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Canard-meet-kagari_第34話

Last-modified: 2007-11-10 (土) 21:35:51

第34話

 自室でシャワーを浴び、カガリに関する報告を書いていたクルーゼは医師から「少女の意識が戻った」との連絡を受けて、急ぎ医務室までやって来た。
「ほどけ!このバカ!!」
「ほどいたら、また暴れるんだろうが!」
「そんな事はしてないぞ」
「嘘を言うな!さっき俺の前髪を引っこ抜いただろう!!」
「前髪引っこ抜いただけだろう!?そんなに頭に気たのか?
 コーディネイターになっても禿は直せないんだな」
「お前!!」
 アスランの叫びが医務室に響き渡ったその時にクルーゼが入ってくる。
 見るとカガリが椅子に縛り付けられている。
「アスラン!何をしている」
「隊長!!」
 アスランが敬礼をするとクルーゼに事情を説明する。
「目覚めて、ココがザフトの船だと知るやいなや暴れだして……」
「それで君は髪の毛を抜かれたという訳か……」
 事情を理解したクルーゼはカガリに向き直る。
「部下が手荒な真似をしたようだな。よろしければ、名前を聞かせてもらおうかな」
「……カガリ・シモンズだ」
(カガリ……間違いないな)
 クルーゼが口元を歪めるとカガリが口を開く
「しかし名前を尋ねるのだったら、まず自分から名乗るのが筋じゃないのか!?」
 クルーゼはカガリの言葉をもっともだと思い、芝居が掛った口調で話す
「これは失礼した。私がクルーゼ隊の隊長、ラウ・ル・クルーゼだ。」
「お前らふざけてるのか!!
 こんな怪しい仮面を付けた人間が隊長なんて馬鹿なこと言うな!!」
(誰のせいで仮面なんぞ被らなきゃならないと思ってる)
 クルーゼはそう言ってやりたい衝動を何とか抑えるとアスランが反論する。
「お前!口を慎め!いかがわしい仮面を付けて、胡散臭く見えるかもしれないが、隊長は指揮官としてもパイロットとしても優秀なんだぞ」
(アスラン、減俸にするぞ)
「いや、すまない。この仮面を付けているのは昔、ナチュラルに付けられた醜い火傷の痕を隠すためでね」
「そ、そうだったのか。それにしても民間人を縛り付けるなんて……
 お前たちには軍人の誇りがないのか!?」
「軍艦に乗っておいて何が民間人だ!」
 アスランが突っ込むとカガリが反論する。
「乗っていたのは成り行きだ!お前たちザフトがヘリオポリスを攻撃してきたから
 私達がアークエンジェルに非難しなくちゃいけなかったんだ」
「なるほど君はヘリオポリスの避難民という事か」
「そうだ」
「なら何でヘリオポリスの工場にカナード・パルスと一緒にいた」
「あれはだな……避難経路に迷っていたところを、アイツに巻き込まれたからだ。
 それでお前たちが三回も襲ってきたせいでシェルターに入れなくなって……」
「三回?二回だろ。最初のG強奪、次にヘリオポリスを崩壊させた……」
「その間にMSが襲ってきただろ!?」
「MS?ジンか?」
「違う!もっとスマートな……」
(マズイ)
 クルーゼには、そのMSがストライクを捕獲する為にヘリオポリスに侵入した「彼」のシグーだと
直ぐにわかった。
「多少の混乱をしているようだな。部屋を用意するので、君にはそこで大人しくしていてもらう」
「何だと信じてないのか!?それに話はまだ……」
 クルーゼは喚くカガリに近づき、小さく耳打ちする。
「いいですね?カガリ・ユラ・アスハ様」
 カガリはその敬称に眼を大きく見開き、得体の知れない化物を見るようにクルーゼを見詰めていた。

 ラクス救出の為に増援としてヴェサリウスに合流するはずだったイザークは同じく派遣された男とささいな事で口論になりMS同士で戦う事になった。
 イザークにはシホ・ハネンフースと共に調整を進めた新しいデュエルに絶対の自信があった。
 しかし……
「ック!この!!」
 ミサイルとレールガンとビームライフルの時間差攻撃、ストライクに対する切り札として生み出した必勝の攻撃を紫のMSは体に掛るGを無視した動きで強引に避ける。
「コイツ……死ぬのが怖くないのか!?」
 当然だ。今戦っている男は生まれながらにして死と隣り合わせで過ごしてきたのだ。
 その危機が去った時に彼の中にポッカリと空いた穴、それを埋める為に彼は再び死と隣り合わせの生き様を選んだ。そして何時しか、死を見詰める事が彼の生きがいとなったのだ。
 デュエルの攻撃を尽く回避しながら、紫のMSがデュエルに迫る。
 肉薄した紫のMSはデュエルのコックピットにガトリング砲を向ける。
「しまッ」
 キックを使い、反動で逃げようとするがもう遅いゼロ距離からの攻撃がデュエルのコックピットを大きく揺さぶる。
「甘いな、ぬる過ぎる。実弾は効かないと油断してるからこうなる」
「………まだ…だ」
「ほう、乳臭いお坊ちゃんがやるな。もう少し楽しませてもらおうか」
 イザークはフットペダルを踏み込み始末屋と仲間内で呼ばれる男の紫色のシグーに向かって行った。

