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LOWE IF_vKFms9BQYk_第08話

Last-modified: 2007-11-11 (日) 21:27:58

第8話

 キラは朝早く宇宙港へと向かっていた。
 先日キラは、パトリック・ザラに呼び出され、ある命令を受けた。
 その命令とは、技術部に在籍している博士をオーブへと連れて行く間の護衛のようだ。
 宇宙港に着くとキラは待ち合わせの場所へと向かった。
「あなたなの?」
 待ち人はキラを見るなり、驚きを表わした。
 キラもその人物の顔を見て、笑みをこぼす。
 護衛する博士とはキラがクルーゼとザフトで初めて立ち寄った場所で出会った女性のようだ。
 紫の髪がとても似合う女性だ。
 いつも博士の近くにいる少女がいない事にキラは疑問に思い、博士に聞いた。
「あの子は先の便でもう向かっているわよ」
「一人でですか?」
「馬鹿いうんじゃないわよ。ちゃんと付き人がいるわ」
「それなら安心ですね」
 キラは、パトリックの話を聞いた時から疑問に思った事を博士に尋ねた。
「どうしてこの時期、オーブに行くんですか?」
「上から何も聞いていないの?」
 キラは首を横に振る。
「博士をオーブまでの護衛しか」
「簡単に言うとお払い箱よ」
「お払い箱…ですか?」
「そうよ。でも実際の所は違うわよ」
「実際の所?」
「でもこんな所で話していいんですか?」
 突然キラの声が小さくなった。
「それもそうね」
 そう言うと博士は、腕時計を見た。
「時間だからさっさと行くわよ」
 キラ達は話を止め、オーブへ向かうシャトルへと向かう。
 シャトルに乗り込むと博士はすぐさま眠り込んだ。
「護衛だから眠れないんだろうな…」
 シャトルがオーブに着くと二人はタクシーに乗り込んだ。
「どこに向かうんですか?」
「モルゲンレーテよ」
 と博士は簡潔に答える。
「モルゲンレーテにですか?」
「そこで私の親友が待っているのよ。あなたの護衛もそこまでよ」
「博士の親友はモルゲンレーテの技術者なんですか?」
「違うわよ」
「それじゃ何を?」
「学校の先生ね」
「気になるの?」
 博士の顔をキラは見ると、その表情はなんともいえない笑みをしていた。
「博士の友達なのでどんな人物かと…。学校の先生なら」
「私と違ってまじめだと言いたいのかしら?」
 博士はキラが言おうとした言葉を先に言った。
 キラは首を横に振る。
「博士はこの後どうするんですか?」
 とキラは自分の身が危機を感じたのか、話の話題を別のに変更した。
「どういう意味よ?」
「モルゲンレーテで働くんですか?」
 博士は首を横に振った。
「それじゃ学校の先生ですかね」
 キラの言葉に博士は笑い出す。
「それもいいわね」
 笑いすぎたのか博士の目尻には涙が溜まっていた。
 二人が雑談を交わしているとモルゲンレーテ本社が見えてきた。
 二人はタクシーを降りると、モルゲンレートのロビーへと向かった。
 ロビーに入ると突然博士が立ち止まった。
「ここでお別れね」
 博士の言葉にキラは「はい」と頷く。
「もう会うことがないから一言言わせてもらうわ」
「何ですか?」
「無理はしない事…。それだけよ」
「本当に一言なんですね」
「文句ある?」
 博士の目が鋭くなった。
 睨まれたキラは何も言えなくなった。
「そう、それと議長がこれをと」
 博士はポケットから封筒を取り出した。
「ザラ議長がですか?」
 博士は頷くと、手に持っていた封筒をキラに渡した。
「確かに渡したわよ。って聞いているの?」
 キラは博士の事を見ずに、別の方向を見ていた。
 博士もキラが見ている方向に顔を向けた。

