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DEMONBANE-SEED_種死逆十字_第10話1

Last-modified: 2013-12-22 (日) 06:19:34

「……可能ならそれが一番望ましいが、本当に出来るのか? ミナ」
「技術的にはそう難しくはない。本国の施設と連動させれば可能だろう……実行するなら事前の手筈は我が引き受ける、後は貴様の手腕次第だ、カガリよ」
 アスハ邸にて腕を組むカガリと、その正面に立ちカガリを見据えるミナ。
 カガリの傍らには体のあちこちに包帯を巻き車椅子に乗ったユウナと、その車椅子を支えるアスランの姿もある。
「しかし異世界に魔術、かあ……まだ信じきれないけど、あんなバケモノMSやゾンビを見ちゃった以上、信じるしかないか。ねえアスラン?」
「そうですね、俺もちょっと混乱してますが……けど、納得できた点もあります」
「もー、公の場ならともかく身内の席でそんな他人行儀な言葉遣いやめてってば。 ボクと君の仲じゃないか、心の友よ♪」
「……そんなアヤシイ関係になった覚えはサラサラないんだがな」
 ボロボロの身体に反しておちゃらけているユウナにアスランは溜息を付く。しかしその苦笑は決して苦々しいものではない。
「何時の間にか随分仲良くなったなお前ら……で、ユウナはミナの意見どう思う?」
「そうだね~……確かに現状のオーブが取れる悪くない手の一つだと思うよ。ただ上手い具合に事が運ぶかどうかはミナの言う通り、カガリの交渉次第だね」
「……アスランは、構わないか?」
「……君が望むのであれば、どんな事だろうとこなしてみせる」
 少し不安そうな目を浮かべたカガリに、アスランは優しい笑みを返す。カガリは一度目を伏せると、今度は弱さを見せない毅然とした顔を上げる。
 アスラン、ユウナ、ミナ──それぞれ真剣な面持ちになった彼等を見渡し、カガリはオーブ代表としての決定を告げた。
「……プラントへ連絡はミナに任せた。都合が付き次第ミネルバに連絡、タリア艦長達との面会を取り付ける。
 それと、先にティトゥス達をここに呼んで話そう……新しい契約を結ばないとな」

 
 

第十話『変わらぬ心、変わる心』

 
 

