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LOWE IF_vKFms9BQYk_第05話

Last-modified: 2007-11-11 (日) 21:28:57

第5話

 アンドリュー・バルトフェルドが生きている事がパトリック・ザラに伝わって数日が経っていた。
 誰も通ろうとはしない寂れた公園がアプリリウス・ワンの一角に存在していた。
 その公園のベンチに、二つの人影が存在していた。 
 人影は、シーゲル・クラインとラウ・ル・クルーゼであった。
「あれはキラ・ヤマトなのか!?」
 シーゲルは先日、パトリックに会った時に見かけた人物に驚いていた。
 シーゲルはクルーゼにその疑問をぶつけた。
 クルーゼはシーゲルの言葉に頷いた。
「たしかにキラ・ヤマトです。パトリック・ザラに面会を求めた次の日、私は独自にコロニーメンデルにいた、ヒビキ夫妻の子供達のその後の消息を追いました。とても簡単に見つかりました。オーブにいる、ヒビキ夫妻の妹のヤマト夫妻に預けたようです」
「どうしてキラ・ヤマトがコロニーメンデルに関係があると知っている?」
 シーゲルは疑惑の目でクルーゼを見た。
「私は自分の出生を知っています。そのおかげで、あそこで何が行われていたか一通りは知っています」
「信じておこう」
 シーゲルはこれ以上クルーゼに追求するのをやめた。
「しかしキラ・ヤマトがザフトに入れば私達が動きやすくなるな」
「殺さなくてよろしいんですか?」
「今殺せばパトリックに怪しまれる」
「そんな物ですかね」
「用心に越したことはない」
「キラ・ヤマトは将来、確実に私達の邪魔になります」
「その時はその時だ……それにだ、あれは何かと使えるのでな」
 クルーゼはシーゲルのこの行動に驚いた。
 普通なら確実に行動する場面でも、この男はほとんど動こうとしないのだ。
「私もまだキラ・ヤマトを殺そうとは思いませんから」
(ここで、キラ・ヤマトを殺せば私はシーゲルに殺される。私はまだ死ねないのだから)
「そうしてもらうと、こちらとしても助かる」
(完成していないあれを、クルーゼに破壊されてはたまった物ではないな)
二人は決して本音で喋ろううとしなかった。
「あなたがキラ・ヤマトを知っているなんて驚きました」
 クルーゼはシーゲルがキラを知っている事に驚いた。
「私も関係者なのだよ。君だってそうだろう? ラウ・ル・クルーゼ」
 シーゲルの言葉にクルーゼの口元が歪んだ。
 反対にシーゲルは笑っていた。
「関係者とはどういう事ですか?」
 クルーゼはシーゲルを殺したいという感情を制御しながら、シーゲルに聞いた。
「私があの研究所の出資金をほとんど出していたからな……コーディネータを越すコーディネータが私の夢だった。君もそこにお金を出していたではないか……」
 クルーゼはシーゲルの言葉の意味に気がついた。
「いや君ではなかったな……」
 シーゲルは醜悪な顔でクルーゼを見ていた。
「なら、貴方はなぜ自分の子供でしなかったんですか?」
 とクルーゼの言葉に、シーゲルは笑い出した。
「自分の子供を研究材料!?馬鹿を言ってはならんよ。他人のだから良いのだよ。失敗しても私は何も悲しくない。罪悪感もない。だからこそ続けられるのだよ」
 シーゲルの言葉を聞いた、クルーゼは胸糞悪くなった。
(私にまだこんな感情があったのか……)
 クルーゼは、自分の感情に驚きを表した。
「話は変わりますけど、アンドリュー・バルトフェルドはどうやって生き残ったのでしょうか?」
 クルーゼはシーゲルに聞いてみた。
「どうして私に?」
「貴方が、真っ先にその情報をパトリック・ザラに伝えたので。私がその後情報源を調べると全てが貴方の所に行き着くんですよ」
「世界には、知らなくてもいい事があるんだよ」
「分かりました」
 シーゲルの威圧感のある言葉にクルーゼは頷いた。 
「私はこれから用事があるのでこれで失礼するよ」
 シーゲルはベンチから立ち上がると、公園を後にした。
 クルーゼは一人ベンチで呟いた。
「食えない、そして最低な男だな。私以上に……しかし面白い!世界は私が思った以上にさらに暗くて深い業が巣食っているようだな」

