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Canard-meet-kagari_第10話

Last-modified: 2007-11-10 (土) 21:30:10

第10話

 カナードが到着すると三機のMSの猛攻をアークエンジェルは何とか凌いでいた。
 降りかかるミサイルをイーゲルシュテルンで落としているがCIC要員が不慣れなのか正規クルーがいないのか知らないが狙いがいまいちだ。運悪くそれらを掻い潜ったミサイルがブリッチを直撃するコースで迫ってくる。
 ブリッチにいる誰もが覚悟をしたその時、突如ミサイルがブリッチ手前で爆発する。
 爆発の中からシュベルトゲベールを構えたストライクが現れる。
「遅いぞ!何をしていたんだ」
 カガリが怒気の孕んだ声でカナードを責める。
「何でお前がブリッチにいる」
「マリューさんに食料の積載状況を報告にきたら敵が来てて、危ないから座ってろって……」
「状況を考えて行動しろ」
「ウルサイ!しゃべってないであのMSをなんとかしろ!」
「今すぐ倒してやる、だから文句を言うな!」
 三機のMSがこちらに気がつき装備されたミサイルを撃ってくるがイーゲルシュテルンとビームブーメランをナイフの様にして使い、全て叩き落していく。
 爆発が幾重にも重なり合いまるで花火の様な光景にブリッチにいる全員が息を呑む。
「凄い……」
 カガリが思わず呟く。
「勝てる……勝てるぞ!このMSが量産されるようになれば、我々はザフトに勝てるぞ」
 圧倒的なストライクの性能にナタルは酔いしれたように言う。
「けど少尉、この性能は機体だけでなく彼の腕でもあるのよ」
 マリューがナタルに釘をさすが
「ラミアス大尉、それは解ってます……しかし彼の腕も我々は手に入れようとしてるのなら……どうです?」
「少尉、それはどういう事なの?」
「知らないのですか?GATXナンバーは万が一にも撃墜された時に備え、戦闘データは随時このアークエンジェルに送られるようになっ
ているのですよ」
 カナードは爆発の中からワイヤーアンカーを飛ばす。
「そこだぁ――――ッ!!」
 ワイヤーをジンの足に絡め、ストライクのパワーで強引に隣にいた寮機にぶつける。ぶつかった二機は斬りもみ回転をしながらコローニーシャフトに衝突する。
 満載された火薬と推進剤に引火し、シャフトは爆炎を上げ、引きちぎられる。
「コラッ!コロニーに被害を出すな!!」
 カガリが通信機越しにカナードを叱るが、彼は悪びれもせず
「そんな事を、一々気にしていられるか!これで終わりだ!!」

 ビームブーメランを投げるが、ジンは紙一重で回避する。しかし
「甘――いっ!!!」
 時間差で射出したアンカーがジンを絡め執り動きを封じる、そしてジンは戻ってきたブーメランを避ける事が出来ず、機体を真っ二つに切られる。
「敵反応消失、コロニー内に侵入した部隊の全滅を確認!」
 ブリッチに集まったメンバーから安堵の声と歓声が上がる。
「お疲れ様、カナード君、帰等してちょうだい」
「ホントに大した腕だよ……お前は」
 カナードはなんだかむず痒くなりながら悪い物じゃないって思った。
「フッ当然だ、俺は……」
 カナードが言いかけたその時にブリッチに警報が鳴る。
「新たな敵の反応を確認……これは!……」
「どうした!」
「エッ、X303イージスです!」
「実戦に投入してきたって言うの?」
「今はそんな事を考えてる場合じゃないだろ、おいカナードッ!!」
「聞こえている、バッテリーは問題ない!このまま迎撃に行く!」
 カナードは機体のデータベースで敵のMSの情報を検索しつつ、ストライクの向きを変える。
「待って、出来るなら機体を確保して欲しいの……」
「出来たらな」
 そう言ってカナードは通信を切る。モニターの中のストライクの後姿はどんどん小さくなっていく、それを見ながらカガリは心の中で
(さっきは一々気にしてられるかって言ったのに……へんな奴)
 と思っていた、カナードはほくそ笑みながら呼び出した機体データを見つめ
(そうだ、問答無用で倒すことはできない……もしあの時の奴なら今度こそアイツの事を聞きだしてやる)
 度重なる戦闘で破壊されつくした街の上空を移動しつつ、カナードはある光景を思い出す。
(胸糞悪い光景だ……まるであのコロニーみたいだ)
 月面でサイクロプスに巻き込まれたおかげで、今まで彼の自由を縛っていた発信機が壊れ、ユーラシア連邦からMIA認定を受けた彼が一番に訪れた場所、そこは彼が生まれた……いや生み出された場所だった。
 それまでそこで行われていた事に対する報いを受けたかのごとく倒壊したビル郡、彼にはそれらの光景が今のこのコロニーにダブって見えたのだ。
 そんな事、彼が考えているうちに警報が鳴る.
(来たか!)
 MA形態に変形したイージスが驚くべき加速で突撃してくる。それをストライクは何とかかわすと、イージスはMS形態に変形させビームライフルを構えて、こちらに狙いを付けてくる。
 光速で打ち出されるビームをストライクは次々とかわしていく。
(ビーム兵器は発射までタイムラグがある、銃口の向きを良く見れば避けるのはたやすい)
 埒が明かないと思ったアスランは接近戦に切り替え両腕に内蔵されたビームサーベルを起動させ斬りかかって来る。カナードは機体を操り、右の一撃目の斬撃を何とかかわしたが、隙を突いた左の二撃目の斬撃をせけきれず、シールドで受け止めつつ接触回線を開きアスランに呼びかける。
「イージスのパイロット、聞こえているか」
 その声にアスランは右腕で放とうとしていた三度目の斬撃を止める。自分を呼びかけるその声が彼の親友の声に良く似ていたからだ。
「キ……」
 その友の名前をアスランが呼ぼうとした時、突如通信が入る。接触回線ではなくザフトの無線周波数でだ。
「アスラン避けろ!!」
 その言葉にしたがい、イージスをストライクから離すと閃光がストライクに直撃する。
 イージスの右下方から足の無いオレンジ色のジンが背部スラスターを噴かせながらイージスに近づいてくる。
「ミゲルか!」
「その通り、すまないな心配かけたみたいで」
「いや、良いんだ……それより大丈夫なのか」
「大丈夫だ、なんたって俺は『黄昏の魔弾』だからな」
 アスラン相変わらずの戦友に安堵しつつ、ストライクのパイロットについて考えた。あの機体に乗っていたのが本当に彼の親友だったのか?
 今となっては解らないが、彼はそうであって欲しくないと思った。彼はMSに乗ってない、ましてや月面でのテロで死んだなんかありえない。
 今は何処か南の島あたりで静かに要領よく暮らしている、そう信じたかった。
「さて帰るか、アスラン帰ったらニコル達と遊戯室でカラオケ10時間だ、当然お前も歌うんだぞ」
「じゅ、十時間!!せめて六時間……いやそれよりも俺も歌わないと駄目なのか」
「当然だ、みっちり歌い方教えてやるから覚悟して……何っ!」
 ミゲルが言いかけたその時、光の刃が二人を狙い回転しながら襲いかかってきた。
「何だ」
「今の攻撃は……まさか!」

