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BRAVE-SEED_勇者戦艦ジェイアスカ_第01話

Last-modified: 2010-11-26 (金) 15:20:07
 

 満天の星空が落ちてきそうな程晴れた秋の夜。新婚旅行でキャンプに来ていたケン・アスカと
マユコの夫妻は、天体観測中そこで信じられないものに遭遇した。
 最初はありきたりな流れ星だと思っていたが、それは見る間にこちらへと急接近。
そして一瞬視界をさえぎる突風が吹いたかと思うと、周囲に降り積もった紅葉を吹き飛ばして
巨大な何者かが眼前に現れたのだ。
「飛行機かしら?」「……いや、多分船だ」
 大きさからして航空機か、何とはなしにそうもらした妻だったが、ケンは外観から
その答えを否定する。
 見慣れない形であったが、砲塔を備えるそれはまぎれもなく宇宙用の戦闘艇であった。
 あまりの出来事に呆然とする夫妻の元へ、船体から上に突き出した艦橋らしき構造物から
一人の男が降りてきた。鳥を思わせる意匠の、白い鎧兜に身を包んだ若い男だ。
その腕には産着に包まれた赤ん坊が抱かれている。
「あ、あなたは一体……」
「この子を、お願いします」
 男はそう言って両手に抱きかかえていた赤子を夫人に差し出すと、返事も待たずに
船もろとも風のように消えうせた。
 この赤ん坊が後に地球の未来を救う鍵となろうとは、神ならぬ夫妻には
知る由も無いことであった。

 
 

勇者戦艦ジェイアスカ No.01『勇者戦艦出航!』

 
 

 ────八年後、C.E71年。
 人類は母なる星を離れ、宇宙にすら生活の場を得られるほど高度に文明を発展させていたが、
遺伝子操作を経て産まれた『コーディネーター』と旧人類『ナチュラル』の対立は激化し、
コーディネーターが主に暮らすコロニー群『プラント』は地球からの独立を宣言。
しかしそれを快く思わない地球連合の過激派によって、農業コロニー・ユニウスセブンへ
核ミサイルが撃ち込まれ、開戦の火蓋は切って落とされた。
 プラントからは報復として核分裂反応を阻害するニュートロンジャマーが地球各地に埋設され、
枯渇した化石燃料から切り替わった原子力に頼りきっていた国々は軒並みエネルギー危機に陥り、
インフラ崩壊による混乱や餓死者、凍死者など大きな被害を受けた。
 このことで地球はプラントに対して憎悪を燃やし、彼等に勝るその物量で一気に
戦況を終結させようとしたが、プラント軍『ザフト』から投入された新兵器モビルスーツの
性能の前に戦線は硬直。争いは泥沼の様相を呈していた。
 だが、その争いの影で密かに計り知れない巨大な悪がうごめいていることを、
人類はまだ誰も知らなかった……

 