 アークエンジェルの格納庫で少年達の嬉しそうな声が響いた。
 格納庫には殆どの人がいないのか、格納庫全体に響いた。
「トール、すごいじゃないか!シミュレーションだけどザフトのモビルスーツを撃破するなんて!」
 眼鏡をかけた少年サイ・アーガイルが、先程シミュレーションを終了させた少年トール・ケー二ッヒの肩を叩いた。
 シミュレーションの相手は、キラのプログラムで作られたイージスであった。
 キラはその二人を遠くからながめていた。
「キラ……」
キラは自分を呼ばれるのに気付き、声の方へと振り向いた。
 そこにはミリアリア・ハウが立っていた。
「何か用?」
「キラは、トール達に戦ってほしいの?」
「アークエンジェルには落ちて貰いたくないから。それに使える人員は使わないと、僕が死ぬじゃないか……そんなのは嫌だから。皆もそう思っているからこそ、出来ることをしているんだと思う。どうしてそんな事を聞くの?」
「気に障ったらごめんなさい。どうして貴方がシミュレーションのプログラムを作っているのか気になったから……」
 ミリアリアは砂漠の時から、目の前にいるキラの事を名前で呼べなくなっていた。
「それだけ? 僕は忙しいから、特に用事がなかったら話しかけてこないでよ」
 ミリアリアはキラの言葉を黙って聞いていた。
「お二人さん、一体何を熱心に語り合っているんだ?」
 サイとトールがミリアリア達の所に近寄って来た。
「彼女が僕の作業を邪魔するんだよ。用がないならどこかに言って欲しいものだよ」
 キラは不機嫌そうな顔でミリアリアを見た。
 ミリアリアはキラの顔を見ると、その表情に気付き格納庫から出ていった。
「こまったもんだよ」
 キラは溜息をついた。
 トールはそんなキラを見た瞬間、殴り掛かっていた。
「やめてよね、トール。女一人がどこかにいったぐらいで僕に殴り掛からないでよ」
 キラはトールの腕を掴み捻り上げた。
 トールは腕の痛みで苦悶表情へと変化させた。
 サイは険悪な二人の間に割って入った。
「サイ、君も僕に何か用?」
 サイはキラにトールの腕を放すように言った。
「トールどうする? 僕にもう暴力を振るわないなら、腕を放してもいいよ」
 サイはキラの顔を恐る恐る見ると、その顔は今までみた事のない醜悪な表情をしていた。
「断る! キラがあいつを悲しませないって誓うなら何もしない」
 キラは自分の腕に力を込めた。
「キラ!お前はミリアリアの事をどう思っているんだ!」
 トールは叫んだ。その声には怒りの感情が含まれているようだ。
「そうだな……同じ軍艦に乗っているオペレータ。それ以上それ以下でもない」
 キラの言葉にトールは思考が止まった。
「キラ、お前今自分が何を言ったのか分かっているのか?」
 サイが突然叫んだ。サイはさらに続けてしゃべり出した。
「キラ、お前とミリアリアは……」
「恋人だったのかと言うのか!?馬鹿馬鹿しい」
 サイの言葉をキラが遮った。
「僕にそんな気持ちは全くない。それは君達の勘違いだ!僕には好きな人はいるんだよ」
 サイはフレイを思い浮かべた。
「フレイではないから……」
 サイはキラに何もかも見抜かれているような感じがした。
「じゃ、どうしてフレイと……」
「向こうが僕に近づいてきたから、僕もそれに付き合っただけさ」
「じゃ……一体誰なんだ?」
「ラクス・クライン」
 その言葉にサイは少なからず動揺した。
 キラとラクスは初めて出会って、そんなにしか時間が経っていないのに、キラはラクスを好きになったのだからそんな馬鹿な事はあるのか?とサイは思っていた。
「ラクス・クラインだと……あのどこか世間とずれた女か……」
 トールが痛みをこらえ、声を発した。
 キラはトールの腕を放すと、掌をトールの首にまわし、そのまま壁にトールの体をたたき付けた。
「彼女の悪口を言うな!」
 キラは掌を前へと進めた。その分トールの首が絞まっていった。
 トールが頷くと、キラは手を放した。
「何をしているんだ!?」
 ムウが三人の所に近寄って来た。
 キラはムウが近寄ってくるのを確認すると、すぐさまトールの腕を放した。
「白兵戦の訓練をしていたんですよ」
 とキラ先程の表情と違い、笑顔でムウに言った。
「無理はするなよ」
「訓練は今終わりました」
キラはそう言うと、トールに近づいた。
「トール、今度僕に突っ掛かってきたら、容赦なくその腕を折る」
 とトールの耳元で囁いた。
「まるで姫を守るナイトだな……」
 トールはすぐさまキラに反論した。
「その言葉、今の僕には心地が良いよ」
 キラはそう言うとムウの所へと向かった。
「ムウさん、待ってください。僕も行きます」
「君達はどうする?」
 ムウがトール達を見た。
「俺はここにいます」
 サイの言葉にトールも同じく頷いた。
「分かった。二人とも無理をするなよ」
「わかりました」
 ムウは二人の言葉を聞き、キラを連れて格納庫から出た。
「キラは変わったな……」
 トールは床を拳で殴りつけた。
「トール、何をしているんだ! そんな事しても何も変わらないぞ」
 サイが何度も格納庫の床を殴り続けているトールを止めた。
「二人とも何をしているの?」
 ミリアリアが格納庫に入ってきた。
「どうしてここに?」
 二人は格納庫に入ってきたミリアリアに驚いた。
「さっきキラがここから出て行くのを見たから、二人が気になって戻ってきたのよ」
「キラの事何も思わないのか?」
 ミリアリアはトールの言葉を無視した。
「サイも何か言えよ!」
 トールがサイのほうに体を向けた。
「俺、医務室から医療道具を持ってくるから……」
 サイは格納庫を後にした。
 ミリアリアはトールの腕を掴んだ。
「トール、どうして床を殴っているの?」
「関係ないだろ!」
 トールの叫び声は格納庫に響いた。
「そんな事はないわ。私さっきの見ていたから」
「キラの事どう思っている?」
 トールはミリアリアに聞いた。
「キラが最初に頃に戻ってくれたら、嬉しいわ」
「今のキラはどうなんだ?」
「今のは、昔のキラではないわ。何もかも変わってしまった。私はそう思っているわ」
「それでいいのか?」
「そう思う事にしているわ。そうでないと、やってられないでしょ」
 トールはミリアリアを抱き寄せた。
 ミリアリアはトールのいきなりの行動に、驚いた。
「トール……」
「こんな時になんだが、俺は前からお前の事が好きだった」
「……」
 ミリアリアは何も答えなかった。
 トールはさらにミリアリアを強く抱きしめた。
「今は御免なさい」
 トールはミリアリアの答えを聞くと、ミリアリアの体を離した。
「戦争中だから、今すぐに答えは出せない」
 二人の間に気まずい空気が流れた。
「やはり、キラの事が……」
「馬鹿そんなんじゃないわよ」
 ミリアリアが顔を真っ赤になって否定した。
「真っ赤になるって事はまんざらではないな……」
 二人の間にサイが割って入った。
「一体いつから……」
 ミリアリアがサイに聞いた。
「最初からだが……」
 二人は目を細め、サイを睨んだ。
「トール……」
「たぶん同じ事を考えていると思う」
 二人は同時にサイの顔面に、平手打ちをお見舞いした。
 格納庫にとてもいい音が響いた。 

