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LOWE IF_592_第02話

Last-modified: 2011-02-23 (水) 16:40:34

初めてMSを動かしたのは何時だったか。
そうだ、あの後、反ブルーコスモス団体の少女と怪しい男に助けられ、南アメリカ地区に行ったときだ。
彼女らは村を守るためにザフトと協力していた。怪しい男はコーディネイターで少女はハーフだった。だから、ブルーコスモスから迫害を受けた。
連合軍の中には多くのブルーコスモスに所属する人間がいたから、彼女らにとってザフトとの連携は悪い話ではなかった。だから、プラントにいた。
村にはナチュラルもいた。コーディネイターとナチュラルが半々の割合で暮らしていた。いい村だった。理想郷だった。
しかし、そんな理想郷を潰そうとする者達がいた。連合軍の兵士達、それも醜悪な連中だけでは終わらなかった。
私が『ナタリー・フェアレディ』になって、この村へ来た時、村の一部が炎で包まれていた。
そこで私が見た光景は、ジンとジンが戦っていたのだ。ジンだけではない。ディンという名のMSもいた。
それに乗っていたのは、全員ザフトの脱走兵たちだった。一方、村を守っていたのもまた、脱走兵だった。
私は、呆然とした。ナチュラルもコーディネイターも関係ない。これは、人という根底の問題だ。弱者を守るための軍隊が、弱者を虐げる。
脱走したとはいえ、いや脱走したからか。しかし、私は許せなかった。
村を守っていたジンが倒れる。私は、気がついたら走っていて、そのジンに駆け寄っていた。その時、ディンが襲い掛かろうとしていて、私はコクピットの中に引き釣りこまれた。
中に入って判ったが、パイロットは怪我をしていた。もはや、MSを動かせるような状況じゃなかった。最後の力を振りぼってディンを破壊したが、それまでだった。
私は、操縦桿を握った。MSの動かし方などわからなかったし、到底勝てる相手ではないというのはわかっていたけど、それでも。
パイロットが指示する。私は、無我夢中でジンを動かした。

守るべきものを守るために

第二話 Fire Cracker

ピピピピ…

と、そこで、目覚ましの音でラクスは現実に戻される。懐かしい夢。二年前の、あの時。全ては始まったか。
キラとの再会、いやケイ・クーロンとの出会いから二年。講和条約による終戦をもって、今のところは平和な時を過ごしていた。
軍内部は任務を戦略から防衛、または戦後の後処理という風に変えただけで、忙しさは変わりない。
そんな最中、旧ヴェステンフルス隊の一部は異動となり、ラクスもまた、ここアーモリーワンに仕事場を変えていた。因みにキラもここに来ている。
一人暮らし、というには少しリッチなアパートマンションの一室を借り、生活する事一年半。
暫くはここで演習や新型MSのテストパイロットをやっていたが、今回、ミネルバという名の新型艦のMS部隊に所属されるらしい。
ミネルバクルーの殆どは前大戦を経験していない、いわば士官学校の卒業生らしい。そこに、経験のあるものが少数配属されるらしい。
らしい、とばかり記しているが、今日がその進水式なのは間違いはない。

「ん…もう朝ですか?…あ、ら…まあ」

そう、間違いはないのだ。

「ち、遅刻ですわぁぁぁぁ!!」

初日から忙しい人である。
ラクスは急いでザフトの制服に着替え、必要な荷物をまとめたボストンバックを両手に急いで外に出る。ハロもそこに入っていた。髪は寝癖で酷いことになっていたが構いやしない。
ようは間に合えばどうにでもなる。しかし、腹が減っては戦は出来ぬと言うので、ラクスはコンビニでサンドイッチを購入した後、自慢のスクーターに跨り、ヘルメットを被ってそのまま猛スピードでザフトの軍施設にまで向かっていった。

「もう!目覚ましさんのバカバカ!ていうか私のおばかー!ああ、もう絶対ケイさん怒ってますわ!!ていうか、早くしないと最悪…」

『おーまーえー!推薦してやったオレノタチバワカッテテコンナコトシタノカー!海老反りじゃー!』

「…ぜぇぇぇったいに嫌ぁぁ!」
「って…今頃言ってるんだろうな…」

一方のケイ・クーロンことキラ・ヤマトはアーモリーワンの軍基地に一足先に来ていた。メカニックマンとして、今回の進水式に使う式典用ジンの整備や
新型のザク・ウォーリアの整備点検など、彼、いや彼ら整備班の仕事は山済みだった。
今は本当の小休憩で、ケイはコーヒー片手にのんびりとハンガーの前で寝そべっていた。
本当ならば今頃ラクスがここに来ていて、彼女に与えられるはずのゲイツRの調整やら他のMSの搬入の手伝いをしていたかったのだが、案の定というか、ケイの予想通り彼女は寝坊した。

