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BRAVE-SEED_勇者戦艦ジェイアスカ_第06話

Last-modified: 2010-11-26 (金) 15:32:11
 

 ────オーブ近海でザフトの部隊と交戦して損傷し、やむなくモルゲンレーテの秘密ドックへと
寄港した連合軍の最新鋭艦アークエンジェル。その修理を依頼されていたジャンク屋の若者、
ロウ・ギュールは作業の手こそ止めないものの、先程から警報とともに耳に入ってきた
ゾンダー情報に気が気でない様子だった。
 だがそれは彼が臆病だということではなく、むしろその逆で────
「ロウ? こちらは大丈夫なので、気になるのでしたら少しの間でも外に出ては……」
「いや、8と教授(プロフェッサー)に撮影は頼んであるからな。まずはこっちが先だろう?」
 仲間のリーアムにまでそう気遣われるほど落ち着かないそぶりの彼は、
すぐにでも外へ出たい誘惑を振り払って目の前の仕事に没頭する。
 MS、MA、戦艦の別無く、あらゆる新型のメカに目が無い彼は、このオーブに来て
たまたま目にしたキングジェイダーの姿に一瞬でその心を奪われた。
 100m級の白亜の巨体とそれに相応しいパワー。ビーム、実弾を問わない大火力と、
おびただしい攻撃に晒されても小揺るぎすらしない重装甲。
 まるでアニメの世界から抜け出してきたような、MSのレベルを遥かに凌駕するその戦いぶりは
圧巻の一言で、まさにすごく強い、すごくデカイ、すごいロボットとしか言えない有様だった。
なんとしてもこの勇姿を生で観たい、自らの手で隅々まで弄り回してみたい。
そう思うのも仕方ないと思えるほど、キングジェイダーは極めて魅力的な存在だった。
 それを前にしては、流石の最新鋭艦アークエンジェルも霞んでしまう。
 しかし悲しいかな彼は誇りあるジャンク屋。今はそんな欲求を断腸の思いで片隅に置き、
依頼された仕事を片付けなくてはならないのだ。
 仕事に精を出す相棒の切なる願いを多少なりとも叶えるべく、MSのサポートAIである
“8(ハチ)”はロウの愛機である赤いMSを単身操って、マドロスよろしく埠頭のコンテナへと
その脚を乗せながら、メインカメラを最大望遠にしつつ、遥か沖合いの戦場へと視線を向けていた。

 
 

勇者戦艦ジェイアスカ No.06『夜明け』

 
 

 ゾンダーボズゴロフとの戦闘で深く傷ついたミハシラウイングスのもとへ、
海面を割って多目的整備装甲艦カナヤマヒコが姿を現した。ミハシラ軍の艦船に共通した黒鉄色の艦は、
コップのように角度の付いた円筒形の艦体を前後に展開し、一見して空母のような姿へと変わる。
 その甲板からは巨大なクレーンが伸び、損傷したムラサメたちを手際よく回収してゆく。
戦闘中に脱落したパーツも、回収班として投入された水中装備の無人アストレイ部隊が、
その大きなバイザーに覆われたセンサーを光らせながら、ネジ一本残さぬ覚悟で
背中のコンテナへ次々と掻き集めていった。
 最後に一番損傷の少なかった天を回収し、カナヤマヒコはその艦体を閉じて海中へと潜航する。
「派手にやられたなぁ……でも心配するなよ、きっと新品みたいに元通りにしてやるからな!!」
 カナヤマヒコに乗艦していたシモンズ整備班長の励ましが格納庫に響き渡り、
重傷のムラサメたちは腕を振ったり、腕の無いものはバイザー状のメインカメラを明滅させて応えた。
 回収された機体は、AIユニットの収められた中枢部分のチェックが済み次第直ちに洗浄され、
備え付けられたメンテナンスベッドへ搬送される。破損したパーツは速やかに新品と交換され、
物質復元装置へ回されて元通りに復元。再検査の後に再びスペアパーツとしてストックされる。
 この高度にシステム化された作業工程のおかげで、ミハシラのロボット軍は如何に損耗しようと
その戦力をたちまちのうちに取り戻すことが出来るのだ。
 艦名に冠された金属、製鉄の神の名に恥じない働きは、目立たないながらもミハシラ軍を
しっかりと支えている。この世にカナヤマヒコが在る限り、彼等は永久に不滅なのだ。