「準備はいいかしら?」
 モニター越しに、紫の髪の白衣を着た女性がキラに話しかけた。
 その女性は、先日技術部で出会った女性だった。
 キラは頷いた。
「今から貴方には、ザフトの新型機に乗って、デブリ地帯を飛んでもらうわ」
「わかりました。今からテストを開始します。博士もデータをちゃんと取ってくださいよ」
 キラは白衣の女性を博士と呼んでいるようだ。
「わかっているわよ。さっさと始めてちょうだい」
「キラ・ヤマト、ゲイツ発進します」
 博士は、今日のキラの雰囲気に何か違和感を感じた。
 その違和感に、オペレータが感づいたようだ。
 オペレータの説明によると、キラの声には覇気が感じられなかった。
「五月病かしら?」
「五月病?」
 オペレータは博士が口に出した、単語の意味が分からなかった様だ。
 博士の白衣の裾が何かに引っ張られた。
 体をそちらに向けると、女の子が立っていた。
 女の子の格好は、ザフトに不釣合いな服装だった。
 博士も、どこをどう見てもザフトの格好ではなかった。
 女の子の最大の特徴はうさ耳だ。カチューシャにうさぎの耳がついているのだ。
 うさ耳を付けた女の子が博士に耳打ちをした。
「たしかに……うんうん……そうかもしれないわ」
 博士はその内容に首を何度も縦に振った。