 オーブが攻撃を受けて四日後。オーブの艦船ドッグに逆戻りしたミネルバの前でタリアとアーサー、それにシンにレイ、ルナマリアの五名が立っていた。
「行政府に直接呼び出すなんて、一体何の用なのかしら?」
「おそらく今後のミネルバの動向について話し合うのだろう。何時までもオーブにいる訳にはいかないからな」
「でもそれなら艦長や副長はともかく、なんでシンまで名指しで呼び出されたのよ?」
 彼等が今ここに居るのはカガリから面会に呼び出され、その迎えを待っているところだ。
 そして何故かカガリは面会の相手にタリアとアーサーの他に、シンを指名したのである。
 ちなみにルナとレイは呼ばれたわけではないが、興味があるのか護衛の名目でちゃっかり同行を取り付けた。
「ねえ、シンはなにか心当たり無い訳?」
「……知るかよ、アスハの考えてる事なんて。アイツだって俺が嫌ってんの分かってるくせになんで…… まさか、嫌がらせか?」
「それはないだろう。むしろ襲撃の時助けた事への謝礼でもあるんじゃないか?」
「そんなやめてくれよ、気持ち悪ィ! それに俺はあいつを助けるなんて、そんなつもりじゃ……」
「静かになさい! 今にも迎えが来るかもしれないのにみっともない! いいことザフトとして、みっともない姿を晒すんじゃないわよ! 特にレイとルナマリア、貴方達は無理矢理引っ付いてきたんだから、なおさら失礼の無いように! シンももっとシャンとなさいシャンと!」
 無駄話を続ける三人にタリアの雷が落ちる。レイはいつもの無表情で、ルナはヒッと身を震わせながら謝ろうとするが……
「スイマセンでしたぁ! 大変申し訳ありません、艦長っ!」
「よろしい……ハァ、何でよりによってこの子が呼び出されたんだか……」
 背筋を伸ばしかかとを合わせ、ピシッと敬礼のポーズを取って謝るシンの声に二人の言葉はかき消された。額を押さえため息をつくタリアの前でシンの表情は引きつり、脂汗が頭から流れている。
 これはオーブ襲撃が収まってミネルバに戻ったシンがタリアから受けた折檻の影響である。シンの独断専行によりインパルスは大きなダメージを受け、ミネルバはシンとインパルスを優先しカーペンタリアへの出航を中止せざるを得なかった。
 心労の堪っていたタリアはこのシンの暴走にとうとう堪忍袋の尾が切れ、三時間を超える説教と大量の反省文いう形で発現した。
 以降、シンはタリアに対しずっとこの調子である。
(可哀想にシン、タリア恐怖症にかかって……!)
(分かる、分かるぞぉシン! だが耐えろ、耐えるしかないんだ……!)
 すっかりトラウマになっているシンの姿にルナは同情し、アーサーに至っては目に涙を溜めながらウンウンと彼を見守っていた。
「……艦長、迎えが来たようです」
 こちらへと向かってくる二台の車を最初に捉えたレイの言葉に、皆がそれぞれ姿勢を正す。
 彼等の前に止まった車の一方からは皆のよく知る顔が、もう一方からはオーブ軍服を着た壮年の男性が現れる。
 その二人の出現に、思わずシンとルナが声を上げた。
「あっ……」
「あ~! アスランさん!」
「コホンッ! ……アレックス・ディノです。お久しぶりですね、グラディス艦長」
「……ええ、先のユニウスセブン落下以来かしら」
 ジト目でルナに睨みを利かせるアスランに対しよくもまあぬけぬけと、と思いながらタリアは彼の小芝居に合わせる。
 実際は先日アスランとして議長からのFAITH徽章とセイバーを届けにミネルバに赴き、カガリからの面会を伝えてきたのも彼だったというのに。
「こちらの方は?」
「ハッ! オーブ海軍所属、トダカ一佐です。お迎えに上がりました」
 アスランの横に立っていた軍人が一歩前に出、敬礼する。一同も敬礼を返すが、シンだけはその動作が少しだけ遅れ、皆に釣られる形となった。
「ミネルバ艦長、タリア・グラディスです。わざわざのお出迎え有難うございます」
「いえ、こちらからお呼び出ししたのですから当然の事です。面会にも同席しますのでどうぞ宜しく。それと……」
 互いに敬礼しあった後タリアと握手を交わし、トダカはその視線をシンへと映した。戸惑うシンの前で、トダカはフッと引き締めていた表情を緩める。
「久しぶりだなシン・アスカ君。あの時からもう二年も経つか……元気だったか?」
「トダカさん……はい、えと、あの俺……」
「顔見知りなの、シン?」
 少し驚いた顔をするタリア。他の者達の視線もシンに集中する。突然の再会と仲間の好奇の視線に戸惑い、声も出せずワタフタするシンの姿を見てトダカは苦笑し、助け舟を出す。
「ええ、前大戦でオーブが戦火に見舞われた際、戦災にあった彼を保護したのが私でして……
 その縁もあって、彼にプラントへ行くように勧めたのです」
「そうでしたの……では一佐のおかげでザフトは将来有望なパイロットを得る事が出来たわけですね」
「ハハ、そういうことになりますか。そう言って頂ければ私も鼻が高いですな……まあ積もる話はまた後ほど。 オーブ行政府までご案内いたします。皆様、車の方に……」
 トダカに促され、それぞれ車に乗り込もうとする一同。そんな中ルナがアスランに小さな声で尋ねた。
「あの、アス……アレックスさん。どうして今回、シンまで呼び出されたりしたんですか?」
「……ちゃんと理由はある。すぐに分かるよ」
 ただ、とアスランは少し複雑そうに笑った。
「君達にとって、にわかには信じられない話になるかもしれないけど、な」

 
 
 