「全く…、今日で何回目だと思っているんだ。ほんと、やめてよね。遅刻して作業遅れて怒られるのは僕じゃない?大体おやっさんの恐ろしさは尋常じゃ…」
「誰が恐ろしいって?」

愚痴っていたケイだったが、視界外からの予想外な声に、目を見開いて冷や汗をかく。まるでさびたロボットか人形のようにケイが体を起こしてみると、そこには噂されていた人物、おやっさんことマッド・エイブスがそこにいた。

「あ、いや、おやっさん、その」
「川に投げ込まれるだけじゃ、お前のその曲がった根性は直らんか…じゃあ、宇宙に投げ込むか…」
「勘弁してくださいよ、おやっさん!本当にすいませんでした!」
「だったら最初からそういう口を利くな、馬鹿者!」

ケイの頭にマッドの拳骨が飛ぶ。威勢のいい音ともにケイの脳天に激しい痛みが襲った。

「ぐぉぉぉ…」
「やれやれだな…全く」

マッドはあまりの痛みにのた打ち回るケイの隣にどかっと座り、胸ポケットからタバコを取り出して咥えて噴かす。

「…平和だな」
「ぐぅぅ…え?…ああ、そうですね」

マッドの言葉にケイは痛がるのをやめ、体を起こして答えた。確かに今は平和だ。
ケイ自身もミネルバの整備兵として配属される事になるが、暫くは暇な任務が続くのだろう。
いや、整備兵自体は忙しくなるか。特に、新米ぞろいのミネルバであれば。

「新米達、正直どうなんです?」
「ん?ああ、癖のある連中だが腕は確かだ。後は実践経験を積めば大丈夫だろ。少なくとも、お前よりは素直だ」
「ちょ、そりゃあないですよおやっさん。…そりゃ愚痴りましたが」
「ま、自業自得だわな。そういう事はもっと隠れて言え。…そういや、ここのハンガーにゃあ新型が格納されてるんだったか」

マッドはタバコを口からはなして手に持ち、背を向けていた六番ハンガーへと入っていく。キラもその後を背伸びしながら追いかけた。
中ではザフト兵が厳重に警備しており、ここが重要な場所なのだと一見でわかるほどだ。
普段ならばザフト兵でさえ、呼び止められるほどなのだが、マッドとケイはこのMSの開発に少しばかりかかわっていたので、問題なく挨拶をするだけで中へと入ることができた。

「ザフト・セカンドステージ…か。皮肉なもんだな。ナチュラルが作った機体を、俺たちが真似てるんだからな」
「一筋の道もまずは模範から、と言いますし、いいんじゃないでしょうか。いいものはいい、悪いものは悪い」
「…ま、それもそうか。とはいえ、何時見ても悪趣味だ」
「ええ、変態ですよ、これは」

酷い言われようのザフト・セカンドステージと呼ばれた、ハンガーに格納されているMS達は、確かにデザインに特徴があったし、その性能も特殊だった。
肩の後ろに手を回しながら、そのMSを見上げて、ケイはため息をつく。

「大体、停戦中なんですし、こんなごてごてに武装つけちゃって、本当にいいんですかね。ガイアは兎も角、アビスとカオスは明らかにオーバースペックですよ」
「そうは言っても、連合の奴らだってちゃくちゃくとMS開発を進めている。こっちだって力をつけにゃあ対抗できん。
MSっていうのも、要は使う奴次第ってことさ…。力と一緒でな」
「…そういうもんなんですか?」
「ああ。別にこいつらを無理に使う必要はない。いや、寧ろ使わない時がくればそれがいいさ。しかし、それまではこいつを預けられる奴に預けるしかない」
「…」

ケイは思い出す。かつて自分が乗っていた愛機フリーダムのことを。
あれもまた、『強すぎる力』の一つだ。使い方を一歩でも間違えれば、あれは悪魔にでもなるだろう。事実、自分は敵にとって悪魔と同じ存在だったのだろう。
あの機体が二度と使われない事を祈る。それが、今のケイ・クーロンの思いだった。

「このうち一機はハイネ隊長に回されるんだろう。なあに、彼ならしっかり使ってくれるさ」
「そうだといいですね」

マッドの言葉に少しは安心感を覚えたものの、それでも憂いを隠し切れないケイに対し、マッドは苦笑しながら背を伸ばし、そしてタバコを咥えながら言った。

「そんなに心配しなくても大丈夫さ…さあてと…そろそろ作業に戻るか。俺はミネルバに戻るが…まだ嬢ちゃんからは連絡ないのか?」
「まだですよ。多分、今頃人でも轢きそうになってるんじゃないですか?」

「このラッキースケベ!」
「ちょ、おい!ヨウラ」
「どいてくださいまし――!!」
「うわ!!」

当たりだった。
ラクスはショートカットするために小さな道を選び、大通りへと抜けた。その際、歩行路からその道へ歩こうとした青年を轢きそうになって、逆にラクスがすっころんでいた。