 キラはゲイツを駆り宇宙へ飛び出した。
 モニターには先程自分が出てきた艦影が映った。
 博士から指示された指定のポイントへとキラは向かった。
 其処に向かうと、三機のジンがゲイツを待ち構えていた。
 そのジンには、コックピットの所に数字が刻印していた。
「博士から聞いていると思うが、今から模擬戦をおこなう」
 ジンのパイロットからキラに音声通信が入った。声からすると女性のようだ。
「またモニター通信ではないのですか?」
 とキラはジンのパイロットに音声通信をした。
「必要ないと何度も説明した? 相手を知ったらそれだけ、覚悟が鈍るからな!」
 と言うと同時に、数字の1が入ったジンが急速接近し、ゲイツに向かって重斬刀を振り下ろしてきた。キラはゲイツを操作し重斬刀を避けた。
 避けたと同時にキラのビームサーベルを取り出し、ジンの頭部に向かって振り下ろした。
 キラは自分の持つ操縦桿が軽くなったのを感じた。
 ビームサーベルが持つゲイツの腕が、二機のジンが持つ突撃銃によって破壊されていた。
「あなたの負けね……今日の貴方は、動きが全くなっていなかったわ。心ここにあらずって感じね」
 キラが操縦するゲイツのカメラにジンの突撃銃が向けられた。
「そのようですね……」
 キラはすぐさま負けを認めると、その場を後にした。
 キラが艦に戻ると、すぐさま博士に呼び出された。

「今日の貴方、今までで最悪だったわ。あれでは良いデータが取れないわ」
 キラがザフトに入り、新型MSのテストパイロットになって数日が経っていた。
 博士はその中で、一番最悪だと言った。
「素人の私が見ても、初めての時と比べて今は確実に変だと分かるんだもの」
 今のキラは、ストライクに乗っていた時より全てにおいて劣っていた。
「って人の話を聞いてる?」
「何がですか?」
 キラは博士の言葉を全く聞いていなかった様だ。
「あなた相当無理をしているでしょう?」
 博士の言葉にキラの表情が一瞬崩れた。キラはここ数日、疲れている体を無理に動かしテストパイロットの仕事をしていた。
「否定しないようね。そんな状態では話にならないわ。今日はもう終りよ」
「まだやれます!大丈夫です」
 キラは自分の体の事を無視し、博士にまだ続けられると進言した。
 博士がキラを睨み付けた。
「今の貴方は、はっきり言って邪魔なのよ! まともに自分の体を管理できない人間はここには必要ないの。兵士ならそれぐらいできて当然よ。無理してでも出てきても、任務中に仲間の足を引っ張るような状態では、いない方がましなのよ」
 博士はキラの体を手で押した。キラは博士の力でも体を支えきれず床へと、倒れこんだ。
「今の状態を治してきなさい。治す間は別の兵士にやってもらうわ」
「わかりました」
 キラは博士の指示に従うことにした。
「医務室に連れて行きなさい」
 と博士はうさ耳の女の子に命令した。
 キラはうさ耳の女の子と一緒に医務室へと向かった。

 医務室に向かうと、キラは医者に栄養剤と風邪薬を渡された。
「コーディネータなのに風邪を引くなんて珍しいな」
「はぁ……」
「数日は安静にするように……」
「はい」
 キラは簡単に医者から説明を受けると、医務室を後にした。
 そしてキラは自室に戻り眠る事にした。自室までうさ耳の女の子が付いてきた。
「またね」
 とうさ耳の女の子の声が、キラが部屋に入る際聞こえた。
「またな」
 とキラは女の子に返事をするとそのまま部屋に戻った。
 キラはそのままベッドに潜り込んだ。
「風邪か……風邪を引くなんて数年ぶりだな。たしかあの時はアスランと喧嘩したんだっけな。アスランの初恋の事でからかったら、本気で怒ってきたな……雨が降ってきた中でもやり続けて、次の日風邪をひいた以来だな。アスランはそんなにひどくならなかったが、こっちは生死の境を彷徨ったな。今なら笑える思い出だな……」
 キラはベッドの中でそんな事を考えていた。
「コーディネータなのに風邪をひいたか……」
 キラは風邪を治すために眠りについた。

 数日立つと、キラの体調は完全に治っていた。
 キラは博士に会いに行った。
「やっと治ったようね。貴方はここにいる他の者とは違うのだから、無理は駄目よ」
 博士はキラに注意を促した。
「すいません」
「まあいいわ。早速で悪いんだけど、この後先日と同じように模擬戦をしてもらうわ」
「わかりました」
 キラはそう言うと、格納庫へと向かった。

 格納庫へ向かうと、すぐさまゲイツに乗り込んだ。
 ゲイツに乗り込むと、ブリッジに準備が整った事を連絡した。
 オペレータが発進シークエンスを開始した。
「キラ・ヤマト、ゲイツ発進します」
 ゲイツは漆黒の宇宙に向かって飛び出した。

