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LOWE IF_592_第06話2

Last-modified: 2011-02-23 (水) 16:50:15

さて、そんなこんなで日は暮れては明け、そして朝を迎えた。ミネルバでは召集があり、説明会が早朝より行われた。
どうやらミネルバ修理のために何日か滞在する事になったらしく、その間の上陸許可も取れたようだ。クルー達は漸くの休息に安堵の声をあげ、各々準備をしていた。
そんな中、予想外な帰郷となったシンは、どうせルナマリア辺りに連れ出されるのだから、その前に一人で外出しよう。
帰りたくなかった場所だが、こういう機会だから。墓参りの一つでもしてあげようと。と、そんな彼の元に。

「やっ」
「ケイ?」

ケイ・クーロンが現れた。ケイは普段の整備士の制服とは打って変わって、野球帽に爽やかな水色の半そでの上着に白いシャツにジーパン姿で、隣にはどこかで見たようなスクーターがあった。

「どうしてここに?」
「僕もちょっと市街に買い物と友達に会ってくるつもり。シンは?」
「俺は…ちょっとな」
「…墓参り…かな?」
「ああ…まあそんなところ」

ケイの質問に表情を暗くするシンに対して、その心情を読み取ったケイはそれを言葉にしてみると、どうやらその通りらしい。
ケイも少し表情を重くした後、スクーターの荷物入れに入れていたヘルメットをシンに渡す。シンは投げられたそれに驚きながらも、危なげなく取る。

「?」
「手ぶらで行くつもりかい?花束の一つ、買ってあげてもいいんじゃないかな?」
「あ…うん。そうだな。わりぃ、じゃあ街まで乗せてもらうよ」
「任されて」

そんな事もあり、ケイはシンをスクーターの後ろに乗せて海岸沿いの道をひた走っていた。彼の乗っているスクーターはアーモリーワンでラクスが乗っていて、壊されていたもの。
丁度補給パーツとジャンクパーツを使って、形は兎も角中身は直っていて、これもまたテスト走行の一環だった。
正直女の子が乗るには無骨すぎてなんだかなぁという具合だが、スクーターとしては申し分ない。

「このスクーターってナタリーのか?」
「ああ。ちょっと壊れちゃったからね。僕が修理していて、やっと走れるような状態になったからね。こういうときにテスト走行しておかなきゃ」
「…大丈夫なのか、これ?」
「99.9%は大丈夫だ。後の0.1%は君の不幸くらいなので保証できません」
「そうっすか…」

自分の要因はないのか、と心の中でつぶやきつつ、スクーターの後部の出っ張りを掴んでバランスを取りながら、辺りの光景を眺める。
昼時のオーブ。日差しが海の波に反射し、綺麗な光を発している。それが、不思議と昔、家族と海水浴に言った事を思い出し、シンは悲しい表情を浮かべた。
彼が今までここに戻ってこなかったのは、過去と決別したかったからだ。しかし、憎しみは深く。妹の形見の携帯は肌身離さず持っている。
過去は、何時までも彼を縛り続けている。そんな彼の心情を背中で察してか、ケイがおもむろに彼に話しかける。

「確か、この辺に住んでいたんだっけ?オノゴロ島出身ってプロフィールに書いてあったから」
「あ、ああ。…俺はあのMS、フリーダムに家族を殺されたんだ。それもこれも、そいつと避難も儘ならないのに開戦したアスハが悪いんだ。あいつらが…」
「…そう、か」

何か言おうとしたのに、何も言えない。フリーダムに乗って、彼の家族を殺したのは紛れもなく自分のはずなのに。言うのが怖い。告白するのが、怖い。
お前の仇は目の前にいるぞ。さあ、復讐しろ。復讐してくれ。そう願っているのは自分のエゴなのだろうか。自己満足なのだろうか。
レイの恨みは受け止められたのに、こうも怨まれている事が怖いとは思わなかった。

「どうかしたか、ケイ」
「いやなんでもない。行こう」

ケイはシンの声ではっとし、スクーターのスピードを上げていった。潮風が彼らに当たり、憎しみなど感じなくさせていた。
さて、街に着いた彼らはまず花屋に行き、そこでシンを降ろした。シンは適当な花を繕ってもらい、それを持って慰霊碑へと向かっていく。
ケイも同行しようと思ったが、どうしても気が引けず、とりあえず近くまで送って、ケイは目的地へと向かった。
そこは少し安めだが、しっかりしたマンション住宅。ケイはその近くにスクーターを止め、中へと入っていく。
そこの一室で足を止め、インターフォンを使って中の住民を呼び出した。

