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EVAcrossOO_寝腐◆PRhLx3NK8g氏_EX_4話

Last-modified: 2014-03-30 (日) 00:42:26
 

    幕間窮題 「自由と反逆の弧」 Edit

 

―ユニオン軍基地にて

 

「また、派手にやってくれたね。左腕部大破、あっちこっちもベコベコに凹ませて。
 ま、持って帰ってきてくれた事には感謝するよ、本当に」
「うむ。頑丈さはあると聞いていたが大したものだな、シロウ・時田。やはり軍用はこうではなくてはいかん」
「……お国柄。生まれの気質なのかねぇ。全く」
「ん? 私の知っている日本人は君みたいに遠回しにモノは言わんぞ?」

 

 基地へと戻ったJ/Aを見てJ/A開発者時田シロウは報告書に書かれていた通りの現実に口元を歪ませる。
 コックピットから降りてくるパイロットに厭味ったらしい視線を送りながらも拍手と共に言葉をぶつけてきた。
 パイロットはそれをいつものことを受け止めているのか全開の笑顔でそれに応える。
 肩をバンバンと叩けば、痛そうに少し目をつむる時田。
 漏らされた言葉にふとパイロットの男は先程まで一緒だった少女を思い返し、否定する。
 そこまで突っ込むのかと言わんばかりにジト目を注ぐ時田はすぐに忌々しく思うことすら馬鹿らしくなった。
 此のパイロットの男が全く悪意なく今までのセリフを吐いているのだと解っているからだ。

 

「はぁ、しかし聞いたよ。まさか……ね」
「ああ、全くどこの誰がたぶらかしたんだ」
「選ばれた子供達とはいえ、所詮子供という訳か」

 

 会話を続けながらも時田は整備員の報告を纏めて、メモにとっている。
 改修費用、必要なパーツetc。官製の仕事は常に書類と予算から成り立っている。
 湯水に使えるのはあくまではんこが押された部分だけだ。しかも、J/Aは元々実験用で正式な兵器ではない。
 どう言い訳して予備のパーツと必要なパーツを調達するか。時田の頭の中の電卓と作文用紙がガリガリと働いていた。
 そんな事を尻目にパイロットの男は憂慮する。今回の事態は想定しされていなかった訳ではないが
 それでも今のこの世界において悪手であるのは間違いない。まだ、EVAの配備が進んでいない中
 実験用の機体まで持ち出す事態。何より気がかりが知り合いに居た。
 そんな事を微塵も感じさせないパイロットの男の健気にも感じられる快活さを更に不安に掻き立てられた。
 ハンガーへに現れた一人の男の顔色は当に幽鬼の様であり、目はひどく濁っていた。

 

「……どうしたビリー? この作戦の間中、ずっと顔色が悪いままだったぞ?」
「ん? ああ、いや。ちょっとね。預かっていた子がちょっと出て行く事になって」
「猫だったか? 全く、大の男が猫で寂しさを紛らわすなど」
「それはお互い様だよ。全く。ああ、そんな事よりMr時田。朗報だ」
「Mrカタギリ、どうしました?」
「コレを見て欲しい」

 

 親友の心配をよそに乾いてひきつった微笑にパイロットの男は不安で顔で怪訝になる。
 事情を話してもらったが無論、それが本当の理由でない事はわかる。
 話せない何かがあったのだろう。それを踏み込むべきだと思った矢先
 ユニオンの技術者ビリー・カタギリは差し出した書類を片手に強引に話を変えていった。
 時田も心配気な視線を送ってはいたが、パイロットの男ほど親しい関係でも無い自分では
 差し出がましいと思って会話に参加はしていなかった。
 だがが声をかけられてようやく言葉を返しながらも手渡されたじっと渡された書類に視線を流す。

 
 

 しばしの静寂。しかし、すぐにその静寂は破られる。

 

「……ふむ、ほぅ。おおっ!? こ、これは!!!」

 

 数秒後、時田の普段あまり聞かされる事の無い大声がJ/Aのハンガーの中でこだました。

 
 
 

刹那・F・セイエイを新世紀ヱヴァンゲリオンの主人公にしてみる
  幕間窮題 「自由と反逆の弧」

 

 第四使徒が第三新東京市を襲撃をして数ヶ月の事。事態は使徒襲来とは別の事件で起きていた。
 各国の紛争地域に対してゲリラ、住人、駐留軍人全てを壊滅させる事件が連続で行なわれていた。
 犯行方法は何処で手に入れたか解らないがN2兵器の火力で地域ごと消滅させると言う強引な手法。
 おかげで地図から領土争いをしていた多くの街や島が次々消えていった。
 展開していた基地や人員物資も丸ごと吹き飛ばしてしまい草木も残らない消滅してしまう。
 クレーターの出来た荒野の権利に再展開する余力はどの勢力もなく、人が居つかぬ不毛の地域を次々と増やしていく。
 結果的にその地域は平和になったと言う皮肉な事態を迎えていた。