「シン、大丈夫か!?」
「あ、ああ…っていうか、あっちの心配したほうが…」
「あの人いっちゃったぞ?」
「え?あ」
「すいませんでしたー!」

シンと呼ばれた、黒髪の青年がラクスのほうを向いたときにはすでに、彼女はスクーターを起こして、謝罪の言葉を残して何処かへ行ってしまった。

「何なんだよ、一体…」
「あっちは軍施設ってことは…しかも緑服着てたってことはザフト兵じゃね?」
「…ふぅん」

あまり興味なさそうな顔を浮かべながら、ラクスが去った方向を見ていた。
そのラクスは、恐らくスピード違反ギリギリのスピードでザフト軍の基地へと向かい、スライディングするようにその入り口へと止まった。

「おお~ナタリーちゃん、また遅刻か?」

警備兵が緊張感がない、にこやかな表情でラクスを迎える。ラクスは身分証明書をとりだしながら警備兵のほうへ歩いていった。

「も~目覚ましがならなかったんですよ…。でも、ギリギリ間に合いましたでしょ?」
「ギリギリもいいところだが…それって進水式にだろ?またケイの野郎が怒ってるんじゃないか?」
「ああ~…そういえば、私に新しいMSが配備されるって聞きましたけど…その調整終わってなかったような…」
「じゃあ怒られるなぁ、ははは」

怒られる原因を思い出し、ラクスは落胆したように肩を落とす。そんなラクスを他人事のように笑いながらからかう警備兵。
そんなラクスに警備兵は扉を開きながら言った。

「ま、更に怒られないよう、早く行ってやりな。ああ、あんまり大通りには出るなよ、ジンが歩き回ってるからな」
「はぁい…」

出発時とは打って変わって、力なくスクーターに跨るラクスは、そのまま門を通って、自分のMSがあるという10番ハンガーへと向かった。
辺りを見回してみると、まるでアンティークのように彩色されたジンがところ狭しと歩き回っている。あれは式典用のはずだ。
自分が昔ラクスだった時代はそんなことはしなかった。それだけ、今回の進水式は気合が入っているのだろう。ただ、ラクス本人として気になるのは。

「あんなの作って、お金大丈夫なんですかね?」

ただでさえ、プラントは食料問題やら色々と問題を抱えているのだから、ジンの彩色にお金をかけないで良いような気もするとラクスは考えたのだが、それは自分の考えるべき事ではないと改めて考え直し、真っ直ぐ目的地へと向かっていく。
10番ハンガーの前では、案の定ケイが腕を組みながら、眉をピクリピクリと動かし、明らかに苛立ちをあらわにしていた。
ラクスは申し訳なさそうにスクーターから降りて頭を下げた。

「ごめんなさい」
「よろしい。じゃあ、早く作業やっちゃおう。一通りはプログラムはやっておいたから、後はラクスの持ってるジンのデータを入れれば言い。
といっても、後細かいテストとか、調整やんなきゃいけないから、とりあえずミネルバまで搬入するのが最初の仕事だよ」
「はい」

素直に謝ったラクスに、ケイはそれ以上咎める事もなく機嫌を直した。毎度毎度の事だし、しかも時間がない。
喧嘩している暇などないから、ケイは気にしなかった。そんなキラの気持ちを察したか、ラクスも急いで、ハンガーに設置されていたゲイツRに乗り込むが、肝心のデータがない。手探りで探すが、やはり見つからなかった。

「ないの?」
「…すいません、家においてきちゃったかもしれませんわ」
「別に気にしてないよ。ないならコピーすれば良いからさ。じゃあ一回降りて」
「はい」

ラクスは自分の両頬を両手で二回叩き、気を取り直す。どうやら自分は気が抜けているようだ。
これ以上ケイに迷惑をかけまいと、駆け足でケイより先に、隣のハンガーに設置されていたかつての愛機ジンのコクピットへと向かっていった。
そんな一生懸命の彼女を見て、ケイは苦笑しながらゆっくりと歩いてその後を追った。
この第11番ハンガーには、演習用の機体が保管されていて、ラクスのジンも演習用に回されていた。
また、試作型の武器などもここに保存されているらしく、ジン用のマシンガンとしては小型なものや、明らかにジンの身長と同等の、しかも「dangerous」などと乱暴に書かれている大型ライフルなどあるものには宝の山、またあるものには危険物の山としてここは映っていた。
そんな場所に保存されている、最近ではめっきり乗る事のなかった愛機に懐かしさを覚えながらも、ラクスはコクピット席に座る。