 オーブ連合首長国。南太平洋に存在する三つの島からなる国家で、かつての再構築戦争で
東アジア連合に吸収された旧日本からの移民が数多く暮らし、その文化を色濃く受け継いでいる
中立国である。
 それ故に他の地域では迫害されることの多い、在地球コーディネーターの受け入れを
行っていることでも広く知られていた。
「まったく、ウズミ様は何を考えておるのだ!」
 閣議を終え、行政府から出てきた禿頭の男が愚痴をこぼしながら公用車へ乗り込む。
 セイラン家族長にして宰相のウナト・エマ・セイランだ。
 連合とプラントが矛を交える中、中立を標榜したのは戦火を避けるうえで必要だったろう。
だが、中立なればこそそれを維持するために外交努力を重ねなければならないというのに、
代表の座を退いた身でありながら現代表ホムラを差し置いて国の舵を取る始末。
 ウズミ・ナラ・アスハは平時の主君としては有能だが、目前に迫る戦争という国難を
無事乗り越えられるかと訊かれれば疑問符をつけざるを得ない。
「このままでは、近いうちにオーブは滅んでしまう……」
『ならば、私たちが滅ぼさぬための力を与えてさしあげましょうか?』
 不意に車内に唱和する複数の女の声。運転手は男だったはず……まさか賊か!? 
警戒して身をこわばらせるより先に、ウナトはいつの間にか自らの傍らに寄り添っていた
美女の姿に短い悲鳴を漏らした。
「ひっ!?」「あらあら、そんなに怖がらないでくださいな」
 運転席にも見慣れぬ女が腰掛け、こちらへ嫣然とした微笑を向けている。
 彼女らは磁器のように滑らかな白い肌に豊満な乳房、細く引き締まった腰といった
均整の取れた魅惑的な肢体を、それぞれ髪の色と同じ赤いドレスと紫のスーツに包んでいる。
 出会ったのがこんな状況でなくどこかのパーティー会場であれば、ダンスの一つでも
申し込みたくなるような美しさだったが、その身に纏う異質な雰囲気は状況も相まって
ウナトの警戒心を掻き立てるだけだった。
「そうして得た力で、国を害するものも邪魔者も全て押しやって、気ままにドライブにでも
 洒落込みましょう?」
「目的地があっても楽しいでしょうけど、目的の無い旅も、それはそれは格別なものですよ」
 不意に運転席にいたスーツの女が椅子をすり抜けたように後部座席へ現れ、
彼の腕にしなだれかかりながら耳元へ唇を寄せ、蕩けるような声色で囁いた。
 ドレスの女も、相棒と共にウナトの両脇を固めるようその腕を絡め、
脳髄を冒すような甘美な声で言葉を継ぐ。
 異常事態の連続にウナトの精神は砕ける寸前だった。
 一体この女たちは何処から、いつの間に入ってきたのだ? 今、目の前で何が起こった? 
コイツラは何を言っている? 何故? なにが? どうして?
 答えるもののない疑問がウナトの脳裏に渦を巻く。そんな彼の様子などお構いなしに、
女たちは妖しげな紫の光を放つ生物めいた金属球、ゾンダーメタルを押し付ける。
「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
 心が瞬く間に塗り込められてゆく感覚と、迫り来る未知の恐怖が理性のキャパシティを超え、
彼に有らん限りの悲鳴を上げさせた。

 

□□□□

 

 高い技術力でオーブの屋台骨を支える国営企業モルゲンレーテに、
今日は賑やかな子供たちの声が響いていた。
「さあ皆さん、見学させてくださった工場の人達にお礼を言いましょう」
「皆さんどうもありがとうございました!!」
 工場見学にやってきたオロファト第一小学校の生徒たちだ。国土が狭く産業に乏しいオーブでは、
親がここで働いているものも少なくない。今回の工場見学は国の明日を担う子供たちに
仕事の大切さを知ってもらうために企画された行事であった。
「でもさー、車とか船つくってるところしか見せてもらえなかったな」
「どうせなら戦闘機とか見たかったよなー」
 しかし帰りのバスに乗るが早いか、子供たちは教師に聞こえないようにひそひそと愚痴をこぼす。
モルゲンレーテはオーブ軍で使用されている兵器類も生産しているのだが、流石に学校行事で
そんなところまで見学させるわけにもいかず、そういった大人の事情でお茶を濁された子供らは
内心不満がくすぶっていた。いつの時代も男の子という生き物は兵器が大好きだ。
「ここだけの話なんだけどさ、あそこじゃ実はオーブ軍で使うモビルスーツも造ってるんだぜ」
「マジかよ! さすがリュウタだ、母ちゃん主任なんだもんな」
「なあシモンズぅ、そういうとこも見学させてくれるようにお前から母ちゃんにたのんでくれよぉ」
 母親がモルゲンレーテの開発主任を務めているリュウタ・シモンズが披露したとっておきの情報に、
たちまち食いつくメカに飢えた級友たち。そんな彼等に女子たちは冷ややかな視線を向ける。
「まったく……男子って馬鹿ばっかりね! そんな無茶いって親の立場悪くなるとか
 考えらんないのかしら」
「でも、男の子ってそういうの好きだし仕方ないんじゃない?」
「アスカさんは甘すぎるわ。オーブは技術だけがウリの中立国なんだから、
 まわりからなめられないように一人一人がしっかりしてなくちゃ!
 技術者の家族がべらべら話しまくったりなんかして、産業スパイにでも狙われたらどうすんのよ」
 隣に座るクラス委員長、イチコ・コモリの辛辣な言葉に晒された男子たちを
多少なりともフォローしようとしたマユ・アスカは、小学三年生にしてはやけに大人びた言動で、
口で闘わせたら学年でも一、二を争う彼女によってばっさりと斬って捨てられた。
(言いたいことはわかるんだけど、コモリさんももう少しやさしかったらなあ……え!?)
 トホホ、とうなだれるマユの背筋を、不意に言いようのない感覚が貫いた。
「なんだアレ!?」
 その直後、リュウタの上げた声を皮切りに、異状に気付いた生徒たちが窓際へ殺到する。
 彼等はそれを目にして悲鳴を上げた。車線の区別も無く逆走してきた奇怪な車が
触手を伸ばして次々と周囲の車両を引き寄せ、こちらへ突き進みながら自らへ取り込んでいたのだ。