 

「なんでよりによってあんたなのよ」
「ん? 何かね」
「うざーい。あー、やだやだ。こんな南米のよくわかんない所でしかもこんな似非日本通と一緒だなんて」
「ははは、相変らず手厳しいなアスカは。だが、そろそろレディーとしての慎みを持たないといかんな。
 立派な大和撫子とやらにはなれんぞ?」
「アタシはアタシのままで良いわよ」
「ふむ。その心意気もまたよしとする!」

 
 

 世界がひっくり返る様な事態が起きているがマスコミと現地市民と一部過激な思想家以外は冷静だった。
 犯人も犯行に使われた道具もわかっているからだ。故に秘密裏にそれを捕獲せねばならなかった。
 そんな大事件の為とはいえ、不満を隠せない少女式波・アスカ・ラングレーは愚痴を零していた。
 狭いプラグの中で待機すること数時間。輸送飛行機の中で通信で行なう相手には不満を零すばかり。
 その主な内容は今回の作戦に辺り、援軍として連れ添う相手のことだ。
 ユニオン軍所属グラハム・エーカー中尉。アメリカでの大学生活の間、警護をしてくれた人物であるのだが
 アスカの中での評価は既に地に落ちていた。要因は主に性格面において。
 モニター越しに忌々しげに視線を向けているがグラハムはそれに気に掛ける事も無く
 此方は先日の使徒襲来の際に使用されいたJ/Aのコックピット内に収まっている。
 完全に収納されているEVA用に作られた輸送機と違い、J/Aはまるで吊るされているかの様に
 ぶらぶらと垂れ下がっており、バランスを取るのが実に大変そうだった。

「なんでAEU空軍のエースのアタシがユニオンと一緒なのよ。ってか、エヴァは無いの? エヴァは」
「仕方あるまい。エヴァはヴァチカン条約で各勢力3機ずつしか保有出来ない。
 そして、ユニオンの分は全て日本のNERV本部に回しているからね」
「ったく、何やってんのよあんたの所は? そんなもん作ってて肝心のエヴァがお留守なんて」
「ま、幾らエヴァを揃えたところで本部がやられてしまっては終わりだからな」
「……はぁ。まー良いわ。AEUの軍も被害があったみたいだし、ちょっと狼藉者を〆てやらないと」
「おお、仲間のA☆DA☆U☆CHIと言う奴だな! 美しい! 私も武者震いがするぞぉっ!」
「……あんたちょっと黙ってなさい」

 

 不満のマシンガンの火線をかいくぐる様に大人のいい繕いでグラハムは話を逸らす。
 それに不満げにしながらも、そんなのは解ってると言わんばかりの語気で言葉を返すアスカ。
 話に出てきたヴァチカン条約。使徒という未知の敵に対し
 EVAと言う巨額の費用を投資してつくられた超兵器は当然の如く
 国家間の軍事バランスにおいても危険視されている。
 故に調停でユニオン、AEU、人革連共に3機を上限とされていた。
 そして、それに伴って開発されたのがJ/A(ジェット・アローン)である。
 EVAの上限とは関係なしに所持する事が可能な巨大な戦略兵器として開発を進めている。
 流石に世界で一番軍事費用に金を掛けているアメリカ合衆国を中心としたユニオンだけの事はあり
 現段階でエヴァ4機を建造していてもまだ足りないらしい様は
 誰の目に見ても明らかであり、それらの行動は勿論、他の勢力と国家から蔑視もされていた。

 

「ま、改修が終わったエヴァ弐号機のお披露目には丁度良いわ。
 日本本部に来た使徒との相手には間に合わなかったし」
「期待させて貰うぞ」
「中尉! 着ました! 」
「宜しい投下準備を進めてくれ。アスカ通信を一時切る。次は空で逢おう」
「はいはい。じゃ、行くわよ! 家出した鳥さんを捕まえないとね!」

 

 雲が晴れると其処には白い鳥が居た。だが、明らかにサイズがおかしい。
 本来この輸送機が見える鳥など豆粒に等しいサイズだと言うのに
 これははっきりとそのシルエットが見られていた。
 おまけに赤い粒子を振りまいており、まるで出血したまま空を飛んでいるかのように見える。
 コレが上記で述べられた数々の爆撃事件の犯人であった。
 この犯人を開発をしていた人革連は世界の被害が26件、人革連での被害が9件目になってから
 初めて口を割り、急遽捕獲部隊が結成するに至った。
 秘密裏に拿捕、亡命させない為に二勢力以上の連隊を組まされている事を
 グラハムや大人達は聞かされていたがアスカには敢えて伝えられていなかった。