『はい、どなたですか?』
「僕だよ、サイ。キラ・ヤマト」
『キラ!?』

住民はその名を聞くや否や、慌てた様子で扉を開けた。そこに現れたのは、かつての戦友、サイ・アーガイルだった。
ケイは伊達眼鏡を外し、帽子を脱いで彼にアピールする。

「お前…なのか?」
「…うん。久しぶり、サイ」
「ああ、本当に。外でもなんだ、中に入ってくれ」
「お言葉に甘えて」

サイに案内され、ケイは部屋の中へと入っていく。男らしいとは言いがたい、すっきりと綺麗に片付いた部屋だ。
ああ、そういえば結構綺麗好きだったなとケイは思い出してみる。無論、アークエンジェルのときのことだ。ヘリオポリスのときの記憶はない。

「綺麗な部屋だなぁ。僕の部屋とは大違いだ」
「何言ってるんだ。いっつもラクスさんに綺麗にしてもらっているくせに」
「すぐ汚くなるんだな、これが」

実は嘘ではない。ラクスことナタリーは自分の部屋を訪れては、汚い汚いと言って勝手にきれいにしていってしまう。それをケイは最初嫌がっていたが、
段々と諦めが付いて、本当に捨ててはいけないものだけ指定してラクスにやらせていた。

「(一度○○本見つかった時は死ぬかと思ったけど、流石に)」
「まあ掛けろよ」
「うん…あ…フレイ…」
「ああ…写真、飾ってるんだ。ヘリオポリスのときの頃の奴。…あの時はよかったな。戦争の事なんか、憎しみの事なんか考えなくてもよかった」
「サイ…」

沈痛そうな表情で、テーブルの前に座るケイに対し、少し無理はしているがサイは微笑みながらコーヒーの入ったカップをケイの前に置く。

「でも…落ち込んでいても、フレイは還ってこない。俺は生きているんだからな。フレイ分も、しっかり生きていかなきゃいけない。お前だってそうなんだろう?」
「あ…うん。そうだね」
「二年か…。早いな、月日が流れるのも。ヘリオポリスから始まって、俺達があのアークエンジェルに乗って…。何度も死に掛けて…。トールが死んで…。フレイが死んで…。本当、嘘みたいだよな」
「…なあサイ…あのさ」
「ん?何だよ」

そんなサイの様子を見て安心したのと同時に、ケイは少し本題を切り出しづらかった。だが、これは言いたかった。
フレイの事も、自分の事も、全て謝りたかった。ケイは一歩後ろに下がり、土下座して頭を深々と下げ、サイに謝罪した。

「ごめん!」
「お、おい!」

突然の事に、サイは慌ててケイの許へ駆け寄って言ったが、それでもケイは頭を下げたままだ。ケイは涙を浮かべながら続けた。

「…本当、ごめん。フレイの事。僕さ…結局、彼女を守ってやれなかった。ラクスなんかと現を抜かしていて、フレイの事を…否定していたんだ、僕は。怖かったから…
こんなんで、世界を救おうとしてたんだ。一人の女性も守れないのに…。本当、ごめん…」
「……いいんだ。お前だって、必死に守ろうとしてたじゃないか。…ありがとうな。フレイやあいつも、多分満足してくれているよ」
「あいつ…?フレイじゃないの?」

サイはケイの背中をポンと叩いて、彼を慰める。その言葉の優しさは、ケイの心の中を暖かくし、癒してくれた。
だが、それと同時にサイの言葉に何か引っかかりを感じ、顔を上げてケイは聞く。サイはその優しい笑顔はそのままに、言った。

「お前、本当はキラじゃないんだろ?」
「…!?ど、どうして?!」
「気がつかなかったか?俺、ここに来たお前と顔を合わせてから、一度もキラって呼んだ事ないぜ?」
「あ…!…気がついていたの…?」

ケイは驚いたように言った。サイは机を挟んでケイの向こう側に座り、コーヒーを一口含んでからいった。

「気がついたのは…う~ん…そうだな。お前がフリーダムに乗ってアラスカに来た時…かな。キラらしくないっていうか。う~ん…まあ結局のところ、勘だったんだ、その時は。フレイの事を教えた時も平然としていたし…。
確信になったのはラクスが合流した辺り。お前はラクスにべったりして、俺達と喋らなくなった。何か、キラらしくない、人間らしくないって。命の恩人なんだろうけど、でもどうしてああもラクスに依存できるんだろうって。
その時思った。ああ、こいつは違うって。キラはこんな奴じゃない。もっと純粋で、優しくて、生意気なところもあるけど、それでも俺達に隠し事なんかしなかった。何か、遠い存在になってたんだよな。…伊達に友達やってないさ。
でも言い出せなかった。心の中ではキラが死んだ事を認めたくなかったんだろうな。だって、目の前でキラが戦ってるんだぜ?それに…あの歌姫も怖かったし」
「…そうだ。僕はキラ・ヤマトじゃない。…そのことを、伝えようとおもってここに来たんだ。二年、二年掛かった」
「…話して、くれるな」
「うん」

