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LOWE IF_592_第10話2

Last-modified: 2011-02-23 (水) 16:57:28

「ネオ!」
「おう、遅くなったな」
「おせぇぞネオ!」
「また怒られてたのか?」

一応ネオも大佐という身分にいるはずだが、彼らは構わず馴れ馴れしく声をかける。ネオも特に気にすることなく答える。強化人間という特殊な状態を持つ彼らは、ただただ戦闘能力を上げるためだけに訓練されてきた。
だから、それ以外の教育というものを受けない。戦争における、殺しという名の罪悪感に囚われる事もない。しかし一方で監督役、というより親役というのも必要であって、彼らにとってネオは親密な家族のようなものだ。
ネオもその役割を演じる事に躊躇いや疎ましさはなく、寧ろ軍でこういう関係を保てる事に満足をしていた。だからこそ、言葉使いなどは直さない。

「ああ、お偉いさんからウィンダムを借りようと思ってな。交渉するのに手間取った」
「んなもん借りなくても、俺たちだけでやれるぜ」
「頼もしいな。だがな、あの新型艦は連合軍の包囲網をぶち破ったんだ。これくらい用意していてもいいだろ。ま、後は俺たち次第って訳だ。そうそう、アウル。情報によれば潜水艦も用意されてるらしいから、
お前はそっちを先にやれよ」
「ええぇ!?そりゃないぜ、ネオぉ!」

思わぬネオの言葉に、アウルはあんまりだといわんばかりの表情で詰め寄る。ネオは少し苦笑しながら、宥めるように更に言った。

「まあまあ、その潜水艦倒したら、後は作戦終了時間まで好きに戦っていいからさ。それにお前はまだいいほうだぞ?ステラはお留守番だからな…」
「え…?」
「ああ、そうか。仕方ねぇじゃん、ステラ。ガイアは泳げねぇんだからよ」

ネオの言葉にアウルは急に元気を取り戻し、今度はステラが落ち込んでしまう。だが、こればかりは仕様がない。スティングのカオスは空戦が行えるし、アウルのアビスも水中での早い動きが出来る。
しかし、この戦場では極端に大地は少なくなるだろうから、陸戦用のガイアでははっきり言ってウィンダムよりも戦力が劣ってしまうと言っていい。逆に地上に迫ってきた敵に対しての迎撃に回せば、その性能を最大限に生かせる。
だが、ステラは寂しくて堪らない。彼女は三人組の中で一番ネオに対する依存性が高く、彼の元を離れようとする事は少ない。アウルやスティング以外に心を開いているのは、ネオだけなのだ。
それをネオはわかっていたが、なんともまあ、こういう少女の涙目には弱い。と、そんな彼の気持ちが伝わったか、三人組の主格であるスティングがステラの肩をやさしく叩いて諭した。

「海でも見ながらいい子で待ってな。好きなんだろ?」
「…うん。わかった」
「よし、いい子だ」

スティングは軽く微笑みながらステラの頭を軽く撫でる。ネオはスティングに感謝しつつ、更に彼女を安心させるよう声をかける。

「俺もステラと一緒に出られないのが残念だよ。…なるべく早く帰ってくる。だから心配するなよ」
「うん…待ってる」

ステラは静かに頷きながら、素直にネオに従う。そんな様子をアウルは半分うんざり、半分は満更でもない表情で見つつ、格納庫の奥の方を見る。
そこには自分達の愛機となったアビスやガイア、カオスが眠っており、そしてそのとなりには、ダークダガーLが眠っている。
いや、正確に言えばあれはダークダガーLとは違う。黒くカラーリングされた、ジェットストライカー装備のダガーLだ。部隊名を表すエンブレムが、ファントムペインでもこのJPジョーンズに所属している部隊のものでもない。
確かあれは、ネオが以前に言っていた所謂「嫌われ実験部隊」のもの。それが一機だけここにいる。よく見れば、腰元にはナイフ…というには少し大きすぎる、太い刀身を持つ剣が備え付けられていた。

