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DEMONBANE-SEED_ですべのひと_03_1

Last-modified: 2013-12-22 (日) 19:22:52

金。

俺は、この世界で初めての報酬を手にしていた。

といっても、自ら選んだ仕事じゃない。

この前のあの事件で、あの黒い機体―確かアイオーンとかいってたか―と戦ったことが

覇道に評価され、これを貰ったわけだ。

当然デモンベインについては、関係者以外の誰にも喋ってはいけないと釘を刺された。

勿論誰にも言っていない。

しかし、この時代にあんな機体があったのか。

あれだけ目立つものがあって、何故歴史に残らないのか不思議だ。

覇道の圧力か、それとも何らかの方法で一般人には視認されないようになっているか。

後者なら、前の事件で「影」以外の人影が見えなかったのに説明がつく。





話を戻すが、覇道総帥は俺にひとつの道を提示した。

「デモンベインのことは、他人に一切の口外をしないでください。

 状況が状況ですから、特に罰則等はしません。ですが……

 その力、眠らせておくには惜しいものです。もしそちらがよろしいのでしたら、

 我々に力を貸してもらいたいのです」

というわけだ。

確かに、ウィンダムであそこまでできたのなら、

インパルスでやれば、下手をすれば勝てたのかもしれない。

それに、デモンベインには対空手段が乏しく、射程も短いという弱点が明らかに見えた。

俺が入れば大きな戦力アップに繋がるのは間違いない。

聞いた話によれば、フライヤー一式とソードシルエットも見つかっている。

まあ、ビームライフルとフォースシルエットさえあれば、

デモンベインの弱点はカバーできるわけだが。

だが。

「『影』……」

この世界でも、結局俺は何も守れなかった。

俺が今まで歩んだ道は、無駄だったのか。

家族を喪い、力を求め軍隊に入った。

仲間を喪い、さらなる力を求めた。

そして。

理不尽に、無意味に、ただ兵器として生かされた命。

それさえも、俺の前で散っていった。



ここまで求めても、手に入れても足りなかったのは力ではない。

今の俺に、それは痛いほどわかっている。

だからこそ俺は、戦うことに今頃不安を感じているのかもしれない。

要は、戦う理由がしっかりとしているかどうか。

これに関しては、今はもう、どうにもならない。

そんなものもない俺がいくら力を振るおうが、

大事なものは守れるのだろうか。



知っている。

この力が、時を重ねた技術という剣を振るう力が、

今の時代の理不尽に通用するということを。

だが今は、その意味を問う。

俺がこの世界で剣を振るう意味は、未だ結実せず。

この前は、沸き上がる衝動に身を任せただけ。

俺自身として、俺のような境遇を作った奴が許せなかったから。

欲しいのは、本当に俺が剣を振るう意味―――



「シンさん!」

呼ばれて振り返る。

そこには、総帥と執事さん、さらには九郎やアル・アジフ。

皆、車に乗っていた。

「み、皆さんお揃いで……どこに行くんですか?」

「話は車内で。早くお乗りなさい、事態は一刻を争います」

「お、俺も行かなきゃならないんですか」

「そうでなければ探したりしませんわ! 早くお乗りなさい!」





結局わけもわからないまま、いかにも高級そうな車が俺を乗せて疾走する。

その中で、新聞を一部渡される。

「これは……?」

「読めば分かる」

「『こういうもの』は汝の分野だろう?」

言われてみれば、確かに一面を飾ってるのはMSだ。

だが。

「どうしてこんな……」

「恐らく、これもド・マリニーの時計の力だな」

「そういうことじゃ、ない」

何故。

何故これが、こんな所にある。

そして、何故直っている。

あの時確かに俺が落とす手応えを感じた、あの白い悪夢が―――

「何故だ、何でこんなものまで……フリーダム!!」



この世界にも来たのかよ。

俺から何もかもを奪うったアンタが―――!!