「懐かしいですわ」

ゆっくり目をつぶりながら、シートの感触を確かめるように深く背を預ける。ケイも昇降用のワイヤーで上に上がり、コクピットの入り口辺りでしゃがみながら言った。

「ラクスはずっとこの機体に乗ってるんだっけ?」
「ええ。これはもらい物なんですの。前にも言いましたよね?南アメリカ戦線のこと…」
「ああ、そこのレジスタンスに参加していたときか…その時に?」
「ええ」
「そうなんだ…。まあジンって言っても、この機体大分改造された機体なんだよなぁ。
ジンの汎用性を生かしつつ、機動力を補うためにスラスターの改良や、MSの動きを軽やかにするための学習コンピュータ。
それに見合うだけのパーツを使用しているし…名ばかりのジン、て言っても差し支えないよなぁ」
「は、はは…そうですか…」

全然分からない、とラクスは心の中で考えた。どうも、ソフトウェアやらハードウェアやらには疎いのだ。
殆どの事はマッド率いる整備兵軍団や、今ではケイに頼りっきりだった。

「あ、とコピー完了っと…」
「あ、終わった?じゃあ早くしないと式典が始まって…」

作業を終えた二人が、まさにジンから降りようとしたその時だった。

ドォォォォォォ・・・・・ン

突然、後方から爆音が聞こえてきた。ケイとラクスは何事かと振り向くが、そこはコクピットの中なので当然何も見えない。

「式典が始まったんでしょうか?」
「そんなわけあるか!早く乗るんだ!」

楽観的なことを言うラクスに対し、ケイは何か危険な"香り"を感じ取り、ラクスをジンのコクピットに引き込む。
そして、ハッチを閉め、全てのシステムを再び起動させる。

「あの音は何か大規模な爆発が起こった音だ!それに、ああ、もう!警報なってるしさ…」

今日は厄日だ。そんな風にケイは考えていた。爆音の方向には覚えがある。あの三機のMSだ。
そして、警報がなったという事は、それに何か異変が起こったという事だろう。その異変を、考えたくはなかった。

「そんな…そんな事って…」
「だからあんなもの作るんじゃない、って言ったんだ、僕は!ラクス、行くよ!ここにいると危険だ、早く…っ!」

ケイは操縦桿を握り、ジンを動かそうとしたが、その瞬間、視界の先に様々な光景が浮かび、急に胸が苦しくなる。僅かに触っただけなのに、だ。
コクピット恐怖症が再発したのだ。いや、再発したのではなく、まだ治っていなかったのだ。
ケイは胸を押さえながら苦しそうに荒く息をした。そんな様子を見たラクスは目を見開いて驚いていたが、すぐに自分が操縦桿を握り、ジンを動かす姿勢を見せる。

「ミネルバに行けばいいんですね?」
「…ふっ、はふっ…そう…はっ…はっ…だ!敵は…ハンガーを潰すだろうから…あ、念のためにそこのマシンガン持って行って」
「了解ですわ!」

ラクスはジンをハンガーから離し、隣に置かれていた、小型のマシンガンを持たせて外に出そうとする。しかしその時、先ほどまでいたハンガーが攻撃され、MSに誘爆したために起こった爆風がラクスたちのいるハンガーを襲う。ラクスは咄嗟にジンをしゃがませ、姿勢を低くとる。
爆風の煙で視界が塞がれていたが、すぐに開いた。その瞬間、目の前の惨状に息を呑む。
もし、ラクスがデータを忘れていたら、自分達は死んでいたかもしれないのだ。ケイはラクスの天然に今日ばかりは感謝した。

「とはいえ、ここも危ない、ラクス早く…」
「あぁー!!!私の、スクータぁぁ…」

ケイがラクスの肩を掴んで催促しようとしたが、それを振り切るが如く、ラクスは背を伸ばして叫んだ。
よくみると、ここにやってくるために使っていたラクスのスクーターが見るも無残に瓦礫の下敷きになっていた。
炎上はしていないが、二度と修復できないだろうという事はメカニックマンの知識でなくても、ケイの目からはっきりしていた。

「いや、ラクス。スクーターじゃなくてさ…」
「く…私があんなところに止めたばかりに…く…スクーターちゃん、ごめんなさい…私のせいで…」
「いやあの、おーいラクス?ラークース?ラクスさん?バカピーンク?ピンク!!」
「…この恨み、晴らさないでおくべきかー!ですわぁぁ!!」
「ちょ、うわあああ!?」

急に旋回したために、ケイは思わず慣性で吹き飛ばされそうになるが、コクピット席にしがみ付き何とか耐えた。
激昂したラクスはそんな事に気がつかず、先ほど掴ませたマシンガンの隣にあった、『dangerous』と乱暴に書かれていた大型実弾ライフルを右腕に持たせ、銃弾をいくつかストックさせる。

「うぉぉい!ちょっと、それはまだ試作型でまだきけ…」
「ならば、今からテストをして差し上げますわ!」
「いや、そういう問題じゃなくって、ああもう!好きしてよ!」

ケイは何とかラクスを宥めて逃げるよう説得しようとしたが、もはやスクーターに対する恨みで頭が一杯なラクスにはもはや無駄だと判断し、諦めたようにケイは叫び散らした。その答えに満足したか、ラクスはジンを走らせた。