 そこにはいつも博士の近くにいた女の子が立っていた。
「迎えが来たようね」
「そのようですね。感動の再会を邪魔してはいけないのでこの辺で」
 と言うとキラは、モルゲンレーテの出入り口へと向かって歩き出した。
 モルゲンレーテから出ると、キラはガラス越しに博士と女の子を見た。
 女の子はキラに気づき、手を振る。
「バイバイ」
 とキラは聞こえたような気がした。
「バイバイ」
 と誰も聞こえないようにキラも返すと、モルゲンレーテから離れた。
 キラは近くにある喫茶店に入ると、空いている席に座り博士から貰った封筒をおもむろに開けた。
 書かれている内容を見たキラは、ため息をついた。
「モルゲンレーテで研究データを抜き取れか…。しかも期限は無しか。家に戻ってからハッキングしても全ては無理だな。さすがに今晩、進入して博士達に出会っても気まずいし、明日にするか…」
 と物思いに耽っていると、路地裏でキラと同年代ぐらいの少年が年下と思われる少年を一方的に殴っている風景が目に入った。それを近くで見ている少女は何もできずその場で泣いていた。
 キラは席を立つと、少年達の元へと向かった。
 キラが偶然見なければ、暴力行為が終わるまで誰も気がつかなかっただろう。
 急いで路地裏へ向かいう。黒髪の少年が一方的に蹴られているのがキラの目に入った。
 蹴っている少年の周りには、その取り巻きと思われる少年達がいた。
 キラは地面に落ちている石を取ると、蹴っている少年に向かって石を投げつけた。
「っ!」 
 蹴っている少年に動きが止まる。
 キラはその隙を狙い、少年の顔面に目掛けて拳を放った。
 殴られた少年が後方に吹き飛んだ。
 キラは蹴られていた少年に近寄った。
「大丈夫か」
 少年は頷いた。
「早く逃げるんだ!」
「でも、あなたは…」
「あの子を連れて早く」
 キラの言葉に少年が、近くにいる少女に気がついた。
「わかりました」
 少年は少女の手を取った。
「マユ、行こう」
「うん、お兄ちゃん」
 二人は表通りへと向かって走り出した。
 キラの肩に突然衝撃が走る。
 キラは刈り取られそうな意識を何とかつなぎ止めた。
 振り返ると、鉄パイプを持った先程の少年がいた。
「人が遊んでいたのに邪魔しやがって!」
 とリーダー格の少年が叫ぶ。
「小物が…」
 キラの声が思いのほか小さく、少年達の耳には届かない。
「なんだって?」
 取り巻きの一人がキラに近づく。先程の攻撃で片腕が使えないと思い、近づいた取り巻きは突然キラに顔面を蹴られ、意識が飛んだ。
 残りの二人がキラに襲いかかろうとしたが、キラを見るなり突然動きを止めた。
 キラの日と睨みで、少年達は全身になにか恐怖を覚えていた。
 キラが一歩前へ進むたびに、少年達は後ろへと下がる。
「おい、あの顔どこかで見た事ないか?」
 とリーダー格の少年が、取り巻きの少年に聞いた。
 少年達は、数秒頭を悩ませると「あ!」と小さく叫んだ。
「「オーブノウエタオオカミ」」
 少年達の膝が震え始めた。
「オーブの学生でしらない奴はいない。奴はたった一人で族を潰したらしいぞ」
 キラは少年達の前に近づき、言った。
「さっきの少年達に今度手出して見ろ!確実にお前達を潰すからな!さっさと行け」
 その言葉を聞き、少年達は一目散に逃げ出した。
 キラはさっき少年達から出た言葉に、キラはため息をついた。
「さっきの話って、ヘリオポリスの時にあの事か…。内容が真実と全然違っているし……」
 キラはヘリオポリスの事を思い出しながら、路地裏を後にした。

 路地裏から出るとキラは先程の喫茶店に戻り、食事を取る事にした。
 喫茶店に戻り食事を取りながら、手紙の続きを読み始めた。