 

 その頃、モルゲンレーテを擁するオノゴロ島の地下に秘密裏に建造された基地では、
遂にやってきた出番を前に、隊員たちが慌ただしく駆け回っていた。
「────素粒子Z0(ゼットゼロ)反応を確認。間違いありません、“ゾンダー”です!」
「うむ、彼に通信を回してくれ」
 途切れた同心円を形作るように四つのコンソールが配置された司令室。
白髪に白髭を蓄えた小柄な老人が、隣でデータの分析に臨んでいたオペレーターの女性へと声を掛け、
“彼”と呼んだ何者かとマイク越しに会話を始める。
『こちらでも確認しています。任せてください!』
「今ここでゾンダーと戦えるものは君しか居ない。頼んだぞ────ソルダートJ!」

 

 運転手は必死にハンドルを切るも、パニックになった周囲の車が邪魔をして思うように動けず、
挙句後続車による接触事故を起こして子供たちの恐怖に拍車をかけてしまう。
 みるみるうちに二十メートル近い大きさに膨れ上がったモンスターカーは、
マユたちの乗るバスを次の標的に定めると、肉食獣の鼻面のように変貌したフロントから
鋭利な牙を剥いてその魔の手を伸ばす。
「嫌ああああああああ! アタシまだ死にたくないい~~~~~~~~~~~!!」
「コモリさん!!」
 悲鳴と怒号がないまぜになるなか、割れた窓ガラスからイチコを庇ったマユは、
触手に絡めとられたバスが激しく揺さぶられた拍子に彼女もろとも外へ放り出されてしまった。
 一瞬陥った思考の空白。
「きゃあああああああああああああああ!!」
 ────このまま自分は道路に叩きつけられて死んでしまうのだ。こんなことなら
ケチケチしないであのときおこづかいを使ってしまえばよかった。お母さんの言うことを
聞いておくんだった。自分でも驚くほど冷静な思考と平行して、一秒にも満たない刹那のうちに
マユの脳裏を様々な未練が過ぎ去ってゆく。
 ────お父さんお母さんゴメンナサイ、でも神様お願いです。コモリさんだけは
どうか無事で済みますように。級友を庇う腕に力がこもる。
 その幼い命の灯が儚く消え去ろうとしたとき、一陣の風が舞った。
「怪我は無いか?」「え?」
 バスから放り出されたマユたちは、道路に叩きつけられることなく宙に浮いていた。
掛けられた声のほうを向いてみると、白い装甲に身を包んだ男が自分を見下ろしているのが見える。
 目元は鳥を模したようなヘルメットに隠されていて判らないが、両脇に設けられた
クリアレッドの覗き窓越しに向けられるその視線が、マユにはどこか優しげに感じられた。
 声や露出した口元を見るに、若い男のようだ。その首にはTVのヒーローめいた
真紅のマフラーが巻かれ、激しく頬を撫でる風にたなびいている。
「って飛んでる!? マユたち空飛んじゃってるよー!?」
 遅まきながら自らの置かれた状況を理解したマユは絶叫した。反対側に抱えられたイチコは
恐怖でとっくの昔に気を失っている。
「もう大丈夫だ、その子が目を覚ましたらなるべく遠くに逃げるんだぞ」
「ああっ、まって!」
 男は軽やかに空を翔け、二人をモンスターカーの進路とは反対側の見通しのいい
大通りへと降ろすと、マユが引き止めるのも待たずに踵を返して宙へ舞う。
「……あの方向、奴の目的はオーブの行政府か。なら早めにケリをつけてやる! ジェイバード!!」
 男────ソルダートJが叫ぶと同時に左腕に埋め込まれた紅の宝石『Jジュエル』が輝き、
天空に『J』の文字を浮かび上がらせた。刹那、空を切り裂いて真紅の高速戦闘艇
ジェイバードが駆けつける!
「フュージョン!」
 Jはブリッジの窓から飛び込むと、キャプテンシート背後の鳥を模した壁面に融合する。
それと同時に砲塔を備えた船体が分割されて両足になり、艦橋から張り出したレーダー部から
腕が飛び出して二十メートルを超える人型を形成した。Jの手足は比類なき鋼の四肢と同調し、
バイザーに覆われた機械の双眸に意志の光が宿る。
 サイボーグ戦士、ソルダートJは高速戦闘艇ジェイバードとフュージョンすることにより、
メカノイド・ジェイダーへと変形するのだ。
「ジェイッ、ダー!!」
「────プラズマウイング!」
 胸部のジュエルジェネレーターから汲み上げられる莫大なエネルギーが、孔雀を思わせる
光の翼となって放出され、ジェイダーを傍目には瞬間移動の如き速度で推進させる。
 そのスピードを毛ほども殺さずにモンスターカーの正面に回り込むや、ジェイダーは
自らの身体を一丸として体当たりをかけた。その軽やかな動きからは想像も出来ないほど強烈な一撃。
 跳ね飛ばされ、横転するモンスターカー。だがそれは受けた損傷などお構いなしに起き上がると、
メキメキと音を立てて奇怪な大変身を遂げる。
 前輪が大地を踏みしめる足となり、後輪を含む車体後部と電気自動車には存在しないはずの
エキゾーストパイプらしきものが逞しい両腕となった。獣じみたフロント部が
そのサイズを変えながら上方へと移動し、雑多な機械部品で構成された鬣を持つ人型ライオンへと
その姿を変えた。
 胸に紫色の『Z』の字が燦然と輝き、獅子は天地に轟けと雄叫びを上げる。
『ゾン・ダアアアアアアアアアアアアアア!!』
 人間のストレスに反応して取り付き、心無き機械の怪物へと変える。
これこそがソルダートJの、そして人類の敵、ゾンダーだ。
 ゾンダーメタルによって人間が周囲の機械を取り込み変化したゾンダーロボは、
取り込んだ機械の能力をアレンジ、増幅することが出来る。
 自動車ゾンダーは、パイプ状の指先からワイパーで使用する水を高圧化、収束した
ウォータージェットカッターを発射。無数の水の刃が周囲の建造物を薙ぎ払いながら
ジェイダーへと襲い掛かった。
「そんなものぉ!!」
 装甲の表面に強力なバリアーを発生させるフィールド・ジェネレーティングアーマーに物を言わせ、
ジェイダーは果敢に刃の中を潜り抜けてゆく。たとえコンクリートや鉄材をも切り裂く刃だろうとも
たかが水鉄砲、当たったところでかすり傷一つ負うことはない。
 ゾンダーの懐へ飛び込んだその右手に炎が点り、気合と共に突き出された。
「プラズマッソォォォォォォド!」