「ラクス、出たら左を向くんだ!左から攻撃してる!」
「了解ですわ!…い・ま・し・た・わぁ!!」

ケイの助言通り、出て左を向くと、そこには見覚えのあるMSがいた。確か、セカンドシリーズのアビスというMSのはずだ。
アビスは手当たり次第にビームライフルを放ち、ザフトのハンガーやMSを破壊していった。シグーやディンが交戦しようとしていたが、アビスは何の苦労もなくそれらを落としていく。
しかし、ラクスのジンにはまだ気がついていない。ラクスは瞳を光らせ、ここが好機と、先ほどのライフルを構えさせた。

「お父さまお母さまから、ものは大事にしなさいって習いませんでしたかぁ!!!」
「あん?」

アビスのパイロットもそれに気がついたが、もはや遅かった。
ジンはすでに射撃体勢に入っている。大型のライフルから銃弾が一発、放たれた。そして、放たれた、と認識した瞬間、アビスの肩に直撃した。
ジン自体もそのライフルの反動で吹き飛ばされそうになるも、低い姿勢を保ち、何とか耐え抜く。

「うわああ!」

凄まじい衝撃によって、アビスは体勢を崩し、中のパイロットも震動に揺らされ、悲鳴を上げた。
もし、セカンドシリーズの装甲がVPSではなく通常のものであれば、アビスの肩は吹き飛ばされていただろう。それだけ強力なライフルだった。
が、しかし、一発一発の威力が高いものの、装填時間や冷却時間に難があり、そのまま二発目とは行かなかった。

「野郎…!なめやがって!」

アビスのパイロットは血管を浮かべながら機体を立たせ、お返しとばかりにバラエーナ改を構える。

「ラクス!後ろに飛びながらマシンガンを撃つんだ!」
「はいさ!」

ケイはすぐさま指示を送り、それにしたがってラクスは機体を飛び上がらせる。ぎりぎりというところでアビスの一斉射撃を避け、ライフルを肩に背負わせ、反撃にマシンガンを放つが、アビスはすぐさま物陰に隠れやりすごされた。
ラクスはすぐさま機体を着地させ、適当な物陰に隠れ、先ほどのライフルの装填をさせる。
その動きはなれたものだ。バカピンクバカピンクと罵られつつも、こういうところはしっかりしている。
いや、この二年間の演習の賜物、といって良いかもしれない。
とはいえ、ジンがアビスに勝てるわけがない。先ほどの一撃も奇襲によるものだ。

「全く、どうして奪われるんだよ、あれが…!ということは、他の二機も…」

ケイの予想は当たっていた。セカンドシリーズのうち、ガイアとカオスの相手を、一体のザク・ウォーリアが相手をしていた。
前後、挟撃される形でいる中、ザクは片手で、しかもヒートホーク一丁で何とか持ってはいるが、やられるのも時間の問題だった。

「く…こんなところで…!」
「うぇぇぇい!!…はっ!?」

ガイアが止めといわんばかりにビームサーベルで切りかかろうとしたが、突然来た戦闘機のようなものから放たれたミサイルによって動きを止められてしまう。
ヒット&アウェイのつもりだったのだろうか、戦闘機はそのままアーモリーワンの中心に飛び去った。否、後から付いてきたMSのパーツが合体し、一機のMSが降り立ってきた。他のセカンドステージと似た、その顔。

「こんな事をして…また、戦争がしたいのか、あんた達は!!」

そのMS、セカンドシリーズの一つ、インパルスに乗っている赤目のパイロット、シン・アスカは怒りを含んだ叫び声を上げた。
そして、対艦刀『エクスカリバー』を連結させ、それでガイアに切りかかる。ガイアは一度食らうものの、その反動飛び上がって、CIWSを発射させるが、同じVPS装甲では牽制にもならない。
インパルスは手持ちのビームライフルを連射させる。ガイアは素早く避け、地面を蹴って瓦礫に隠れる。それを追うようにインパルスはビームライフルを連射する。
カオスもガイアを援護をするようにビームライフルを発射するが、インパルスはそれに反応し、後ろに下がりながらカオスにライフルを発射する。

「…なんだこれは!?」
「あれも新型か!?」

ガイア、カオスの両機体のパイロットは驚愕の声を隠し切れなかった。ザク・ウォーリアに乗っている一人、いや二人も驚きを隠せず、唖然としていた。
威風堂々構えるインパルスは、かつて連合のMSとして多大な戦績を残したストライクのそれを思わせる。

「あんな機体の情報…!アウル!!」
『スティングか!今手放せねぇよ!変なジンが…うあ!』
「くそ!」

先ほどのアビスのパイロット、アウルへスティングは応援を要請するが、当のアビスはラクスのジンと交戦している間に、他のMSにも囲まれてしまったので抜け出せずにいた。
スティングは毒づきながらも、ガイアの援護をすべく、インパルスにビームライフルを放つ。ガイアと鍔迫り合いをしていたインパルスは、一度ガイアを蹴り飛ばし、その反動で回避運動を行った。
カオスは倒れたガイアに手を貸して起き上がらせ、すぐさまインパルスへ攻撃を再開する。