 

「これより脱走したエヴァ量産型の捕獲作戦を開始します。弐号機投下開始!」
「覚悟しなさいよ! って気持ち悪!! 何あれ! 誰がデザインしたのよ!」
「人革連のセンスは相変らずファンタスティックでオリエンタルだなぁ!」

 

 ほぼ、オペレーターの言葉と同時にハッチから投下されるエヴァ弐号機。
 両肩にごてごてとしたバーニアの付いた武装空中挺進専用S型装備を搭載し
 上空から舞い降りている。その白い鳥もその機影に気付いたのか振り返り
 手に持っていた大型のライフルで反撃する。その際、ようやくその白い鳥の全容が明らかになった。
 鳥の様な大きな翼に生白いカラーリング。なにより特徴的な鰻の様な頭を持つEVA。
 量産型として試作開発されていたモノであり、アスカが感想を漏らす様に気持ち悪い印象を与えていた。
 うねうねとした生白い筋肉の隆起に赤い唇、その割に滑らかに動く背中についた白い翼などの特徴全てが
 感性に対して嫌悪感を与えている。アスカには不気味であり、吐き気のする存在感がひしひしと感じられいてた。

 

「ちっ、パレットライフルまでくすねてたの!? こんのぉぉおっ!!」
「そのまま、ATフィールド中和! 高度も下げるんだ!」
「簡単に言って!! やってやろうじゃない!」

 
 

 自由落下をしながらもブースターで軌道を変えつつ、空中戦を繰り広げる両機。
 エヴァの手に持てば普通のライフルなのだがそれでもその大きさは薬きょうが車と同程度のサイズ。
 それをぼろぼろと零しながらもATフィールドの中和距離に至ってなかった為、お互いの射撃を弾き合っていく。
 量産型と違い翼を持たない弐号機の機動性では当てる事もままならなかったが
 奇襲による効果なのか動揺だけは与える事は出来た。とっとと逃げればいいモノを
 ムキになったのか量産型は反撃を銃でけん制する。相手は何かの戦闘機かと思ったのか
 その存在確認と共に驚きを隠せていない様子でもあった。
 そして、反撃と驚きが量産型の動きを鈍らせたのが致命的な結果へと導かれる。

 

「よし、私がそのまま落とす! 着いて来い、アスカ!」
「ちょっグラハム!? あんた何してんのよ!」

 

 量産型は更なる驚愕を見る事になる。空からでっかい塊が降ってきたのだ。
 しかも、EVAから見てもそれなり大きい塊。
 J/Aは吊るされていた拘束具を外し、まっすぐに量産型に向かって落ちてくる。
 動きを止めた量産型はそれを回避することも出来ずにATフィールドで受け止める。
 がきぃっと金属の擦れる音もさることながら、”障壁”はあくまで”障壁”であり
 地面に展開出来ていないATフィールドはJ/Aの質量をそのまま発生させている量産型全体に圧し掛からせる。
 速度と重量と飛翔能力の算数が導き出した結果、量産型はそのまま南米のジャングルへとJ/Aと共に落下する。
 途中なんとか羽をばたつかせたおかげで地面への衝突する際の衝撃は和らいだモノの
 自殺行為に等しい突撃にアスカは激昂する。

 

「ばっかじゃないの! あんた、あのまま激突してたら死んでたわよ!」
「HAHAHA、何とかなったから問題ない! 無理そうならパラシュートをギリギリで開くつもりだったからな!」

 

 木々をなぎ払い、二つの巨人が落ちたそこへと赤い弐号機がブースターをふかしながら軟着陸をする。
 その間、圧し掛かっていたJ/Aを振り払う様にATフィールドで弾き飛ばし距離を取る。
 何とか再び飛翔する機会をうかがう様にしつつもパレットライフルでのけん制射撃。
 しかし、それは弐号機のATフィールドで弾かれる。量産型はATフィールドの中和を試みた瞬間
 J/Aの拳が丁度中和したスキマを縫ってぶち当てられる。
 純粋な馬力はJ/Aの方が上だったので軽く吹っ飛ぶ量産型。白い肌がぬかるんだ泥で汚れていく。
 それでもJ/Aの突進は止まらない。量産型は圧し掛かる様に覆いかぶさるそれを両手でそれを拒絶する。
 しかし、その押し出された両手をJ/Aは掴み、握り潰す。肉と骨が砕け引き裂ける音がジャングルへ響いた。
 絶叫を響かせる為、量産型の口は拘束具を外れてしまう。
 弐号機はそれを見張っているかの様に、周囲を警戒していた。
 アスカ的にイジメの見張り番の様で情け無い構図なのがかなり腑に落ちない。
 無論その行動にも意味があり、当人達には残念ながらも意味がもたらされてしまった。