 最後まで読み終えると、封筒を逆さまにした。すると中からカードが一枚出てきた。
 キラは喫茶店を出るとあるジャンク屋へと向かった。
 キラはジャンク屋につくと、すぐさま店主の所へと向かった。
 そして封筒に入っていたカードを店主に見せた。
「そこで待っていろ」
 店主はキラをその場で待つように言うと、店の奥へと消えていった。
 数分立つとオーナーが店の奥から出ると、封筒をキラは手渡される。
「この中には何が?」
 キラは店主に聞いた。
「モルゲンレーテのIDカードが入っている」
「ここで開けてもいいか?」
 店主は首を横に振った。
「わかったよ」
 そう言うとキラはジャンク屋を後にした。
 外に出るとキラはすぐさまホテルへと向かった。
 チェックインするとすぐさま部屋へと行き、ベッドへと潜り込んだ。
 キラは今日の疲れが出たのかすぐさま眠り込んだ。
 キラは朝早く目を覚ますと、図書館へと向かった。
 図書館に入ると、ある本を手に取った。
 その本の題名は「友達との上手な付き合い方」と書いてあった。
 キラが本を読んでいると、薄暗くなり文字が見えなくなった。
 顔を上げると、目の前には昨日の少女がいた。
「おはようございます」
 と笑顔でキラに挨拶をしてきた。
「君は昨日の…」
「昨日は助けてくれてありがとうございます」
「君と一緒に子は?」
「兄は無事です」
「無事ならそれは良かった」
「あのー」
 少女が何か恥ずかしそうにキラを見ていた。
「この後お暇ですか?」
 少女の顔が真っ赤になっている。
「暇といえば暇だな」
 その言葉を聞き、少女の表情を明るくなった。
「それなら私の家に来てくれませんか? 両親もお礼がしたいって言っていましたから」
「いやしかし、お邪魔ではないかな?」
 キラの言葉に少女は首を横に振った。
「いえ大丈夫です。まったく問題ありません。だからいいですよね?」
 少女の勢いに負けてキラは了承した。
「なら今から私の家に…」
 キラは少女に手を取られ、少女の家に向かう。
 家に着くと、なすがままに中へと上がりこんだ。
 あがると少女の両親の姿が目に入った。
 少女は両親の元に行き、キラを紹介した。
 キラの元に少女の両親が近づいてきた。
 昨日の事で、少女の両親はキラに何度もお礼を言った。
「昨日の男の子は?」
 とキラは少女の両親に尋ねる。
「数日で完治する怪我を」
「大事にならなくて良かったですね」
「ええ」
 4人が玄関で雑談していると、家のドアが開いた。
「玄関で何をしているんだよ」
 と昨日の少年が家に戻ってきたようだ。
 キラが少年を見ると、至る所に包帯やガーゼを施している。
「あんたは…」
 少年は助けてくれたキラが自分の家にいるのに驚いた。
「お兄ちゃん、昨日のお礼!」
 少女が少年を睨みつける。
「昨日はどうも助けてくれてありがとうございます」
「どういたしまして。それじゃ僕はこの辺で」
 とキラが帰ろうとすると、両親に今晩一緒にどうかと誘われた。
 キラも断りきれずに、夕食をご馳走になることにした。
「キラさんは図書館で何を読んでたんですか?」
「マユちゃん、それは秘密だよ」
 キラは、マユという名前の先程の少女と楽しく話していた。
 だがその光景をマユの兄である少年が、つまらなそうな顔で見ていた。
「シン、食べないのか?」
 父親の声で、シンと呼ばれた少年はハッと我に帰る。
「食欲がない」
 母親が微笑んでいた。
「お母さんが作った料理を残すのかしら? シン」
 母親の声にキラの箸が止まる。
 先程とは声の質が違っていたのだ。
 シンの体が小刻みに震え始めた。
「食べさせて貰います」
 シンは突然口調が変わり、目の前に置いてあった料理を食べ始めた。