 

「お母さんが外でお食事なんてめーずらしー」
「せっかくのお休みだし、私もたまには楽したいからね。職場で聞いたんだけど、ここ美味しいらしいのよ」
 ある晴れた昼下がり、アスカ母娘を乗せた一台の白い軽自動車が、ライオンキッチンという
レストランを訪れた。自家製の無農薬有機野菜をふんだんに使用したヘルシーメニューが売りという、
こじんまりとした佇まいの可愛らしい店だ。
 何の気なしに駐車場を見ると、黒塗りのスポーツカーが目に入る。
幸いにも車はそれが一台駐車しているきりで、ランチタイムにもかかわらず楽に入ることが出来た。
「……?」
「なにしてるのー? 早く来なさい」
 ふと背後に視線を感じたような気がしてマユは振り返ってみるも、やはりそこには誰も居ない。
無人の車が在るだけだ。首をかしげたものの、すぐに母の後を追いかけてドアをくぐる。
 明るく暖かい雰囲気の店内では中高生くらいの子供たちが働いていたが、
家族で切り盛りしているというわけでもなさそうだった。店員は皆、兄弟とは思えないほど
風貌に共通点が無い。
「いらっしゃいませ! ご注文がお決まりでしたらお手元のベルでお呼びください」
 ふわふわしたブロンドの少女が、お冷をマユたちの着いたテーブルへと並べる。
その胸元を覆うエプロンには、店のシンボルなのだろうライオンのプリントが躍っていた。
「ステラちゃーん、プリン追加よろしくー」
「俺野菜シャーベット」
「コーヒーのおかわりを」
 そこへ奥に座っていた客から注文が入る。背広姿の三人はどうやら少女目当ての常連客のようで、
顔馴染みなのか店員に対してやけに馴れ馴れしい。
「ステラー、母さんが出かけるからスティングのほう手伝ってくれ。そっちはボクがやるから!」
「わかった!」
「きったねーぞアウル!」
「ごめんねー忙しくってさあ!」
 すかさず厨房から顔を出したやんちゃそうな少年から声が掛かり、ステラと呼ばれた先程の少女は
奥へ引っ込んでいった。一人を除き、背広組から一斉に上がるブーイング。
だがアウル少年は慣れっこなのかそんな言葉など何処吹く風で、ひらひらと手なんぞ振っている。
 彼等の会話の中、不意に「母さん」という単語がマユコの耳に入り、ムクムクと好奇心が首をもたげた。
他人の関係を詮索するわけではないが、どうにも気になってしまう。
「……あの二人、店長の息子さんとガールフレンドなのかしら?」
 なんだか気になるお店だ。

 

□□□□

 