「あいつも出るのかよ、ネオ」
「ん?ああ」

アウルに聞かれ、ネオは何事かと彼が指差したほうを見ると、そこには先ほどのダガーLに乗り込もうとするオディオスの姿があった。
彼もそれに気がついたか、ネオたちの方をちらっと一度見るも、すぐに踵を返し、ダガーLに乗り込む。

「一応あいつにも協力してもらうことになっている。何、奴はエースだ。信頼は出来る。命令には従うしな」
「本当かよ?他のやつみたいに足手まといになるだけじゃねぇのか?」
「仮にも嫌われ実験部隊の一員でしかも中尉だ。それなりに実力はあるよ。さて、俺たちも出撃だな」
「…ふん」

ネオはステラの肩を一度軽く自機である紫色のウィンダムに向かって歩き出し、アウルも少し不満げながらもアビスのほうへと向かい、その後をスティング、ステラの順でついていった。
アウルはアビスにたどり着いた後、何か思いついたようにオディオス機のダガーLに通信を入れる。挑発をかねて、どんなやつかと一目見ようという彼の魂胆だった。
通信が繋がり、オディオスの姿がモニターに映される。なるほど、しけた面をしている。そう思いつつ、アウルは彼に話しかける。

「よお、あんたがオディオスかい?しけた面してんな」
『…』

オディオスは表情を全く変えず、何も答えない。それを気にせずアウルはさらに続ける。

「あんたが嫌われ部隊から来た余所者なのは聞いているけど、余計な事をして、海に落ちても助けてやんねぇぞ。ま、余所者は余所者らしく、大人しくしてるんだな」
『そうか。わかった、心得ておく』

しかしアウルの挑発に対して、オディオスは全く反応を示さず、ただ淡々と答え、自分の機体の調整を始める。相手などしていられるかといわんばかりだ。
挑発を簡単に流された事に少し腹を立てたアウルは、ならばとついに禁句を発してしまう。

「コーディネイターっていうのは信用できねぇからなぁ~。ナチュラル共ナチュラル共って小うるせぇし、その割には大した事ねぇからな。それに、同族意識が強くて気持ちわりぃし。
あ、そういやあんたもコーディネイターだったなぁ。わりぃわりぃ」
『…』
「ま、でも今は連合にいるんだから関係ないか、へへ!ま、仲良くやろうぜ!」
『小僧』
「…何だよ?」

アウルの言葉が終わった瞬間、オディオスは静かに口を開いた。アウルはやっと乗ったかと少し満足しつつ、声を低くして答える。

『俺は任務のためなら誰だって殺し、生かせといわれれば生かしてやる。それがコーディネイターであれ、ナチュラルであれ、そして強化人間であれだ。
そして、任務に支障をきたすファクターとみなせば、これを排除する』
「おもしれぇ、それがお前に出来るっていうのかよ?」
『…試してみるか?』

オディオスが通信に答えると同時にダガーLをアビスのほうへと向かせる。その際、腰に備えてあったナイフの柄に手をかけておく。さながら戦闘体勢のようだ。
アウルも、そもそも彼の実力を測るため、その気だったので、にらみ合うようにアビスを向ける。そんな険悪なムード漂う両者に気がつき、周りがざわめき始める。
元々問題視されているファントムペインの中でも問題児だったのがアウルだ。精神的にも若く、我侭で口が悪く、また好戦的だったので、普通の者達では手が付けられない。
つまり今ここで彼らを止められるものといえば、同じファントムペインである。

「おいやめろお前ら!アウル、お前何味方に喧嘩を売ってるんだ!通信聞いたぞ!」

ネオと。

「アウル!戦闘の前に無駄な力を消費するな!」
「喧嘩、ダメ」

強化人間のリーダー格、スティング・オークレーと、同じ強化人間のステラ・ルーシェくらいだった。彼らはそれぞれの機体をにらみ合う二機の間に割って入り、ネオはオディオスの、スティングはアウルの機体を離す。