「どうしたんだ?」
 とキラがマユに聞いた。
「うちのお母さんの料理を残すと、次の日から私達が嫌いな食べ物をメインに作るんですよ」
「それは大変だね」
 と二人が話していると、またシンの箸が止まった。
 その事で、キラとシンの母親はある予想を立てた。
「「シスコン」」
「キラさん何かいいました?」
「何か言ったか?」
 とマユはキラに、シンの父親が母親に言葉をかけた。
 二人は「なんでもない」と答えた。
 シンはそんな4人を見ていて、妹についた変な虫の事忘れ呆れていた。
 そんな楽しい夜はまだ終わりを迎えない。
 次の日の朝もご馳走になったキラは、なぜか遊園地にいた。
 目の前には、シンとマユが歩いている。
 キラはシンの家族と共に遊びに出かけていた。
「遊園地か…、久しぶりだな」
「彼女と一緒に行かないんですか?」
 突然横から出てきたマユにキラは驚いた。
「そんなのいないから」
 それを聞いたマユは笑顔になって、シンの元へと戻っていく。
 キラは歩き疲れ、近くのベンチに腰を下ろした。
 そして手に持っていたジュースを口に含んだ。
 ふと人ごみに目線を向けると、見知った人物を見かけた。遊園地には絶対にいないと思われる人物の登場にキラは、ジュースを器官につまらせた。
 どうやら向こうもキラに気がついたようだ。
 ベンチに座っていると、シンの父親が横に座った。
「もう休憩かい?」
「はい」
「ならお昼まで自由行動でいいかな。僕達はそこら辺を一周してくるよ」
「どうぞお構いなく」
 シンの父親は家族の元へと向かった。
 シン達が人ごみに紛れて見えなくなると、キラの横に誰かが座った。
「久しぶりだね」
 と横に座った人物がキラに話しかけてきた。
 その人物はギルバート・デュランダルであった。
「お久しぶりです。しかし一人で遊園地にくるなんて…」
「勘違いしてもらっては困るな。私一人ではないのだよ」
「そういう事にしときましょう」
「どうして君はここに?」
 キラはデュランダルにこれまでの経緯を話した。
「まあ、頑張りたまえ」
「そっけないんですね」
「まあ、私には関係ない事なのでね。私はまだオーブにいるつもりだから、何か用があったら宇宙港の近くのホテルに来たまえ」
 デュランダルはそういうと、人ごみの中に消えていった。
 数十分経っただろうか、キラは人ごみの中からシン達を確認した。
「キラ君、お昼にしよう」
 シンの父親がキラに話しかけてきた。
 キラ達は遊園地内の、食事処へと向かった。
 食事を終えると、シンとマユが行きたい所があるというので、皆はその場所へ向かった。
 そこはゲームセンターのようだ。
「ここで一体何を?」
 キラはゲームセンターにまで来て何をするのかわからない。
「ここの遊園地に、今オーブで流行っているゲームの最新機が置いているんですよ」
 マユの説明にシンは何度も頷く。
「どんなゲームなんだい?」
「中に入ればわかります」
 シンに促されてキラはゲームセンターへと入った。
 二人の後に続き、マユたちも続けて入ってきた。
 シンに連れてこられた場所に、置いてある物にキラは見覚えがあった。
「これはザフトにあったシミュレーション装置?」
 キラの声は小さくて、幸い誰も聞こえていないようだ。
 目の前にはザフトで見た、長方形の人が一人すっぽり入る大きさの鉄の箱があった。
「このゲームは、ザフトのMSや連合のMA等を操縦して相手を倒す格闘ゲームです」
 キラは開いた口が塞がらなかった。
「やりましょう」
 シンの熱意に負けてキラは、シンと勝負することになった。
「お兄ちゃん! いきなりは無理なんじゃ。キラさんも断って良かったんですよ」
「何事も挑戦しないと」