 彼方にうっすらと見える戦いの光に、マユは言い知れない胸騒ぎを感じていた。
(なんだろう……マユ、あの人や怪物のこと知ってる気がする)
「うん……あ、アスカさん!?」
「ああ、コモリさん! 目が覚めたのね!?」
「わたしたち、バスから落ちたのにどうして……?」
「あのね、助けてくれた人がいたの」
 あの状況で一体誰が? とでも言いたげなイチコの眼に、マユは恐る恐るといった様子で
言葉を紡いだ。
「あの、その、えっと……正義の味方?」「ばっかじゃないの」
 言葉のナイフがぐさりと刺さる。あんまり人のことを馬鹿とか言っちゃいけないと思うな。
「だってそうとしか言えないよぉ、赤いマフラーなびかせて空飛ぶ鎧の人なんて」
「ま、いいわ。無事なのは確かなんだし、さっさと逃げましょう」
 イチコは盛大にため息をつくと、服についた埃を払って立ち上がり、マユとともに
警察かオーブ軍かは知らないが助けを求めて歩き出した。
 ────しかし、一キロもいかないうちにマユの姿は忽然と掻き消え、歩いているのは
イチコ一人だけになっていた。
「アスカさんっっっ! 一体どこにいっちゃったのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
(コモリさん、ゴメンなさいっ! でもどうしてもあの人が気になるの!!)
 マユは胸騒ぎに突き動かされるまま、ゾンダーと戦うジェイダーのもとへ駆け出していた。