「お連れ致しました、アスハ代表」
「入ってくれ」
 行政府首長室の扉が、アスランによって開かれる。扉の向こう側、黒衣に身を包むロンド・ミナと車椅子に座ったユウナの中心に、シンは『あの女』の姿を捉える。
「突然の呼び出しに応じていただいて感謝します、グラディス艦長。それに他のミネルバの方々も」
「恐縮です、アスハ代表」
 カガリ・ユラ・アスハ。オーブの代表首長。かつてこの国と民を、自分や家族を守ってくれなかった、ウズミ・ナラ・アスハの娘。
 デスクから立ち上がりタリアと握手する彼女の姿を見て、シンの感情に黒いモノが渦巻き始める。
 顔に出る不快感を隠せぬまま、扉をくぐる……そこで、シンは再び困惑した。
「ティトゥスさん!?」
「久方ぶりだな、シン・アスカ」
 部屋の隅に シン達以外にも招かれていた者達──ティトゥスが白衣の男と変な格好の少女と共に立っていた。
「アスハ代表、これは……?」
「疑問はごもっとも。しかしこれから話し合う内容には彼等の存在が大きく関わってくる故、ご容赦願いたい」
 困惑するタリアにカガリではなくミナが答える。どこか威圧的な彼女をフォローするように、今度はユウナが口を開いた。
「ま、そこはおいおい説明するとしてですね……彼等の事は皆さんご存知で?」
「いえ……ミスターティトゥスとは面識がありますが、残りのお二方については存じませんわ」
 ティトゥス達を示すユウナにそう答えるタリア。他の面々もそうだと頷く。すると突然白衣の男が絶叫を上げ、何処からともなく取り出したギターを掻き鳴らし始めた。
「ななな、なぁんとー!? ここでも我輩蚊帳の外であるか? 科学者A扱いであるか!? 
 この天才、世紀の天才、ドクターウェストの名を知らぬなど未熟半熟侮辱千万! 貴様等全員、我輩の超頭脳電波で洗脳し、老いさらばえるまで義務教育を化した挙句更に若返らせて我輩の叡智と偉業を骨の髄まで教育してくれるわ!」

 

「「「「「…………」」」」」

 

 ──■■■■が居る。

 