 キラはデブリ帯へとゲイツを動かした。其処には先日戦った三機のジンが待ち構えていた。
 キラはジンに通信を入れてみたが、何も反応がなかった。
「指定ポイントについたようね。一応模擬戦のルールを確認するけど、コックピットそしてその周りを狙うのは禁止。それ以外は基本的に何でも問題はないわ」
 キラはこのルールを聞いて頭を悩ませた。
(何度も聞くが、このルールっておかしくないか)
 とキラがこんな事を考えていると、博士から模擬戦開始の合図が入った。
 キラがモニターを見ると、ジンがこちらに向かってきていた。
「今なら分かるがこのジン、カスタマイズしてやがる! この速度、このゲイツと同じぐらいか」
 キラはコックピットの中でぼやくと、ゲイツを円を描くように動かし、ジンの背後に回った。
 背後回ると、ゲイツを上下左右に回転させ、周囲を確認した。
 モニターには、先程キラに突っ込んできたジンと、デブリしか映っていなかった。
 キラはビームライフルをジンの頭部に向けて構えた。
 キラは一機を落としたと確信した瞬間、コックピット内に衝撃が走った。
 衝撃が走った瞬間、すぐさまゲイツをその場から動かした。
「一体どこから……」
 キラはすぐさま周囲を確認した。
 モニターの中に一瞬、ジンが映った。キラが確認した中で、ジンは六機いた。
(最新鋭機一機だけで、こんな多くの相手で勝てる訳ないだろ!)
 キラは心の中で呟いた。
(しかしどうする……いまのままでは確実に先日の二の舞だ)
 キラは艦へと通信を入れた。
「博士、相手が複数なんて聞いていません!」
 モニターに映った博士に向かって怒声を浴びせた。
「そんな事いわれてなくても分かっているわよ。だってあなた聞かなかったじゃない」
 博士は当たり前のようにキラに言った。
 その言葉にキラは唖然した。そして怒りが沸々と湧き上がってきた。
「博士、それなら相手の位置をこちらに分かる様にしてください」
「わかったわ」
 キラの要望に博士は即答した。
 オペレータが相手のMSの位置をキラに教えていった。
 オペレータの指示にゲイツを動かすと、其処には一機のジンがデブリの影に隠れていた。
 キラはジンに向かってビームライフルを放とうとした瞬間、ジンがゲイツの方に振り向いた。
「いまさら気づいても遅い!」
 そのままキラはジンに向かってライフルを放った。
 ビームはジンの頭部を貫いた。
「あの状態でこちらに気づいたとは、近くに仲間がいるのか?」
 キラはオペレータにこの近くにジンがいるかどうか聞いてみた。
 オペレータによると、近くに数機のジンが隠れているようだ。
 キラはオペレータの指示に従い、隠れているジンに向かった。
 ジンは近づくゲイツに気づき、ゲイツの方に振り向き突進してきた。
 ジンに向けてビームライフルを放とうとするが、照準をジンに構えた瞬間、ジンはライフルの照準の外へと逃げていった。
 キラはジンの逃げていった方向に向かった。
 逃げているジンに向かってライフルを構えるが、ジンは上下左右に向きを変えてライフルの照準から逃げていた。
「まるで後ろに目がついているようだな……ライフルが当たらないという事は、接近戦しかない!」
 キラはオペレータから今逃げているジン以外で、キラから一番遠いジンを教えてもらった。
 キラはゲイツをそのジンのいる位置へと向けて、加速させた。
 この場から離れる際、キラは狙われないようにライフルで、牽制しながら後にした。
 キラはデブリをうまく避けながら指定のポイントへと向かっていた。
 デブリの中に、ジンが数機見えたが、相手も気がついていない様なので、キラはそれを無視した。
「相手に悟られる前に仕留める!」
 キラは、ゲイツの速度を上げた。
「くっ」
 キラは体に掛かるGに苦痛の声を上げた。
「コーディネータ用に調整されているゲイツでは、まだこの体がついていけないか……」
 モニターに一機のジンが映った。
 ジンはゲイツに気がつくと、持っていた突撃銃を使ってきた。
 キラは弾丸に当たらないようにジンを急速旋回させた。
 キラの体に先程とは比べ物にならないほどのGが重く圧し掛かった。
「意識が刈り取られそうだ!」
 キラは何とか意識を保つと、ビームサーベルを構え、ジンの頭部を薙ぎ払った。
「二機目、ハァハァハァ、ザフト兵はいつもこんなGで動いているのか……ナチュラルなら殆どの者はこのGに耐えられないな。これに乗るのは殆どザフト兵だから意味がないか……
 体が酸素を求めているのか……」
 キラの酸素を求め何度も深呼吸をした。
 呼吸が元に戻るとキラはオペレータに残りのジンの位置を聞いた。
「バッテリーの残量が少ない。切れる前の倒してみせる!」
 キラは残りのジンを倒すためその場を後にし、戦場へと向かいゲイツを加速させた。

