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DEMONBANE=DESTINY_rqMQ9OXgM6_03

Last-modified: 2013-12-22 (日) 20:48:49

「まったく……いったいどうなってるんだ、これは」
オーブ軍の技術仕官である彼は目の前の巨大MSを見て困惑していた。
全長は既存MSの2倍以上、その余りの大きさに通常の格納庫には収納できず、今は使っていない格納庫に横たわらせているわけだが。
彼は手元に集められたデータに目を通す。
「全身ブラックボックスの塊、か」
確かにマニュピレータなどの可動部分に関してはある程度の技術的共通点は見受けられたのだが、それ以外、装甲からコクピットに至るまで実にその90パーセント以上が解析不能と判断されていたのだ。
「そもそも、この表面に刻印されてる文字はなんなんだ?」
「さっきまで淡く光っていなかったか?」
「デュアルアイの部分が目玉みたいになってるのは何故だ?」
「動力源は?いったい何で動いてるんだ?」
「核搭載じゃないのか?だが、この巨体をどうやって?」
「アンテナがない……どこで通信を受けてるんだ?」
「コクピットだよな?いやコクピットだけど……」
「全天周囲コクピット?そんなのありえるのか?」
「ちょっと!この装甲ってば解析できないじゃい!?」
この巨体――デモンベインと言うらしい――に取り付く整備士達は皆、一様に語尾に疑問符と感嘆符をつけてこのブラックボックスに立ち向かっていた。
「しかし……」
思う、これは本当にMSやMAなのかと。
手元のスイッチを押す。

低い駆動音をあげて昇るタラップ、格納庫上部から彼は巨人を見下ろした。
胴体部との比較を間違えたかのような大きさを誇る両脚と両腕。
その両脚から伸びる剣のような物体、そして収納された鋼の翼。
鋼板を何枚も重ねた下腕部、荒々しく削りだされたかのような肩部。
頭部は三本の角を備え、今は消えたが両側の二つからは素材不明の鬣。
どのMSとも合致しない、異様にして不可解な理解不可能の機体。
それを見て、彼の脳裏に一つの馬鹿げた妄想が浮かぶ。
既存技術では解析できないこの巨人はもしかすると、この世界のものではないのではないかと。
「まさか、な」
一笑に付す。
ありえない、そんな訳あるはずがない。
そういう類の話は子供の頃に見る夢だけで充分だ。
頭から下らない妄想を捨て、彼は手元のデータに目を落とす。
タラップから下り、仕事へと戻る。
彼の視線を離れた格納庫の中、デモンベインはその身を横たわらせている。
その視線は空へと固定され、それは遥か上空を見据えている。
ふと、消えたはずの瞳に焔が燈った。
いったい何を見つけたのか、何を感じたのか。
だが、それは誰にも気づかれる事なくまた消えた。
格納庫の中に整備士たちの声が響く。

***

この世界に来てから既に2日。
豪華な屋敷の中を(とは言っても覇道の屋敷と比べれば質素なものだが)
九朔/紅朔はこの屋敷の執事であるという老人に連れられてその中を歩いていた。
その理由は、オーブの実権を握る人物達との面会だった。
「だけど、騎士殿の説明で良くここまでできたわよね」
「ん?」
執事からやや距離をとって後ろを歩く二人、耳元に小さく声をかけられ九朔は半身を見る。
いつものドレスはあれ以降、下布があからさまに見えてるスカート部分の透過度を下げているため、フリルのついたスカートにしか見えなくなっていたが、それでもやはり露出は激しく九朔は眉間をしかめる。
「汝、もうそろそろその服は止めぬか?目に毒だ」
「これで何回目?良いじゃない、私の趣味なんだから。人のファッションに口をださないで……って話をそらさないでよ」
「ああ、済まん。で、何だ?」
頬を膨らませて怒る半身を宥めて話を続ける。
「んもう。だからね、九朔の話だけでここまで話がとんとん拍子に進むのっておかしくない?って言ってるの。絶対おかしいわ」
「ああ、それか。なに、汝の代わりに我が取調べを受けていたときに、モニタ越しに話を聞いてる者がおってな。
 それがたまたまこの国で実権を握る者だったというわけだ」
「それで、自分達は異世界から来たって説明したわけ?」
「特に隠す必要も感じなかったのでな。それに、こういうときは下手に隠し事をすると後々面倒になることの方が多い」