「オレは何をしたんだ」
 アスランはトレイを乗せたワゴンを押しながら、自分の体に起きた変化について物思いにふけっていた。
 イージスのデータからストライクとの戦闘データを見たが、とても自分に出来るような動きではなかった。
 ストライクの攻撃を避ける反応速度、体に掛るGに対する耐性、ストライクの射線を読み、ビームサーベルで防ぐという常識外の判断力、全てがおかしかった。
(この力さえあればラクスを……)
 そうこう考えてる内にアスランはカガリの部屋の前までやってくる
 彼にはどうしてもカガリに聞きたい事があった為、食事を運ぶの兵士に無理を言って仕事を変わってもらったのだ
 ノックをした後、部屋に入る。
「食事だ」
「すまないな」
 アスランが食事を机の上に置きながら、カガリに問いただす
「お前、さっき妙な事を言ったな。三回MSの襲撃があったって……」
「ああ、そうだ」
「その時のことを聞きたい」
 アスラン
「お前がガンダムを持ち去った後に」
「ガンダム?」
「ストライクの事だ!OSの頭文字を読んでガンダム」
「ああ……」
 OSの起動画面を思い出しながらアスランが納得の声をあげる。
「ガンダムがジンを倒したしばらく経った後に大尉のゼロと一緒にジンじゃないMSが入ってきて……」
「ジンじゃないMS?本当なのか」
「ああ、ジンじゃなかった」
「本当になにジンじゃないのか?ノーマル機じゃなくてカスタム機とか」
「間違いなくジンじゃなくてアレは……この前の戦闘でフラガ大尉のゼロを倒したヤツと同じヤツだった」
「シグーの事か?嘘は止めておけ。あのコロニーの近くにはシグーなんてある訳が」
「嘘なもんか!たしかにアノMSだった!!
 ガンダムも私がバッテリーを渡さなきゃやられていたんだぞ!!」
「しかし、ストライクがシグー相手に苦戦するとは思えん」
 アルマフィ議員はシグーと同程度と言ったが、あのストライクの性能はシグーのソレを遥かに凌駕している。
 実際に戦ってみたアスランには、その事が良く分かる。シグーでストライクを圧倒できるパイロットなどいるはずがない。
 しかし、アスランにはカガリが直ぐ分かるような嘘を付く理由がどうしても分からなかった。
「一応聞いておくが、その時のストライクの装備は?」
「最初は何もつけてなかったけど、途中からランチャーを付けて戦った。
 あのバカ、コロニーに穴を開けて……」
「ランチャーでコロニーに穴を開けただと!!」
 間違いない。以前査問会でクルーゼの流した戦闘映像の中で、ランチャーストライカーを装備した映像があった。
 アスランは一度として、それを見た事がなく、かなり不審に思ったのだが、カガリの言っている事が、その映像の戦闘だという事に気づいたのだった。
(なぜ隊長はその事を隠していたんだ?
 いや、そもそもあの時にヘリオポリスにいた部隊は俺達だけのはず……一体誰が乗っていたんだ?)
 アスランが全ての謎の答えを知るのは、もう少し後、揺るがない正義を自分のものにした時の事である。
「お~い、どうした?」
 突然黙り、考え込んでしまったアスランにカガリが声を掛ける。
「いや、何でもない」
「もう私の話は信用しなくてもいい。けどアークエンジェルには他にも沢山の避難民が乗っているんだ!
 だからもうアークエンジェルには攻撃するな!!」
「それは……出来ない相談だ」
「何でだ!!」
「もし残されたMSストライクが月のプトレマイオス基地に持ち帰られてしまえば、
 程なくしてアレを元にした量産型が一挙に我々コーディネイターに襲い掛かる事になる。
 そうなれば、オレ達コーディネイターだけでなくナチュラルも多くの死者が出る事になる」
「どういう事だ!!」
「ビクトリアが陥落寸前の今、オレ達ザフトはもう少しで、この戦争を終わらせる事が出来る。
 それなのに今ココで連合がMSを実戦に投入してみろ、戦争は長引き双方共に多くの犠牲者が出る事になる。君達オーブには、その自覚があるのか!?」
「それは……一部の人間がしたことだ!!
 オーブに住む者の理念は『他国に侵略せず、他国の侵略を許さず、他国の争いに介入せず』だ!!」
「戦争を食い物にしているオーブが白々しい」
「何だと!!」
「所詮は自分達に火の粉が飛び掛らないようにする為の建前、二枚舌の汚いやり口を理念という言葉で誤魔化してるだけだ」
「違う!!オーブの理念は建前なんかじゃない!!その為に……」
 カガリはそこで言葉に詰まった。
 そう、わかってしまったのだ。
 自分の父は理念のためにヘリオポリスを見捨てたことを……
(じゃあ正しかったのか?サイやフレイ、トール、ミリアリア、カズィ、みんなを見捨てた事が……)
 カガリの沈黙にアスランは言い過ぎたと思った。
「ただの民間人の君に、こんな事を言うのは筋違いだったな。
 けどオレ達ザフトは、どんな事情があろうともアークエンジェルとストライクを倒さなければいけない。
 その為に多くの仲間が命を落としてるのだからな」
アスランは自分に言い聞かせるようにしながら、部屋を出て行く
「バカ!!」
 カガリの怒声と共に食事を乗せたトレイが閉められた扉に叩きつけられた。