 マユはキラを心配しているようだ。
 そんな光景を見たシンは、さらなる対抗心をキラに燃やすのだった。
「最初は俺がやります」
 とシンは鉄の箱に入りゲームを開始したようだ。
 ゲームの内容は天井から吊るされている大画面に映されるようだ。
 ゲームが始まると、周りで遊んでいた人達、画面を見始めた。
「一体どうしたんだ?」
「このゲームはオーブで、注目の的なんですよ。ニュースでも取り上げられる程に」
 と二人が話していると、シンがどんどんステージをクリアしていく。
 シンはどうやら、M1アストレイを選んでいるようだ。
 ステージをクリアするたびに周りから歓声があがる。
 キラはなぜ歓声が上がるか意味がわからなかった。
「いま、お兄ちゃんがクリアしているステージは一番難易度が高いんですよ。ほとんど人がクリアしていないんです」
 十分ぐらいたつと、シンが鉄の箱から出てきた。
 出てくると、ゲームを見ていた人達に取り囲まれた。
 キラは画面を見るとエンディングのスタッフロールが流れているようだ。
 スタッフロールを見ていると、中で見知った名前をキラは確認した。
「博士の名前があったな」
 キラは頭が痛くなってきた。
「大丈夫ですか?」
 マユがキラの顔を覗き込む。
「大丈夫だよ。優し…」
「キラさんもやってみましょう」
 とキラの言葉は言い終わる前に、シンがキラに声をかけてきた。
「そうだな」
 キラは鉄の箱に足を踏み入れた。
「ザフトの奴と全く同じじゃないか…。博士も一体何を」

 気持ちを切り替えて、操縦桿を握っても何も起こらなかった。
「金が入っていないか」
 キラはお金を投入口に入れると、ゲームが起動した。
 画面にはMSやMAが次々と姿を現した。
 その中でキラはストライクを選んだ。
 画面に出てくるMSやMAをキラは次々に撃破していく。
「平和だな」
 とキラは鉄の箱の中で呟いた。
 キラの成績は途中までしか行かなかった。
 外に出ると、見物人がキラの所に近寄ってきた。
「おしかったな」
「もうちょっとだったのに」
 と労いの言葉をかけてきた。
 キラも見物人の言葉を返すと、シン達の所へと戻った。
「キラさん、次はあなたと戦って見たいです」
 シンの目が本気だったので、キラは勝負をする事にした。
 シンはポケットからメモリースティックを一枚取り出した。
「あれは何かな?」
 キラはマユに質問した。
「このゲームは市販で発売されているんですけど、そのデータをこのゲームに反映させるんですよ、好きな色とかに変更した自分のMSを使えるようにするんですよ」
 キラは何とかマユの説明を理解した。
 そしてある事を思い出した。
 先日博士から分かれる際、シンが持っていろ同じ物を受け取った事を。
 キラはポケットを探ると、それを見つけた。たしかにシンと持っている物と同じだった。
「お兄ちゃん、先にいっています」
 シンは先に準備をしているようだ。
 キラも鉄の箱に入ると、メモリースティック投入口に差し込んだ。
 キラは画面に映し出されたMSを見て、とても後悔した。
 映し出されたMSはフリーダムだった。 
 シンが選んだMSの情報がキラの画面に映った。
 先ほどの時は無かったのだが、対戦の時は映し出されるようだ。
 キラはそのMSを見て、もう笑うしかなかった。
 そのMSはオーブが極秘裏に開発を進めているアカツキだった。
 しかもドラグーンを背負っているようだ。
「とてつもない軍事機密がゲームになっている。アハハハハ」
 とキラが壊れ始めた時、電子音が耳を貫いた。
「キラさん、何をしているんですか? もう始まっているんですよ」
 とシンの声が聞こえた。
「全力で君を倒そう」
(そしてここから早く退散しよう!)