「それって、ゲヱムの時の教訓?」
「皮肉なものだが、そうだ」
「で、その人信じたの、それ?」
「全て、というわけではないようだが一応と言ったところか」
「ふぅん。つまりは、いつもの狸の化かしあいってとこね」
「ああ。しかし――っと」
目の前を歩いていた執事の老人が立ち止まり、つられ、九朔も止まる。
そして、彼はドアノブに手をかける。
「九朔様、紅朔様。中でウナト様を始め、皆様がお待ちになられております。
 さあ、こちらへどうぞ」
扉が開かれる。
中には巨大なテーブルと食事が、そして数人の男達が九朔達を迎えていた。
もちろん、九朔達に対しての警戒は解いてないためか部屋の中には10名を
超える護衛が控えているのだが、
「まあ、普通なら妥当なところだな」
「私たちが呪法兵装だしたら終了だけどね」
「余計な事は言うな、うつけ」
「ようこそ、客人よ」
くすくすと危ない冗談を呟く二人の丁度真正面あたり、頭の禿げ上がった
オレンジ色のサングラスをした男が立ち上がる。
それに倣い他の男も立ち上がる。
「我々は異世界からの年若い客人二人を迎え入れることを歓迎したい」
「心からの感謝を申し上げたい」
九朔がそれに答える。
「私たちにこのような食事会をお開きしていただけるなんて、光栄ですわ」
スカートの端を持ち紅朔は頭を垂れる。

冗談を言い合ってたとは思えない変わり身、まるで貴族のような雰囲気を漂わせ礼を行うその姿に、ただのMSのパイロットだと思っていた男達は皆、ほぅと感心するような驚きを露にした。
彼らは知らないが、それは覇道財閥の中で育ってきたからこそのなせる業。
「さてさて、まずは年若いお客人たちに着席していただきませんか皆さん?
 立ったまま会話をするのは立食会の時だけで充分でしょう?」
気を取られる老人の中から、若い青年の声が響く。
一同がそちらを見れば、紫色の、ひどく癖のある髪型をした青年が笑みを浮かべて全員を見回していた。
見た目はただの軽薄そうな男だが、固まった場の空気を一言で動かしたその手腕に九朔の瞳が細まる。
彼こそが取調べのときに九朔と話した男だった。
促され全員が着席したところを見計らい、最初に挨拶を行ったサングラスの男が再び口を開く。
「では、代表として私から挨拶を。
 私はこの国で代表代行を行っているウナト・エマ・セイラン。
 そして、こちらに控えているのは皆、このオーブという国の政治を担う者たちです」
ウナトの言葉に従うように各々が九朔達に一礼する。
「既に皆様方はお聞きだろうがもう一度挨拶を。
 我の名は大十字九朔、そしてこの隣にいるのは……」
「こんばんわ、おじいちゃん。わたしの名前は大十字紅朔よ。よろし――ッッ!!」
悶絶の表情、少女とは思えぬ妖艶な笑みを浮かべて魅了しようとした紅朔の脚を九朔がこれでもかと踏みつけていた。
ふざけるのも程ほどにしろとその横顔は言っている。

「君、大丈夫か?」
「え、ええ。だ、大丈夫………」
後で絶対ぶち殺す!その異変を不審に思った男の心遣いに感謝しつつも心の中で呪詛混じりの怨嗟の呻きを漏らす紅朔。
互いの紹介を一通り終えた後、食事会が始まる。
このような場所で行われる食事会は腹の探りあいが常。
どちらも婉曲的に話を進めつつ、しかし、本題にはたどり着けず食事会は終わりに近づいていた。
「では」
先ほどの青年、食事会の間終始沈黙していた彼が口を開いた。
「食事会もそろそろお開きとして、これからは若い者同士での話をしようと思うのですが、よろしいですか父上?」
「ああ、構わん。君達もそちらの方が良いだろう」
なるほど、これまでが茶番か。
狸の化かしあいに慣れている九朔は察する。
「それでは大十字殿、今日は楽しい時間でしたよ」
「ああ、こちらも」
他の男達に見送られ、九朔/紅朔はユウナの後についていく。
通されるのは応接間、ユウナと九朔は向き合うように椅子に腰掛ける。
「ああ、お嬢さんもそちらのソファにどうぞ。
 僕のことは気にせずリラックスしてくれて良いよ」
「ありがとぉ。じゃ、気兼ねなく」
そのままソファの上に四肢を投げ出す紅朔に九朔の眉間が歪む。
「貴様は……」
「あはは、僕は構わないよ。それより……」

脚を組み替え、ユウナは九朔に向き合う。
「本題といかないかい?あの場では皆話したいことも話せなかっただろうしね」
「我も望んでいたところだ。むしろ汝との会話、こちらが本命なのだろう?」
「お察しが早いことで。流石は覇道のエージェント君だ」
「あの時の取調べでは信じているような素振りは無かったと思うが?」
「そうかい?僕としては異世界を信じてみるのも悪くないとは思ってるけど?
 それに、だ。あそこまで子細に渡って作り上げられた妄想を並べる人間を僕は知らないよ」
「そのような理由を持っても、不審人物をこんな重要人物の集まる場に呼ぶのはいささか奇妙と思うが?」
「おやおや手厳しい」
腹の探り合いという意味では九朔も負けていない。
覇道で学んだ知識もあるが、これもまたゲヱムで得た経験の業だ。
しかし、そんなことを言ったところで二人の姿は紅朔にはつまらないだけ。
「バカみたい」
手元にあったお茶請けのクッキーをバリバリとおばさんくさく頬張りながら辟易とした様子で紅朔は二人を傍観する。
「まあ、それはそうだ。仮にも国を動かす人物が、所属不明で、しかも異世界から来たなんていう妄言を吐く人間を会いたがるわけないし。
 それに歓迎なんて、それこそ馬鹿げてる」
「厄介ごとを抱える人間はどのような事情があろうとも、関わらずに放逐したいものだしな」
「ああ、うん。実際のところ、君たちには速やかにこの国からさよならしてもらうつもりだったよ、当初は」