 機神咆吼デスティニーベイン

  PHASE-3「Life Goes On」





昼どき。

まだまだこんな時間でヘバっていては、今後が……とも思うが。

あの少年の話を聞く限り、にわかに信じられないような現象でここに来たらしい。

本来なら僕は確実に死んでいた、と言っていた。それにあの機体容姿の中にも、

武器らしき武器は痛いくらいに自己主張している。

つまり、何らかの目的での作った兵器。彼はそれで戦っていて、負けかけたのだろうか。

だが、それが「時を越えて」ここに来たなど、信憑性ってレベルじゃねーぞ、となるわけだ。

流石に私もそう思うが、事実その技術力は確認している。

デモンベインのようなロボットが、小型ながらも複数存在する、その中の一機。

彼の世界はそんな感じらしい。

「どう書けばいいのよ……」



今出ている新聞は状況「だけ」を書いた。

謎のロボット出現、中には青年ひとり。

何とかその場の状況だけを書いて記事を埋めた。

これからどうしよう。

頭を抱えるハメになった元凶は、そんな私に

「あまり働き詰めしていると、いい記事も書けませんよ」

と、コーヒーを差し出してくる。

あなたの話が全然掴めるようなものじゃないから、私がこんなにも苦労を以下略。

勿論そんなことを言える筈もなく、ただコーヒーを飲み干す。

どこで間違えたんだろう、私。





……どうして、こんな事になってしまったんだろう。

あの機体に落とされかけたのはわかる。

けれど、それからどんな経緯を経てこんなところに。

明らかにレトロかつ巨大な街、アーカムシティ。

僕たちの暮らしていたところとはまるで違う。

エレカもなければMSもない。

こんなところにいた理由については、皆目見当がつかない。

早くラクス達のところに戻らなければ。そして、議長を……

今頃ラクス達はどんな目にあっているだろう。

……けど、この世界にはプラントすらない。

人類は宇宙に到達すらしていない。

どうにもならない、ということ。

ひとまず今はこの人の仕事を優先しよう。

いや、そうはしている。だけど。

……でも、何故か伝わらない。

僕は正直に話している。僕のこと、フリーダムのこと。

それでも、なぜ? 言葉が届かない。

話を聞く気は確かに感じられる。

でも……伝わらない。

この記者の人がもしミリィなら、伝わったかもしれないのに。

繰り返すけど、僕は正直に話している。なら、どうして。



どうして、僕は今孤独なんだろう。





「いいですか。事情は分かりましたが、私達は覇道の代表として

 あくまで話をしに来たのです。揉め事は起こされると困りますわ」

車の中でそう覇道総帥に釘を刺されたが、正直に言うと、

あんな危険な奴を野放しにはしておけない。

危険性は俺が身をもって知っている。

そもそも、あいつのことをよくも記事にできたものだ。

オノゴロのは確かに赦せないが、この恨みは所詮個人的なもの。原因は連合にもある。

だからそれを(苦虫を噛む勢いで)考えから外しても、

何度も戦場を混乱の淵に叩き込んで無差別殺人をした。

止められそうだったところにわざわざ割り込んできて、ステラも殺した。

事実に変わりはない。奴は危険だ。そうとしか考えられない。

何とかして抑え込むしかないが、そのためには個人の力では無理だった。

MS戦闘では、俺が捨て身でやっと落としかけた程度。

しかし、それを抑え込む力があらゆる方面で存在するというのだから、

やはり覇道財閥の力は恐ろしいものがある。

生身でも……多分、アルがいれば何とかなるか。

魔術師でアレだけのダメージなんだ、いくら伝説の英雄(byプロパガンダ)でも死にかけるな。

そして、フリーダムは前述の通り俺が落としかけた経験がある。





物量がないから今は一人では無理だが、俺は今一人じゃない。

覇道の切札、デモンベインがいる。魔を断つ剣を執る、三位一体がいる。

そして、その実力はこの目で見た通りだ。

―――なんだ、改めて考えてみたら、負ける要素が見当たらない。

ご愁傷様、フリーダム。

あんたの好き勝手にはならない、させない、絶対に。



そう、思っていた。

思っていたんだ、そのときは。





俺達はデイリーアーカム社長に挨拶をし、応接間に通された。

そこには、かなりお疲れ気味な記者がひとり。

そして―――

「アンタは!?」

つい驚きの声をあげてしまい、即座に口を閉じる。

ヤバい、このままいったら暴走しかねない。

ゴッドの力を自主規制……いや、この喩えは無理だ。

いや、慰霊碑で会ったあの人が、フリーダムのパイロットだったとは。

「キラ・ヤマトです。よろしくお願いします」

ぶっちゃけるとお願いなどされたくない。

出したとしても、表情に若干だけにする。

キラ・ヤマト。

―――どれだけの仇だ、今となっては。

まあ、今回は幸いにも銃の携帯が許された。

非常事態に備えるためだ。

こいつはともかく、また断片騒ぎが起きては、銃のひとつあっても足りないくらいだ。

九郎曰く、その比にならないくらいに怖いものがふたつあるらしいがさておき。

変な動きがあれば突きつけるつもりでいた。

「キラ・ヤマトさん。まずはどういう状況でこのアーカムシティに?

