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Canard-meet-kagari_第35話

Last-modified: 2007-11-10 (土) 21:36:03

第35話

 ラクスの部屋の前、見張りの兵士達はオーブの避難民が起こした騒ぎでいない。チャンスだ。
「オレがピンク女を連れて行くから、お前らは宇宙服の準備だ」
「分かった」
 サイがカナードの指示に頷く。
「あの女、アンタの事を気に掛けてたみたいだから気をつけなさいよ」
「童貞じゃあるまいし、あんな女の体ごときでホイホイ落ちるかよ」
「どうだか」
 フレイが疑惑の目を向ける。
「なっ!オレを信用してないのか!?」
「駄弁ってる場合じゃないだろう!!」
 サイに一喝されて肩を竦める二人
「は~い」
「分かってる。頼んだぞ」
 カナードが拳銃を抜き、ラクスの部屋のドアを開ける。
 ラクスは机に突っ伏し、スヤスヤと寝息を立てている。
「おい、起きろ」
 眠たげな眼を擦りながらのラクスはのっそりと起き上がる
「まぁ!今頃は地球への降下で大変だと思ってましたが……ヴェイアさんも一緒ですか?
 クルーゼ様にも言いましたが私はここでアル人を説得……」
「寝ぼけてるんだか知らないが、さっさと出ろ!」
 カナードの強い口調を聞き、ラクスは自分の思っていた人物ではない事に気づいた。
「まあ……カナード様でしたか。お怪我をなされたと聞いてましたが大丈夫なのですか?
 ちょうど良かった、わたくしは貴方にお話が……」
「いいからさっさと来い」
 額に青筋を立てながら拳銃をラクスにむける。
「短気な方ですわね」
 ラクスは渋々カナードに従う。
 この時まだ半分夢の中だった彼女は枕の下に、「彼」から送られたお守りを忘れてしまっていたのだった。

「遅いわよ!何してた……ってどうしたのよ!」
 文句の言葉をフレイが言葉に詰まる。
 無理もないカナードの連れて来たラクスは猿靴がされていたからだ。
「ヒドイデ、オコルデシカシ!!」
「アンタ……そういう趣味が」
「勘違いするな。こいつがウルサイからこうしただけだ」
 ラクスが抗議の声を出すが何を言っているのか判別不能だ。
「コッチの準備は出来てるから。早く着替えて」
「この上から?」
 三人の視線がラクスの穿いてるロングスカートに注がれる。
 たしかにこの上から難しいだろう。
「着替えろ。今すぐに」
 カナードが銃を持って脅すとラクスは渋々、スカートを脱ぐ。
 その際にバランスを崩し、パンツが見えそうになるとフレイはさっとサイを目隠しする。
「誘ってるつもりなら止めておけ、オレはもっと知的なのが好みだ」
「そうよ、あざといのよ」
「そんなこと言ってる場合じゃないだろう」
「ナニイットンネン、オマエラ」
 ラクスは冷ややかな視線を三人に向けていた。

「またせたな」
 ラクスを連れたカナードたちが人が来ないか不安そうにしていたカズィの所までやってくる。
「換装は終わらせておいたよ」
「流石だな」
 カナードは自分の注文通りの装備の機体を満足げに見上げる。
(さあ、オマエの片腕の借りを返しに行こうか)
 カナードがラクスの手を引こうとするが、ラクスは頑なにその場を動かない。
「ワスレモノ!ワスレモノ!!オマモリ!!」
「何だ?忘れ物があるのか?」
 カナードの問いにラクスが首を縦に振って答える。
「諦めろ。取ってくる時間が惜しい」
 所詮は女の力、カナードの力の前には敵わず、グイグイと引っ張られる。
 ラクスを乱暴にコックピットに押し込めると、ハロもそれに続く。
 そしてカナードがコクピットに入ろうとするとフレイが声をかける。
「ちゃんと連れて帰りなさいよ!私、今度、髪の手入れの仕方を教えるって約束したんだから!!」
「誰に言ってる。俺は、カナード・パルスだ!!」
 カナードはストライクのコクピットに入ると機体のOSを立ち上げる。
(いくぞ、ガンダム)
 カナードはブリッチに回線を繋げるとミリアリアが出る。
 どうやらブリッチにいるメンバーすらも暴動の鎮圧や説得に回ってるようだ。
「コッチの準備は出来てるわ。頼んだわよ」
「任せろ」
 ストライクが発進位置に固定され、アークエンジェルのカタパルトが展開する。
「えっ……ちょっと!入っちゃダメですって!!」
 カナードが発進しようとしたその時、最悪な人物がブリッチに入ってくる。

「お前たち!!そこで何をしている!!」
「バジルールか」
「一体何を……!!なぜその娘がそこにいる。
 お前達まさか……」
「察しがいいな。流石と言っておこうか」
「止めろ、お前がしてる事が分かっているのか!?
 この艦を危険に……」
「うるさいヤツだな。安心しろ、このオレがこの船を守ってみせる!!」
 カナードの決意の言葉と共にストライクのツインアイが点灯する。
 スラスターを噴き、電磁加速したストライクはヴェサリウスに向かう
「こちら地球連合軍、アークエンジェル所属のモビルスーツ、ストライク!
 捕虜交換だ。ラクス・クラインを引き渡す!ナスカ級はエンジンを停止!
 イージスのパイロット、アスラン・ザラが、カガリを同行させて来ることが条件だ。
 この条件が破られた場合、この女の命は保証しない」
 全周波数の電波に乗ってカナードの声が響き渡った。

