべく現れたディンに囲まれていた。専用カラー、そしてなによりザビ家の紋章をつけた 
 機体に乗るガルマは、ザフトにとって格好の獲物に他ならなかったのだ。 
 「各機! あの戦闘機は何が何でも捕獲しろ! ……ふ、いけないねえジオンのプリンス君。指揮官が不用意に前線に出るようでは」 
 「それをわかっていらっしゃるのでしたら、レセップスのブリッジから出ないでください」 
  自らバクゥに乗って一暴れした後、何事もなく帰還したバルトフェルドのセリフに、かろうじて生還したダコスタが文句を言う。 
 「そういうなよダコスタ君。自分で戦ってみて初めてわかることもある」 
  肩をすくめて答えると、バルトフェルドは頭上で展開される空戦に意識を向けた。 
 
  ガルマは焦っていた。 
  士官学校の同期で親友であったシャアは、華々しい戦果とともにトップエースとしての地位を確固なものとしているのに、自分は安全 
 な後方にいること。 
  ようやく地球方面軍司令として前線に立つ機会が与えられれば、その実、指揮官としての判断はマ・クベに頼りきりになっていること。 
  専用機を得ていながら、撃墜数が振るわないこと。 
  生まれの幸運だけでこの場にいることを、彼は認めたくなかった。だから、独力での手柄を立てたかったのだ。だがその結果、彼と彼 
 の部隊はかつてない危機に見舞われていた。 
 「うおおっ!?」 
  必死で操縦桿を引き、機体を立て直しながら、ガルマはかろうじてディンの重突撃機銃をかわした。そのまま速度を上げて振り切ろう 
 とするが、すかさず別のディンがその行く手を阻む。ガルマはなんとかガウに帰艦しようとするのだが、それを百も承知のディンはガル 
 マとガウの間に防衛ラインを引き、帰艦を封じているのだ。一方のガウも、現在はなんとかドダイ使用のザクとドップの残存戦力によっ 
 て撃沈を免れている状態であり、撤退ならともかくガルマ救助のため前に出るなど自殺行為でしかなかった。 
 「このままでは……」 
  ガルマは必死で機体を操っていたが、護衛のドップは1機また1機と数を減らしていき、ついに彼自身も背後を取られてしまった。 
 「しまった!」 
  機体を小刻みに振って揺さぶりをかけるが、背後のディンはそれに惑わされること無く散弾銃を構える。振り返ったガルマは、張り出 
 した風防から、自分を狙った射撃を正面から見ることになった。 
 (ダメか……ならばせめてザビ家の男として、あの陸上戦艦に一矢報いて……) 
  スローモーションで迫ってくる散弾を、どこか非現実的な光景のように見ながら、ガルマは悲壮な決意を固める。しかし。 
 「ガルマ様っ、危ねえーっ!」 
  ガルマの視界が何かにさえぎられると、轟音とともにそれが火を噴いた。ガルマには、それが自分の護衛の最後の1機だということに 
 気付くのに、数瞬の間が必要だった。 
 「た……タナベーっ!」 
  バーニアに直撃を食らったタナベ機は姿勢を制御できず錐もみに墜ちていく。ガルマはそれを、回避運動も忘れて呆然と見ていた。 
  部下が死ぬのは初めてではない。士官学校時代の友人が戦死したと聞かされたときも、戦争なのだから仕方がないと割り切ることが出 
 来ていた。しかし今、自分の目の前で、自分をかばって命を散らした部下の姿を目の当たりにした時、ガルマは、言いようの無い悔しさ 
 と哀しさと申し訳なさ、そして激しい怒りを感じた。 
 「すまない……タナベ……すまない」 
  絞り出すように謝罪の言葉を口にする。そして、憎悪に染まった瞳で目前の敵を睨みつけた。 
 「貴ィ様ァらーっ!!!!」 
  ――その瞬間、ガルマの頭の中で『ナニカ』がハジケタ。
 
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