 記事には書いてありましたが、実際に貴方の言葉を聞きたいのです」

「分かりました。僕は……」

その時、俺は見た。

記者の人の顔が凍りついたのを。

……最初からロクな目にあわないことは覚悟していたんだ、うん。





……結局。

「シンさんに話を訊いた方が楽でしたわ。しかしそれだと情報は不十分ですし……」by覇道瑠璃

「SAN値ががっつり下がった。ダイスの神様もロールプレイも絶不調」by大十字九朗

「確かに、あやつの危険性はわかった……別の意味で」byアル・アジフ



俺からは、中略した意味は察してくれ、と。



話が終りを見せず、一人平然としていた執事さんが一旦話を止めた時、

既に疲れ果てた皆がいた。

勿論俺も例外ではない。執事さんすげえ。

事のいきさつはあとで俺からも話そう。疲れた。

「……わかりました」

総帥わかってなさそう。

「では、こちらの本題に入らせてもらいます。

 ―――記事の機体を、我々の管理下に置かせてもらえないでしょうか。

 あれは個人が持つには大きすぎる力です」

「それは無理です」

キラの顔が変わった。

穏やかそうな目から、深刻そうな顔に。

「フリーダムには核兵器の技術が使われています。

 下手に悪用されれば、そのときは大変なことになります。

 ここには核兵器を阻害する手段はありませんし。

 だから、あなた方には渡せません」





「この世界には、既に核兵器は実用段階で存在していますわ。

 今更そのような技術、学ばずとも済みます。

 機体の面だけでも、心配せずとも人型兵器―――いえ、兵器以上のものは

 既にこの街に存在します。

 普段我々が提供した格納スペースに置かせてもらうだけでもいいのです」

「それでも、これはラクスから託されたもの。

 僕自身が、僕の信用できる人から力を借りて何とかしなければならないんです。

 そして僕には、人を選ぶ権利がある。

 いきなり来ていきなり管理下に置け、というのは流石に無理です」

「ですが、この街にあのような機械を放置しておくことはできません。

 あのようなものが街中にあるというだけで既に問題なのです。

 そして、他の誰に使えなくとも、あなたが勝手に力を振るう可能性も否定はできません」

「僕が間違った行動を起こさないなら、問題はないでしょう?」

「そういうことでは……」

「―――ブラックロッジ」

おもむろに口を開いたのは、九郎。

平行線をたどっていた議論が止まる。





「大十字さん、何を……」

構わず話を始める九郎。

「奴らはこの街の裏の象徴。

 お前達の知らない技術を用いて、この街で暴れる奴らだ。

 幹部級なら、基地ひとつ一人で潰せる奴らだ。

 街にあの機体のような餌があれば、奴らの格好の的にもなる。

 お前が何をするか分からないが、一つだけ言うとすれば……

 奴らには関わるな。闇の世界に近寄るんじゃない」



九郎の言葉には、確かに少し苛立ちを感じた。

直接対峙したことのある九郎だから、言いたかったのかもしれない。

総帥からは既にこの話を奴らの訊いたが、それとは別の重みが、

九郎の話にはあった。

「……すまん姫さん、どうしてもこれだけは言いたかった」

「いえ、私も言うところでしたわ」

総帥も、ある程度は分かったらしい。

キラ・ヤマトという人間は、普通のやり方では全く自分を譲らない。

これ以上は、どうやってもいい方向に話を繋げられない。

一度話に私情が入ってしまえば、あとは自分への弁明をして殻に閉じ籠る。

でなければ、まずあんなに疲れる程、中略しなければならない程に

通じない話を長々と続けることはできない。

そして、此処には此処のルールがあると言うのに、他人や街のことを考えず私情だけで考えを引きずる。





ラクス・クラインがどうとか、アスハがどうとか今は訊いてないんだよ。

そっちの思想云々を持ち出すから話が混乱する……



「とりあえず、休憩にしましょう。そちらの方―――ブレッジ様でしたわね。

 あなたにも話をうかがいたいのですが、大分お疲れのようなので」

「いえ。すみません、気を使っていただいて」

そういえば、記者さんはさっきから一言も話してなかったな。

今頃気づいた。

「……三十分待ちます。これからどうするかはあなた次第ですが、

 我々に仇を為すことがあれば容赦いたしません。

 我々はこのアーカムシティを立ち上げた『覇道財閥』です。

 よき回答を得られることを期待していますわ」

そう言って、総帥がその場を去り、俺達も席を立つ。

……悲痛に見える表情で、うつむいているキラ・ヤマトを残して。



あくまで、悲痛そうな表情。

本当に苦しいのは、もしかしたら、

「覇道財閥の力を脅しまがいに使ってしまった」総帥の方なのだろうか。

今回は、本当にどちらが正しいのか。

俺が今考えていること、奴が悪いということも、もしかしたら今のは。





「さて……皆さん、あの方のこと、どう思いますか?」

一旦新聞社を離れたあと、俺たちは総帥に話を持ちかけられた。

「電波が飛んでます」

「いくら妾とて、あのような輩に遭遇したことなどないわ」

「言論での勝負では、勝ち目は薄そうですね」