サイのはっきりと、だが何時もの優しい言葉口調に安堵感を得たケイは全てを覚悟した表情で、サイの顔を見て、
全ての事を話し始めた。ラクスの事、自分が研究所で生まれたクローンであること。これまでの二年間の事。
ギルバート・デュランダルに言わなかった事を、全てサイに伝えた。彼が信じられる人だったから。
いや、伝えるべきだった。フレイの事も謝りたかった。だから家を事前に調べておいて、ここにやってきたのだ。少しばかり犯罪に手を染めているような気もするが、そんな事はお構い無しだ。
それを聞いたサイは呆然としていたが、コップを右左と回しながら、恐る恐る言う。

「そうか。…クローン…何だか現実離れした話だな。そんな短時間で作れるものなのか、人って」
「良く分からない。でも、キラ・ヤマトは再び現れた」
「短時間で作れる設備と技術を、ラクス・クラインは持っているのか。恐ろしいな。…でも、そのラクスも偽者とは。それ、本当なのか?」
「一応、僕にも一人目の記憶を持っていてね。それがクローンとはいえ、他人のものだったし、あいつの作ったものから、曖昧だったのかもしれないけど…。でも、試験管から出た僕が見たのは傷のないラクス・クライン。
そして、僕を助けてくれたのは紛れもなく、傷だらけだったけど本物のラクスなんだ。それを証明する人も、映像さえもあった」
「…そっか。そういえば、最初にあったときとなんか雰囲気違うって言うか全く違ったのもその所為だったのか。最初は本当、頭変なんじゃないかってくらいおバカで空気読まないお姫様だったからなぁ」
「今でもそうだよ」

「ふぇ…くちん!ああ~!アイスクリーム!」
「うわ~ご愁傷様です」

「…三人目は、もういるんだね?」
「ああ。今はこのオノゴロ島で孤児院を経営しているようだ。ラクスも一緒だけど…どうするんだ?復讐…するのか?」
「したい気持ちは山々なんだけどね。今はザフト所属って言う肩書きがあるから、自由には動けない。孤児院だっていうくらいだから、子供もいるだろうし、巻き込みたくはない。
それに…僕は復讐される側の人間だから。そんな資格はない」

そう言いながらケイは苦笑してみせる。本心だ。偽りはない。生まれの事を怨んでいるとは言え、今は少しばかりの感謝の念もある。ナタリーに出会えた。こうして、謝る事ができた。
憎しみを、悲しみを、喜びを得る事ができたのだから。それでも許せないが。今はいい。
それを聞くやサイは安心した表情を浮かべていった。

「今のところは何にも出来なさそうだしね。安心した、ていうのかな」
「そうか。それを聞いて、少し安心した。変わってないようだな、お前も。根本的なところはやっぱりキラと同じだ。…一つ、聞いてもいいかな?」
「何?」
「どうして俺に話そうと思ったんだ?」
「何故って…」

サイの質問に腕を組み、考えるケイ。そして眉を八の字にさげながらも、少し微笑みながら言った。

「まあ…フレイの事もあったし、本当に謝りたかったんだ。謝って、済む話じゃなかったんだろうけど…。それでも謝りたかった。仕込まれた、偽りの記憶で振り回した事とか…。
それと、偽者のことも教えたかったんだ。あいつらに心を許しちゃいけない」
「その件については大丈夫だな。俺とあいつらが会ってるのも、一年に一度、トールとフレイが眠っている慰霊碑に行く時だから。…偽者が一緒だけどな、いっつも」
「そうか、それはよかった。ああ、そうそう。そのことについてもう一つ用件があったんだ」
「何だ?」
「実は…」

一方時間は遡り、ラクスはというと。ルナマリア達と行動を共にしていたが、途中少し気になる場所があったため、一時自由行動をとり、一人で行動をしていた。
少しばかり和風な雰囲気を出しているその場所は、本当に和風をイメージした観光所で、寺なども見られた。
ラクスは適当に寺やお土産屋などを見て回っては、写真に収めたりしていた。今は土産屋で品物を見て回っている。

「これなんです?」
「これかい?これはハチマキって言ってね。 気合を入れたり、集中力を高めるのにいいんだよ~。 御輿の担ぎ手や、昔ながらの商売人職人は頭に鉢巻きをしていたのさ。
まあお嬢ちゃんよりも、男の人が巻く様なやつさね」
「へ~…。和風バンダナですか…。おば様、これ一つくださいな。ああ、後この熊の置物も」
「あいよ」

ラクスは数ある土産の中から熊の置物と鉢巻を選んでそれを購入した。そして店から出て、再び散策に出る。

「故郷の裏路地は何時も~少しばかり濡れていて~僕は歩いている時は何時も~水溜りを蹴って~虹を作るんだ~」

鼻歌交じりに少し小さな裏道を選んで、当てもなく彷徨ってみる。ただ、迷路のようになっていたため、どうやら本当に迷ってしまったようだ。

「あらあら…どうしましょう。え~っとこういうときは」

ラクスは熟考し、そして直感で左を向く。そして足は右へと向かせる。

「自分の行きたい方向の逆を行く。これが一番!」

少し空しいような気もしなくはないが、さておき、ラクスは右へと歩いていく。そして道沿いをずっと歩いていくと、狭い道で誰かと出会う。
少しボーイッシュだが、体つきや雰囲気から女性であろうその人は、よくよく見ると、ラクスがよく知る人物だった。