「ちぇ…邪魔が入っちまった。この勝負はお預けしておいてやるよ!この戦いが終わったらな!」
『おい、待てアウル!ちっ!あんた…悪かったな。あいつはああいうやつだから、気にしないでくれ」

アウルはアビスでオディオスのダガーLを指差した後、所定の場所へと戻る。スティングはアウルを問い詰めようとしたがその前に逃げられ、一言オディオスに謝罪した後に自分の配置に戻っていった。
オディオスは小さなため息を吐きつつ、ダガーLの戦闘態勢を解除し、カタパルトへと向かっていく。それについていくようにネオのウィンダムも歩き、ネオはオディオスに通信を入れて謝罪する。

「悪いな、中尉。うちの若いやつらは血の気の多いやつらが多くてな。特にあのアウルは一番血の気が多いんだ。若気の至りだと思って許してやってくれ。後できつくしかっておくから」
『ああいう連中はうちの部隊にも一人いるから、慣れてはいます。別に気にしてはいません』
「そうか、それならいいんだけどさ。んま、ぼちぼち行こうか」

どうやらオディオスもそんなに気にしていないという素振を見せているようだ。それに安心したネオは出撃準備を始める。オディオスもその後に続く。

『ネオ』
「何だ、スティング」

と、そんな彼の元に通信が入る。今度はスティングのようだ。ネオはそれを受け取り、彼と話し始める。スティングはヘルメットの位置を調節しながら、ネオに言った。

「さっきは止めたけど、悪いが俺もアウルと同意見だ。余所者のあの野郎を横におけるほど、俺は信頼できねぇ。大体、あいつは俺たちが敵にしているコーディネイターじゃねぇか」

なるほど、正直なものだ、とネオは苦笑してみせる。しかし、先ほどの行為といい、スティングがここまでしっかりとし、リーダーとしての素質があるとは思わなかった。
そんなことを思いつつ、ネオはオディオスを弁明すべく、彼の過去を喋り始めた。

『ま、ちょっと気持ち悪いって言うのはわかるがな。しかし、連合内にだってコーディネイターはいるし、そいつらのなかにはブルーコスモスもいる。あいつはその典型だよ。家族をザフトに殺され、全てを失った。
あいつは自分の復讐のためなら同族殺しだっていとわない。いや、もはやあいつの中には復讐なんてものは存在しない。あいつは任務に忠実な殺人鬼。連合の命令には従う。後ろから撃たれたり、裏切るなんて事はまずない』
「へぇ、じゃあ死ねっていわれりゃ死ぬのか?」
『恐らくな。まあ、ただじゃ死なないだろうがな。というわけでまあ、信頼してやってくれや』

そう言って、ネオは通信をきった。スティングは横目でカタパルトに運ばれるダガーLを見る。彼にとって、コーディネイターは信頼出来る相手ではない、いや敵として教えられてきたものたちではないか。
そのコーディネイターと今度は協力しろと命ぜられる。なんとまあ、都合のいいことか。しかし、ネオの言う事だし、連合軍にいるコーディネイターなど、余程の物好きだろうし、スパイというわけでもなさそうだ。
後はトチ狂って変な行動に出なきゃいい。それの監視も、ネオがやっているのだろう。今は、目の前の敵を叩くのみ。

「(お手並み拝見とさせてもらうぜ)」
『X24Sカオス、発進スタンバイ』
「スティング・オークレー。カオス、発進する!』

JP・ジョーンズのオペレーターの指示に従い、スティングはカオスを大空へと飛び立たせる。

「ダガーL、オディオス機出る」

続けて黒いダガーLが、ジェットストライカーの翼を広げて飛び立つ。この青空に、黒は一層に目立っていた。しかし、それもJPジョーンズやインド洋前線基地から発進したウィンダムによって隠されてしまう。
と、オディオスはネオからの通信に気がつき、それを受け取る。

