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Baldios-Destiny_07

Last-modified: 2009-01-23 (金) 22:17:40
 

第7話『チャージアップ・アンド・ソード Part3』

 
 

~春島基地 独房~

 

「監察官がまたこの基地に攻撃を仕掛けています。数は20近くで、いま基地にあるザクで対処できる数では……」

 

 個人的な感情を押し殺して、客観的な説明をするメイリン。
 余計な物言いを嫌うようにマリンが言葉でそれをさえぎる。

 

「つまり、あいつらを助けろって言いたいんだな?」
「はい……」
「……勝手だな」

 

 最初は抑え気味のマリンの口調が、今度は一気に語気を荒げてて続く。

 

「勝手だ!この仕打ちをしておいて、勝手だ!何を今更!」

 

 扉の格子につかみかからんばかりの勢いでマリンはまくしたてる。
 語気に押されるように、メイリンは下を向いて話を続けるしかない。

 

「あんなことをしておいて、こんな勝手な頼みごとをできる義理ではないことは、わかっています。でも、あの人たちは私にとっては数少ない身内なんです!キャップも!お姉ちゃんも!だから……」

 

 言いたいことを言って押し黙ってしまったメイリンに代わって、扉に背を向けてもたれかかったマリンが問いただす。

 

「ことわっておくが、俺はキミやあいつが心配した通り裏切るかもしれない。それでもいいんだな?」

 

 押し黙ったままのメイリンを伺うことなく、マリンは続ける。

 

「キミやあいつが疑ってる通りの、いかがわしい連中の手先かもしれない。それでもいいんだな?」

 

 メイリンはかろうじて言葉を搾り出した。

 

「今は……貴方達を……信じるしかありません」

 

 ひと呼吸置いてマリンが振り返る。

 

「パルサバーンを用意しろ。雷太、オリバー、止めても無駄だぜ」
「へっ、振り回されるのは慣れっこだ」
「強がり言っても、俺たちがいなけりゃバルディオスは合体できねえんだ。やってやるよ」
「じゃ、決まったな」

 

 表情で快哉を表すと、メイリンは扉の鍵を開けて走り去る。
 一度立ち止まり振り返ると

 

「すぐ格納庫を開けます!通信回線は開いておいてください!」

 

 そう一度言い残して走り去っていった。

 

「さぁ、行くか!」
「「おう!」」

 

 

~春島東海上 上空~

 

「ルナ、応戦しろ!」
『了解!』

 

 執拗に飛んでくるミサイル。
 事の深刻さをシンとルナマリアに知らせるには十分すぎる波状攻撃だった。
 白旗を空中に捨てて、それぞれの武装をザクに持たせて戦闘態勢に入る。
 ルナマリアのザクが構えた銃。
 これは戦時中に潤沢に揃えられたビーム銃ではなく機関砲なのだが、これを間違えて遠距離から撃ってしまう。
 当然脅しにもならず、空しい発射音を断続的に立てるだけ。
 機関砲弾は敵に対して効果的な距離まで届く前に、空気抵抗と重力に負けて落ちていく。

 

「しまった!これ、機関砲だった……」

 

 反対にザクを有効射程距離の外から撃てるウィンダムのビームライフル、
 こちらは数発ずつ、ザク2機を弾幕で包み込むように組織的に発射することで的確に2機を追い込み、逃げられなくしつつある。
 シンのザクには射撃戦に使える武器などない。
 ルナマリアに射撃の指示をするのが精一杯だ。

 

「弾切れを待って接近戦で何とかするしかない!できるか?」
『無理よ!数も性能も違い、ああっ!?』

 

 精度を増してきたビームライフルの射撃がルナマリアのザクを捉えた。
 機関砲を持つ左手の前腕関節に命中したビームは、幸運にも、貫通してザクのエンジンまで破壊するところまでは行かなかった。
 しかし機関砲は爆発し、残りの機関砲弾に火がついて飛び散る。
 そしてあまりにあっけなく戦闘力も機体のコントロールも失ったザクは、
 背中のノズルで落下速度を自動的に和らげるのがやっとだ。このまま海へ落ちていく。

 

「ルナあっ!……助かるか。しかし、もう駄目だ!」

 

 戦力比は約20対1、モビルアーマーまで後方に確認しては、シンの闘争心は沈んでいく表情にリンクして、萎える一方だ。
 後方のモビルアーマー。
 緑の甲殻類のような風貌の機体のコックピットには、先日追い払われた監察官パイロットがいた。

 

「こいつを持ってくるまでもなかったか。だが……あいつは潰す!」

 

 あっけない戦況の進展にも、表情からは憎悪の念は消えない。
 何より、いま空中で生き残っているザクは、前回自分を撃退した仇敵なのだ。

 

 

~滑走路~

 

 マリンらが乗り込むための20mリフトが3台。
 用が済んだこの機材をあわただしくどけて、第1ドックと呼ばれる大型格納庫は色めき立っていた。
 メカニックマンの数名は、これまでわけがわからず触ることもできなかった3つの大型機が、それこそ、彼らの常識ではこれが空を飛ぶとはとても想像できない3つのメカが、エンジンを始動させて飛び立つところをただ眺めるしかない。
 すでに滑走路へ進入した3つのメカ、コックピットの3人は、エンジンの吹き上がりを確認すると通信機からまもなく聞こえるであろう音声に耳を傾ける。

 

『戦闘空域と思われる反応、真東から東南東へ移動中です!……行けますか?』
「余計な心配はするな、約束は必ず守る。行くぞ!」
『はい!ハンサムさん、どうぞ!』
「俺はマリン・レイガンだ!ハンサムじゃない!」
『す、すいません!マリン機発進、どうぞ!』

 

 ぎこちないやり取りの後、パルサバーンは勢いよく後部ノズルを噴射し飛び立ってゆく。

 

「ジャック・オリバー、パルディプライズ、発進!」
『どうぞ!』
「北斗雷太、キャタレンジャー、行くぜ!」
『どうぞ!』

 

 箱のような巨大な物体が次々に滑走路から飛び出していく。
 ここまでくると、メイリンも他の管制塔のスタッフも、彼らがわけのわからない世界から来たのではないかと思わずにはいられなかった。

 
 

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