 見事に晴れ上がった大空を、オーブ軍の戦闘ヘリが飛び交ってゆく。武装はしておらず、
そのパイロンには本来あるべきミサイルのかわりにブイのような形状の装置が吊るされていた。
《全機所定の位置につき次第投下開始!》
 隊長機の号令一過、ヘリ部隊は数キロ四方という広大な海域を取り囲むようにブイを投下してゆく。
《ホログラフィックカモフラージュ、作動!》
《カモフラージュ、作動します!》
 投下が確認されるや装置はすぐさま遠隔操作で作動し、その海域を陽炎のような揺らぎとともに広がる
大規模な光学迷彩で覆った。この海域を覗き見る手段は、もはや上空から見下ろす以外に無い。
「これよりミハシラ軍戦技演習を開始する! 空中空母タケミナカタ、万能補給艦トヨタマヒメ、
 多目的整備装甲艦カナヤマヒコ発進!!」
 封鎖が完了したのを確認すると、ギナの号令とともにシークレットポートに接岸されていた
ミハシラ艦隊が次々と浮上する。
「ソルダートJ、準備はいいか?」
「もちろんだ!」
 呼びかけに答えるように、海原を割って白亜の巨艦がその姿を陽光に晒した。
強大な敵との戦闘経験を積ませるため、ソルダートJは演習のたびにミハシラ軍の仮想敵機を務めているのだ。
「では遠慮なく往くぞ、ミハシラウイングス発進!」
「了解! シルバーウイング及びゴールドウイング、ムラサメ隊発進します!!」
 ナガオの操作でタケミナカタのミラーカタパルトが起動し、リボルバーの回転とともに
矢継ぎ早にウイング姉弟とムラサメ部隊を送り出してゆく。
「ウイングス、展開完了しました」
「よろしい、では私は準備に入らせてもらう。部隊の指揮と伏兵の使いどころはユウナに任せるぞ」
「しょうがないな……目標、前方のジェイキャリバー。シルバーとゴールドは援護、
 ムラサメ隊はレッド&ブルーの二機編隊を組んで、四方からフォーメーションD‐3で波状攻撃を掛けろ!」
 言うが早いかギナは司令席を立ち、何処かへと姿をくらませてしまう。
後を任されたユウナはそんなギナの悪癖に嘆息しつつも毎度のことだと諦めて、
司令代行を務めるべくウイングスの指揮を執った。
「来たな……トモロ、全砲門開け! ミサイルランチャー対空砲火!!」
《了解!》
 すかさず艦の両舷側から機関砲のような勢いで対空用のメーザーミサイルが放たれ、航空隊を牽制する。
彼等がミサイルを回避した隙を狙い、複数のムラサメたちへ反中間子砲が撃ち込まれるが、
必中と見られたその火線が機体を貫くことは無かった。
 回避と同時にムラサメブルーの放ったミサイルが、正面に防御フィールドを展開し攻撃を逸らしたのだ。
無論対空ミサイルの弾頭もビームも訓練用に切り替えてあったが、攻撃を斥力で防ぐような
単純なバリアーとは違い、炸裂とともに一時的な歪曲空間を発生させるこのバリアー弾頭であれば、
仮にこれが本物の反粒子ビームであったとしても充分防ぎきったことだろう。
 発生したバリアーの間隙を縫って、変形したムラサメたちのシールドに仕込まれたビーム砲が
一斉に火を噴いた。歪曲空間の隙間を潜り抜けたビームの光条は、水柱を立てて海面に降り注いでは
航行するジェイキャリバーを襲う。
 だがJたちもやられてばかりではない。トモロがすかさずバリアーを問答無用で素通りする
ESミサイルを発射し、不運なムラサメに撃墜判定を下す。
 その他にも彼等には、無数にESウィンドウへ撃ち込まれたメーザーミサイルの群れが
襲い掛かったが、ムラサメを上手くアシストするビームガンの連射やアームズバルカンなど、
変形したウイング姉弟による弾幕が、ミサイルに対するカウンターとして充分に機能していた。
「なら! ジェイバード、プラグアウト!!」
《ジェイキャリア、スタンドアップ!!》
 エネルギーの続く限り艦内で生産される無限ミサイルや、主砲の絶え間ない対空砲火の中、
安全なバリアーの陰で変形、ホバリングしつつ攻撃を掛けてくるムラサメたちを一網打尽にするべく、
ソルダートJはジェイダーへとフュージョンし、トモロもジェイキャリアを直立させた。
「────全機フォーメーションA‐10!」
 ユウナがその指示を下したのは、ジェイダーが変形を始めジェイキャリアの目から
牽引ビームが放たれるのとほぼ同じタイミングだった。