「こんのぉぉぉ!!」
「うぇぇぇい!!」
「く!!」

流石に最新鋭のMS二体を、同期のMSとはいえ同時に相手にするのは難があるか、インパルスは苦戦を強いられる。
奪われたばかりというのに、まるで手足のように使う彼らの連携は凄まじい。
もはや捕獲するという任務に拘っているわけにも行かなくなってきた。
ガイアは一度変形し、インパルスに突撃する。シンは唸りつつも連結していたエクスカリバーを分離させ、ガイアに突撃する。
ガイアのパイロットはそのインパルスの行動に驚き、一度回避運動をしながら交差をし、振り向きざまに背中のビーム砲を発射する。
インパルスはそれをシールドで受け止め、片方のエクスカリバーをガイアに投げつけた。ガイアはそれをシールドで受け止めはしたが、反動で吹き飛ばされた。

『シン、命令は捕獲だぞ!?わかっているのか!?あれは我が軍の…!」
「解ってます!でも出来るかどうか分かりませんよ。大体何でこんなことになったんです!」

急に流れてくる男の通信の声に、シンは苛立ちを覚える。彼の言うとおり、このような状況にまで陥ったザフトの危機管理は甘かったのかもしれない。
それに、命令とはいえ、これ以上拘ればインパルスさえ危険だ。被害は最低限に抑えるべきとシンは判断していた。
唯一つ、救いといえば、アビスがここにいないことか。他のところががんばっているのだろうか?

「うわあああ!?」「たあああああ!!」「やめてよねー!?」

…飛び込んできた。翼に桃色をあしらった、変なジンと共に。まるでラグビーかアメフトのタックルのようにアビスの腰のところを掴んだままスラスターを命一杯噴かし、アビスともども瓦礫に突っ込んでいった。そして、すぐに出てきたと思えば、アビスがカリドゥス複相ビーム砲を放ってきた。

「はあ…はあ…危ないところでしたわ…」
「いや、僕は十分危険な状態に陥っているけどね?」

シートベルトをしているラクスに対し、ケイは掴める場所に掴んでいるしかないので、先ほどのタックルでは彼も吹き飛ばされそうになっていた。今はひっくり返り、コクピットとモニターの間に挟まっているというなんとも情けない状態でいた。

「アビスは元々水中用だから、他の二体と比べてそんなに動きは良くない。あいつだけを集中して叩くんだ、ラクス!」
「わかりましたわ!」

その状態のままのケイの助言にラクスは気合の篭った返事をして、すぐさまジンをマシンガンを打たせながら突撃させた。アウルは一旦瓦礫から飛び出てラクスのジンをやり過ごし、反撃の肩部ビーム砲を一斉に撃つ。
ラクスは機体をあえて地面に付かせ、受身を取りながら瓦礫に隠れる。他のMSも敵味方関係なく各々避ける。

「バカアウルが!俺たちもいるんだぞ!?」
『うるさい!!』
『敵が来るよ!』
「くっ!」

アウルの容赦ない射撃に巻き込まれそうになったスティングは喧嘩口でアウルを叱るが、ガイアのパイロット、ステラの言葉に気を取り直し、迫り来たインパルスのエクスカリバーを受け止める。
それを見たアウルとステラは加勢しようと迫るが、アウルのほうはジンからの射撃を受け、邪魔をされる。ガイアは一旦動きを止め、ビームライフルをジンに向かって構える。

「しつこいんだよ、雑魚が!」
「ラクス、飛べ!」
「はい!」

アウルの正確で素早い射撃に対しても、ケイが的確にかつ迅速に指示を送っていたためにいとも簡単に避けられてしまう。
表面上は一対一だが、事実上は一対二だ。だからこそ、ジンで最新鋭のアビスに対抗できるのだろう。

「こんのぉぉぉ!!」

しかし、完全にアビスのほうに目線が行っていたジンはガイアのビームライフルを左スラスターに受けてしまう。

「くぅぅ!!」「ぬぐ!ガイアか!」

悲鳴を上げそうになるのを歯を食いしばって踏ん張るものの、それで状況が変わったわけではない。地面に叩きつけられたところを変形したガイアに狙われそうになる。が、その時、傍観を決めていたザク・ウォーリアがついに動いた。

「つかまっていろ!」
「え、うわ!」

ザク・ウォーリアはガイアを無防備の横から体当たりをし吹き飛ばす。それを見たアビスが狙いをジンからザクへと変え、両肩のシールドに付けられた連装砲を放とうとするが、ザクは残存の武装ビームトマホークを投げつけ、アビスへ牽制する。