 回転しながら戻ってきたビームブーメランが爆煙を切り裂き、その中から純白の装甲に包まれた腕がそれをキャッチする。爆煙が晴れツインアイを光らせたストライクが現れる。
「この俺に不意打ちとはいえ、直撃させるとはな……褒めてやるぞ死に底無い!」
 ミゲルの撃ったビームはストライクの左側から撃たれていた為、シールドで防御する事ができたのだ。もし撃たれたのが右側や背後だったならどうなっていたかは解らなかったが。
 カナードは対艦刀を抜き、二人に向かってくる。
「アイツ、まだ……アスラン俺にやらせてくれ!」
「しかし!」
「心配するな、同じ相手に二度も三度も負けるかよ!」
 サイドアーマーにマウントした重斬刀を抜き、スラスターを全開にしてストライクに向かっていく。ストライクの対艦刀の一撃をミゲルはスラスターを全開にして回避する。
「何っ!」
 カナードが驚きの声を上げ、反対にミゲルが得意そうに言う。
「飾りがなくなって軽くなったんだ、お前の攻撃はもう当らないぜ!そうらっ!!!」
 ミゲルのジンの重斬刀でカウンターを浴びせる。
「うっ!グゥッ!!」
 絶妙なタイミングで打たれた一撃をカナードは回避しきれず、ストライクの脇腹を掠めた一撃の衝撃にコックピットの中で悶える。
「PS装甲と言えども、コックピットに直撃を受ければ機体は無事でもパイロットが持たないだろう!」
 ストライクは距離をとって、もう一度対艦刀を構える。
「この調子に乗るな―――――ッ!!!!!」
 カナードは怒りに燃えながら、対艦刀を機体の右斜め上に振り被りながらミゲルのジンに斬りかかる。
「無駄だというのが解らないのか!」
 ミゲルはあっさりと右、カナードから見て左に回避する。
「これで終わりだァッ!」
 今度こそ回避できない完璧なタイミングでストライクのコックピットに重斬刀振り下ろす。
「終わるのは貴様だ!!!」
 ミゲルの攻撃が当る直前に左腕で肩に装備されたビームブーメランを抜き、ジンの重斬刀を溶断し胸部装甲を切り裂く。
 取り回しのしずらい対艦刀に敵の注意を向けさせビームブーメランで攻撃する、二段構えの攻撃だ。
 バランスを何とか立て直そうとするミゲルのジンにカナードが止めをさそうと対艦刀を振り下ろす。ミゲルが死を覚悟したその時、赤い機体が目の前に飛び出してくる。
「やらせるものか」
 アスランはイージスに対ビームコーティングを施された盾を構えさせ、対艦刀を必死に防ぐ。そして先程とは逆に自分から接触回線でストライクに呼びかける。
「キラ!キラなんだろ!俺だアスランだ!その機体に乗ってるのなら答えてくれキラァ――――――ッ!!!」
 カナードは聞きたかった人物の名を聞けた事に歓喜するのではなく、自分がその人物だと思われているのが腹立たしいかった。
「俺をアイツと一緒にするな!!知ってるんだなアイツを!!キラ・ヤマトの事を!!」
「何!キラじゃないのか……」
「そうさ、知ってるのなら教えてもらおうアイツの居所を!」
「お前は一体……キラの何なんだっ!!」
「知りたいか?なら教えてやろう……俺はキラ・ヤマトを倒す者!!スーパーコーディネーターのカナード・パルスだあああああっ!!!!!」