 ジブラタル基地に到着したアスラン、ニコルはクルーゼ隊に合流した。
 二人はブリーフィングルームで今後の方針をクルーゼに聞いていた。
 ブリーフィングルームには、イザーク、ディアッカが待っていた。
「お願いします隊長!連合のあの艦を追わせてください!」
 イザークはクルーゼにアークエンジェルを追撃したいと申し出たのだった。
「イザーク、感情的になりすぎだぞ」
 ディアッカはイザークに冷静になるように促した。
「たしかにあれが連合本部に行かれては、確実に戦争が長引く……確実に阻止しなければ」
 クルーゼはそう言うと、目の前にいる少年達に目線を向けた。
「私は次の任務の準備があるため、私は動けんが君達だけでやってみるか?」
 クルーゼの言葉に、四人は驚きを表した。
「自信がないのかね」
「そんな事はありません」
 イザークは自信を持ってクルーゼに答えた。
「では、イザーク、ディアッカ、ニコル、アスランで隊を結成し……そうだな隊長はアスラン、君だ」
 とクルーゼはアスランを見た。
 クルーゼの言動にアスランは戸惑った。
「カーペンタリアで母艦を受け取れるように手配しよう」
「隊長……私が指揮をするのですか?」
 アスランはイザーク達を差し置いて、自分が指揮官の立場になる事に動揺が隠し切れな
い様子だった。アスランはそれ以外にも心が揺れ動く要素があった。この任務の目的はアークエンジェルを撃墜すること、それはキラを殺す事になる、アスランは表面上クルーゼにキラを殺せると言ったが、実際心の中では殺したくなかった。
「いろいろと因縁のある艦だ。君達には期待しているよ……」
「その期待に答えてみせます」
 とクルーゼの言葉に、イザークが答えた。
「ふむ、イザークに隊長を任せるべきだったか?」
 クルーぜはイザークを見た。
 イザークはクルーゼの言葉に驚きを見せた。
「イザークが隊長ですか……」
 二コルはイザークの隊長姿を想像し、苦笑した。
「現状ではアスランだが、これは決定事項ではない。その辺は君達が話し合って決めてくれたまえ。決まったら私の所に報告しにくるように」
 クルーゼはそう言うと、ブリーフィングルームから出て行った。
 ブリーフィングルームには、アスラン、二コル、ディアッカ、イザークしかいなくなった。
「どうするんだ?」
 ディアッカが近くにある長机に腰をかけた。
「隊長の件か」
 イザークは壁に背を預け、ディアッカの言葉に答えた。
「僕は遠慮しときます。それとディアッカ座るならちゃんとイスに座ってください」
 と二コルは、長机の上に座っているディアッカに注意した。
「俺もパスだ……で、イザークお前はどうするんだ?」
 ディアッカの言葉に、イザークは首を横に振った。
「俺が隊長になるのはまだ早いと思う。それにアスランにしてもらった方が俺としても助かるからな……」
「イザークがしないって事は、隊長が言ったようにアスランという事で」
 と二コルはアスランを見た。アスランは心ここに在らずっていう感じでその場に立ち尽くしていた。
「アスラン」
 とニコルは耳元に近づき囁いた。
「ぬわぁー」
 アスランの声がブリーフィングルームに響き渡った。
 三人は耳を押さえた。
「うるさいですよ」
 ニコルが笑顔でアスランを見た。
 イザークとディアッカはそんな二人を見ていた。
 二人はアスランが声を上げたのは、ニコルお前のせいだろうと思ったが決して口にはしなかった。言えなかった。
「それで話を聞いていましたか?」
 アスランは聞いていないと答えた。
「アスランは、僕達が今後の事について話していたのに、まったく聞いていなかったんですね……」
「ゴメンナサイ」
 ニコルの笑顔に恐怖を感じ、アスランは即座に謝った。
「アスラン、あなたが僕たちの隊を指揮する隊長です。これは決定事項です」
 二コルはアスランが口を挟む前に、すべてをアスランに聞かせた。
「みんな、それでいいのか……」
 アスランが三人を見た。
「今の所な……」
 とイザークがアスランを睨んだ。
「今の所?」
 アスランが意味がわからないと言う顔をした。
「隊長としての行動におかしな所があったら、すぐさま変更するからな」
 イザークの言葉にアスランは納得した。
 三人は、アスランを隊長として完全には認めていなかったようだ。
 アスランは、宇宙でストライクを撃破の命令を無視し、捕縛した。その時、撃破していればこのような事にはならなかった筈だと、アスランは思った。
「そうだな。もし俺が隊長としての行動におかしな点があったら、すぐさま隊長を変更しよう。そうだな次の隊長候補はイザークで構わないか?」
「隊長命令なら断れないな……」
 イザークは了承したよ。 
「報告よろしく頼むな、隊長さん」
 ディアッカはアスランの肩を叩くと、そのままブリーフィングルームから出て行った。イザークもディアッカの後に続いた。二コルはその場に留まったようだ。
「アスラン……」
「どうした、二コル?」
 アスランは一歳したの少年を見た。
「あなたは前線から退くべきです]
アスランはニコルのいきなりの言葉に頭が真っ白になった。
「どうしてそんな事を……」
 とアスランはニコルに聞いた。
「アスラン、あなたは何かを迷っているのでは? 今の状態で戦場に行っても死にます」
 アスランはニコルに何も言えなかった。
「僕のは単なる忠告みたいなものですから聞き逃して貰っても構いません。でも僕は死ぬと分かっていて仲間を戦場に行かせたくないんですよ」
 ニコルはアスランを見据えた。
「ニコルはすごいな……確かに俺は今迷っている」
 ニコルは何も言わなかった。
「しかし、この迷いは今だけだ。心配しないでくれ」
「アスラン、それなら今その迷いの答えを聞かせてください」
 アスランはニコルに何も言えなかった。
 そんなアスランを見たニコルが口を開いた。
「アスラン、あなたは今の仲間より、昔の友を選ぶんですか?」
「二コル、一体何を言っているんだ?」
「どうなんですか……」
 二コルはアスランに近づいた。
「今の仲間を選ぶに決まっているだろう」
「わかりました。その言葉を信じましょう。それで隊長はアスランでいいんですね?」
 アスランはニコルの言葉に頷いた。
「誰もやる気が無いのなら俺がやろう」
「お願いします。みなさん、アスランに期待していますから」
「今から隊長の所に行ってくる」
 アスランはブリーフィングルームから出て行った。
「あなたはどちらを切り捨てるんでしょうか……どちらを切り捨ててもあなたは、後悔するんでしょうね。どちらも切り捨てたくないというのは無理なんですよ……」
 ニコルの悲哀に満ちた言葉がブリーフィングルームに木霊した。

