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BRAVE-SEED_660氏_機動警察ジェイ種運命(仮)_02

Last-modified: 2009-04-23 (木) 18:30:42
 

機動警察ジェイ種運命(タイトル募集中)
第2話

 
 

 突然大声を出したシンとアスランの二人を、友永勇太はきょとんとした顔で見上げていた。なお友永を末長と間違えた愚か者はバナナの皮で滑って頭を強打すればいい。
 この場における最年長者としての意識と、話を進めるために警視庁長官冴島十三は、やわらかく勇太の肩に手を置いてから、シンとアスランに落ち着くように声をかけた。

 

「そんなに驚いたかね? 勇太君は史上初の少年刑事としてメディアでも取り上げられていたから、君らに渡した雑誌や新聞にも名前や顔が載っていたと思うが?」
「え? ああ、そういえば小学生が、刑事とかなんとかって書いてあったようななかったような」

 

 首をひねったシンが、脳のどこかに追いやった記憶を思い出し、そういえばと心中で唸る。しかし、成人年齢の低いプラントでも目の前の勇太少年ほど幼くして働く例はあるまい。
 それともこの世界の日本では、勇太くらいの年で働き出すのが普通で、自分達の感覚の方がずれているのだろうか、とシンは考えた。
 一方でアスランは、まだ子供、というか事実子供の勇太をどのような意図であるにせよ、場合によっては命の危険も考慮に入れねばならぬ警察官という職業に、どんな形で冴島が参加させているのか、引っかかっていた。
 この時のアスランは、ロボット刑事課といっても子供向けの広告宣伝の類の、カートゥーンかドラマなのだろう、と思い込んでいた。
 流石に自己の意志を持った人間の数倍のサイズのロボットが、明確な個性を持ちハイテク犯罪との戦いの最前線に立っているなど、いくらなんでも想像できるわけがない。
 とりあえずごまかすように曖昧な笑みを造って、アスランは勇太に話しかけた。大体アスランの腹の辺りに頭が来る。
 勇太くらいの年代の子供との付き合いは、マルキオ導師の所の孤児たちとの触れ合いで多少離れたつもりだが、どうにも苦手だ、という意識は否めない。

 

「初めまして、勇太君。俺はアスラン・ザラ。で、こっちが」

 

 アスランに肘でつつかれたシンが、ああ、とぼやけた声を出して勇太を見下ろした。

 

「え、ああ。おれはシン・アスカ。よろしくな、勇太」
「うん。よろしく、シンさん、アスランさん」

 

 屈託のない、人懐っこい勇太の返事と笑顔にアスランとシンも、肩の力を抜いた。代わりに、絶対腹に一物あるに違いない冴島の方を見た。
 一国の公的機関の長にふさわしい威厳を湛えた男――いや漢は、とりあえず三人に椅子をすすめた。ここら辺は常識的な人である。

 

「勇太君を紹介したのは別にこれといって思惑があるわけではないよ。君らもそろそろ病院で過ごすのにも飽きただろうし、『この世界』がどういった所か、見学するのも悪くはないと思ってね。
 そこで、勇太君にブレイブポリスの案内でもしてもらおうかと思い立ったのだよ。ブレイブポリスは、ある意味において革命的な存在になっているし、世間一般で知らない人はいないからね」

 

 『この世界』の部分に、微妙なアクセントを加えた冴島の言葉を額面どおり受け取って良いものかどうかは分からぬが、シンとアスランに拒否の選択肢があろうはずがない。
 マルキオやデュランダル議長やラクスとは異なるベクトルで、冴島なりに考えはあるのだろうが、それが自分達、ましてや勇太に害のあるものではないだろうとシンとアスランは考え、そのブレイブポリスなるものを見学させてもらう事にした。

 

   ▽   ▽   ▽

 

 部屋を出てからは勇太の案内で警視庁の内部を巡り歩き、室内のデスクやらなんやらやたらと巨大な一室に二人はたどり着いた。
 勇太がボスを務めるロボット刑事課の部屋だ。それまで二人がイメージしていたものとはかけ離れた現実に、シンとアスランは素直に驚きを示した。
 幾人分か置いてあるデスクなどのちょうど物のほとんどは到底人間のサイズには合わない、それこそ身長5~6メートルほどの巨人達が使うのが最も適当な巨大さだ。
 そしてその部屋の中には、その巨人サイズの存在が一機(という数え方が適当かは難しい)いるではないか。
 友好的な微笑(この時点でシンとアスランの常識は軽く覆された)を浮かべ、腰かけていた椅子から立ち上がり、勇太の前まで歩いて来たのは、五メートルを越すロボットだ。
 シンやアスランが見慣れたMSに比べれば三分の一ほどの大きさだが、それが目の前に立てばやはり否応なく圧迫感のようなものを覚える。
 ましてやその巨人が人間とおなじ目鼻顔立ちを持ち、ご丁寧な事に唇の奥には舌や歯の存在も視認できた。C.E.の世界ではついぞお目にかかった事の無い人面のロボットである。
 警察官の制帽を模したらしい頭部の下に、端正と言える白い人面。首元にはネクタイなのだろうか赤い長方形の突起物に、ボディは青い装甲だ。身を屈めたロボットは親しげに、勇太に視線を合わせた。見つめ返す勇太の表情は長年の親友を前にしたソレだ。

