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G-Seed_?氏_第二十一話

Last-modified: 2007-11-10 (土) 19:47:32

 
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 続く地獄の訓練の日々。
 その間に、アスラン、イザーク、ハイネ、デイッカは議長に呼ばれ、
プラントがガンダムファイトに優勝したあかつきに地球に対して要求
することは、農業プラントを持つことの許諾であると聞かされる。
 地球とプラントの争いの全ての始まりとなったユニウス7の再建。
 農業プラントを持つことによりプラントは完全無欠な独立国となる。
4人の意気は否がおうにも高まった。
 同時にデュランダルは、4人に、その要求とは別に地球に対し一つの
計画を提案するつもりだと告げる。
 どのようなものかという問いにデュランダルは、今はまだ話す時期で
はないと言い、画期的なものだと答えるだけにとどまった。 
 一人用があるというハイネと分かれ、アスラン達は高揚したままの気
分でそのまま街に繰り出した。
 したたかに酔い、宿舎へ戻ろうとするディアッカとアスランを押しと
どめ、イザークは二人を誘ってある場所へと向かうのであった。

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「おい、ニコル! ミゲル! ラスティ! 聞いているか!? 俺たち
は、必ず農業プラントをプラントにもたらしてみせるからな! 大船に
乗った気でいろ!!」
「分かったから、少し声のボリューム下げろって」
 たしなめるその内容とは裏腹にディアッカの顔はこの上もなく穏や
かだった。
「やかましいわ! そらっ! 前祝いだ。 お前たちも飲め!!」
 途中で入った飲み屋から無理を言ってビンごと譲ってもらったワイ
ンを、イザークは、どこからか取り出したグラスに注ぐ。そして、一つ
一つ丁寧に墓の前に置いていった。
そして、軽く3つのグラスに向かって瓶をあげて見せた後、
「乾杯だ!!」
直接ビンにその形のよい唇をあて一気に飲み干した。
 そんな相棒をディアッカは優しい目で見つめていた。
 ぶっきらぼうで無愛想。そしてその怜悧な容貌とは正反対に、仲間に
対する彼の思いは火の如く熱い。それが、イザーク・ジュール。
 ディアッカは、戦士たちの墓標に向かいそっと敬礼を捧げた。
 その二人とは少しはなれた場所で、アスランは二つの墓石と対峙して
いた。
(父上、母上、ご無沙汰しておりました・・・)
 アスランは心の中で今は無き両親に語りかけた
(母上、議長は絶対に農業プラントの再建を認めさせてみせる、
とおっしゃってくださいましたよ)
 自分の働きがプラントの明日を作ると誇らしげに語っていた母の面
影がアスランの脳裏に蘇る。
 アスランは、そっと隣の墓石に手を置いた。
(父上、俺はまた、議長特務隊に籍を置き、戦っています)
 ナチュラルを皆殺しにしようとした父の行動が正しかったとは、思わ
ない。だから前大戦で父とは反目し、憎しみ合った。妻を愛するが故に
父は、復讐という念に取り付かれていた父。だが、父は、プラントいう
を間違いなく愛していた。プラントのために命を懸けていた。
「おい、アスラン! 少しは心が定まったか!?」
 いきなり繰り出された言葉の穂先は、アスランを見事に串刺しにした。
黙り込んでしまったアスランを見て、イザークは大仰に肩をすくめた。
「ふんっ! 貴様のことだ。本当に言われるままに、目の前の敵を倒して
いいのか!? とか考えているんだろうが!」
 
 ――図星であった

『アスランが信じて戦うものは何ですか? 頂いた勲章ですか? 
お父様の命令ですか?』
プラントに戻って以来、何度も何度も聞こえてくる言葉。
ジョルジュの言っていた、『主のための一振りの剣になる』ということ。
それは言われるままに敵と定められた者を倒すということだ。
 そして今、自分は愛する少女と親友と対立する立場にまた身を置いて
いる。

 ――俺はまた、同じ過ちを繰り返そうとしているのか?
 