「こちらオディオス」
『俺だ。恐らくミネルバは2機の空戦用のMSを所持している。そのうち一機はフェイズシフト装甲だ。お前さんは俺たちと協力して、そいつを叩く。もう一方の方は、適当にウィンダムをぶつける』
「了解、インパルスを狙う」

オディオスは端的にネオの命令を復唱すると、ビームライフルをすぐ使えるよう構えておいて、そのまま群の戦闘へと躍り出る。彼の任務の一つは、ザフトのMS、それも最新鋭のものと戦闘をし、
それのデータを取る事である。ならば、積極的に攻撃を加えるだけだ。それも、仕留めるように。いや、仕留められるくらいのMSならばデータはいらない。
忌わしきあのコーディネイターと共に消えてもらうだけだ。そのたった一つの私情と任務を引っさげ、オディオスはミネルバのいる海域へと向かっていく。

さて、そんな頃のミネルバも、当然この群の存在は感知していた。

「熱紋照合…ウィンダムです。数30!うち、カオスとダガーL一機ずつ!」
「来た?」
「しかし、数が多いですな、また!」

バードが報告をし、アーサーが軽い悲鳴のように叫ぶ。タリアも少し数には驚いたものの、それを表に出さぬように背を伸ばしながら命令を出す。

「コンディションレッド発令!またあの部隊ね…。母艦は確認できる?」
「できません」
「隠れてるのでしょうか?」
「かもしれないし、この近くに基地があるのかもしれない。しかし、こんなところに基地なんてあったかしら?」
「いえ…どちらにしろ、目の前にいる敵を倒すしかありませんな!」
「それもそうね。ブリッジ遮蔽。対モビルスーツ戦闘用意。ニーラゴンゴとの回線固定!」

タリアの指令を受けて、ミネルバブリッジ構成クルー達は素早くその作業をしてみせる。やっとのこと、ミネルバ内の連携が上手く行きそうな様子だ。タリアは満足しつつ、前を見据える。
アーサーも飛び降りるように副長席に座ろうとしたが、どうやら着地に失敗して、尻餅をついて、腰を抑えながら座り込む。その様子にクルー達は噴出しそうになりつつ、職務を続ける。
タリアも呆れてものも言えない状態のようだ。と、そんな彼女の元に、この異変に駆けつけたアスランがブリッジにやってきた。

「地球軍ですか?」
「ええ。どうやらまた待ち伏せされたようだわ。毎度毎度人気者は辛いわね。既に回避は不可能よ。本艦は戦闘に入ります。貴方は?私には貴方に対する命令権はないわ」
「私も出ます」
「そう。じゃあ早く格納庫へ行く事ね。あと、MS部隊の指揮権、貴方に任せるわ」
「分かりました。では」

アスランは敬礼をした後、駆け足で格納庫へと向かっていった。その後姿を見送り、タリアは再び前を向く。と、そんな彼女にアーサーが声をかける。

「いいのですか?指揮権まで渡して」
「ん?まあ、前大戦での英雄だったのだし、仮にもフェイスよ?信頼に値すると思うけどね」
「ううむ、しかしですなぁ。信頼といえば、確実なつながりを持っているナタリー・フェアレディのほうがいい気がすると思いますが。MS操作術もそれなりですし」
「確かに、コミュニティならね。でも私個人としては彼女には任せられないのよ。優しすぎて、バカピンクだし」
「ああ、確かに」

何となく、アーサーはタリアの最後の言葉で全て納得してしまった気がする。バカピンクというのはもうすでにミネルバで定番となった単語で、知らないものはいない。
バカピンクといえばナタリーであり、ナタリーといえばバカピンクである。そういう方程式が成り立っているのだ。
ともなれば、流石のナタリーことラクスもこういう言葉には敏感になるらしく、格納庫で盛大にくしゃみをした。