記者さん、アル、執事さんが三者三様の答えを返す。

「……身勝手です。

 此処には此処のルールがあって、そのルールは覇道財閥なのに。

 自分のことだけにこだわっている。それは身勝手です」

俺はこう返した。一応、正直な気持ちだ。

その中でひとり、

「……あいつ、近いうちに潰れるな」

別の答え。

「九郎、汝も先程話に割り込んだりしていたな。

 詳しく聞かせてもらおうか、汝が何を思ったのかを」

「いや、そんな複雑なことじゃなくて、何かこう……

 あいつは、心の底で他人に助けてもらいたがってるんだ。

 誰かへの依存心が見えた、ってのかな。

 どんな事になっても、誰かが助けてくれる。

 それが真実なんだ、と勘違いしてる限り、あいつは近いうちに潰れる。

 アーカムシティに来る前にそれで何度か通じたから、そう思ってるのかもな。

 だけど、ここはそんなに甘くない。

 今のままじゃ、そんなには持たないぜ、あいつ」





……思いもしなかった。九郎がここまで人を見ることができるなんて。

「あ、お前今意外そうな顔したろ」

「あんな生活を送っている汝のことだ、当然だろう」

「お前なぁ、アル!」

……ぷっ。

誰かが吹き出したのをきっかけに、俺たちに笑いが伝染。

当人の九郎まで笑いだした。

今になって気づいたけど、すっかり俺も打ち解けてるな。



「……ですが、今回は私達にも非があるのでは、と思います」

落ち着いたところで、総帥が話を始める。

「右も左もわからない状態の時に、アーカムシティの第一人者だからといって

 ここまで干渉すること自体、勝手が過ぎるのではないでしょうか。

 最も、実際勝手に力を振るわれると困りはしますが」

「ああ……確かに、な」

自分の常識が通じない。

俺はその中でも社会に入っていくことを選んだけれど。

それを押し付けることは、間違いなのではないか。

「姫さん、デモンベインは使えないか?」

唐突に切り出したのは、九郎。

「え……何に使うつもりですか?」

「いや、あいつには実力でわからせなきゃならないって思ってさ。

 本当に甘ったれた根性があると分かれば、性根から叩き直す。

 設計図等をとれば、こっちで修理はできるだろ?」





そういえば、今覇道財閥の格納庫には、デモンベインやインパルスに加え、

あのとき俺が使ったウィンダムが一機存在する。

データを覇道の方に写して、妖精さんとかいう機械に直してもらった。

装甲材質はこっそりデモンベインと同じものになっているが。

「インパルスのような特殊装甲までは、

 解析から再現までまだ時間がかかると思いますが……」

「治るんなら十全だ。奴と勝負して、どっちが正しいか決める」

「……大十字さん、何をそんな!」

「もう言葉での話し合いに意味はない。

 だったら、直接どっちが間違ったか確かめるしかないだろ」

「そういう問題ではなく!」

「……うつけ」

……流石に、今回はアルに同意だ。

こっちはこっちで、その『大旦那様の力の振り方を間違ったかもしれない』と悩んでいる

総帥にまで考えが及んだ言動とは言えない。

それに、ここで戦闘となると、大惨事になるのは俺だって分かる。

奴一人の為にそこまで被害を出すのは、個人的な感情を出しすぎじゃ……

「……覇道総帥」

ちょこん。

小さく挙手をする記者さん。

「私、場所に心当たりがあるんですが」

煽らないでほしいな。





……しかし、まあこれほどまでに冷静にものを見られるとは。

奴に対しての執着が、薄れてきているのかもしれない。

逆に、こっちの方がだんだん狂いつつある。

奴が此処に来た影響か……という考えも、俺に否定は、できない。



「んー、今のところ微妙かな」

どこからか、

「やっぱり、急造だと不協和音が出るのかなぁ。ループを乱したわけだし」

闇が、

「まあ、まだまだ実験の結論を出すには早い。この事態、もう少し様子を見るとするよ」

見ていた。





「……こんなところに隠してやがったのか」

「確かに、此処ならば人目にはつきにくいだろうが」

「もし人目についたとしても、これを操作できる人はこの街に僕くらいのものです」

いや、俺がいるから。



そんなこんなで、断片騒ぎで封鎖された区画。

フェイズシフトを落として佇むフリーダムが、其処にあった。

灰色の巨体、幾多の砲門、その背面の翼。

見間違いなどするものか。

それは確かに、俺が一度落とした筈の、あの機体だった。

「ここなら、避難も必要はないと思いますし、十分な広さも確保できると思うんです。

 最も、デモンベインを出した時点で十分騒ぎになるということは、わかっていますけど」

「……少なくとも、あなた達は立ち入り禁止の看板も軽く無視できることが理解できました」

「ですけど総帥、MSなんてものが公衆の面前に晒されたりしたら、

 それこそ皆が混乱すると思います」

そう、あれはまがりなりにも軍の主力兵器……出すとしても、写真くらいには留めたい。

総帥の言うこともわかるけど、記者さんの判断も間違ってはいないと思う。

「そんなもの、もう慣れていますわ」

しかし俺の口出しも、あっさりと流されてしまった。

……あれ? 慣れてるって、一体何故?

