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Canard-meet-kagari_第13話

Last-modified: 2007-11-10 (土) 21:30:51

第13話

「はい、どうぞ」
「ありがとうおねえちゃん、ママー!」
 ミリアリアが小さな少女にレーションを手渡すと少女は、母親の元に駆けてゆく
「良かったわねー、残さず食べるのよ」
「はーい」
 そんな親子の後ろ姿を見つつミリアリアは微笑みながら
「子供っていいなぁ~」
「えっ!何?そういう事なら相談に乗るよ」
 隣で一緒に配っていたトールが軽い調子で答える。
「そういう意味じゃないんだってば」
「でも一人では出来ないぜ」
「こんな時に何考えてるのよ」
 ミリアリアは顔を赤らめつつ肘打ちをトールに食らわす。
(誰かに聞かれたらどうするのよ)
 幸い他には誰もいない様だ。
 何故、彼女等が二人で食料を配っているかというと、ヘリオポリスの学生達はカガリが食料を配ると聞き、率先してその作業を手伝うと言い出したのだ。
 作業効率上げるために二手に分かれて配る事になり、サイ、フレイ、カズィのグループとトール、ミリアリア、カガリのグループでそれぞれ分かれて配っていたのだが、カガリが食料を手渡した相手が医者と知ると少し話をした後、飛び出して行ってしまい二人で配る事になったのだ。
「おーい、トール、終わったのなら一緒にメシにしないか」
 サイとフレイが空の台車を引いて歩いて来る。
「そっちも終わったみたいだな……あれ?カズィは?」
 一緒にサイ達と配りに言ったはずのカズィの姿が見えない
「それがさ、メカニックの親父さんに連れてかれて」
「あいつ、何だかんだ言ったって手先器用だし、アイツが整備する時だと実験機の調子いいもんな」
 実験機というのは、カトウゼミで使われている強化外骨格の事である。
「あれ、じゃあ、たまに動作が上手くいかない時の『今日は機体の調子が悪い』って本当だったの!」
「何だと思ってたんだ」
「いい訳だと思ってた」
「ひで~」