「面倒なことになってるな」
 大方の事情は、医師から聞いたカナードは自室へ向かっていた
(アイツ……あの時の動き、あきらかに俺よりも速かったんじゃないか?)
 浮かんできた疑問にカナードは首を振り否定する
(ありえん!俺より速く動かすなど……)
 部屋に入ろうとするとカナードを待ち構えていたサイ達が呼び止める。
「ちょっといいかな?」
「何だ?」
「カガリさんの事なんだけど……」
「ああ、助けれたら助ける」
 そっけないカナードにフレイが前に出る
「ちょっと!なんなのよ!その言い方!!」
 いきり立つフレイをミリアリアとトールが宥める。
「まあ、まあ、抑えて、抑えて」
「ヘリオポリスのみんながこんな風にギスギスしちゃって、見てられないんだ。
 力を貸して欲しい」
「オレにどうしろって言うんだ」
「あのラクスって娘を引き換えにカガリさんを助ける。
その時の護衛をお願いしたいんだ」
 サイの口からこんな言葉が飛び出すとは正直意外だった、しかし……
「止めておけ、戦闘になったら片腕のない分ストライクが分が悪い」
 エールが使えない以上機動力で逃げるのは無理、ランチャーは右腕じゃ使えないから論外、残りはソードしかないが、あの重い対艦刀で歯が立たつ相手ではない。
「何よ!!今までさんざん自分が最強って偉そうな顔してたのにイージスってゲテモノがそんなに怖いって言うの!?」
「ちょ!止めろってフレイ」
「オレは状況を見て判断しただけだ。ストライクの修理が完了すれば借りは必ず返す」
「それじゃあ遅いのよ!!」
「今、この艦の中がどういう状況か分からないわけじゃないだろう?
 みんなヘリオポリスが壊れたのもマリューさん達のせいだって言い始めて殺気だってて……」
「それが普通の反応だ!今までこんな事が起きなかった方がおかしい」
「それはカガリさんが居たからよ」
「ハア?」
「こうなりそうな雰囲気は何度もあった……けどその度にカガリがマリューさん達は自分達を巻き込もうとして巻き込んだわけじゃない、今も命がけでみんなを守ろうとしているってみんなに言い聞かせたのよ。 
 そして不安がってるみんなにストライクとアナタの活躍を話して聞かせ安心させてたのよ。
 コレ、カガリが」
 ミリアリアがキチンと畳まれた黒い上着を差し出す。
「ん?オレの上着か?」
「カガリさん言ってたわ。自分はみんなを守る事ができないけど、アナタが代わりに守ってくれる、だから自分に出来ることでお返しをするんだって……
 それなのにアナタが動かなくてどうするの!?」
 ミリアリアの叫びがカナードを揺さぶる。
「ったく……洗濯代とメシ代を払えばいいんだろ」
「じゃあ」
 そこにいた全員の顔が歓喜に染まる。
「あんなヤツ片腕で十分だ。エールやランチャーが使えなくても、まだソードがある」
「あのさ……それだけどさ」
 自分に言い切るように豪語するカナードに、カズィが躊躇いがちに声をかける。
「こ、こうすれば使えるんじゃないかな」
 カズィから、コロンブスの卵というべき逆転の発想を聞き、カナードは眼を丸くする
「……お前、なんて名前だった?」
「カズィだよ」
「カズィか……お前、やるじゃないか。
 よし、ミリアリアはブリッチからゲートを開けろ、カズィはストライクの準備だ。
 装備はランチャー+ビームライフル。残りはオレと来い、ピンク女を抑える」
「「「「了解」」」」 
 これが後に幾度となく死線を潜り抜ける事になる仲間達との最初の結束だった。