 

「ちっ! おいでなすったわよ!」
「むぅっ! やはり、参番機と弐番機は見張っていたか!」
「くっ……私に覆いかぶさるなんて良い度胸してるわね!」

 
 

 空中から注がれる砲弾の雨。バズーカの弾がJ/Aの背中を襲う。
 空中の砲撃と共にもう一機量産型が急転直下の突撃をしてくる。
 手には両手で今正に振り下ろそうとしているグレイブがある。
 弐号機が肩に搭載されていたニードルガンで砲弾の雨を誘爆させていくが、何発か周囲へと着弾する。
 爆発の衝撃でJ/Aの手の拘束が緩むと腹部へと蹴り上げられ距離を取る。
 弐号機は肩のソケットからナイフを取り出して、そのグレイブを受け止める。
 グレイブとナイフの刃がかち合って火花を散らしていくが
 質量及び空中からの助走によりグレイブが勝ち、鎖骨に軽く刃が食い込む。
 突き入れられた刃にアスカは僅かに呻き声を上げながらもその痛みを払拭するかの様に軽口を叩く。

 

「つぁあっ……3対2ねぇ」
「ま、ハンデには丁度良いと言ったところか! 早く落とさんと帰りの便がやられてしまうぞ!」
「ふん。あんたに担がれて帰るなんて死んでもゴメンね。
 帰りは窓際の席で優雅に遊覧飛行するんだから!」
「その心意気やよし! では、行くぞ!」

 

 ジャコっと音を立てて折れた刃を押し出して、新しいナイフの刃をグレイブを握る量産型の腕に突き刺す。
 思わず量産型が手を離したと同時に背骨を折りに掛かるかの様に突撃するJ/Aの体当たりに頭を大きく上げる。
 両指を折られた量産型はそれを追撃するかの様にJ/Aへと回し蹴りを浴びせかけようとし
 大きな衝撃音と共にJ/Aも膝を崩しつつもガードに向けた左腕がへしゃげ、バチバチと音を立ててショートさせている。
 弐号機はJ/Aの体当たりを食らって倒れ伏していた量産型の頭を踏みつける。
 突き刺されていたグレイブを手に取り、J/Aの左腕毎蹴り付け、量産型の足にグレイブを突き刺していく。
 再び響く量産型の絶叫。正に泥仕合の様相を呈した乱戦であった。
 ぐちゃぐちゃと周囲の土や木々は掘り返され、周囲の動物達はおびえて逃げ惑う中
 巨人の死闘は続いていくかと思われた。しかし、終了の合図は大きな爆音と衝撃波によりもたらされる。
 遠くで爆発が起きたのだ。それも規模かしらN2爆雷を使用したモノだろう。
 一瞬、全ての計器が狂い、振動が此方の方まで響いていた。

 

「ちっ、一匹は任務遂行。二匹は足止めだった訳ぇ?」
「む、空中の奴が降りてこないと思ったが……役割分担もしていたと言う事か」
「せめて、手負いの一匹だけでも!」
「止めておけ。この装備と損傷で、空中に居る残り一体と合流した相手と戦うの厳しい」
「……っでも!」

 

 まるでその爆発がのろしだったかの様に、じりじりと量産型二機は距離を取る。
 逃がす毎とする弐号機にJ/Aは右手でそれを制止させる。
 二量産型は両手と片足をやられた量産型を抱え込む様にして飛翔する。
 程なく空中でもう一機が合流するのがモニターから見えた。
 どんっと拳を握りしめてトリガーへ八つ当たりをする音がアスカの通信から漏れる。
 グラハムはそれでもどかっとコックピット内の椅子にもたれ掛かったまま、頑として譲ろうとしない。
 そんな空気の消火活動にはせ参じたかの様に、通信が飛び込んでくる。
 若いとも老いているとも言えない、年齢の声。
 それと同時にサイレンの音や怒号、爆発音などの修羅場の音が混ざっていた。

 