「あれ?カガリって娘は?一緒だったんだろう?」
「それがさ……」
 トールが事情を説明しようとすると、カナードが歩いてくる。
「おい、あの女は何処だ?」
「カガリさんなら居ないわ」
「そうか、アイツまだ戻ってきてないのか……チィ」
 舌打ちをすると、足元の台車に八つ当たりに蹴りを入れる。そんな彼の様子にビクリと肩を振るわせたフレイが声を潜めてサイに尋ねる。
「ちょっと、何なのよアノ人、アブナイ人なんじゃないの?」
「大丈夫だよ……たぶんだけど、それにポッドを助けたMSに乗ってたのアノ人なんだぜ」
「アノMSの……道理で、運ぶのがスッゴク乱暴だったわ」
「ハハハ……でも強いみたいだよ、たった一機で六機のジンをあっという間に倒したんだ」
 サイが乾いた笑いの後、モニターで見た戦闘の様子をフレイに語って聞かせる。
「六機も……ひょっとしてコーディネーター何じゃないの」
「そうかもしれない……」
「何で平然と言えるのよ、コロニーが壊れたのだってアイツ等のせいじゃない」
「彼、ザフトじゃないみたいだし……それに今はアノ人の力が必要だよ」
「どうして、アノ人の肩持つわけ?」
 本当はフレイは『代わりに僕が君を守るよ』と言って欲しかったのだが、その思いはサイには届かない。
「持つつもりは無いよ、事実を言っただけだって」
「もう!」
 フレイは、ふて腐れてソッポを向く。
「ん!お前イイモノ持ってるな寄越せ」
 カナードがフレイの持っていたレーションに気づき、指を差して要求する。サイと二人で食べようと思っていたモノだ。
「嫌よ、何でアンタなんかにモノを恵んでやらないといけないの!!」
「フレイ止めろって」
 慌ててサイが制止するが遅かった。
「女、貴様今なんて言った」
「あなたコーディネーターでしょ、コーディネーターなんかにあげるくらいなら捨てた方がマシよ」
「お前、ブルーコスモスか?」
 カナードが苦笑交じりでフレイに問う。
「違うけど、あの人達が言ってる事は間違ってないと思うわ、生まれる前からズルをして手に入れた才能で楽をして、その挙句、他の人を見下して……その事が非難されると被害者ぶってウイルスばら撒く連中なんか一人残らず死んでしまえばいいんだわ!」
 微かに“ウイルス”という単語を言う時にフレイの顔が悲しみに染まるのをサイは見逃さなかった。カナードの方は、いつもの様に激昂するのではなく、冷え冷えとした声でこう言い放った。
「そんなにコーディネーターが嫌いなら一緒の船に乗るのも嫌だろう……このまま宇宙に放り出してやる」
 血走った目のカナードをサイが身を挺して止めようとする。
「止めてくれ、気に障ったのなら謝るよ、ポッドから出たばかりで神経質になってるだけなんだって」
「退け!この女、生まれた時からズルをして楽をいただと……何も知らない女が知った風な口を利くな!」
 カナードの圧倒的な力にサイが吹き飛ぶが、それでも再び這いすがってカナードを止めようとする。
「止めろって、止めろ……」
 だが必死の抵抗も虚しくズルズルと引きずられる。カナードが一歩一歩、確実にフレイに近づいていく。
「ヒィッ!!」
「止めろ~~!!」
 フレイが悲鳴を上げ、サイが裏返った声で制止するが全てが無力だった。
「何をしてるんだ、このバカ!」
 カナードの長髪が後ろから思いっきり引っ張られる。
「クッ、何をする!」
 思わぬ不意打ちに、カナードが振り返るとカガリが後ろ髪を掴んだまま立っていた。
「飢えて、女の子を襲うなんて最低だぞ!」
「別に飢えてた訳じゃない」
「じゃあ何してたんだ、どう見てもお前が襲ってる様にしか見えなかったぞ」
「この女がムカつくから宇宙に放り出そうとしただけだ」
「余計に悪い!だいたいなんでお前がココにいる、作戦会議をしてたんじゃないのか!」
「会議が終わって腹ごしらえしようとココまで来ただけだ」
「お前はまた食べる気か!」
「あれだけじゃ足りん」
「おまえな~~」
 カガリの言葉を消し去り、サイレンと共に放送が入る。
「敵影補足、敵影補足、第一戦闘配備、軍籍にあるものは、直ちに全員持ち場に就け!カナード・パルスは至急MSハンガーへ」
「チィ!思ったより早いな……」
「おい、まだ話は終わって無いぞ!」
 ハンガーに向かうカナードをカガリが止める。
「知るか、今はそれど頃じゃない」
「もう!」
 カナードが去って、その場に居た面々が床に転がっているサイを助け起こす。
「サイ!大丈夫か!しっかりしろ」
「待ってろ、すぐ医者を連れてくるからな」
「……大丈夫だって、ちょっと所々痛いけど」
「良かった」
 仲間に介抱されながら、サイがポッツリと呟いた
「……また戦闘になるんだな」
 その言葉を聞いたカガリは無思慮に言う。
「大丈夫だ、アイツ強いから今度も護ってくれるよ」
「私、嫌よ!!」
 先程から沈黙していたフレイが突然大声を出す。
「あんなヤツに護ってもらうなんて、冗談じゃないわ!これならポッドの中に居た方がましだわ!」
 そう叫ぶと彼女は飛び出していってしまう。
 サイは、そんな彼女を止めれない自分の不甲斐なさを呪った。出来るのなら自分が彼女をMSに乗って護りたかった。
 しかし、それは無理なのだMSの操縦に必要な驚異的な運動神経、複雑なOSを扱う処理能力、そのどちらも彼には無かった。
(何か、出来る事は、彼女にしてあげる事は無いのか?)
 自問自答を繰り返した末、ある決意が彼の頭の中に浮かび上がる。
「トール、ミリィ、話があるんだ」