 キラは目の前に映る、金色のMSに向かってフリーダムを加速させた。

 アカツキがドラグーンを展開させた。ドラグーンがフリーダムを襲う。
 フリーダムはドラグーンから発射されたビームを全て避けきれなかった。
 画面上部に表示されているゲージが減った。
(実際の戦闘ならここで死んでいるな。所詮はゲームだな)
 キラはフリーダムが持っているライフルを使用した。
 ビームがアカツキを捉えた。だがしかし、ビームは着弾したと思うと、フリーダムに跳ね返ってきた。
「!?」
 キラは跳ね返ってきたビームを避けきれず、さらにゲージを減らしてしまった。
「ビームを跳ね返した?」
(机上の空論でしかない物をゲームで再現するとは!)
「やってくれる」
 キラは遠距離をあきらめ、接近戦をする事にした。
 フリーダムが接近すると暁は後に下がった。
 シンはキラと一定の距離を保とうとしているようだ。
「お兄ちゃんの卑怯者!」
 外からマユの声が聞こえる。
「マユに嫌われた…」
 突然、アカツキの動きが止まった。シンはマユの言葉に動揺し、操縦桿から手を離してしまった。
 キラはこの隙を利用し、アカツキの接近しビームサーベルを振り下ろした。
 シンはキラの攻撃で我に返り、フリーダムから逃げるようにアカツキをその場から離れさせた。
 二人の攻防は長時間続き、やっとの事残り一発ダメージを与えたらどちらも終わるぐらいにゲージが減った。
「兄の威厳のために負けられないんだ!」
 シンは叫んだ。シンのSEEDが弾けた。フリーダムの動きが手に取るようにわかる。
 キラは先ほどの攻撃より確実に変化したアカツキの動きに、呆れるばかりだった。
「こんなゲームにいつも以上の力を出してどうするんだ!」
 アカツキはフリーダムの攻撃を避けているだけで、接近しようとしなかった。
 キラはフリーダムに搭載されている全ての兵器を使用した。
 何本ものビームがアカツキを襲う。
 アカツキの周りを旋回していたドラグーンが、アカツキの元へと戻っていく。
「これでやっと終わる。やっと…」
 キラはやっと勝負が終わる事に、感動を覚えた。
 しかしゲームは一向に終わり気配がない。
 先程のビームの衝突で起きた煙が晴れると、そこには無傷のアカツキが佇んでいた。
「やっぱ俺って不可能を可能に…」
 とどこかで聞いた事あるような言葉を最後まで言い終わる前に、フリーダムの加速に気付きその場から離れた。
「最後まで言わせてくださいよ」
「断る!」
 シンの願いを即座に否定する。
「ってそんな言葉一体どこから?」
 キラは興味が沸いてきたので、シンに聞いてみた。
「ネットですかね。エンデュミオンの鷹ファンサイトっていう所にあるらしいですよ。学校の奴に聞いたんで詳細は分かりませんが…」
 と二人が話していると突然、フリーダムのゲージが減った。
 キラが辺りを見回すと、ドラグーンに取り囲まれたいた。
 フリーダムはアカツキのドラグーン攻撃を避けきれず、直撃した。
 ゲージがすべてなくなり、キラの負けが確定した。
 画面には大破したフリーダムが、閃光あげ爆発した。
 キラはその爆発の大きさに肩を落とした。普通のMSとは違う爆発だった。
 その爆発はアカツキをも巻き込んでいた。
「ここまでしなくても…。しかし実際ニュートロンジャマーがなかったら、こうなっていたかも知れないのか」
 キラがシミュレータから出ると、マユが近寄ってきた。
「次は私と勝負してください」
 マユの言葉にキラは表情を少し引きつらせた。
「お兄ちゃんと勝負して私とはしてくれないんですか?」
 目に涙をためているマユを見て、キラは断れきれず勝負する事にした。
「先に行って待っているからね」
 と言うとキラはシミュレータへと戻った。
「マユ…。まさか本気を出すんじゃないだろうな?」
