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Azrail_If_443_第01話

Last-modified: 2007-11-09 (金) 21:56:17

『南海の宝石』と呼ばれるオーブ連合首長国。
世界でも稀にみるコーディネーターとの共存を公的に認める国であり、
そこから得られる豊富な人的資源や高い技術力をもって、
小国ながらも国際社会において大きな影響力を誇っている。
 そのオーブでは氏族と呼ばれる血縁集団の長たちによる合議政治が行われており、
その氏族の中でも代々代表首長を輩出してきたアスハ家の族長であり、
現オーブ代表首長も務めるウズミ・ナラ・アスハは『オーブの獅子』の異名で知られていた。
高いカリスマ性と、ぶれることのない政治信念から、
国民からは絶大の信頼を得ている。
まさしくオーブの王とも呼べるウズミであるのだが、
彼の表情は今苦渋に満ちていた。

 ウズミの視線の先にある男、金髪色白の優男は、
見るからに胡散臭い笑顔を浮かべている。
「今回の訪問、ご許可して頂きありがとうございます」
「ふん。私は招待した覚えはないのですがな。で、どのようなご用件でしょうか?
 軍需産業連合理事殿。それともブルーコスモス盟主、ムルタ・アズラエル殿と呼ぶべきですかな?」
「肩書きなどどう呼んでくださっても構いませんよ。商人には幾多の肩書きがありますから。
 名が変わったからといってその本質が変わるというものではないでしょう? オーブの獅子殿」
「なるほど確かにおっしゃる通りですな。
 で、今日はそのようなお話をなさるためにいらっしゃったのですかな?」
「やれやれ代表はせっかちですね。指導者には余裕も必要なものですよ」
 からかうように言うアズラエルだったが、唐突に表情を引き締める。
その視線はウズミとは異なる畏怖を与えうるもので、
確かにこの男もまた人を纏める力を持っていることを感じさせる。
「単刀直入にお聞きしましょう。
 代表は現在の連合とザフトの戦争を終わらせたいと思いませんか?」
「は?」
 突拍子もないアズラエルの発言にウズミは驚きを隠すことができなかった。

 世界は今、ナチュラルとコーディネーター、二つの勢力によって二分されようとしていた。
遺伝子操作によって、優れた資質を持つコーディネーターたちが暮らすプラントと地球連合との戦争が始まって一年近くが経つのだが、
この戦争は一向に終戦の気配を見せようとしていない。
「ご懸念は分かっています。ブルーコスモスの盟主である僕の言葉を信じることができないのですね?」
「あ……ああ。そもそもこの度の戦争、発端はブルーコスモスの強硬派によるプラントへの核攻撃から始まったのではありませんか?」
「確かにその通りです。公式には軍の強硬派となっているところをブルーコスモスというあたり……
 正直ですね。そういう人好きですよ、僕。ですが、少々誤解があるようですが、僕自身は強硬派ではないのですよ」
「なんと?」
「そもそも僕はビジネスマンですから。
 コーディネーターを皆殺しにするなんて非合理なこと考えるわけないじゃないですか。
 プラントの独立を認めたところで、結局経済的に支配するだけです。
 僕自身、もしくはロゴスは全く傷つかない。」
「ふむ。だが戦争が終われば軍需産業連合理事殿としては困るのでは?」
 ウズミの言葉にアズラエルは表情を崩した。
「仮に平和が訪れたとしてもたくさんの火種は残るでしょう。
 緊迫した世界情勢でこそ、軍事力が生きてくるんですよ。
 圧倒的な軍事力を持っていることを誇示するだけで、
 自然と戦争は起こし辛くなる。はるか昔の冷戦と呼ばれた時代のようにね。
 指導者たちもそこまで無能ではないでしょう」
「そして、そこにビジネスチャンスがある、というわけですか。
 仰りたいことは分かりました。
 で、具体的にはわが国にどのようなことをお望みなのですか?」

「話が早くて助かります。代表は実業界でもやっていけそうですね。
 私が求めているのはMS開発に関する技術提携です。
 まずは戦線をとんとんに持っていくところから始めないといけませんから。
 あ、モルゲンレーテが独自にMS開発を行っていることはとっくに知ってますんで、
 ごまかす必要はありませんよ?」
 どこか挑発的なアズラエルの言葉にも、ウズミはいささかの動揺もみせない。
「ふむ、しかしモルゲンレーテはわが国の要。そう簡単にその技術を流出させることはできませんな。」
「見返りとして、オーブにて和平交渉を行います」
 その言葉にウズミは考えこむ。 オーブで和平交渉を行うことで、
オーブの国際的な影響力が増すことは確実だろう。
また、間接的にだがオーブの中立が認められるということでもある。
 このようなことを決定できるほどの権力を民間人が持っていることにどこか不快感を感じながらも、
ウズミはアズラエルの提案に魅力を感じ始めていた。何よりもこの戦争が終わるのならば……
「ふむ。私の一存で決めることはできないが、検討させて頂きましょう」
「ありがとうございます。よいお返事をお待ちしてますよ」
 二人は一息つき、ようやく出された紅茶の味を楽しむことができるようになった時だった。
突然補佐官である、ウズミの弟、ホムラが室内に飛び込んできたのは。
「代表大変です! ヘリオポリスが崩壊したとの連絡が!」
 世界は表と裏で、静かに動き出そうとしていた。

~つづく~