「プラズマソォォォォォォド────何ッ!?」
 ジェイダーは咄嗟に刃先を逸らして踏みとどまり、ゾンダーの中心核を抉り出せる
絶好の機会をふいにする。
「汚い手を使ってくれる……」
『あれは!』
 戦況をモニター越しに把握していた面々も、その光景に臍を噛んだ。
 ゾンダーの腹部から、盾にするかのようにバスの車体が生えていた。内部には
工場見学の帰りだった小学生たちが大勢取り残され、口々に助けを求めている。
「あれ、うちの息子です!」
 丸々と太った男性オペレーターが、その中に息子が居ることを確認して悲鳴を上げた。
 隣で同じ光景を目にした妻も、口元を押さえて顔面蒼白となっている。
 形勢逆転とばかりに、体中から伸ばしたムチのような触手でジェイダーを打ち据えるゾンダーロボ。
それに絡めとられ四肢を拘束されたジェイダーに強烈な電撃が襲い掛かり、
自慢のスピードを殺されたジェイダーは、追い討ちをかけるように振り回され
為すすべなく地面に叩きつけられる。
 あらゆるマシンと融合できるゾンダーだが、ゾンダーメタルと相反する力を持つ
Jジュエルで駆動するメカを取り込むことは出来ない。しかし攻撃力さえ充分なら
破壊すること自体は可能なのだ。
 強固なフィールド・ジェネレーティングアーマーも、強力な攻撃に晒され続ければ
いつか綻びが生じてしまう。
「やられちゃう!」「たすけてえ~~~~~~~!」
 子供たちの悲痛な叫びが胸を打つ。もはや彼に打つ手はないのか?
「────反中間子砲発射!」
 両膝に設けられた連装砲塔が180度旋回し、両腕に絡み付いていた触手を
理論上は破壊できぬものなどありはしない反粒子ビームで吹き飛ばした。
 即座に両手に発生させたプラズマソードが足の拘束を解き放ち、体勢を立て直すため
ジェイダーは大空へ舞う。
「ゾンダーなんかにはもったいないが……本気で叩き潰してやる!
 ────ジェイキャリアァァァァァ!!」
 ソルダートJの叫びと共に、大海原を割って白亜の巨艦がその姿を現した。
彼の頼れる相棒ジェイキャリア──生体コンピュータ・トモロによって制御される
超弩級戦艦の本体だ。
「メガ・フュージョンッ!!」
 フィールド・ジェネレーティングアーマーを展開すると共にジェイダーとジェイキャリアが
変形を開始する。ジェイキャリアの船体が伸長しながら直角に折れ曲がり、巨大な胴体を形成。
次いでジェイダーの下半身が分離、分子増殖による肥大化を起こしつつ胴体に見合うサイズの
剛腕へと姿を変え、艦首左右のジョイント部へ接合された。
 最後に鳥を模した艦首直上へと上半身がドッキングし、巨大な顔となる。
 卑劣な敵への怒りが鋼の神経Jファイバーを通じて巨神の全身を駆け巡り、
ジュエルジェネレーターから迸る炎のような真紅の活力が、その巨躯から溢れんばかりに
満ち満ちていた。
「キングッ! ジェイダー!!」
 ジャイアントメカノイド・キングジェイダー。何者にも屈することのない威風堂々たるその巨体は、
見るものに畏怖の感情すら抱かせる。
 ゾンダーロボを遥かに上回る、101メートルの巨神が獲物を見下ろした。その瞳には
煮えたぎるマグマの如き怒りの色が浮かんでいる。
 永遠とも思える一瞬の後、巨神が動いた。右腕に装備された巨大な錨が炎に包まれ、
弓を引き絞るような体勢をとる。その圧倒的な威力を秘めているであろうそれを見て、