「よう!遅かったな」
 カナードがパイロットスーツに着替え終え、ハンガーに向かうとムウが既に着替え終えて立っていた。
「ちょっと野暮用だ」
「カワイイ女の子の所でも寄って来たのかい」
「そんなんじゃない」
「そうかい、パイロットスーツの着心地はどうだい?」
「サイズは丁度いいが、何かしっくりこない」
 カナードが昔着ていたスーツは月での戦いでボロボロになり、とっくの昔に捨てていた。
「最初は誰だってそんなもんだって、あ!そうそう、バジルール中尉からお前にって……」
 ムウは手に持っていたボードをカナードに渡す、液晶画面にはイージスと他に三機の機体データが映っていた。
「俺はもう見たから、頭に叩き込んどけよ……あまり役に立たないだろうけど」
 カナードは最初その言葉の意味が解らなかったが、データに目を通していく内にその意味に気づいた。
「何だこれは!数値が曖昧に成ってるぞ!」
 カナードに渡されたデータでは、センサー有効範囲、スラスター推力、各武装の有効射程距離、バッテリー容量といった数値に約とか推定といった言葉が付いていた。
「下らん機密なら隠すのは止めろ」
「別に隠してないさ、俺達の知ってる情報はこれだけさ」
「どういう事だ」
「敵の工作部隊にハッキングされてね、MS関するデータは根こそぎ消されたよ、このデータだってストライクのデータベースと残ったデータの残骸から苦労して作ったんだぜ」
「道理で、簡単に見せてくれると思ったら……そういう事か」
「そう言うなって、今は、この状況をどうするか……それが大切だろ?」
「何か作戦があるみたいだな」
「察しがいいな、敵は此方を挟み撃ちにするつもりだ、そこでだ……」

 通路の突き当たり、誰も来ない場所でフレイは膝を抱えて座っていた。ポッドのある場所に行こうとしたのだが、迷ってしまいこの場所を見つけたのだ。
 その彼女の姿を見つけたサイは彼女の元に駆け寄り、彼女の肩に手を置き、やさしく呼びかける。
「フレイ……」
「ほっといてよ……ッ!!どうしたのよ、その格好……」
 サイの手を振りほどこうとするが、そこでサイの服装は先程とは違い、今は地球連合軍の軍服を着ている事に気づいた。
「艦の仕事を手伝いたいって志願したんだよ、君を護りたかったから……」
「サイ……」
「これならさ、あの人だけじゃなくて俺も君を護る事になるだろう……!?どうしたんだいフレイ」
 サイはフレイの両目から涙を流しているのに気づいた。フレイは単純に嬉しかった、自分の事こんなにも思ってくれる。その事を考えると熱いものが込み上げて来て、涙が止めなく溢れてきた。
「サイ!!」
 フレイがサイに抱きつき、そのやさしさを直で感じようとする。サイは彼女の温もりを感じながら何が何でも護ってみせると決意したのだった。

「まあ、こんな所かな」
「単純な作戦だな」
 ムウから作戦を聞いたカナードが率直に感想を漏らす。
「シンプルなのが一番なんだって」
「まあ、良いだろう。余計な事を考えないですむ」
「それとな、カナード」
「何だ」
 もうこれで終わりだと思っていたカナードは呼び止められて振り返る。そこには、今までからは想像出来ない真面目な顔つきのムウがいた。
「お前さ、戦う理由はあるか?護りたいものとかさ」
「護りたいものか……無いさ、俺には生まれた時からずっとな……だが戦う理由ならある」
「ほう、どんなだい?」
「俺はある男を必ずこの手で倒す、その時まで何が何でも生き抜く!!」
「上等、上等……任せたぜ」
 カナードは、ムウが自分の愛機に乗り込んでゆくのを眺めつつ、自分もストライクのコックピットに収まり、OSを立ち上げていく。途中、ムウの言葉を思い出し、手を休める。
(護りたいものか……アイツを倒したら俺にも出来るかもしれないな)
 決戦の火蓋は今まさに切り落とされようとしていた。