 

「シンさん、アスランさん、紹介するよ。ブレイブポリスのリーダーのデッカード!」

 

 自慢の友達を、紹介をしているようにしか見えない勇太が振り向き、シンとアスランの反応を待った。ぽかんと口を開けている二人に向かい、デッカードは機械ならではか、あるいは彼の性格ゆえか一部の隙もない敬礼で歓迎の意を表した。

 

『警視庁ロボット刑事課所属、デッカードです。初めまして、シン・アスカさん、アスラン・ザラさん』

 

 冴島からどのように二人の事を伝えられているかはわからぬが、デッカードの丁寧な対応は、良くも悪くもシンとアスランの度肝のど真ん中を撃ち抜いた。
 二人の顔にはでかでかとこう書いてあった。“しゃ、しゃべった!?”。

 

「ペットロボか何かの対話コミュニケーションツールかなにかか?」
「いやでも、なんか雑誌には超AIで自我を持ったロボットとかなんとかって書いてありましたよ?」
「そうなのか? 流石は異世界と言うべきなのか、おれ達の世界には在り得ないぞ」
「実際話しかけられた以上は否定しても仕方ないんじゃあ」
「それもそうだが……」

 

 突然後ろを向いて小声でぼそぼそ話し始めたシンとアスランを、デッカードと勇太は『?』マークを浮かべて不思議がったが、二人の視線を感じたアスランとシンが、あはは、とごまかすように笑って振り返った。

 

「ああ、いや、デッカードみたいに自分で話すロボットは初めてだから驚いただけさ」
「おれ達って田舎者だからさ、ははは」

 

 と、ごまかす二人は、この世界に来る前からは考えられないくらいに肩から力の抜けた様子だった。良くも悪くもシンとアスランの関係も変化している。あまり気にしない事にしたらしい勇太が、こんどは少しばかり残念そうな顔で無人のデスクを見回した。

 

「ブレイブポリスはデッカードだけじゃなくて他にも仲間がいるんだけど、みんな出掛けちゃってるんだ。シンさん達に紹介したかったなあ」
「みんなデッカードみたいに超AIを搭載して、喋ったり考えたりするロボットなのかい?」
「うん、そうだよ。マクレーン、パワージョー、ダンプソン、ドリルボーイ、シャドウ丸、ガンマックス、デューク。今はみんな日本のあっちこっちやイギリスに出張してるんだあ」
『私達を参考にしたブレイブポリスの配属が決まったからね。私達も先輩として彼らの見本とならなければならないし、人間の警察官とのコミュニケーションや実戦での連携なども構築しなければならない。
 そのためには、稼働期間の長い私達の意見や経験がきっと助けになるはずさ。だから、寂しいのは分かるが、我慢してくれ、勇太』
「別に寂しがってなんかないよ。みんなが困っている人たちの助けになるんならぼくは大賛成だよ」
『それでこそ私達のボスだ』
「へへ」

 

 デッカードと勇太のやり取りを見ていた二人は、邪魔にならぬ程度に声を抑えて囁き合った。

 

「あの二人ってまるで」
「兄弟みたい、か? おれは一人っ子だから良く分からないが、確かにそう見えるな」

 

 弟と呼べるような年下の存在として、亡きニコル・アマルフィの姿が脳裏に浮かび、アスランは苦笑した。確かに彼はよくこんな自分を、と思うくらいに慕い、フォローしてくれた。
 でもそんなニコルも自分の迷いが原因で戦死してしまった事を思うと、今でも胸が痛む。そういえば、シンも年下だな、と思いいたってアスランはシンを見た。
 五つ年下の今は亡き妹の事をかすかに思い返していたシンは、自分の横顔を見つめるアスランに気付き、眉を寄せて無言でにらんだ。なんです? と視線が何より雄弁に物語っている。なんでもない首を振ってアスランは答えた。
 シンが弟――――ちょっと遠慮したいというのがアスランの偽らざる本音であった。兄貴に遠慮なく噛み付いてくる、手の付けようのない弟になるだろう。上官と部下としての関係は失敗に終わったが、兄弟という家庭の関係もうまく行きそうにはない。
 まあ、考えても仕方ないか、とアスランは束の間の夢想を振り払った。

 

 デッカードがパトロールに出ると言うので、シンとアスラン、勇太もそれに付き合う事にした。ちなみに勇太は今日は学校が休みとの事で、家族の了承も得ていた。
 デッカードが目の前で人型からパトカーに変形した事に、シンとアスランの二人がさらに驚いたのは言うまでもない。

 
 

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