「うう~…また誰かがバカピンクと呼んだのかしら…」
「大丈夫?まだ調子悪いんじゃないの?はい、これ」
「すいません…でも大丈夫ですわ」

ヘルメットを手渡しながら、ルナマリアはティッシュを一枚彼女に渡す。ラクスは受け取ったティッシュで一度鼻をかみ、ゴミ箱に投げ捨て、ヘルメットを被る。
ルナマリアもヘルメットを被り、パイロットスーツと一体化させる。と、そんな所へアスランも合流した。

「アスラン」
「ああ…。ルナマリアにナタリーか。君達も出撃準備か」
「はい。アスランもですか?」

ルナマリアに聞かれ、アスランは頷きながら答える。

「ああ。俺がMS隊の指揮を取る事になった。よろしく頼む」
「あ、そうなんですか。それは心強いですね!」
「はあ、よろしく御願いします」
「ああ。よろしくな。じゃあ、先に行っているぞ」

嬉しそうに言うルナマリアと、全く正反対に何か低い声で言うラクスを気にせず、端的にそう言うと、アスランはセイバーのほうへと向かっていく。
ルナマリアはラクスの態度の意味に気がついていた。彼女は少し苦笑しながら彼女に言った。

「まぁだ気にしてるんですか」
「え?ああ、すいません。意識しないようにしてるんですけど…」

ラクスはこつりと三度、ヘルメットを、丁度額に位置する場所を叩いて気を取り直してみせる。ルナマリアは更に苦笑しながら首を横に振りつつ、彼女をフォローする。

「いいのいいの。やっぱり、そういう風に自分に正直なナタリーさんのほうがいいですよ」
「そうですか。ああ、そうそう。ルナさん。私のこと、ナタリーで構いませんよ。年もそんなに変わらないですし、ルナさんもそのほうが気が楽でしょう?あ、あと敬語も」
「え、本当に?じゃあ私もルナでいいですよ。ナタリーも息苦しいでしょ?敬語もいいですよ」
「お気持ちはありがとうございます、ルナ。でもこの敬語だけは直せないんですよね」
「へぇ、直そうとは?」
「してません」
「やっぱり」

予想通りの返答に、ルナマリアは思わず笑ってしまい、それに釣られてラクスも笑ってしまう。どうやら先日のことで友情が芽生えたらしく、先輩後輩の関係ではなく、友達としての接し方に二人はなっていた。

「こらぁ!早く準備しろぉ!」

と、そんなところに、ケイがバビのハッチ近くから叫び散らしてきた。確かにいい加減出撃の時間だ。ラクスはルナマリアと別れて、少し申し訳なさそうにハッチのほうへと登る。
ハッチに上ってみると、なにやら怪しいビンから水分補給…というより栄養補給をしているようだ。寝不足の彼には何とも代えがたい嗜好品だろう。

「何ですの?その飲み物は」
「カンポーで作った栄養剤、らしい。まずいな、でも癖になる。2年前の僕じゃあ飲むことが考えられない味だよ」
「へぇ」

適当に答えつつ、ラクスはコクピットの中に入る。それを覗き込む様に、少し追うケイは栄養剤を一口飲み、それを口から離して説明を始めた。

「腕に収出可能なブレードを仕込んどいた。飛行形態でも使おうと思えば仕える品だ。まあ、銃剣だけでもいけると思ったんだけどね。もっと君の格闘能力を生かせる武器のほうがいいから」
「毎回ありがとうございます。でもケイさんもあまり無理しちゃいけませんよ」