 まさに全弾発射という有様でありったけのミサイルを撃ち込むや、
すぐさま尻をまくって逃げを打つミハシラウイングス。ジェイダーの速さは嫌というほど知っているものの、
気休めでも何もしないよりはずっとマシとばかりに、全ムラサメはアフターバーナーを噴かして
蜘蛛の子を散らすように急速反転する。
 ミサイルの中には少しでも狙いを逸らそうと用意されたジャミング弾頭も含まれており、
炸裂とともに放たれたチャフが、ジェイアーク級の対物レーダーである中間子検知器を欺くために、
周辺空域を中間子で盛大に散らかした。
 数に物を言わせて撃ちまくったおかげで、幸いにも着弾したバリアー分解弾頭が
ジェネレーティング・アーマーを無効化し、次いで襲い掛かった数々のミサイルが、
穢れなき純白の船体を毒々しいマゼンタのペイントで汚す。
 それに怒ったかは判らぬが、立ち上がったジェイキャリアの全身から炎の花が咲いたように
ミサイルやビーム兵器の返礼が贈られた。
 その姿たるや、まさしく映画に登場するような防衛隊を蹴散らす大怪獣の有様だ。
 ウイングスが一世一代の一撃離脱戦法を敢行し、自らに迫る無数の火線とのデッドヒートを繰り広げる中、
あるものはミサイルに被弾し、またあるものは薙ぎ払うように振りぬかれた牽引ビームに捕らわれて
ジェイダーの刃に掛かるなどして、数々の撃墜判定をもらいつつも、チャフによって鈍った照準と
ばら撒かれたバリアー弾頭のおかげで、武装こそほとんど失われたものの、
過半数以上という決して少なくない機体が無傷で生き残ることが出来た。
 だがジェイダーたちから遠ざかる機影の中に、彼等を束ねる金銀の輝きは────無い。
(ウイング姉弟が見当たらない? ────まさか!!)
 その刹那、ジェイキャリア背後の海面を割って合体を完了した天ギナと、
ロンド・ギナの操るカスタムアストレイP01が姿を現した!
『受けるがいい! バーストインフェルノ!!』
「今日こそ貴様に黒星を付けさせてもらうぞ! ソルダートジェイィィィィィィィ!!」
 天ギナの両肩に装備された機銃や両腕のビームキャノン、腰のビームガンに
胸のシールドから展開されたアームズバルカンに至る全ての火器が、まさに鉄風雷火の嵐となって
眼前のジェイキャリアへ牙を剥く。
 AIのモデルにされたおかげなのか訓練の成果か、天とまったく同じタイミングで
ギナのカスタムアストレイもアクションを起こした。翠色のツインアイをぎらつかせ、
装甲の隙間から覗く黄金のフレームを降り注ぐ陽光に煌めかせながら、
背負った巨大なフライトユニットのスラスターを噴かして円錐形のビーム突撃槍を
ジェイダーへ向けて突き出し、背後からその身を貫かんとする。
 毎回のように演習でJに土を付けられては機体を強化し、戦術を練り直してきたギナの執念の一撃だった。
 無論この相手がゾンダーであれば、あるいはさらに強大な原種であったとしても、
プラズマ推進と併せて強引に組み込まれたウルテクエンジンの加速度と相まって、
高速回転する攻防一体のエネルギーフィールドで構成されたドリル状の矛先は、
種々の攻撃やバリアシステムをも物ともせずに貫通しただろう。
 だがしかし、勝利の女神が彼に微笑むことはまたしても無かった。
《ESミサイル発射!》
『うおおおおおおおおおお!?』
 海中に転移したミサイルによって盛大に足元をすくわれた天ギナは、必殺の狙いを見事に逸らされ、
カスタムアストレイのもとにもジェイダーのカウンターが繰り出される。
「セパレーション! ────ジェイダーパンチ!!」
「なにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」
 後ろ回し蹴りの勢いに乗せて、分離されたジェイダーの左脚がキングジェイダーの
右腕へと変形しながらカスタムアストレイに迫った。
 アレに対してビーム兵器は通じない。ソルダートJのとっさの判断による見事な攻撃だった。
 一度付いた勢いはそう簡単には止められない。ウルテクエンジンは加速度こそ自在に制御できるが、
慣性まで操れるわけではないのだ。提供された技術資料の中には存在したものの、
慣性制御装置をMSに搭載できるほど小型化することは現在の技術ではいまだに困難だった。