 露骨に嫌なふいんき(何故か変換出来ない)に包まれた首長室を静寂が支配した。
「この零点頭脳が!」
「博士、マジ空気嫁ロボ」
「びばびあすっ!?」
「……失礼した、こやつはドクターウェスト。言動や行動このようにイカレているが、頭脳だけは本物の男だ」
「エルザロボ、博士が粗相をして申し訳ロボ。よろしくロボ~」
 ■■■■を張り倒し、一礼するティトゥスとエルザに何か言いたげだが何もいえない一同。というか正直どう反応すればいいのかすら分からない。
「……彼等の事はとりあえず今は置いておくとしてだ」
 最初に我に返ったのは、多少なり耐性の付いていたミナだった。
「実はもう一人ゲストに立ち会って頂く事になっている。まあこちらは多忙な身ゆえ、現地から通信での参加と言うことになるが……」
 ミナが端末を操作し、首長室の壁にある大型モニターに光が灯る。ノイズばかりが映る画面に、徐々に活動を再開し始めた一同から疑惑の視線が集中する。
「……何も映ってないわね。壊れてるんじゃないの?」
「こ、こらルナマリア! あんまり失礼な……」
「まあもうちょっと待ってよお嬢さん。なんせ距離が距離なもんでね。副長さんも構いませんよ、
 そう慌てなくても」
 一同の気持ちを正直に表したルナマリアに焦るアーサーだがユウナは気にもせず笑う。そしてすぐユウナの言葉通り、ノイズの中にゆっくりと人の像が形作られ始める。
「質問ばかりで恐縮ですが、今度は一体どんな人物なのです?」
「……我々より貴方達の方が良くご存知の方だと思う。あまり驚かれないように」
 カガリがそう言うのと画面に人の形が出来上がるの、どちらが早かったか。モニターに映った人物の姿を捉えたザフトの面々は己の目を疑い、直後耳まで疑う事になった。
「ご無沙汰しています、デュランダル議長。こちらの映像と声はそちらに届いていますか?」
『……お久しぶりです、アスハ代表。やはり映像の悪さやタイムラグは否めませんが、大丈夫。 なんとか見えても聞こえてもいますよ』
「ギ……議長!?」
「ギル……まさか!?」
「「「デュ、デュランダル議長ぉ!?」」」
 まだノイズの多い画面に映った人物はプラント首都アプリリウスにいるはずの最高評議会議長、ギルバート・デュランダル。その彼が画面の向こうで温和な笑みを浮かべていた。
 自国の最高責任者突然の登場に、目を白黒させるザフト一同。
『やあ、グラディス艦長。それにミネルバの諸君も元気だったかな?』
「は、はい……しかし議長、どうやってオーブまで通信を……」
 現状、ニュートロンジャマーの影響もあって地球とプラント間でのリアルタイム相互通信はほぼ不可能に近い。レーザー技術が進歩しているとはいえ、現行では地球なら地球の中、プラントならプラント国家間くらいでしか繋がらない。よほど頑張っても、どちらからでも地球周辺の軌道衛星くらいまで限界だろう。
 プラントのニュースや会見が地上で見れる、またはその逆も可能ではあるが、それは各地の通信施設を介して一般に垂れ流している通信であり、秘匿性はゼロに等しい。更に一方的な通信となる為リアルタイムで会話をするには向かないのだ。
 では何故今、宇宙の彼方にいる筈の議長と通信が繋がっているのか?
「原理自体は単純だ。オーブとアプリリウスで直接通信するのではなく、仲立ちに宇宙ステーション……我がアメノミハシラを介しているのだ」
 一同の疑問に答えたのは、またもミナだ。アメノミハシラの主たる彼女こそコネや人脈その他諸々を使って事前にプラントと極秘裏にコンタクトし、今回の会見の場を作った立役者だった。
「オーブとプラントからの通信を一度アメノミハシラに通し、その後再びお互いの施設へ送信している。 だがその分処理をするミハシラの通信施設に対する負荷は大きい。費用もバカにならん。手早く済む話ではないが、極力無駄は無いようにお願いしたい」
『それは勿論です。そちらもでしょうが私とて多忙の身ですのでね……では、アスハ代表』
 画面の向こうのデュランダルの目が鋭く光る。それに呼応するように、カガリもその貌を更に引き締める。
『ロンド・ミナ・サハク殿の話では、ミネルバの今後の動向及び、件のフリーダムとアークエンジェルについて、そして今後のプラントとオーブについてのお話があると聞いております。
 ……改めてお伺いしたい。具体的にどのようなお話があるのか、そしてそのような話に何故、我が軍の一兵士に過ぎぬシン・アスカ君やミスターティトゥスなどの同席を求められたのか、その真意を』
 空気が、重い。モニター越しの会話にもかかわらず、デュランダルとカガリを中心にプレッシャーが部屋中へと広がっていく。
「……その事を説明する前に、デュランダル議長を始め今この部屋に居る方々全員に問わせて頂きたい」
 デュランダルから視線を外し、カガリがぐるりと部屋中の全員それぞれに視線を投げ掛けた。
(──ッ!?)
 カガリの目がシンの目と合った瞬間、シンは反射的に彼女を睨みつけようとした。だがその瞳に、今まで宿ってはいなかった何かを、シンは見た。今までは無かった筈の、強い、自分を圧倒するような強い意思の光りとでもいうような、何か。それが宿った瞳に気圧されるように、咄嗟に目を逸らしてしまうシン。
 当のカガリは一同を見渡した後、再びデュランダルへと向き直る。その面持ちは緊張に満ちており、軽く汗が流れているのが見て取れる。一度大きく深呼吸してから、カガリはその口を開く。そこから紡がれる言葉に、一同は一斉に聴覚を集中させ──

 

「……貴方達は、この世界に『魔術』が存在すると言われて、それを信じられるか?」

 

「「…………は?」」
 そう言葉に出来たのは、ルナとアーサーだけだった。デュランダルとタリア、そしてシンはポカンとカガリを見つめている。アスランやミナ、トダカはイタタという表情で頭を抱え、ユウナに至ってはプププと笑いを必死で堪えている。
 ティトゥスとエルザは表情を変えず、ウェストは横で死んでいた。
「……あの、そういう反応をされるとどうすればいいか困るんだが……恥ずかしい」
 大人数の中心で、代表首長は出だしの発言を失敗したのに一人真っ赤になっていた。

 
 
 

 ──後に関わった者達全員の未来に大きく影響する事となったこの会合は、首長のオオボケ発言という少しマヌケな幕開けで始まった。

 

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