「あら、カガリ様ではありませんか!どうしたんですの?こんな場所で…」
「あ・・・ナタリーか。奇遇だな、こんなところで会うなんて…」

そう、オーブ国家代表カガリ・ユラ・アスハだった。どうやら彼女は政務に詰まったり悩んだ時はここらへんを散歩道としてこっそり着ているらしく、
今は休憩時間だそうで、やはり散歩に出かけていたようだ。国家代表がそんなんでいいのかというラクスの突っ込みに対し、いいんだというカガリ。

「…恥ずかしいが、私は国家代表と言いながらもお飾り当然なんだ。皆私が若いという理由からか、中々意見を聞いてもらえない。だからこうやって勝手に外に出ようが、殆どお咎め無しだ。
まあ…キサカやマーナには怒られるけどな」

苦笑いをするカガリ。だが、その奥では少しばかりの寂しさや無力さを悔やんでいる念が伺えた。ラクスは少し表情を一瞬だけ重くした後、すぐさま明るくして言った。

「カガリ様」
「カガリでいいぞ」
「ではカガリさん。御腹空いてませんか?」
「御腹か?…いや、そんな事は(ぐぅ~)」

ラクスに指摘された事を普通に否定したつもりだったが、体の方はというと、正直に盛大な腹の虫を鳴らしていた。その音にカガリは顔を真っ赤にする。
ラクスは少しだけ笑って、そして道の向こうを指差して言った。

「きっと御腹が減っているから、落ち込んでしまうんですわ。ご飯食べましょうご飯!そうすれば元気も出てきますって。ほら、何時かのお約束もありましたし」
「あ、ああ。そうだな。まだ昼休みが終わるまで時間があるし、折角こんなところで会えたんだからな。で、何処でするか?」
「先ほど小さいですけどおいしそうな喫茶店があったので、そこにしませんか?」

ラクスはカガリを連れて、さまよっていた道を戻り、そして少し歩いたところにあった喫茶店へと入っていった。店はいかにも趣味でやっています、といわんばかりの狭さで、
四人ほどで来ただけでも限界だろう。ただ、店自体の雰囲気はいい。

「いらっしゃい!…おや?」
「二名で」
「…ふむ。では一番奥の席をどうぞ」

店長が応対した時、カガリの顔を見て、何かを考えた後、奥の部屋へと連れて行った。ここはひときわ狭く、二人座れば十分なスペースだったが、
姿を隠すにはいいところなのだろう。

「ご注文が決まりましたら呼んで下さい代表」
「ぶっ!」
「ご心配せずとも、平日、このような場所に来る客は少ないですから、どうぞごゆっくりしていってください。私は何も見ていません」
「は、はあ…わかった」

正体がバレた、というより元よりバレバレだったのが、カガリは含んでいた水を噴出してしまった。幸いラクスは場所の関係上、彼女の前ではなく、
側面にいたので、直撃を受けずに済んだが。店長は気にすることなく厨房に戻り、注文を待つ。

「ああ~うん。何食べようか」
「私は…では若鶏のソテーを御願いします」
「ん…じゃあ私も同じのを」
「あいよ」
「ああ、食後のコーヒーも。カガリさんは?」
「私も貰おう」
「あいよ」

注文を受け、店長は調理を始める。ラクス達も御絞りで手を拭きながら会話を始めた。

「それにしても、こんなに早くカガリ様とお食事が取れるなんて、余程ついていますわぁ私ってば」
「ふふ、私もだ。お前と一緒にいると、何だか楽しいからな」

お互い見合って微笑み合う二人。こうしてみていれば、同年代の友達、とも取れそうな雰囲気だが、片方は軍人で片方は国家代表。
少し異様といえば、異様である。まあこんな裏路地の小店にそんな二人が着ているなど誰も想像できるわけもなく、密会というには少し言葉が過ぎているような気もしなくはないが、
まあそんな所なんだろう。二人は気にせず会話を進める。

「ところでミネルバはどうなんだ?いろんなことがあって、結構ボロボロなんだろ?」
「ええ、修理は順調のようですわ。これなら、ここ数日で出航可能だといっておりました」
「そうか…。寂しくなるな。もっと色々とお礼をしたかったのに、残念だ。まあこんな立場だから、そう簡単に約束などできないし、タリア艦長には宜しく伝えておいてくれ」
「任されましたわ。カガリ様こそ、あまり政務で頑張り過ぎて、お体を崩されないでくださいまし。倒れてからでは襲いのですから」
「ああ、わかってる」
「お待たせしました」