 よってカスタムアストレイは慣性の法則に支配されるまま、巨大化しながら迫る鉄拳から放たれた
デコピンを横面に受け、錐揉み回転しつつボッチャンと情けない水音を立てて沈んだ。
いかな攻防一体のフィールドとはいえ、正面以外から打撃を受けてはどうしようもない。
「おのれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
『うぬうっ、よくもサハク司令を!』
「五連メーザー砲、反中間子砲発射!」
 さらに追い討ちを掛けるように、どうにか生き残っていた天ギナへと飛来した右腕が
反中間子砲や指先の五連メーザー砲を撃ちながら縦横無尽に襲い掛かった。
『なんの! クロスウイング・ブーメラン!!』
 それを機動力に優れる天ミナへ変形して巧みに回避、主翼の変じた十字ブーメランを投げつけて牽制する。
 ミラーコーティングによって白銀に輝くブーメランは、その表面でメーザーをことごとく弾き、
反中間子砲も浮遊と軌道制御に利用しているフィールドを使い、完全とはいかないまでも逸らしている。
 ブーメランの相手に追われ、キングジェイダーの右腕はすっかり釘付けにされていた。
 そこに生じた僅かな隙を突いて、絶え間なく射掛けられるビームやミサイルを掻い潜り、
腕部ビームキャノンや腰部のビームガンを駆使して、じわじわとジェイダー側のHPを
削っていく天ミナだったが、彼女へ止めを刺すべく、ついにジェイダーが動いた。
「なかなかやるようだが、いいかげん終わりにしてやる! メガ・フュージョン!!」
 残っていた右脚も切り離し、そのまま急降下して直立していたジェイキャリアと
メガ・フュージョン体勢に入る。
 合体を完了し、盛大な水しぶきを上げて南海へと降臨する隻腕のキングジェイダー。
さんざん右腕を苦しめていたブーメランも、とうとう叩き落されてしまった。
「反中間子砲用意!」
 キングジェイダーの両腕に挟まれた天へ、砲塔が一斉に顔を向け引導を渡さんとする。
しかし天には策が有った。胸のシールドに内蔵されたフィールドジェネレーターを全開にし、
その全身を鏡面じみた防御フィールドで覆う。これならばたとえ実戦で本物の反粒子ビームが
放たれたとしても、僅かばかりだが耐えられる。
『────シンメトリカル・アウト!!』
『生太刀!』『禍太刀!』
 そのまま分離したウイング姉弟は、互いの手に刃をとると両足のスラスターを最大限に噴かして、
キングジェイダーとその右腕へと弾かれたように向かってゆく。
『い・ま・だああああああああああああああああああ!!』
「甘い! 腕部牽引ビーム、照射!」
《腕部牽引ビーム、照射!》
 だがしかし、キングジェイダーの両腕にマウントされた紺色の砲塔から、
反中間子ではなく牽引ビームの光条が迸り、シルバーウイング、ゴールドウイングの身体を
一切の身動きが出来ぬまま空中へ繋ぎ止めた。
『うおおおおおお!?』
『これは!?』
 そのまま宙に浮いた右腕と、体と繋がった左腕が力強く拳を握り、互いにビームの束を
手繰るように轟然と距離を詰める!
「────クロス・ボンバアアアアアアアアアアアアアア!!」
 巨腕がぶつかり合うのとともに、晴れやかな大空へ盛大に轟く打撃音。
こうしてミハシラ軍リーダーであるシルバーウイング、ゴールドウイング、カスタムアストレイが
盛大に撃破されたことで、今回の演習もソルダートJの勝利として幕を下ろした。
「あちゃ~~~~、やっぱ敵わなかったか……今回はいい線いってたと思ったんだけどねぇ」
「そうでもないさ、ムラサメが過半数以上生き残っただけでも大したもんだ。
 こっちがキングジェイダーじゃなかったら多分ユウナが勝ってたぞ?」
 勝敗に遺恨を残すことなく、互いの健闘を称えあう指揮官たち。
Jはダウンしたウイング姉弟を介抱しながら、ユウナの指揮にミネルバ時代に交戦した
オーブ軍の手強さを思い出していた。
「よし、それじゃあ撤収準備だ。死んだ奴等も生き返っていいぞ!」
 その声を耳にして、撃墜判定をもらったムラサメたちも生き残りもこぞって
タケミナカタへ着艦してゆく。入れ替わるようにカナヤマヒコから発進した
水中用アストレイ部隊が、周辺の海域を総ざらいしてようやく後始末は完了だ。