デモンベインはそんなに戦っていたのだろうか。

それでもたった一機。別の規格のが多数出現したりして、不審に思ったりしないのだろうか。

「シン様、この街の脅威であるブラックロッジには、恐るべき科学者が存在します。

 その者もまた、独自のロボットを作って破壊活動を繰り広げております。

 さらに、デモンベインも力をつけてきた最近では―――

 ブラックロッジの大幹部たる『アンチクロス』も、時に自らの機体を招喚して

 我々の討伐のために動き出してきたりもしました。

 ……民衆の方々も、慣れたことでしょう」

ああ、そういうことか。執事さんの説明で納得した。

所詮「正義の味方」の覇道財閥と、所詮「悪の組織」たるブラックロッジが対立しているわけで。

それはロボットVSロボット、まるでアニメのような話だな。

最初に九郎が探偵で魔術師だと知った時、もっと別の戦いになっていると思っていたけど。



かといって、『俺達』がこの時代を荒らしてはいけない。

少なくとも、時代を壊す悪鬼になってはならない。

そして今、フリーダムに対して力を見せるのはデモンベイン。

少なくとも相性は最悪だが……

確か、奴を説得するために総帥は「模擬戦だと思ってくれればそれでいいですわ」とか言っていた。

多分今のデモンベインには、次にあの黒い機体のような敵に当たってしまったときのための対処法が欲しいんだ。

そうすれば、今後似たような傾向の敵と遭った時も幾分か楽に戦える。

対策を講じるに越したことはない、という話だ。

しかし、フリーダムに実際の武装を全て使わせてもいいのだろうか。

いくらCEのMSの武器の威力を知りたいからといって。



そうこうしている間に、フリーダムを遙かに上回る巨体が顕現する。

聖句を唱え、此処に参上するはデモンベイン。

「すげぇ……」

―――虚数展開カタパルト。

どこにいても、機体を自由に呼び出せるというものらしい。

現場で初めて見るそれに、思わず感嘆の声を漏らしてしまう。

「シンさん、もののついでですから、デモンベイン……

 大十字さんとアル・アジフの戦いを見てもらいましょう。

 これは他言無用ですわよ。性能や戦いの癖については、決して記事になど書かないように」

最後は明らかに記者さんに向けてだな。

びくっ、てお約束の反応が来たし。

『姫さん、準備はできたぜ』

『こっちもです……約束は絶対ですね?』

「ええ、勿論です。我が覇道財閥に二言はありません」

ちなみに、約束というのはこうだ。

「あなたがこの模擬戦闘に勝ちましたら、自由にしてくださって構いません。

 ですが、こちら側が勝ちましたら、そちらは私達の指揮下に入ってもらいます。

 その場合、賃金等もしっかりと払いますし、生活スペースも提供はいたします」

つまり、負けたら覇道の下で働け、ということ。

個人的には、絶対に九郎には勝って欲しい。

奴は野放しにすると危険だから。

……その危険性は、俺が身をもって知っている。