彼女らの許に頼んだ料理が置かれる。質素な皿の上に、地味な飾りではあるが、おいしそうな匂いを出しているソテーが置かれている。
ラクスとカガリはフォークとナイフを使って、それを食べようとする。と、その時カガリはある事に気がつく。
ラクスの食事作法は、自分のに比べて上品だ。まるで、どこぞのお姫様のよう。

「…?どうしましたか?」
「あ、ああ。いや、そのだな。丁寧な食べ方をしているなぁと思ってさ。私とは大違いだ」
「そうですかね?まあ…御父様やお母様が気にする方だったので、それで」
「そうだったのか。御父様やお母様はどういうお方だったんだ?」
「え…ああ。う~ん…そうですわね…お母様は優しい方でした。ただ、私が本当に小さな時に亡くなってしまったので、あまり思い出がないんです。ただ、愛が好きな方でした。
御父様は…」

ここでラクスの手が止まり、俯く。その様子を見たカガリは何事かと彼女も手を止めて様子を伺う。
ラクスは、あまり父が好きじゃなかった。血のバレンタインがあったとはいえ、NJのやらかした悲劇はそれ以上だ。いや、コーディネイターである自分が血のバレンタインで憎しみを覚えないわけがなかったのだが。
だからといって、エイプリルフール・クライシスはそれ以上に恐ろしいものだ。地球上の多すぎる犠牲が払われた。そして、それを指揮したのは父シーゲルだった。
そんな父がプラントとコーディネイターの融和を図ろうとしていた。それは嬉しくもあり、そして複雑だった。自らの行為に悔やみを感じてくれればそれが一番だと思ったのだが、とてもそうとは思わない。
自分を自分の政治の出汁に使っている父が信用できなかったのだ。心のどこかで。
ラクスは愛を謳う。しかし、彼女も人間だ。自分を出汁にされ、そして、本物と偽者の判別のつかなかった父。多分、いや結局、自分を「政治の道具」としか思えなかったのか。
ただ、そんな父も優しいところはあった。ユニウスセブン追悼慰霊団派遣を認めてくれたことだ。これはラクス自身が言い出したことで、彼自身の『御願い』ではない。
本当ならば他の予定があったが、シーゲルはそれを承知してくれた。ラクスは嬉しかった。だから複雑なのだ。

「…」
「あ…あんまり無理にいう必要はないぞ、うん!人にはそれぞれ事情がある。それを深く追求していい人間なんていないんだ。
…お前が話してくれるときが来たら話してくれればいいし、そのときは私も受け入れる。いや、すまなかった」
「ありがとうございます、カガリさん…」

言葉を詰まらせ、今にも泣きそうなラクスの様子にカガリは慌てて慰め、ハンカチを彼女に渡す。そんな彼女に感謝の言葉を言うラクス。
ハンカチで涙を拭い、そして水を一口飲んで自分の心を落ち着かせる。
その後、他愛のない会話をしながら食事をしていき、そして食後のコーヒーも飲み終え、感情も済ませた二人は店の外へと出た。
丁度昼休みもいい頃合。そろそろカガリも行政府に戻らなければいけない時間となっていた。

「今日はありがとう。色々と、気が楽になった。ナタリーも元気でな」
「ええ。私も色々と楽しかったですわ。本当、こんな弱輩者にお付き合いしてくれてありがとうございました」
「いやぁ…」

暫く、店の目の前で見つめあい、沈黙していた二人。不意に、カガリが口を開く。

「なあ、ナタリー」
「え?」
「…どうしてお前は、戦うんだ?いや、国を守りたいという気持ちは痛いほどわかっている。だけど、それだけじゃないような気がするんだ」

カガリの突然の質問に、少し考え、そしてラクスはその答えを言った。その瞳は真っ直ぐと、偽りないもので。

「う~ん…守りたいものがありますから。ケイさん、シンさん、ルナさん、レイさん、ミネルバの皆さん。プラントの人々。
全ての人…とはいかないのでしょうけど、それでも、せめて私の周りにいる人だけでも守りたい。だから、戦うんです。
カガリさんもそうでしょう?」
「え?」

今度はラクスの突然のフリに、カガリのほうがきょとんとしてしまう。が、ラクスはそれに構わず続けた。

「カガリさんも、国を守りたいという気持ちがあって、それで国家代表という位を受け継いだ。それに一生懸命、頑張っていらっしゃいます。
その想いは、何時か皆さんわかってくれるはずです。でもカガリさん。貴方には大きな立場があります。大きな責任があります。
貴方には何気ない一言でも、それが大きな悲劇を生んでしまうことだってあります。私の父がそうでした。
…いえ、これは誰にでもいえるのかもしれません。ユニウスセブンのような大きな隕石でも、たった一発の誤射だけでも、時には世界を混乱の底に陥れてしまうかもしれない。
シンさんのような悲劇を生むかもしれない。だから、私達は何かをする時、しっかりと考え、それが何を生むかを考える。
サトーさんも、それを承知で行ったんでしょうね…」
「…あの、テロリストか…。そうだな。そうでなければ、あんなことが出来るはずがないな。わかった、心得ておくよ。ナタリーも生き残れよ。
またどこかであったら、そのときはまた、カガリ一個人として食事をしたい」
「ええ、こちらこそ」