 いつに間にかシミュレータから出たシンが、マユに聞いた。
「もちろん手加減なんかしない」
 その言葉にシンはため息をつく。
「あの人は、お前がこのゲームのネットランキング一位って知らないだろう?」
 マユはシンの言葉に頷いた。
「お兄ちゃん、ダメかな?」
「かまわない。むしろボコボコにしてこい」
「お兄ちゃん、まさか嫉妬しているの?」
 シンはマユの的確な攻撃を貰いながらも、顔には出さずに否定する。
「そんな訳ないだろう」
 マユはシンの鬼気せまる表情から逃げるように、シミュレータへと向かった。
 マユは座席に座ると、いつも使っている機体を選んだ。
 マユが選んだのはメビウスゼロであった。
 キラはストライクを選ぶ。ステージは宇宙のようだ。
 二人の戦いはきって落とされた。
 二人の戦いはマユの勝利であっけなく終わった。
 シン達家族と、キラは夕方まで遊園地で遊んだ。
 キラは夕方、シン達と別れモルゲンレーテへと向かう。

 エリカ・シモンズは深夜までMSのOS開発の作業に追われていた。
 エリカは気分転換にモルゲンレーテの中を散歩する事にした。
 中枢部の廊下でエリカはキーボードのキーを打つ音を聞いた。
「誰かいるのかしら?」
 エリカは音のする方へ向かって歩き出した。
 音の発生源は、中枢部のコンピュータがあるすぐ横の部屋だった。
 だがその部屋には明かりがついていない。
 エリカがその部屋に入ると、中には少年が端末を操作していた。
 少年はエリカが入ってきた事に全く気がついていない。
 エリカは部屋の電気をつけると、端末を操作していた少年がエリカの方へ振り向く。
 エリカは少年の姿を見て驚いた。
「キラ君!? どうしてここに?」
 エリカ・シモンズは、いないはずの少年がいる事に驚きを隠せなかった。
「どうしてここに? どうしてなんでしょう?」
 エリカはキラに質問を質問で返された事にため息をついた。
「先日の戦闘であなたがMIAになっていると聞いたから…」
「MIAにですか…」 
 キラはエリカの言葉で、もう一人の自分がどうなったかある程度想像はついた。
「それでアークエンジェルは?」
 キラはエリカにアークエンジェルがどうなったか聞いた。
 エリカの情報によると、どうやらアークエンジェルは無事のようだ。
「若いっていいわね」
 エリカは、からかうようにキラを見た。ふとエリカはキラが操作していた端末を覗いて見た。
 キラが操作している端末を見て、エリカはキラが今何をしているか理解した。
「あなたの欲しい情報は何かしら?」
 とエリカはキラに単刀直入に聞いた。
「先日、ザフトがここに潜入したのは気付いていますか?」
「一応ね。その事に気がついたのは昨日だけど…どうしてそんな事を?」
「その時に手に入れた情報の中にあったドラグーンシステムのデータを全て。そのかわりにこっちも面白い情報を教えますよ」
 キラはエリカの質問に答えず、キラは話を切り出した。
「わかったわ」
 エリカは端末を開くと、ドラグーンのデータを取り出しキラに渡した。
「どうしてこんな物が必要なのかしら?」
「お土産ですかね」
「これがお土産? そんな事よりあなたの面白い情報っていうのは?」
「これを」
 キラは胸ポケットからメモリースティックを取り出し、エリカに渡した。
 エリカはメモリースティックの内容に驚愕する。
「ジェネシス…」
「知っているんですか?」
「噂程度にね。しかしこの情報は一体何処から?」
 エリカはキラを問い詰める。
「こんな正確な情報が比較的簡単に手に入る所は限られてきます」
 キラの言葉にエリカはこの情報源が何処か気付いたようだ。
「この情報は、ジェネシスが使用されるまで誰にも言わないでください」
「どうして? こんな物地球に撃たれたら終わりなのよ」