かたや魔導の技術の結晶たるデモンベイン、かたや未来で英雄とされた規格違反機のフリーダム。

両雄が今、同時に動き出そうとしていた。

この組み合わせでは、始まるまでに結果など予想できはしない―――





「よいか九郎。シンの話によれば、あの機体は前回のアイオーンと同じく

 上空からの射撃を中心に攻めてくる。対してこちらは格闘特化型な上、

 空中に逃げ回られると対処がしづらい。其処をカバーしなければならん」

「自分の得意な間合いに引きずり出せ、ってことか」

前回はシンがMSって奴で援護してくれたから近づけた。

だが、今回はそれがない。あのフリーダムって奴とのタイマンだ。

射撃武器がバルカンしかないデモンベインにとって、

実弾にまでその特殊な装甲でほぼ無敵ともいえる耐性を誇るフリーダムには死ぬほど相性が悪い。

そして、決定的な隙を生み出しても、今回レムリア・インパクトを使うことはできない。そりゃ当然だが。

一撃で勝負を決めることすらできない。

さて、どう戦うか……今のデモンベインで。



フリーダムが動き出す。

白と青のカラーリングが展開され、立ち上がる。

対峙すると、大きさの関係上どうもあっちの方が主役ってかヒーローっぽい感じがするが些細。

「魔導の魔の字も知らぬ輩に、主役を取られるなよ」

「わーってらぁ……さて。姫さん、準備はできたぜ」

『こっちもです……約束は絶対ですね?』

『ええ、勿論です。我が覇道財閥に二言はありません』

その言葉を聞き、俺は身構え、奴は背中の羽を広げる。

「でぇぇいっ!!」

―――動いたのは、俺が先だった。



―――動いたのは、僕が後だった。

『でぇぇいっ!!』

その動きを見て、僕は飛び立たせ、彼は攻撃を外す。

見たところ、あの機体は飛べる装備がない。対してフリーダムは飛べる。

追撃をかわして上空に上がれば、得意のレンジに持っていける。

高度を上げる途中でクスィフィアスを展開。十分距離を取ったと感じたらバラエーナを展開。

さらに、構造的に多少無茶をしながら、ウイングをフルに展開して安定性を確保する。

……照準。

「僕は、勝つんだ」

ビームライフルとともに、全砲門を一斉に放つ―――フルバーストモード!



「汝が、負けるのだ!」

奴の言葉に対し、アルが自信満々に言い放つ。

実際、今の攻撃でデモンベインはさほど傷つきはしなかった。

ただし、防御結界が間に合ったという前提で、だ。

背中のキャノンで多少装甲が溶け、腰の実体弾は装甲で弾けるまでに威力を減らすことができた。

……量産タイプで鬼械神(まがい)の翼を貫通できる武装があったんだ、

規格違反とかいう機体の攻撃が直撃すれば、確かに痛い。通用はする。

つまるところ、そうそう受けてはいられない。

それに気づいたのか、奴が連射体勢に入る。

「断鎖術式壱号ティマイオス、弐号クリティアス……」

ならばこちらが取る手段はひとつ。

「開放ッ!!」

そっちが徹底的に打ち込んでくるなら、接近できるまでには回避しまくって近づくしかない!