ラクスとカガリはお互い握手をし、別々、逆方向に歩いて別れていった。
その帰路、カガリは握られたほうの手の感触を確かめるかのように見つめていた。大きい手だった。それに、傷だらけだった。
あの手にはどれだけの苦労が重なってきたのだろう。綺麗な自分の手とは違う。そう、考えていた。

再び時は…遡らなくてもいい。丁度この帰路についた頃、シンは慰霊碑へとたどり着いていた。日当たりの海岸に、碑が立っていた。
そこが、先の大戦の連合の侵攻によって犠牲となった人々に対しての慰霊碑だった。毎日手入れされているのだろうか。その慰霊碑は綺麗だった。だが、花は枯れていた。恐らく、海岸沿いにあるため、ユニウスセブン落下による津波でやられてしまったのだろう。
シンは、慰霊碑にはお供え物として、両親、そして妹が共通して好きだった和菓子と、水を置く。そして、花束の方は、潮風にやられない様、造花にしておいてあった。
祈りをささげ、それと同時に今までの事とその心情を報告する。

「…父さん、母さん、マユ。俺、帰ってきちゃったよ。こんな国、二度と帰りたくないと思ったんだけどな…。偽善者アスハの治める国なんか…。
でもさ、帰ってきちまったもんはしょうがないし…それに、今までの事、報告したかったから。…ごめんな、こんな親不孝で、こんな兄ちゃんで。今日は皆が好きだった饅頭、持ってきたから…。
天国で食べてくれ。…また、戻ってこれたら戻ってくるよ。そのときは…今度こそ大切なものを守れる力を、持ってくる」

報告と祈りも終わり、シンは少しだけ慰霊碑を見つめた後、その場を去ろうとした。と、その時。自分の来た方向から、黒いスーツの男がこちらに来ていた。
男もシンの存在に気がついたか、軽くお辞儀をする。シンも不審そうに思いながらもその男にお辞儀をする。

「お参りかい?」
「ええ…まあ。そんなところです。貴方は?」
「僕もさ」

男の、手袋がされている右手には花束が握られていた。ふと、男の声に違和感を感じたシンだったが、そんな事は知らず、男はシンの隣に立ち、しゃがんで慰霊碑に捧げ、そして祈った。
男の心情など分かるわけがない。だが、不思議と、シンにはその男の背中に寂しさを感じた。男は祈り終わると、立ち上がって、慰霊碑を見つめた。

「慰霊碑っていうものは虚しいね。勝手に作られてね。実際にはここに眠っているわけでもないのに、どうしても祈りたくなる」
「…」

男は掛けていたゴーグルを外す。すると、大きな傷が顔に刻まれているのがはっきりした。シンはそれに驚きつつ、彼の言葉を聞く。

「僕の友達もここで眠っていてね。やっとここに戻ってこれたから来てみたけど、やっぱ虚しいだけだ」
「…あんたも…戦争で…?」
「うん。ただ、実際にみた死は一人だけ。もう一人は、僕が死に掛けている時、知らない間に死んじゃった。大切な人だったのに。守る事ができなかった。君もかい?」
「俺も…家族をこの近くで失くした。大切な家族だった。でも…」
「でも殺された、かな?憎しみが出てるよ、君から」

男はシンの瞳を見ながら、何やら楽しげに言う。そんな彼の態度が気に食わなかったか、シンは睨みつけようとしたが、男の瞳に圧倒される。
男の瞳は、汚れきっていた。何もかも、汚いものを経験していて、純粋ではなかった。汚い。
いや、汚いのではないのかもしれない。汚いものしかないのだから、純粋なのだ。そして二年前、自分も似たような瞳をしていたのを思い出し、急に寒気がした。

「で・も中途半端だね。瞳が素敵じゃない。復讐したいのなら、その瞳をもっと素敵にしないと。それか、全ての過去を捨てきって、新たに道を作るか。
結局ね、復讐なんてもんは自己満足に過ぎないんだから。死人に口無しってね。そんな中途半端な憎しみなら持たないほうがマシだよ。じゃないと、何かあったときに壊れちゃうよ?」
「…!」

男が楽しげに出す言葉に反論したかった、が、しかし。彼の言う事にも一理ある。死人は何も喋らない。家族のための復讐、仲間のための復讐と謳っていても、
それが彼らの望んだ事かといわれれば、誰にもわからない。彼らは喋れない。だが、それを勝手に解釈しているともいえるのだ。
それを男は分かっていた。その上で、自分のためだけに復讐をしようとしている。

