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Canard-meet-kagari_第19話

Last-modified: 2007-11-10 (土) 21:32:06

第19話

 ストライクに受けた損傷を修理しているブリッツのコックピットにニコルは籠もり、システム面の再調整を進めていた。
「ミラージュコロイド、電磁圧チェック、システムオールグリーン。……ハァ……テストもなしの一発勝負か……」
「ハァイ!元気!」
 コックピットの中で調整を進めるニコルの前にディアッカが
「ディアッカ!!」
「そんなに驚く事ないじゃん」
「急に顔を出すからビックリしたんですよ。何か用ですか?」
 ニコルの質問にディアッカはバツの悪そうにしながら答えた。
「いやな…その……本当に一人で行くつもりかよ」
「心配してくれるんですか?」
「バ、バカ、違うよ……相手は強い、俺達が束になっても敵わなかった相手だ……一人で飛び出したって」
「そうでしょうか?僕にはディアッカが言うようにアノMSのパイロットと僕達の腕の差に大きな隔たりがあるとは思えないんです」
「どういう事だよ?」
 ニコルの言葉にディアッカが興味深そうに聞く。
「前の戦闘の時、僕達は全くと言って良いほど機体について知らなかった……もちろん、データである程度の事を知ってますが実際に動かすとなると、また違ってきます。機体の反応速度、照準補正、武装の威力、僕達はそれらに慣れてない、それに対して、あのパイロットは機体のクセを知り尽くしてる様に見えました。それであそこまでの圧倒的な差が生まれたんだと思います。実際のあのパイロットの腕はアスランと互角くらいだと思います」
「なるほどね……けど種明かしをして見せても、すぐに俺達が機体に慣れる訳じゃないんだぜ?その差をどうするんだい?」
「ゼルマン艦長の言葉を忘れたんですか?機体特性と地の利、それでその差を埋めようと思います」
「けど強敵だ。勝てる保証はない……俺には、どうして一人で向かっていけるのか解らないね」
「…………………………………………」
 ディアッカの言葉を聞き、ニコルは、しばらく何も言わなかったが内に秘めた思いを語り出した。
「僕は……臆病だから…」
「は?」
「僕はイザークが人質になった時にディアッカの様に敵の隙を付いてイザークを援護したり、アスランの様にイザークを助けたり出来なかった……ただ黙って見てるだけでした」
「……」
 ディアッカは黙って聞く
「それだけじゃない、このブリッツを奪う時だって、僕は……イザークとディアッカの後ろに付いて行っただけでしたから……みんな命を賭けて戦っているのに、僕だけ怯えて何も出来ない……これでは死んでいったラスティ達に顔向け出来ないし、みんなを仲間とは呼べないんです。だから……」
「だから、一人でアイツを倒すっての?」
「そうです」
「解った、もう何も言わないよ……ただし、絶対に死ぬなよ……お前が居ないと誰がアスランとイザークの喧嘩を止めるんだ?」
「そうですね」
 そして二人はプッと噴出しひとしきり笑いあった。
「機体の修理が終わるまで、まだ時間が掛るだろう?俺がバスターでシュミュレーションの相手になってやるよ」
「ありがとう、ディアッカ」

「ああスッキリした」
 カナードが連れて行かれるとフレイが晴れ晴れとした声で言った。
「何考えてんだ!お前は!!」
 カガリが机を叩き激しくフレイを非難する。
「何よ、あの兵隊さんが探してるから手伝って上げたんじゃないの。何が悪いわけ?」
「今の状況を考えてものを言うんだな!」
「考えてないのはアンタじゃないの!もしアイツの正体が後になってバレたら一緒にいた私達まで疑われたかもしれないのよ」
「けど……私達に着替えろって言ってくれたじゃないか!きっと私たちが捕まらないように……」
 もちろんカナードには、そんなつもりはない。
「どうだか、案外私たちの中に隠れようとしたんじゃないの」
 その通りである。
「そうかもしれないけど…アイツは今まで私たちを守ってくれたんだぞ」
「守ってくれなんて誰が頼んだの?そんな押し付けいらないわ!!第一アンタ達がサイ達を巻き込んだんじゃない!!」
「!!それは……」
「だから…私のした事は間違ってないのよ」
 フレイが自分に言い聞かせるように言うのを二人の口論を横から聞いてたヘリオポリスの学生組が否定する。
「いや、マズイだろ……」
「そうよ…良くないと思う……」
 トールとミリアリアが言うのを聞くとフレイはヒステリックに反論する。
「アイツに巻き込まれて、この船に乗せられたんじゃなかったの?どうしてそんな事言うわけ!!」
「そうだけど……」
「ならいい気味じゃないの」
「フレイ」
 今まで黙っていたサイがフレイの両肩を掴んで言う
「確かに俺達がこの船に乗せられたのはフレイの言う様にアノ人達のせいだ……けどフレイ、お前のした事のせいでアノ人がどんな目に遭うか考えたのか?アノ人も言ってたけど、ここの人たちの目的はMSなんだ。アノ人が協力しなかったら無理やり聞き出すかもしれない」
「それは……その……けど味方なんでしょ?だったら…」
「味方だったら、どうしてこんな事をするんだよ!それにコーディネーターだって事も知られてるんだヒドイ拷問とかに遭ってるかもしれないんだぞ」
「何よ、いい気味じゃないコーディネーターがどうなろうと、私は……」
 言いかけたフレイの頬を乾いた音と共にサイの平手が打った。
「……パパにも……ぶたれた事ないのに……」
呆然と平手を振るった愛する人を見詰めるフレイに向かってサイは言った。
「君がコーディネーターを憎く思ってることは分かってる……分かってるつもりだ。けど誰かが自分のした事で傷つくのをいい気味だって言って欲しくない……君はだって本当は……」
「分かってないじゃない……」
「エッ?」
 サイの本当に伝えたかった事を遮りフレイが言う
「分かってない!私が何でアノ人にあんな事したのか分かってないじゃない」
「分かてるさ、君の母親は…」
 サイは言いかけて絶句したフレイは顔を赤くし、その両目には涙が溢れていた。
「ママの事もあるけど、そうじゃない……私は……サイがアノ人にボコボコにされたのが……許せなくて……だからっ……」
 嗚咽に途切れ途切れながらフレイは自らの胸の内をサイに語った。他人にどうこう言われようと彼にだけは知っていて欲しかったから。
「フレイ……」
「サイのバカ、バカ、バカ、バカ―――ッ!!」
 そう言うとフレイは食堂から走り出した。
 とっさの事に先程から二人の会話に聞き耳を立てていたアルテミスの兵士も制止出来ず、かといって民間人の少女を撃って止める事は出来なかった為フレイの逃走を止める事は出来なかった。
「フレイ!」
 サイは慌てて追いかけようとするが兵士に止められる。
「スミマセン通して下さい」
「通行止めだ。どうしても通りたきゃ通行料金を払うんだな」
 サイはサイフの中の紙幣を全部取り出し、兵士に叩きつける。
「これで全部です!」
「ん~少し足りないなが…まあ、いいか。ガンバレよ少年」
 そう言って事情を知ってる兵士はサイの背中を叩く
「ありがとうございます」
 サイはお礼を言うとフレイを追って走り出した。
「ったく良いよな若いって、コチラはチャーリー4今からそっちに……」
 兵士が無線機で話してる声がどんどん小さくなっている。
 サイは走り続けた。フレイに言いたかった事を胸に秘めて。
(君が本当は一番傷ついてるんだろう、いつも意地を張って……二人ともバカだよ……)