 アスランはクルーゼがいる部屋の扉をノックした。
「入りたまえ」
「失礼します」
 アスランはクルーゼの部屋に入っていった。
 クルーゼは椅子に腰をかけていた。
「先ほどの話、決まったのか?」
 とクルーゼがアスランに話しかけてきた。
「はい、隊長は私がなります」
 クルーゼはアスランに顔を向けた。
「約束は覚えているかね?」
 クルーゼの言葉にアスランの顔がこわばらさせた。
 クルーゼとの約束、それは次に出会ったら、キラを撃つという事だった。
「はい」
 アスランは頷いた。
「ならばいい」
「隊長……」
「なにかね、アスラン?」
「ニコルが私とストライクのパイロットの関係を知っているようでした」
「本人に聞いてみるといい」
「わかりました。それでは失礼します」
 退室しようとした、クルーゼがアスランを呼び止めた。
「迷いは捨てろ。ストライクのパイロットは自分の知らない者だと思い込め。ではないと次に撃たれるのは君かも知れないのだぞ」
 クルーゼの言葉にアスランは足を止めた。
「大丈夫です」
 アスランはそう言うと部屋を後にした。
「あれは、贋作、紛い物。アスラン、気にする事はない。どうせ殺しあうなら本物と殺しあってもらいたいものだ。それもまた一興だな」
 とクルーゼは誰もいなくなった自室で呟いた。

 二コルはブリーフィングルームから出ると、アスランと出くわした。
「アスラン、意外と早かったですね」
「隊長との話は、すぐに終わったからな……ニコルちょっといいか?」
「なんでしょうか?」
「さっきの話なんだが?」
 アスランの言葉に二コルは記憶を掘り起こした。
「アスラン、あの話なら、この戦争が終わったらお話しましょう」
「今、聞きたいのだが……」
「終わってからです。これでアスランは、この戦争を生き残らなければなくなりましたね」
「教えて貰えないのだな」
「はい」
 二コルはアスランに笑顔で答えた。
「それでは、僕は部屋に戻ります……」
 二コルはアスランと別れ、部屋に向って歩き出た。
 部屋に着くと、二コルは机に置いてある端末を起動させた。
 二コルは持っていた、データディスクを端末に入れ、起動させた。
 画面にはキラ・ヤマトが映っていた。
「これを見ているという事は、あの事を信じくれたのかい。二コル・アマルフィ」
 画面越しのキラは笑っていた。
「ええ確かに、あなたの言葉どおりアスランは驚いていましたよ」
 目の前のキラは何も答えない。
「どうして、あなたは僕の名前を知っているんですか?僕は知らないのに……」
 画面越しのキラからの返答は無いと分かっていても、二コルは口に出していた。
 キラが喋りだした。
「アスランはこのままで行けば確実に死ぬから、君にその手綱を引いてもらいたいのだよ……
 他の二人は、君よりアスランをうまく使えないからな……」
 二コルはキラの言葉に苦笑した。
「その見返りとして、足つきを落とすための、知恵を貸そう」
 キラはニコルに足つきを落とすための知恵を貸した。