「ユニウスセブンが落ちたねぇ。あれはいい復讐だ。本当、いい。さぞかし、あれを落とした人はいい具合に素敵なんだろうなぁ」
「…気持ち悪いな、あんた。狂ってるよ。変態だ、あんたは」
「そりゃどうも。確かに僕は変態だし狂人だよ」

シンの精一杯の皮肉に、男はカラカラと笑いながら受け止めた。やばい、これは本物だ、とシンは警戒心を丸出しにしながらも、その場を後にしたかった。
そんな彼の様子に気がついたか、男は両手を上げていった。

「やめてよね~。僕が君みたいな生意気小僧に興味あるわけないじゃない?僕が興味あるのは年上のお姐さんだけさ。因みに僕は童貞じゃないよ。
…僕はこういう者だ」

男がポケットから名刺を取り出す。シンは恐る恐る、そして急激にそれを受け取り、確認する。

「…奪還者…ブラックk7…?ふざけた名前だ」
「そりゃどうも。僕はそこそこ気に入っているんだけどね。…ん?」
「あ…」

と、そんな二人の下に、もう一人、茶髪で紫色の瞳を持った青年が現れた。ブラックk7と同じくらいの背だが、雰囲気は全く反対だった。
どこか無気力なところさえも感じられる。ブラックk7は一瞬目を細めたが、それを誰にも悟られないようにっこりと笑いながら応対する。

「お参り…ですか?」
「そんな所。君もかい?」
「…ええ、まあ。でも、一人で来るのは初めてです。何時もは友達と来るので…。せっかく花が咲いたのに、波を被ったからまた枯れちゃいますね…」

青年は慰霊碑の前に立ち、祈りを捧げる。シンはその言葉を聴いて、口を開いた。

「…誤魔化せないってことかも」
「え…?」
「ん?」
「幾ら綺麗に花が咲いても、人はまた吹き飛ばす…」
「君…?」
「へぇ」

突然のシンの言葉に、青年はきょとんとして、そしてブラックk7は感慨深そうな顔をシンに向ける。
そんな彼らの視線に気がついたか、シンは一度ため息をつき、誤魔化すように言った。

「すいません、変なこと言って。…それじゃあ、俺はそろそろ行かないといけないんで…」

そしてシンはその場を後にした。
言われたままの青年は、少し呆気に取られながらも、飾られた花の位置を少し直し、そして言った。

「…また、吹き飛ばす…か。人は何時になれば、憎しみの鎖を…」
「さあてね。それは人次第さ。そして…」

君もその一つなんだよ、と言い掛けたブラックk7は言葉を飲み込み、そしてその場から立ち去っていく。

「人はそんなに残酷にできちゃあいないさ」
「…そうですかね」
「そうさ」

横に手を振り、その青年と別れるブラックk7。その後姿を見送る青年。そんな所へ、桃色の髪を持つ少女が一人、現れたのを、ブラックk7は見逃さなかった。

「どうしたんですの、キラ?」
「いや…何でもない。帰ろう」
「…?ええ」

ブラックk7の後姿を見送りながらも、青年と少女は反対方向へと歩んでいく。

「(みぃつけたぁ)」

ブラックk7はまるで、いや本当に鷹が獲物を見つけたような鋭い眼光を放ち、そして舌でくるりと唇を嘗め回した。
そして、嬉しそうな表情を浮かべて、ゾクゾクと体を震わせていたのだった。

そして日が暮れ、夜になった頃、慰霊碑に再び、二つの影が現れた。彼らもまた、花を持っているため、ここへ墓参りに来たのだろう。
しかし、こんな夜更けに来るとは、少し変わった二人だが、一応事情もあった。

「ケイも、こんな夜更けにしなくたっていいじゃないか。結構不気味で危ないぞ、夜の海岸は。大体お前は」
「言わないでよ、サイ。本当は夕暮れに来るつもりだったのに、ゲーセンの横を通ったせいで、人生オワタマンに大ハマリするなんてさ」
「お前はムキになってやりすぎなんだよ。幾ら使ったんだ?」
「ざっと20回分くらい…」

はあ、とケイはため息をつく。それにあわせて、サイもため息を吐く。彼らは気を取り直して、慰霊碑の前に立ち、花を供える。と、そこに置かれていた

「新しいな。どうやら先客がいたみたいだ」
「多分、一人は僕の友達…じゃないか。知合いだと思う。でも、あと一人くらいは来てるみたいだけど…」
「…う~ん…カズィか…ミリィはこういう花を手向けないからなぁ」