ラクスはケイの体を案じ、心配そうに声をかける。ケイも苦笑しながら答える。

「わかってる。心配してくれてありがとう。さて、気を引き締めていかないと」
「はい。ハッチ、閉めます」
「うん。健闘を祈るよ!」

ケイは少し笑顔を見せて心配ないと諭した後、ハッチから下がる。それを確認して安心したラクスはハッチを閉め、バビのOSを立ち上げる。起動メッセージが流れた後、バビのモノアイが光り、バビが動き出す。
立ち上がらせた後、ラクスは武器のチェックをするべくコンソールを動かす。以前オーブから脱出する際に連合と交戦したときと同じ装備に加えて、ブレードが認識されている。
この手の武器というのは、ゲイツなどが装備していたタイプで、ラクスとしては初めて使うものだ。
全く、色々と思いつくものだと少しケイに対して感心しつつ、初めて使う武器に緊張感を覚えながらリフトでカタパルトまで運ばれる。
ふとバイザーを開けて、手の甲を軽く噛み付いてみる。痛みが手の甲に広がり、それが一層ラクスを引き締める。とりあえずカタパルトに運ばれるまでは咬み続ける。と、カタパルトに設置された時に通信が入り、咬みながらそれを受け取る。

『ナタリー…って何やっているんですか?』
「はふ、気にしないでください。ちょっと気を引き締めていただけです」

どうやらメイリンのようだ。メイリンはラクスの行動に呆気にとられていた様子で、ラクスもそれを見て誤魔化しつつ口を甲から離す。
メイリンはまだ呆気に取られながらも、気を取り直して職務に勤めようとする。

『バビは発進後、アスラン・ザラの指示に従い、敵の迎撃に向かってください。ミネルバの守りは前回同様、ザクファントムとザクウォーリアが担当します』
「二機だけで守備って…結構つらいのでは?」
『えっと…ニーラゴンゴも対空装備で援護してくれるそうなので、その心配はとりあえずいらないという事です。とりあえず目の前の敵に集中するようにと』
「了解です」
『ご健闘をお祈りしています。では、バビ発進、どうぞ!』
「ナタリー・フェアレディ、バビ、参ります!」

ブリッジからの発進許可を受け、バビは大空へと飛び出していく。そしてゆっくりと減速しながら、他の機体が出てくるのを待つ。その間、先ほどの武器を確認すべく、
ブレードを腕から取り出す。ブレードは丁度拳よりも少し長い射程をもち、拳で殴る感覚で使えるようだ。
両手にライフルを持ち、一応その片方は銃剣の形を取り揃えているが、密接した状態では極端に弱くなる。それは機体の使用目的から考えれば、その状態になる事自体が想定外なのだが、
ミネルバで運用されるに当たって、その目的は艦の護衛と、スタンドアローンもしくは少数での連係プレイに変わるわけで、そのためにピンクのバビは改造されたのだった。
しかしそれは量産型の持ち味の一つ、整備性の低下を意味している。その例がラクスの前の愛機ジンである。特殊な改造を続けてきたために、あれは今カーペンタリアで修理を受けなければいけない羽目になっている。
とりあえずこのバビは腕以外の改造が見られないので、ひとまずその心配も少ないが、とりあえず腕の損傷だけは気をつけなければ。

『ナタリー、シン、行くぞ』

アスランが通信をいれ、そしてセイバーがバビの下を通過する。ラクスも気合を入れなおし、ブレードをしまってついていく。さらにその後ろをフォースシルエットを装備したインパルスがついていく。
恐らく、シンは不機嫌な表情をしているんだろうな。そうラクスは考えつつも、自分もアスランを認め切れていない部分があり、そんな自分に少し自己嫌悪しつつも、目の前に近づいてくる敵を見つめる。
とりあえず集中しよう。全ては過去の事。今の自分はナタリー・フェアレディだ。ラクス・クラインではない。
ラクスはそう思い、操縦桿を握り締め、もう一度敵を見る。白と青のカラーリングのウィンダムの中に混じる、黒いダガーL。それを見たラクスは何故か、同じカラーリングであった、サトーのジン・ハイマニューバ2型を思い出したのだった。

続く

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