「アスカ、聞こえるか、アスカ! 現状はどうなっている!?」
「……ハッ、マネキン大佐。こちら、式波、グラハム共に無事です。……弐号機は損傷軽微」
「此方も……小破と中破の間と言ったところだ。回収を頼む」
「そうか。こちらはおそらく壱番機と思われる機体からの爆撃で壊滅状態と言った所だ。
 全く、コーラサワーを一時出向させた途端コレだ」
「ちゃんと見張っとかないから。うかうかしてると”あの娘”に取られるわよ、大佐」
「……徒歩でここまで帰るか? 式波」
「あー、ごめんなさい。それは勘弁して大佐」

 

 怒鳴り声に近い声がアスカの耳をつんざく。一瞬、目を閉じて耳を抑えつつも
 外のノイズとのバランスをとりながらもボリュームを絞る。
 相手は今回の作戦総指揮を取っているAUE軍カティ・マネキン大佐の声はそれで大きかった。
 本来は二機による攻撃による損耗させ、3機を別働隊が捕獲という手筈。
 しかし、相手の判断は更に上を行っていた。劣勢ながらも二機による足止め。
 作戦遂行を優先し、襲撃予測地帯の一つであった麻薬製造を行っている地区の消滅。
 人の畑も塵ひとつ残らず、大きなクレーターだけがぽっかりと浮かび
 周囲を警戒していた空軍も被害があった。空戦における戦果は散々だ。
 何せ、空軍は飛ぶのがやっと、バレルロールをしなければ旋回も出来ないと言うのに
 あちらは翼を羽ばたかせ縦横無尽に空を駆ける。ミサイルも効果なく、体当たりで
 紙飛行機の様に大量の税金を注がれたジェットはへし折り
 時間と金を掛けたパイロットを圧殺する。
 一騎当千。わざわざ他のスペックを削ってまで翼をつけた価値はそこにある。 
 空中で戦う分には量産型は圧倒的な火力と防御力でその場を支配できるのだ。

 

『テステス。大人達に告ぐ。もう籠には戻らない。この自由な翼は奪わせない。
 私達チルドレンは人形じゃない。そこのチルドレンもこちら側に来る事を願う』 

 

 衝撃。声の大きさによるものではない。画面に映ったのはEVAに使われる通信回線。
 試作型のプラグスーツのヘルメットと覆面で顔は隠れているがどうみても少年か少女の体系。
 肩から上なので性別の判別は出来ないが、どうみてもEVA内からの通信に見えた。
 そして、発信源は先ほど退散したEVA量産型からと見れる。
 遠隔通信による自演という訳では無さそうだ。何せ画面の端からは移動中の景色が映っている。
 声は変えられていた。ボイスチェンジャーを使った無機質で耳障りな音声が脳にこびりつく。
 それが一斉に通信に割り込んできた。自らの存在を誇示する様に一方的な宣言。
 そして、明らかに最後の台詞はアスカに向けられた言葉だった。

 
 

「なっ……まさか」
「有人だって言うの? ……嘘、人革連の話とちが……量産型は無人じゃなかったの!?」
「……そもそも、人革連の話を信じる方が馬鹿という事か」
「ああ、そういう事だ。今回の行動ではっきり解った。
 人革連の言うダミープラグと模擬作戦プログラムとやらの誤作動ではない。
 誰かがダミープラグのデータ、改ざんに関与して操っている訳でもない」

 

 話が違った。人革連からはEVAの自動制御システム、別名ダミープラグの暴走という話だった。
 無論、それでは明らかに戦略性が伴わない為、遠隔操作やプログラムに何か仕込んだ
 内通者がいるという見方をユニオンもAEUしていた。何せ、ダミープラグは所詮AIみたいなモノで
 特定パターンを想定した命令し、指揮官が近くにいるだけで幾らでも対処が出来る。
 そう謳って予算をここ数年で伸ばしていた肝いりの技術だ。
 諦めの声がグラハムやマネキンから漏れてくる。殆どない人革連の信用を更に下げられた。
 それに憂いる余裕がある事を双方で確認しているかの様な静寂だった。
 沈黙を経て二人はほぼ同じ結論に達していた。

 

「誰かが操縦している」
「それ、すなわち」
「”チルドレンの誰かが裏切った”だ。ただでさえ、数が少ないと言うのに何を考えている?」
「私達に人殺しをしろっていうの……べ、別にそん位構わない……けど」

 

 当たり前だ、有人のチルドレンならすぐバレる。特定はすぐに出来る筈だ。
 だから、それはない。チルドレンは数が限られている。そんな常識を根底から崩す
 量産型からの宣戦布告。相手が化け物とは違う。少年少女で殺し合いをしなければならない事実。
 アスカからの動揺が声に伝わってくる。気丈に上ずった声のまま出された余裕の隠蔽が何よりの証拠だった。

 
 
幕間 終了。本編へと繋がる
 

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