少しばかりの解析も切り上げ、二人は慰霊碑に祈りを捧げる。その時、ケイは自分のオリジナルだったキラが好きだったフレイと顔もわからないアスカ家へ、謝罪をしていた。

「(フレイ…いや僕がフレイと呼んだら、きっと怒るかもしれないね…ごめんね、今まで来れなくて。そして、守って上げられなくて、ごめん。もし天国で本当のキラさんと会えたらいいね。
…シンのお父さん、お母さん、そして妹さん。僕が貴方達を殺しました。シン、はそれを知りません。僕は知っています。言い出すのが怖くて…今は話せていません。
僕は臆病者です。僕は卑怯者です。…でも、何時かは話します。話して、そして…全部受け入れようと思ってます…。でも、怖い。
だから、何でしょうね。僕は貴方達に謝りに来ました。謝って、済む話ではないし、貴方達は僕の顔など見たくもないでしょうけど…。
でも、本当に…ごめんなさい。本当に、ごめんなさい…!)」

想うほどに、ケイが祈るために組んだ両手が、お互いを強く握り締め、血管が浮かんでくる。そして、歯を食いしばり涙を浮かべていた。
あの時未熟だった自分を呪い、未来を守るといいながらも、一人の少女を守れなかった自分を呪った。
後悔ばかり。これをラクスが聞いたらどう想うだろう。シンが聞いたら、どう想うのだろう。
わかっている。後悔ばかりしたって何も変わらないのはわかっている。だが、わからない。どうすればいいのかがわからない。

『話せばいい。どうせ誰も君の事など許してはくれない。そうやって、一方的な友情を押し付けているのは、些か惨めというものではないかね?』

と、急にレイ、いやクルーゼの声が聞こえてきた。周りはサイしかいない。他の人などいないはずだ。これは幻聴だ。それはわかる。だが震えは止まらない。

「(またあんたか)」

震えを必死に止めながら、ケイはその声にこたえる。クルーゼは嘲るような口調で言った。

『ふふふ…私と君がこうして話せるのは、君が望んだからではないのかね?ケイ・クローン君。君は何時まで仲良しごっこをしているのかね?兄面を演じているのかね?」
「(煩い…煩い…!)」

クルーゼの言葉を、ケイは必死に否定しようとする。だが、クルーゼの嘲笑が絶えず聞こえてくる。

『ふふふ…君は自分がクローンという事実を認め、そして大事なものを見つけた…。それで満足しているんだよ、君は。そして、戦う力を全て捨てた。
そうやって君は贖罪をしているつもりになっているのだよ。いや、誤魔化しているんだ、君は。もうしませんもうしません。あれは事故だ、仕方がないんです。僕は必死に戦った。僕達は必死に。
助けようとしたんです。後先考えなかったんです。何も知らないから、何かを知ろうとして』
「(黙れ!黙れよ!)」
『もうMSには乗れません。だからもう殺す事はないです。都合のいい言い訳だ。君が整備しているMSだって、人を殺しているではないか。それとも、自ら手を下していないから大丈夫だと思っているのかね?
…まあでも、いいじゃないか。コクピット恐怖症が上手い具合に言い訳になっているじゃないか。そうだ、言ってしまえ。そうすれば』
「(黙れぇ!)」
『みんなは君を許す事はないだろうが、君自身は君を許す事ができるかもしれないよ?』
「(くそぉ…!僕は、僕はそんな事を望んじゃいない!)」

クルーゼの言葉に心を圧され、ケイは頭を抱えて膝をつく。サイはぎょっと何事かとケイの背中に手を置きながら、彼の様子を伺う。

『君の望みなど、とっくのとうに尽き果てているさ。全ては遅すぎた。君は恨みを買いすぎたのだよ』
「(遅いだとぉ!?)そんな事はない!消えろ、クルーゼ!!」
「うわ!」

ケイは自分の中に住み着いているクルーゼの幻覚を否定するかのように急に立ち上がり、思わず声を張り上げた。それにサイは少しだけ吹き飛ばされ、
尻餅をついてしまった。サイは問い詰めようとしたが、ケイはそんな彼に気がつかず、海岸の向こう、地平線を見つめながら息を荒上げていた。
サイから苛立ちが消え、そしてケイに話しかける。

「クルーゼ…?」
「はあ…はあ…あ?ああ…サイ、ごめん」

瞳の焦点が合っていない。サイは何もいえなかった。そうだ、紛れもなく、目の前にいるのは、あのクルーゼと戦った男。フレイを殺したあの男を。
だから、その呪いを受けているのだろう。
とても二年前のあの青年とは思えない、外面では綺麗でも、内面のボロボロの姿が、サイには見えてしまった。

「(僕はどうしたいんだろう。わからない、わからない)」

何をすべきか分かっていたはずだったのに、ケイの心の中に、何か迷いが生じていた。二年間、二年間あったのに、何をしていいのかがわからないまま。
見上げれば、綺麗な星星が空一面に輝いていたが、ケイにはその輝きに、自分の曇りを一層感じていた。
ケイが本当に迷走するのは、まだ先の事。しかし、これが切欠の一つになったのは、言うまでもなく。ケイもまた、その事を心のどこかで感じていたのだった。

第7話 Fire warsに続く。

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