 

 一方その頃、オノゴロ基地のメインオーダールームでは、獅子王麗雄博士が
エリカ・シモンズ、パピヨン・ノワール等とともにゾンダーとの交戦記録を再確認していた。
「────人質作戦を積極的にとってきた清掃機材ゾンダーを始め、
 マユちゃんをターゲットにさだめ、初期段階からゾンダーメタルプラント製造との
 二面作戦をとった地熱発電所ゾンダーと学校ゾンダー。
 手足となるゾンダーMSを大量生産し、ゾンダー成熟までの時間稼ぎを行った工場ゾンダー。
 極めつけがキングジェイダー無力化を図ったボズゴロフゾンダー……やはりゾンダーは
 驚異的な勢いでその強大さを増しておるようだ」
 次いでモニターに、素体とされた被害者たちの記憶から映像化されたゾンダリアンたちの画像が表示される。
ウナト・エマ・セイランを襲った赤と紫の女、清掃員の青年を襲いアスカ夫妻を人質に取った緑の少女、
そして先日ザフトの艦長をゾンダー化した青の少女。
 やはりと言っていいのか、ゾンダー化されている間の記憶が断絶するのはどの被害者も
共通しているようで、獅子王博士の開発した記憶映像化装置──その外観から通称
“ゆりかご”と呼ばれている──をもってしても詳しいことはわからなかった。
 人間の抱くストレスや負の感情をエネルギーに変え、手近な機械へ融合するという
ゾンダーメタルの特性上、その能力や行動は素体の感情や取り込んだ機械に大きく影響される。
スポーツが得意だった少年が素体となった学校ゾンダーの外観しかり、ウズミ前代表に
不満を抱いていたセイラン宰相の目標しかりだ。
 実際、撃沈された艦内で死の恐怖に怯えていた艦長を素体としたボズゴロフゾンダーは、
天の合体が成功しなければキングジェイダーに勝利していたかもしれないほど強大だった。
 今でこそオーブは連合とプラントが矛を交えあう中、名目上の平和を保っていられるが、
もし戦渦に巻き込まれ、それによって生み出された深い憎悪、あるいは悲しみに囚われた人間が
素体にされたとすればどうなるか?
 もしゾンダリアンの魔の手が国外へ伸び、各地で開発されているであろう強力な新兵器群が
取り込まれたとすれば、どれほど強力なゾンダーが生まれてしまうのか……
「気がかりといえば、31原種の事もある。キングジェイダーの存在を知った奴等が
 いつ地球にやってくるか……ましてプラントや火星コロニーを乗っ取られでもしたら事だぞ。
 下手をすれば人類は、地球と宇宙で挟み撃ちにされるかも知れん」
「博士……我々は本当に勝てるのでしょうか?」
「エリカ君、今はコトー様やセイラン宰相の頑張りを信じよう。
 参謀たちもソルダートJと日々戦術を練っておるし、開発部も全力で
 新兵器研究や性能向上に努めておる」
「最後まで諦めない限り、人類は滅びません。だって彼等はみんな、勇者なんですから」
 不安に潰されそうになるエリカを励ます博士。ミハシラウイングスの戦闘データ解析が
ひと段落付いたパピヨンも、そう言ってエリカに微笑んだ。
「ところでパピヨン君、強化プランの方はどうなっておるかね?」
「現状の戦力増強プラン進行状況ですが、トヨタマヒメに搭載されている補給物資────
 ミサイルやムラサメ用Jパワーパックの同艦武装としての転用は、既に作業終了済みです。
 開発中のミラー粒子砲が90% 作動実験が済み次第、タケミナカタミラーカタパルトへの
 搭載が開始できます」
 さらにミハシラ艦隊の図解から映像が切り替わり、背部に大型のバックパックを装備した
カスタムアストレイが映し出される。センサー類の集中する顔全体をバイザーで覆った
量産機とは異なり、ギナの機体は二つのメインカメラに牙めいたマスクと、天ギナに良く似た顔立ちだ。
 Vアンテナを備えた頭部の形状こそそのままだったが、各部に追加された黒い増加装甲も、
その印象に拍車を掛けている。
「なお、司令のアストレイに搭載されているJジュエルウルテクエンジンや新兵器ですが、
 これらに小型化、実用化の目処が立てば機動部隊の負担も大分軽減されることかと思われます」
「うむ、我々は急がねばならん。いつ現状の装備で対応できない敵が現れるか判らんのだからな」