「速い……っ」

その巨体からは想像も出来ないスピード。

マルチロックも追いつかず、クスィフィアスとバラエーナを交互に撃つ形になる。

敵に軸を合わせながらの連続射撃。あの急加速に当てられるかどうか。

1セット目。獲物の大きさにかかわらず、かすりさえしない。

2セット目。敵の急な方向転換、もといジャンプの体勢のおかげで1ヒット。肩の装甲にダメージ。

3セット目。……は、間に合わない。敵の間合いに入ったようだ。空いている左手にサーベルを握らせる。

『アトランティス・ストライク!』

「くぅううっ!!」

やはり先程の急加速を用いて、かなり遠い距離から無理矢理に跳び蹴りを放ってきた。

無理矢理に機体を捻り、蹴りの衝撃を逃がしながらサーベルでの迎撃……甘かった。

威力はとても殺しきれるものではなかったらしい。

フレームはまだ大丈夫。サーベルが一本正常な動作を失った。

しかし、相手はこちらの弾幕をかいくぐり、無理矢理に格闘レンジに持ち込める程の推進力、装甲を持つ。

ただフルバーストを繰り返すだけではとても勝てやしない。

それに……こんなものを喰らい続けていれば、フレームの方が砕けるか、PS装甲が壊されるかのどちらかだ。

何とか姿勢制御で、地表への激突を避ける。

見回してみれば、一面は……。

「やってみるしか、ない」



着地。不格好ながら。

「くそっ、厄介だなあの武器は!」

あのライ○セ○バー紛いの一撃は右足裏を抉り、着地に支障を与えていた。

「断鎖術式は……まだ使える。だが、こんな無茶は数回も保たんぞ」

「やっぱ強引に距離を詰めるってのは無茶か……」

「今のがアンチクロスだったら、汝は死んでいたぞ」

ごもっともで。となると、搦め手をかけるしかない。

それにしても、ヒヒイロカネに魔術的防御を重ねたデモンベインの装甲にも傷をつける。

全く、規格違反はフリーダムのお家芸だな! ……あれ?

一方、再び動き出した肝心の奴の動きは変わっていた。

奴は接近戦を警戒してきたのか、廃ビルやらの建造物を盾にして、

ご自慢の羽をちょくちょく動かして攻撃。

ただ、攻撃方法は馬鹿の一つ覚えみたく一斉射撃。

「結界よ!」

防御陣さえあれば、デモンベインは負けない。

ただ、それにも限界はある。

今の俺の手札の中で、何か有効な手段はないものか。

近接戦闘を決めるとなれば、敵の動きを封じるしかない。

それ目的の武装ならアトラック=ナチャがあるが、確実に決めたいし、

奴自身も、意外とここにきてちょこまかした動きを見せている。単調な攻撃では当たりはしない。

どうすれば、どうすれば奴に攻撃を当てられるか……

「何はともあれ、やってみなきゃ始まらないか。このままじゃジリ貧だ……!」





戦況は、僕の優勢だった。

最高速度こそ空気抵抗で落ちるが、背部のウイングを動かしてそれを利用。

結果、フリーダムの制動に十分必要な空力を得られ、機動力は絶大なものになっている。

ハイマットモード―――それが、この形態。

僕の信頼できる、フリーダムの能力の一。

あの機体は巨大すぎて、此処からでも目立ちすぎる。それが弱点。

此方は廃ビル群に隠れながらも、十分に相手を狙える。

恨みはないけれども、やらなければやられるのが先。

なら、やるしかないじゃないか!