「こんのぉぉ!!」

アビスは体勢を立て直してバラエーナ改を放ち、ザク・ウォーリアの肩に直撃させた。

「くぅぅ!」
「ああ!」
「はっ!?カガリ!?」

ザク・ウォーリアの中のパイロットはうめき声をあげながらも耐えるが、もう一人のほう、カガリと呼ばれた女性は額から血を流しながらパイロットに倒れた。
パイロットは倒れた女性を支える。そのために動きを止めたザク・ウォーリアに対し、これを好機と思ったアウルはもう一度バラエーナ改を発射しようと体勢をとる。

「もう一丁!!…はっ!?」
「「足元が隙だらけですよぉぉぉ!!」」

が、その隙に体勢を立て直したジンにライフルを構えさせる隙を与えてしまい、
ラクスとケイはわけのわからない気合の入った雄たけびを上げながらライフルを発射する。
あまりの近距離で受けてしまい、VPS装甲も空しく、アビスは大きく吹き飛ばされ、衝撃のあまりにアウルは気絶してしまった。
完全に動きを止めたアビスに対し、スティングは一度インパルスを鍔迫り合いから距離をとり、ビームライフルを乱射して牽制しながらアビスを回収する。

「おい!アウル、アーウル!」
『…あ…ぐ…う…』
「くそ…!ステラ、動けるか!?」
『うん…大丈夫…どうする、スティング』
「撤退するぞ!損害が大きすぎる!ネオも今頃港の強襲に成功しただろう。さっき震動があったからな。これ以上ここに留まる理由はない!」
『このまま下がるの!?こいつを残して!!』
「任務を果たせなきゃ意味ねぇだろうが!文句があんならネオに言え!」

終始押されたままのこの状況に納得のいかないステラに対し、ついに苛立ちを表したスティングだったが、冷静に判断してステラを諌め、牽制のために機動兵装ポッドを飛ばして、それぞれインパルスとジンに攻撃を加える。インパルスとジンはそれぞれ後ろに飛んで避けるが、ポッドのビーム砲によって破壊された瓦礫の煙によって視界がさえぎられ、その隙にカオスとガイアは飛び去ってしまった。
それに気がつき、シンは追撃しようとしたが、かなり離されてしまった。

「くそ!…ソードじゃきついか…ミネルバ!フォースシルエットを射出してくれ!」

すぐにシンはミネルバに連絡を入れ、インパルスの特徴である換装システムの一つ、フォースシルエットの射出を要求した。
ミネルバ副長アーサーはすぐに艦長であるタリアに指示を仰ぐ。

『艦長!』
『許可します。フォースシルエット射出』
『了解!フォースシルエット、射出準備!あっと、シン!今レイとルナマリアが追撃に出たぞ!』
「そうか、それは助かる!…さて、そこのジン!」
『はい?』

ミネルバの報告にシンは安堵の息を吐くと同時に、近くにいた友軍のジンへと無線をつなぐ。すると、そこには今朝あったバイクの女性が写っていた。

「あ!!あんた、今朝のバイク女!」
『あら?あらあら…その件ではどうも申し訳ございません』
『また何かしたのか?ナタリー』

第三者が来たところで、ケイはラクスの事をナタリーと呼ぶ。久方にその名を呼ばれたので、少し反応が遅れたが、ラクスは振り向いて事情を説明した。

「いやぁ、ちょっと危ない目にあわせてしまいまして…」
『ちょっと何処じゃないだろうが!…まあ、素直に謝ってくれんならいいけどさ。今回は正直助かった。あんた達がいなかったら、もっと苦戦しただろうからな…だけど、仲間が来たから大丈夫だ。
あんた達はけが人とかを助けてやってくれよ。これから俺はあいつらを追う!それじゃあな!』
「はいはい、お気をつけて~。ご武運を~」

一方的かつ少し偉そうなその声の主にも苛立つことなく軽く流し、ラクスは飛び去っていったインパルスをジンの手を振らせて見送った。
途中別の戦闘機が来たかと思えば、武装を換装して、色まで変えて素早く飛び去っていったインパルスにラクスは興奮していた。

「かっこいいですわねぇ、あれ。昔のストライクを思い出しますわ」
「一応コンセプトはそれだからね。一つの機体で様々な状況に応じる事のできるオールラウンダー。また、核エンジンを使わずとも、ミネルバと連携する事で
デュートリオンビームからエネルギーを補給できる優れもの。僕もコクピット恐怖症がなければ乗りたいところなんだけどね」
「へぇ~」

ケイの説明に、更に瞳の輝きを強くするラクス。やはり、ああいうエースパイロット用のMSは全てのものの憧れの的なのだろうか。
とはいったものの、ケイは今回のラクスの、いやジンの動きを見て認識を改める必要があった。
ラクスのジンはカスタム機で、普通のジンよりも優れているというのは以前よりも分かっていた事だったが、まさかここまでやれるとは思わなかった。
ジンはあくまでもジン。しかし、そのジンも上手く使いこなせれば生き残れるというものだ。特に、ラクスとこのジンは前大戦からずっと乗り続けてきたものだ。
最近は別の機体に乗る事のほうが多くなったとはいえ、それでも手足のように動かせるのだろう。もし、この機体が新型のゲイツRであれば、特性を生かせずに先ほどのアビスにやられていただろう。