 

 ──── 一度は海中に引きずり込まれたものの、戦闘機から変形合体した黒いロボットによって
見事に復帰したキングジェイダー。彼はそのまま黒いロボットのアシストを受けて、
一撃でボズゴロフ級潜水艦の変化したゾンダーを撃破して見せた。
「でかしたぞ8! 良く撮れてるぜ……」
《当然だ!》
「それにしてもアレだけのパワーが出せるエンジンや空間を捻じ曲げる大砲とか、
 いったいどういう仕組みなんだろうな?」
 どうにかアークエンジェルの修理も片がついた後、とるものもとりあえず飛び込んだコックピットの中で、
ロウは撮影された映像に時が流れるのも忘れて見入り、その迫力に子供のように瞳を輝かせていた。
 格納庫で彼が搭乗しているMSは、頭部こそVアンテナにツインアイ型だが
全身の外装がチグハグで、おまけに端々にジンの装甲まで付いているという、
連合の物ともザフトの物ともつかないずいぶんと珍妙な姿だった。
 ザフトと連合の戦闘に巻き込まれて崩壊したコロニー、ヘリオポリスから回収されたパーツを
ロウ・ギュール自ら組み上げ、足りない部分をジャンクで補うことで完成させたMS。
それが彼の愛機『レッド』である。
 オーブの協力の下、ヘリオポリスで連合が開発していた五機のMSは、襲撃を掛けてきたザフトによって
ストライクを除く四機が強奪され、連合の敵に回ることとなってしまった。
だがそれらのデータを基に試験的に開発され、組み立てを待っていた量産試作機の一部が、
強奪を免れて工場エリアの奥底に眠っていたのだ。
 急な戦闘だったせいか、ストライクのパーツと完成品、当座をしのげるだけの物資を
かき集めるだけで精一杯だったアークエンジェルに回収されることも無く、
宇宙(そら)の藻屑として朽ち果てていくだけかと思われたそれは、エリカの流した情報によって
無事ロウたちの手に渡ることとなった。
 『G』あるいはG.U.N.D.A.M.というOSの頭文字から、開発スタッフに
『ガンダム』の愛称で呼ばれていた機体群。
 発見された当初は頭部を始めとした一部のパーツが欠けていたのだが、
ロウはストライクにも使用された汎用性に優れる100系フレームに、たまたまそこに在ったという理由で、
そのうちの一機であるデュエルの頭部を取り付け、その他に様々な使えそうなパーツで肉付けした。
 こうして組み上げられた機体はロウの趣味からか全身を真紅に塗装され、そのものズバリな
『レッド』の名で呼ばれるようになり、道中降りかかった様々な戦いを共に潜り抜け今日に至る。

 

□□□□

 

 ────地下深くに広がるゾンダリアン本拠。そこでピルエッタが一人、
今まで記録された戦闘データを分析していた。反中間子砲の火力で、ジェイクォースの圧倒的威力で、
次々と粉砕されてゆくゾンダーロボたち。装甲、火力、速度……その性能はどれをとっても
こちらを上回っている。
 さらにソルダートJから提供されたのだろう赤の星の技術を使用したロボット軍団、
ミハシラウイングス。その存在は地球の機界昇華を目論むゾンダリアンにとって
到底看過できぬものとなっていた。
「アベルの残せし禍(わざわい)……キングジェイダー」
 無感情な声と、人形のように整った表情こそ変わらないが、その身を包む紺碧のドレスにあしらわれた
数々の歯車がギチギチギリギリと憎々しげに音を立てて回転する。
 だがピルエッタは、次なる素体として候補に挙げたメカのうち、数日前オーブ沿岸で戦闘を行った
とあるMSに目を留めた。
 その機体の名は『GAT‐X207ブリッツガンダム』ミラージュコロイドという
特殊なステルス粒子で光学迷彩を行えるMSだ。エネルギーと引き換えに実弾兵器と
ある程度の熱を無効化するPS装甲を纏っているため、防御力も純地球製の兵器としては
トップクラスに位置づけられる。
「作戦……立案」
 我らがソルダートJの身に、冥府より迫り来る恐るべき死神の鎌が掛かろうとしていた。

 

 ────次回予告
 君たちに最新情報を公開しよう。
 ゾンダリアンの策に嵌まり、ジェイダーとジェイキャリアは地に伏した。
 負けるな我らがミハシラ軍、ゾンダーロボを打ち倒せ!
 絶望の闇を切り裂いて、不死鳥は炎の中から甦る!!
 勇者戦艦ジェイアスカNEXT『逆襲のシン』
 次回もこのスレッドにメガ・フュージョン承認!!

 

 これが勝利の鍵だ!『マユ・アスカ』