 父の言葉を正しいと信じ、戦場を駆け、数多の命を奪い、親友とまで
殺しあった前大戦での過ちを繰り返そうとしているのではないかと
ずっと悩んできた。
 ただ俯くアスランにイザークは
「では聞く! 今日の議長の要求は不当なものだと思うか!? プラントは
農業プラントなど持たない方がいいと思うか!」
 力強い声で訊ねた。
「・・・思わない。農業プラントを持たない限り、プラントは地球に対して
常に劣勢の状態で外交交渉を行わなければならない。プラントが独立国として完全に独り立ちするために、農業プラントは絶対に必要なものだ。」
「そうだろうが! 俺達は正当な要求のために戦おうとしているんだ。
それの何が悪い。今の俺達は、決して相手が憎いから戦おうとしてるん
じゃない」
 アスランは目を見開いた。
 イザークの言ったことはまさに自分が考えていたことだったからだ。
憎しみのままに再現なく殺しあっていてはいけないのだ。銃で解決できる
ことなど本当は何一つとしてないのだから。
「しかもこの上なく平和なやり方でだ! まあ中には全責任を少数の
選手におっかぶせているだけだとぬかす奴もいるが、俺は別にかまわん。
俺より年下の人間が死ぬことや、かけがえの無い人間を失って悲しむ人
間は少ないほうが良いに決まっている ・・・あの花を見ろ!」
 イザークの指し示す先には、ニコル・アマルフィの墓に手向けられた
花束が合った。墓参りのシーズンからは大きく外れているにもかかわら
ず、その花は瑞々しさを保っている。
「俺は、ニコルの墓の花が萎れているのを見たことが無い」
 沈痛な面持ちでイザークが言い、アスランは拳を握り締めた。

「生き残った人間がやるべきこととは、死んでいったあいつらのた
めに俺達がしてやれることは、何だ!? あいつらの守ろうとした
モノを守ることだろうが!!」

 ――戦わなきゃいけないなって思ったんです

 柔らかな微笑を絶やさなかった少年の言葉がふいにアスランの胸に
蘇ってくる。
 彼が守ろうとしたものに自分は銃を向けたのだ。どんな理由があっても
それは事実だ。
 償いをまだ、自分はまだ果たしていない。
「イジイジぐだぐだと独りで暗い顔をしよって! 迷っているなら迷っているで、
何故俺達に相談せんのだ!? 俺達はアカデミーの時から共に戦ってきた戦友
じゃないのか!? 水臭いんだよ、お前は!!」
「・・・イザーク、お前ちょっと酔ってるんじゃないの?」
 直情径行だがその放出口は少しばかり曲がっているイザークらしか
らぬ言葉の数々に、ディアッカが茶々を入れる。
「おお、酔っているわ! こうなってしまえば最早俺に、怖いものなど
ない!」
「いつもだって、あるようにゃ、見えないけどなあ」
「何か言ったか!?」
「べっつに~」
 二人のやりとりに思わずアスランは笑みをもらし、同時に胸の中で
激情の炎が火花を散らし始めるのを感じた。

 ――何を迷う必要がある。
 
 信じられる戦う理由がある。
 一度裏切った自分を自分を信じ、気遣い、叱咤してくれる友が側にいる。
 
 ――何故、自分の道を疑う必要がある!?
 
 いつしか胸の火花は、燃え盛る炎となっていた。激情の炎に
駆り立てられるように、アスランは、一度手を合わせた後、
ニコルの墓に手向けられた酒盃に手を伸ばす。そして、酒盃を握ると
イザークとディアッカを真っ直ぐな眼差しで見つめた。
 アスランの翡翠の瞳に込められた思いを感じ取り、イザークと
ディアッカはは微笑をもらすと、それぞれ、ミゲル、そしてラスティの
墓に手向けられた酒盃をその手に掴んだ。
 闇の中で3人の若者は、しばし見つめ合った後、
「プラントのために!!」
 イザークは、力強く覇気ある声で
「プラントのために」
 ディアッカは、温和な声に重厚な意志を滲ませながら
「プラントのために・・・」
 アスランは低く決意を込めて誓いの言葉を口にし、一気に中の液体を
飲み干した。

 ――俺は、もう迷わない。

 アスランはもう一度強く、心の中で誓った。