『こいつならどうだ―――アトラック=ナチャ!!』

そうこうしていると、光る髪状のパーツを此方に向かって振り降ろしてきた。

近いもので、二年前のあの灰色の無線ガンバレル付きの機体。

バッと広がり、赤色となり僕を襲う。

異常なくらいの伸びだ。

先程のように、サーベルが通用するなら―――

僕はもう片方のサーベルを抜き、左手に持たせた。

後方に加速。やはり振り切れない。

サーベルで斬り払う……思った通り、これは十分に通用する。

次は少し遠い。今のうちならマルチロックは可能。

緑から赤に変わる程なら、光学兵器とはまた違うだろう。落とせるか。

未知の機体と戦うため、できる限りの手段で敵の能力を早くに把握する必要があった。

それが、仇となる。





「―――な、なんだ!?」

機体を捻転。

フリーダムのいたところを、『ビームがかすめた』。

何故か。それを理解するのは、

僕が攻撃した残り四本の糸状の攻撃を確認しようとした時だった。

「ガ、ガラスっ!?」

視界が、割れたガラス状の何かに覆われる。

「ぐ……うわぁ!」

襲いかかるそれに、フリーダムも、僕も怯む。

瞬間。

また先程の急加速で、接近戦を仕掛けてくる、あの機体の姿が見えた―――



「ジャックポッド!」

ビンゴを超えた大当たりだ。

実はこの戦法、いい意味で予想外な点があった。

俺はあの時、アトラック=ナチャと共に、ニトクリスの鏡を用いた『フェイク』を多量に混ぜておいた。

実戦では、双方とも魔力を使うから、そう直ぐにはバレないだろう。

そして、敵が避けきれずに防御すれば本物をひっかけ、

斬り払い等をかけてくるならば、鏡が割れて敵を襲う。

どちらにせよ多大な隙を生ませることができる。

予想外なのは此処からだ。

敵のライフル――シンの時代では一般的な光学兵器らしい――を反射、

角度がよかったのか、跳ね返ったビームはそのままフリーダムを襲っていた。

ニトクリスの鏡による反射は、MS相手には十分に使える技のようだ。

今後使うことになるかもしれない、覚えておこう。



―――結果として、フリーダムは怯んだ。

このチャンス、活かす以外に手はない。

次の手段を仕掛ける!

断鎖術式で一気に間合いを詰め、その間に武器を招喚。

「バルザイの偃月刀ッ!!」

鏡の破片をかち割るかのような一撃。

だが正確には、鏡は融解もしかかっていた。

『うわぁっ! な、くぅ……っ』

PS装甲の仕組みは大体教わった。

電力を用いて衝撃、そして太陽近辺級の熱を逃がすことができる装甲。

「実質戦闘においては無限」のエネルギーだろうが、

多大な熱量を逃がし続けていれば、内部がやられる筈。

この調子で次も―――



ねちょ。



「お、おおうっ!?」

「な、なんだ!? 九郎、ここに来て操縦ミスとは、汝は……!」

「お、俺はちゃんと操縦してる! ……多分」

何か嫌な音がしたと思ったら、次の瞬間には思いきり地面に激突していた。

廃ビルがいくつか犠牲になる。

一体何が起こったのか。

確認しようとした時……その時だ、悪夢が始まったのは。



―――何故人は戦うの?

『貴様、あれほど言ったろうに。

 結局はアル・アジフの断片すら満足に捕獲できないと言うのは何事だ!』

『なに、MSのテストをしていただと? 言い訳は見苦しいと言った筈だ!

 使うならもっと完璧にしたらどうだね? 今の貴様にはぁ……我慢ならん!』(某大幹部の言葉、回想)

―――我輩は何と戦えばいいの?

『優しいそのーゆーびがー

 終わりに触れーるー時ー♪』

『博士、せめてギターは止めるロボ。すっげえ響くロボ』(某大天才とその助手・回想)

研究所の孤独がさまよう青春は、才能と怒りが姿なき敵ですか。

貴様のせいで無敵ロボ達は残骸、エルザは心が離れ、我輩はオレンジ畑を耕しかねん立場だという始末。

あまりに悲しすぎて、前代未聞の回想と総集編が大半のアニメと化してしまってもよいのであるか?

では貴様には何を望む。

『破壊! 破壊! 破壊!』

「よろしい、では破壊だ。

 我が名はドクタァァァ・ウェェェスト! 神を断つ大天才なり!

 我輩に切れぬものはあんまりない」

「博士、せめて多少の新規画像で緑茶を濁すロボ」



……なんか来たよ。

この場にいたほぼ全員が、思考をそれで固定され、呆然としていた。

「……なにあれ」

「我々が討滅すべきブラックロッジの科学者ですわ。一応」



デモンベイン級の巨体。

ドラム缶のような形のボディ。

あまりに巨大過ぎるドリルが後ろの腕に二つ、前の腕は長距離砲にミサイルポッド。

遠巻きに見ても異彩を放っているというかデザイン浮きすぎ。

CEではまず考えられない滅茶苦茶な形の敵(一応)。

「……もうギャグにしか感じられない」

「事実です、シン様」

無言で手を肩に置かんでください執事さん。

十分異質さはわかりましたから。

しかし、こんなんと戦ってたのか、アンタ達は。

不定期に襲ってくるあいつを少しだけ想像。



なんだ……俺の、涙か……



ごめん無理だった。







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