 カナードが気合と共に対艦刀を力に任せにして強引に振り切る。ストライクのパワーの方が変形機構を持つイージスのに比べがフレーム強度の関係上強かったから出来る事だった。
 競り負けたイージスは後ろにいたミゲルのジンと共に吹き飛ばされる。
「ミゲル!大丈夫か?」
「……」
 アスランはミゲルに呼びかけるが返事が無い、意識が無いのだろうか?
 なら一刻も早く手当ての受けさせなければいけないとアスランは思ったが、同時にそれは無理だろうとも思った。
 彼の親友ではなかったが、その親友に対する敵のパイロットの執着心は異常だ。例え自分の知ってることを全て話しても、決して満足しないだろう。
 逃げたとしてもMA形態のイージスの機動力でもミゲルのジンを連れてでは直ぐ追いつかれてしまう。ストライクと戦ったとしても、おそらく相手と自分の腕は互角、決着は直ぐかもしれないし、何時間も先かもしれない。そんな分の悪いかけに出るわけにはいかない。
(何か、何か無いのか……ミゲルを連れて、このコロニーから脱出する方法は……ストライクの隙を作る方法は!)
 そう考えているうちに、ある物がアスランの目に止まる。
(あれだ!あれを使えば……)
 しかしアスランにとって、それによって引き起こされる結果は何よりも許せないものだった。だが迷ってられない、ストライクが迫っている。
(しかし今はミゲルを助ける事が大切だ……その為なら!)
 アスランは決意を固め、イージスをMAモードに変形させる。各部の回路が直列されることで撃つ事が可能になる580mm複列位相エネルギー砲『スキュラ』、GAT-Xナンバーの中で最強の威力を持つ火線がストライクに向けて放たれる。
 しかし、ストライクは機動力を最大限に使い、それを回避する。その圧倒的威力を示すように、伸びた火線はストライクの後方にあったコロニーシャフトを切断する。
「残念だったな、単調な攻撃では俺は倒せん」
「いや、狙いどおりだ」
 突如地響きがコロニー全体を襲う、その時になってカナードは気づいた。さっきの攻撃は自分を狙ったのではなくコロニーシャフトを狙ったのだと。
 度重なる戦闘によるダメージとコロニーを支えるシャフトが2本も切れたことに、密閉型で頑丈であるはずのこのコロニーもついに耐え切れず、コロニーの崩壊が始まったのだ。
大地がひび割れ、コロニーの自転の遠心力で外壁が離れていき、コロニーの至る所で凄まじい勢いで空気が流出していく。その空気の流れによりストライクは自由に身動きが取れないでいた。
「クソ、小賢しい真似を!!」
 その隙にアスランはMA形態のイージスの四肢でミゲルのジンをしっかり捕まえ、流出する空気の流れに身を任せて脱出する。
「待て!」
 カナードが叫ぶが大量に発生したデブリが彼の行く手を遮る。
「ゴミの分際で邪魔だ―――!!」
 強引に進もうとするがどうにもならず、ストライクは降りかかるコロニーの残骸に飲み込まれた。

 「ミゲルは小型のシャトルで本国に輸送させた。命に別状は無いそうだが、設備の整った場所で治療を受けないといけないそうだ」
 クルーゼが執務室の机に掛け、アスランにミゲルの容態を知らせる。
「そうですか」
 その報告にアスランは胸をなでおろした。
「しかし、あの『黄昏の魔弾』がこうも易々と、機体もそうだがパイロットの腕もかなりのものだな……一体何者なのだ」
「私には何も……ただスーパーコーディネーターだと言ってました」
「何だと!!」
 クルーゼが声を上げて驚く、普段からは考えられない必死さでアスランに問いただす。
「本当なのか!本当にそのパイロットはスーパーコディネーターと言ったのだな」
 アスランはそのクルーゼの反応に驚きつつ
「本当です……名前はカナード……そうカナード・パルスと名乗っていました」
「カナード・パルスだと……」
 その名前を聞き、クルーゼは何かを考えてる様に黙った後、いつもの口調で
「すまないな、アスラン。少し取り乱してしまった様だ。君は部屋に戻ってゆっくりと休んでくれたまえ」
「はっ、失礼します」
 アスランが退出した後、クルーゼは誰に言うのでもなく
「カナード……ヤツの言っていた生き残りか。出来れば彼も計画に入って欲しいところなのだがな……」