「隊長!!行かせて下さい」
 今後の方策を話し合うためにブリッチにいたアスランが声を出す
「いいだろう君に任せる。」
「ありがとうございます」
 数分後、カガリを連れたアスランのイージスがストライクの前に現れる。
「モニターに人質の顔を出せ、確認する」
「分かった」
 猿轡をしたラクスが画面に出るとアスランが憤慨の声をあげる。
「貴様どういうつもりだ!!」
「なんだ?ギャグボールの方がよかったか?
 そういうのが見たいのなら二人っきりの時にお願いするんだな」
「なっ!!」
「フッ、冗談だ。何かとうるさいんでこうしただけだ。 
 それよりもそっちも人質の顔を見せろ」
「クッ、わかった」
 画面にカガリが出てくるとカナードは軽口を叩く
「よう、元気そうだな。クリーニング代を払いに来た」
「遅いぞバカ」
「助けてもらえるだけありがたいと思え。
 アスラン・ザラ、ハッチを開けた後、一、二の三で互いの人質を解放する。
 それでいいな。」
「わかった。カウントは俺が取るぞ」
「勝手にしろ」
 そして二人の人質の交換は驚くほどスムーズに行われた。

(変だ)
 宇宙空間を漂うラクスの体を抱きとめながら、アスランの中に疑念が浮かび上がる。
 何か策略を巡らすと思っていたのだが、その気配はない。
(いや、交換が終わった直後、油断した所を不意打ちをするつもりかもしれない
 だったら気を引きしめて……ん?)
 その時になってようやくアスランはラクスの下腹部がぽっこり膨らんでいる事に気がついた。
「フッ!気がついたな。その女の腹に爆弾を仕掛けた」
 そして高らかに赤いボタンの付いたリモコンをかざす。
「さて聞かせてもらおうか?キラ・ヤマトの居所を……」
「い、言えるか!」
「そうか……なら!」
 顔をニヤリと歪ませ赤いボタンに手を掛ける
「わっ分かった。キラは月でコーディネイター狩りにあったという事しか知らない
 本当だ!嘘じゃない!!」
「本当にそれだけか?」
「そうだ!」
「チッ!使えんヤツだ」
「それよりも遠隔起爆装置を捨てろ!!」
「分かった。約束だからな」
 カナードがカズィの作ったリモコンを放り投げる。
「これでお別れだが妙な真似をするなよ
 したら容赦なくストライクのアグニを撃つ!!」
「分かった」
 カナードとカガリがストライクのコクピットに滑り込むと同時にアスランもラクスと共にイージスのコクピットに収まりこむ。
 両者は相手に後ろを見せずライフルを向け合い牽制をしながらバックしながら距離をとっていく。

 アスランはコックピット内の酸素状況を確認するとラクスのヘルメットを脱がし、猿轡を取る。
「ラクス、無事ですか」
「ええ、なんとか……きゃ!何を」
「爆弾を解体するので失礼しますよ」
 アスランがノーマルスーツを丁重にナイフで切り裂く、しかし出てきたのは、彼女がよく着ていたロングスカートだった。
「アイツ!!どこまでコケにするつもりだ」
 頭に血が上ったアスランはイージスが変形させ、スキュラをストライクに向ける。
「おやめなさい!アスラン!!」
 ラクスの制止を振り切り、アスランはストライクをロックオンする。
「今倒しておかないと次も倒せる保障はないんです……」
「しかし」
(そうだ今、倒さなくては……今!!)
 アスランは照準をストライクに向ける。撃ってきたら、容赦なくアグニを撃つと脅していたが、GAT-Xシリーズの武器は使うには手のプラグによって機体認証を行う必要があり、アグニのプラグは機体の左側、片腕を失ったストライクでは撃つ事は不可能なのだ。
 画面の中のストライクは大分小さくなり、この距離ならストライクのビームライフルの出力ではイージスに致命傷を与える事はできない。
 その点、イージスにはGAT-Xシリーズ最高の威力を誇るスキュラがある。
 この距離で致命傷を与える為にはスキュラを最大出力までチャージする必要があり、一瞬動きが止まるが問題ない。
「すまない……カガリ」
 いつでもアノ力を引き出す事が出来ないと知るアスランは数秒の逡巡の後、トリガーに手を掛ける。
 スキュラチャージが完了するまでの少しの時間がアスランにはとても長く感じられた。

 一方、カナードはイージスが変形すると直ぐにアグニを支えるアームが展開し、砲身を前にせり出させた。
「撃てるんだよ!!こうすればな!!」
 アームとアグニとの基部が百八十度回転し、アグニが上下に反転する。
 そしてストライクは右側になったグリップを右腕で掴む。
 こうなる事を最初から想定していた為、アグニのエネルギーチャージは済んでいる。
 そしてカナードはアスランより速く、その破壊の業火をイージスに叩き込む。
「何!!」
 予期せぬ攻撃に、スラスターを最大に噴かして回避しようとするが、
 アグニの一撃がイージスの左の手足を奪っていった。
「チィ!!外したか……もう一度」
「止めろ!バカ!!約束がちがうだろ!!」
「アイツが撃とうとした、だから撃った!」
「だったら、もう止めろ!!」
「嫌だね。ここで仕留める」
「へ~仕留めていいのかな?ちゃんとした戦いじゃお前はまだ負けたままだぞ?」
「グッ!」
「どうせなら一対一で決着つけたいんじゃないのか?」
「フン!いいだろう今日の所は見逃してやるか。
 じゃあ帰るぞ『カガリ』」
 初めて名前で呼ばれたことに気づき、微笑むカガリ。
「どうした?ニヤツいて」
「何でもない」
 いつも通りの他愛のない話をしながら二人は、仲間達とラクスを逃がした罰として便所掃除が待っているアークエンジェルに帰って行った。
 後にカガリが見逃した二人のせいで散々な目に遭うのだが、それはもっと後の話である。