オペレーター二人が血相を変えてうろたえた。
『────博士!』
「ソルダートJを信じるんだ!」
「ジェイクォォォォォォォォォス!!」
 これこそがキングジェイダーの必殺武器、ジェイクォースだ。照準はしっかりとゾンダーの中心、
子供たちの乗るバスに定められている。
「あ、あのロボット……俺たちごと敵を倒すつもりだぁ!」
「いやあああああああああ! やめてえええええええ!!」
「助けてママぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 子供たちの懇願も虚しく、非情にも解き放たれたジェイクォース。
凄まじいエネルギーを纏う炎の鳥が、まるで雄叫びのような唸りを上げて飛び掛ってゆく。
 炎の鳥は獲物の腹を食い破り、破片を撒き散らしながら主の手元に舞い戻った。
 大爆発を起こし、跡形もなく吹き飛ぶゾンダーロボ。だがキングジェイダーの右掌には、
原形をとどめたバスとほとんど無傷の子供たち、そしてゾンダーから抉り出された
中心核の姿があった。
「怖い思いをさせてごめんよ、けどこうするしかなかったんだ」
 気絶してしまった子供たちへ精一杯優しい声を掛けると、潰してしまわないよう慎重に、
バスを下ろすキングジェイダー。
「トモロ、核を拘束する。Jケージの用意を……ん?」
〈飛来するJパワー反応を確認。どうやらその必要は無くなったようだ〉
「────まって!」
 しかしゾンダー核を元に戻す手段は無く、今のところは捕獲だけで妥協せざるを得ないかと思った
そのとき、彼方から赤い光を放つ少女が現れ、御伽噺の妖精のように巨神の周囲を舞う。
 孔雀のような一対の羽を生やし、光を放ちながら空を舞うその少女はマユ・アスカその人だった。
その口から耳慣れない言語で構成された“呪文”が紡がれる。
『テンペルム・ムンドゥース・インフィニ・トゥーム……』
 マユは初めから知っていたかのようによどみなく呪文を唱えると、ゾンダー核へ向けて
その手を振り下ろした。
『……レディーレ!』
 指先から波紋が伝わり、ゾンダー核はみるみるその姿を変えてゆく。
「ああ……ありがとう。本当にありがとう……」
 現れたのはマユもTVや新聞でたまに見かける政治家のウナト・エマ・セイランだった。
彼は心が洗われたかのような笑みを浮かべ、無事人間に戻れたことに歓喜の涙を流している。
「おお、あの子供は!」
 ゾンダーを人間へ戻したその能力に、博士と呼ばれた老人は身を乗り出してモニターを見つめた。
「浄解能力……目覚めたのか? アルマ────」
 地球を狙う恐るべき敵ゾンダーと、それを迎え撃つキングジェイダー。
彼等は一体何処からやってきたのか。そしてマユに秘められた力の正体とは?
 多くの謎を抱えたまま、この物語は続く。

 

 ────次回予告
 君たちに最新情報を公開しよう。
 宿敵の存在を知ったゾンダーは、マユをターゲットにさだめ、彼女の抹殺計画を発動した。
ジェイダーの動きを封じるため、市民のひしめく市街地で牙を剥くゾンダーロボ。
マユの家族が危機にさらされ、首都オロファトが炎に包まれる!
 勇者戦艦ジェイアスカ、NEXT『赤い髪の少女』次回もこのスレッドにメガ・フュージョン承認!!

 

 これが勝利の鍵だ! 『ジェイキャリア』