 キラは博士に呼ばれ技術室に呼ばれていた。
「ようって何ですか?」
「新型MSのテストパイロットにしてもらうわ」
「新型ですか?」
 キラの言葉に博士は頷いた。
 博士はMSの設計図をキラに見せた。
「核エンジン搭載のMSのテストパイロットですか?」
「知っているの? つまんないわね」
 博士はキラがこのMSを知っていたことに、つまらなそうな顔をした。
「先日、ハッキングしましたから……」
 博士は目頭を押さえた。
「あなた一体何をしているの? そんな事したら、立場が不味くなるでしょう」
「博士、ばれなきゃ問題ないですよ……」
 博士は何も答えなかった。キラを見る目には、勘弁してよねという雰囲気を醸し出していた。
「話は変わるけど、あなたクルーゼ隊の緑の髪の子に、何か渡していたでしょう?」
「見ていましたか?」
 博士はええと頷いた。
「ちょっとした物ですよ」
 キラは笑顔で答えた。
「あなたが乗っていた艦を、撃破するための作戦が記述しているのかしら?」
「そうですよ」
「簡単に認めるのね」
「隠し事はしても意味ないですから……」
 とキラはうさ耳の女の子を見た。
「それで、あなたの作戦はどうなの?」
「なんとかなるんじゃないですか?」
 博士はキラの答えに溜息を漏らした。
「博士」
「何」
「ジェネシスどこまで完成しました?」
 キラの言葉に、博士は手に持っていたコーヒーが入った紙コップを床に落とした。
「あなた、身の振り方を考えないと、どうなっても知らないわよ?」
「わかっていますよ」
「わかっていても、絶対にやめないでしょう?」
「はい」
 キラは自信をもって返事をした。
 博士は頭を抱えたくなった。
「半分以上は出来上がっていると思うわ」
「そうですか」
「ひとつ聞いてもいいかしら」
 博士はキラを見た。
「前々から思っていたんだけど、あなたってそんなに、機密情報知ってどうすんのよ?」
「趣味ですよ」
 キラの言葉に博士は、呆れて何も言えなかった。
「その趣味で、こちらに波風を立てないようにしてちょうだい」
 と博士の言葉にキラは頷いた。
「あの博士」
「何よ」
 博士は面倒くさそうにキラの方を見た。
「模擬戦で戦ったパイロットが誰か知りたいです」
「知ってどうするのよ?」
「仲良くなろうかと思いまして。声からして女性だったので……」
「駄目よ」
 即答された。
 そして博士は、うさ耳の女の子が持ってきたコーヒーを飲み始めた。

 ニコルは部屋の中で溜息を漏らした。
「この作戦、厳しいような気するな……それに準備するものたくさんあるし、揃わなかったら無理なんだろうな」
 ニコルが考えていると、ドアをノックされた。
 ドアを開けると、目の前にはイザークとディアッカが立っていた。
「二人ともどうしたんですか?」
「今暇か?」
 とディアッカの言葉にニコルは頷いた。
「外出許可が出たんでな、近くの町に出ようとな? そこでニコルに、ついてきてもらおうと思ってな」
「わかりました」
 ディアッカの頼みをニコルが断れなかった。
「アスランはどうしたんですか?」
「あいつには内緒だ……」
 とイザークがニコルの質問に答えた。
 ニコルは二人がなぜ、町に出ようとしているのか理解した。
 二人は、アスランに隊長就任のお祝いに何かを上げようとしているようだ。
「しかし、アスランが欲しい物ってあるんすかね?」
「それが分かったら苦労しないな」
 ニコルの疑問に、ディアッカが当然のように答えた。
「町に行って決めよう。二人とも早く乗れ」
 イザークが軍から車を借り、二人に早く乗れと促した。
 そして三人は町へと車を走らせた。


第5話完
第6話に続く

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