『MSっていうのも、要は使う奴次第ってことさ』

マッドの言葉が今になって心に響く。あの言葉は正しかった。
自分はどうだったのか?思えば、MSの性能におんぶに抱っこだったじゃないか。フリーダムの高い射撃に頼っていたから、上手くいった。
実際は自分などただ少しだけ性能を引き出せるだけの人間だった。別に戦闘に長けていたわけではない。

「はあ~…それにしても、助かりましたわぁ…」
「え?なんだ、あんなにいきり立って戦っていたのに。追わなくていいのかい?」
「いえ…なんか、急に力抜けちゃって…私自身、よくあんな相手に立ち向かえたなぁって思ってますわ」
「はは、なんだよそれ」

ラクスはシートベルトを外し、ため息をしながら、背もたれに深く背を預けて崩れた。
無我夢中の状態から抜け出したことで、現実感がラクスを覆い、絶え間ない安心感が脱力感を生んだ。
そんな彼女の様子にケイは笑みを浮かべつつも、そのラクスの、強い相手に昼まず立ち向かう勇気がうらやましく思い、そしてすこし嫉妬の念をどこかで持ってしまった。

(バカだな、僕も…嫉妬なんて)

ケイは苦笑しながら自嘲する。そして、自分も努力してみよう。そう思った。
今は唯、パイロットたちを守るために。そして、何時かのように、また人を守る事ができるように。
そう、彼女の好きな努力と根性で。

「さあて、ラクス。そろそろ戻ろうか。ゲイツもないし、ミネルバへはこれで行こう」
「そうですわね…ってあー!そういえばスクーター!」
「あ~…」

と、ラクスは急に叫んだかと思えば、先ほどの10番ハンガーへとジンを急がせた。そんな彼女の様子にケイは苦笑した。
何故こんなにラクスがスクーターに拘るかというと、それはケイから贈られた手作りの物だからだ。
ケイがメカニックマンという仕事をし始めてから、余った部品などを使って、ラクスの誕生日の時にプレゼントしていたのだ。
生まれてこの方、こういう同い年くらいの友達から貰ったプレゼントはアスランからのハロくらいだったから、ラクスは至極大事にしていたのだ。
…大事にしていたという割には、先ほどすっころんだわけだがさて置き。

「あ~あ…こんなにめためたになってしまって…」

戻ってみると、そのままの状態で放置されていた。先ほどのアビスとの戦闘で巻き込まれなかったのは奇跡だろう。ラクスは瓦礫をどかして、そのジンの手に乗せて運ばせた。

「直りますわよね?これ、直りますわよね?」
「え~?…あ~う~ん…」
「ふえ…もしかして、直らないんですか?!」

ラクスの涙を浮かべての懇願にまさかもはや直らないと言えるわけもなく、ケイは返答に困っていると、ついにラクスは涙を流し始めた。

「うわぁぁ!ちょっと、泣く事ないだろー!?」
「ふぇぇぇん!だって大事にしていたのにー!あー!?しかもハロー!!」

更に、スクーターに積まれていた、というより固定されていたバッグに入っていたハロの事を思い出し、ラクスは更に大泣きをし始めた。

「うわぁぁん…今日は厄日ですわぁぁ…」
「まあ、自分の命が助かっただけでも良かったとおもいなよ…それに、ボストンバッグのほうはつぶれてなさそうだから、ハロも大丈夫なんじゃない?丈夫だし。
バイクも僕が修理してあげるからさ」
「ほんとう!?本当ですか!?」
「あ、ああ…本当」

あまりのラクスの勢いに、もはや嘘とはいえない状況だったケイだった。
厄日なのは自分のほうだ…。と、ケイは思っていたが、ラクスのお陰で助かったのもあるし、少しくらい不正を働いたところで何の問題は無い。またジャンクパーツ集めて組み立てよう。暇があるときに。
ただ、彼が気がかりなのは、今回の襲撃。

「爆竹かあ」
「え?」
「いや、前地球の何処かで爆竹が引火して、花火工場の中の花火が全部爆発したのを思い出してさ」
「ああ~、この前やってましたわね。そのニュース私も見ましたわ。すごかったですわねぇ…。死者が出なくて良かったですけど」
「そうだね」

いやそうではなく。
今回の爆竹が、この世界にどう影響するのか。
ただの嫌がらせか。
それとも花火工場のように、すべての世界を巻き込む戦争の前兆なのか?
ケイは、なにやら嫌な予感がして止まなかった。
そんな思いを乗せつつ、ジンはミネルバへとその足を向けていった。

第三話 「Warrior」へ続く

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