「当初、か。成る程、それがなくなり、更には我々との面会を望むとはそれ相応の理由があるというわけか」
九朔の口元が笑みに歪んだ。
「デモンベイン、だな?」
「そのとおり!」
大正解、大げさなジェスチャーを交えてユウナが破顔した。
「まあ、あんなモノを作る技術はこの世界には存在しないわけでね。
 故にうちの政治家連中はそれが気になって気になってしょうがないわけだよ」
「奇怪だな。汝らの世界にもデモンベインのような巨大ロボットを造る技術はあるはずだが」
「ま、それがそうともいかなくてね。君達の乗る、デモンベインだっけ? あれの技術は僕たちにはお手上げだと言うわけ」
そういうことか、言いたいところを察して九朔が笑む。
「オーバーテクノロジー満載の機体が別の国に渡るのは自国の不利益につながり、そして、それが自国のものだと他国から思われても困る。
 故に手放そうにも手放せず、持とうにも持てずというわけか」
「言う事なしだね。だからこそ、君達の素性を知る必要が在り、そして見定めが必要だったのさ。
 それに、付け加えるならうちの国の元首様はこの国におられなくてね」
そう言って、ユウナの視線が側にあった写真立てに移る。
その中にあるのは意志の強い目をした金色の紙をした少女がしかめ面をしてユウナと一緒に映っている姿。
「若い頃のクイーンと一緒ね」
つられて見た紅朔が感想を漏らす。

「へえ?君達の世界でも年若で政治をしてる人間はいるんだ。確か、クイーンといえば君達の保護者だったね。その話、もう少し聞かせて欲しいな」
興味津々といった顔でユウナが二人に目配せする。
別段どうでも良い話だと思ったが、存外に興味を示すユウナに折れ、二人は彼らのクイーン、覇道瑠璃について話す。
彼らの世界のクイーンは大十字九郎が変えた未来とは違う未来にいる瑠璃。
両親をブラックロッジのテロで失い、祖父の下、帝王学、経済学を叩き込まれた彼女は祖父が死ぬと同時に覇道財閥という大企業の総帥となった。
そして、大企業の経営を行う傍ら、その膝元であるアーカムシティの政治を動かし、テロ集団であったブラックロッジへの対策も講じた大人物だった。
さすがに、ブラックロッジと永きに渡り戦い、大十字九郎の手助けによって遂には邪神招喚を行った彼らを退け、世界を救ったなどというのは話として行き過ぎかと思い省略したが。
「すごい!それは凄すぎるよ九朔くん!!いやいや、確かに一国を動かすのとは違うが、それでも街の政治を裏から操り、それと同時に企業経営も行う。
 おまけに自分の街にいる犯罪集団への対策も講じるなんて……!
 しかも、それをしたのがカガリとほぼ同じ年齢の少女がだよ!?
 すごい!!実に凄い人だ、君達の保護者は!!」
瑠璃の経歴を聞き、発狂寸前とも思える勢いで感動するユウナに少々引き気味になる九朔と紅朔。
それは、ひとえに彼の婚約者兼国家代表たる少女の未熟さに端を発するのだがそれを九朔/紅朔は知るはずも無い。 
「おっと、ごめん。いや、ついつい興奮しちゃったよ。
 だが、それでも覇道総帥は凄いお方だ。もし会えることなら一目お会いして熱く語り合いたいものだよ、うんうん!」

そこまで凄いっけ?紅朔の頭に浮かぶのは年甲斐も無くあの恥ずかしい衣装を無理矢理着せられて泣きべそをかいてる三十路の女性の姿。
逆に、九朔にしてみれば尊敬に値する女性、頭に浮かぶのは理知的に政務を行う彼女の凛々しい姿。
元は同じ九朔だというのに正反対の想像をする二人、本当に同一人物なのか疑わしいところである。
結局、この後はその話題が元となり紅朔も交えた雑談と相なり、執事という老人からの苦言があるまで夜更けになるまで語り合うことになるのだった。
だが、物語の幕開けが、もう、すぐそこまで迫っている事をこのときの3人は知らない。

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