 エリカは声の大きさにキラは耳を塞ぐ。
「ブルーコスモスに知られたら、この戦争は終わりが来ないかもしれないんですよ」
 エリカは何も答えない。
「アークエンジェルで久方振りに会った時、全く私達に反応しなかったわね。まるで初めて会ったような対応したでしょ」
 エリカは話の内容を突然切り替えた。
「からかったんですよ」
 キラはエリカに言い訳のような言葉を発した。
「って言うのは冗談よ」
「…」
 キラは言葉が出なかった。
「悪いと思ったんだけど、勝手に貴方の事を調べさせてもらったわ。私の後についてきて」
 と言うとエリカは部屋を出ていった。キラも後についていく。
 エリカは自分の研究室へ向かう。部屋に戻ると、ついてきたキラにある紙を渡した。
 キラは渡された紙を一通り眺めた。
 紙を眺めているキラにエリカは話しかけてきた。
「そこに書かれている事は本当かしら?」
 キラが手に持ってきた紙にはたくさんの文字が書かれていた。
 キラは何も答えない。
「その事は、貴方のご両親には黙っといてあげるから手伝って欲しい事があるのよ」
「なんですか…」
 睨み付けるようにキラはエリカを見た。
「オーブのパイロットを戦闘で使えるまで指導して欲しいのよ」
「戦闘でですか?」
 エリカは頷いた。
「わかりました」
「しかし大人数は指導できません」
「それもそうね…」
 キラの言葉にエリカは納得したかのように頷いた。
「それならシミュレーション上位三名を指導してもらいましょう」
「それなら何とかなります」
「時間が無いから今晩から始めたいけど、MSの準備などがあるから明日の朝ここにきて」
 キラは頷くと、エリカに別れの挨拶を言い、モルゲンレーテを後にした。
 ホテルに戻ったキラはベッドに倒れこみ、すぐさま眠りへと落ちていった。
 次の日キラは、モルゲンレーテのエリカの所へと向かった。
「おはよう」
 とエリカはキラに挨拶をした。キラも挨拶をした。
 エリカは机の引き出しを開けると、何かを取り出しキラに投げつけた。
 キラが受け取ったの何かの入れ物だった。キラは其れを開けてみると中にはサングラスが入っていた。
「これは何ですか?」
 キラの質問にエリカは簡潔に答えた。
 キラがここにいるのは、可笑しいという事なので其れを使えという事だ。
 サングラスを掛けたキラを見たエリカは、突然笑い出した。
「その身長にそのサングラスあっていないわね。もっと身長があったら格好よかったのに」
 キラはエリカから渡されたサングラスを、そのままエリカに投げ返したい衝動に駆られた。
 そんなキラを見てエリカはさらなり追い討ちをかける。
「そのサングラス、世界的有名メーカーの物だから高いわよ」
 キラの動きが止まる。
「いま、そのサングラスしかないから…」
 キラはエリカの言葉に絶句する。エリカを見ると笑いを我慢しているようだ。
「冗談はそのくらいにして、私についてきて」
 エリカはモルゲンレーテの地下へと向かう。
 目的の場所に着いたのかエリカの足が止まる。
 目の前には扉があり、二人はこれ以上進めないようだ。
「この先が目的地の場所よ。サングラスはするように」
「これをする必要あるんですか?」
「念のためよ念のため。たまにカガリ様がここにくるのよ?」
「オーブの獅子の娘ですか」
「そうよ。それで準備はいいかしら?」
 キラはエリカに言われた通りにサングラスをする。
「ばっちりです」
 エリカはIDカードを取り出すと、目の前の扉についてある、カード挿入口に差込み、暗証番号を打ち込んだ。
 目の前の扉は軽快に開いた。
 キラが扉をくぐると、目の前にMSが立ち並ぶ光景が映った。
「M1アストレイ」
「あなた知っているの?」
「常識ですよ」
「どんな常識よ?」
 エリカは溜息をついた。
 立ち並んでいるM1アストレイの中の一機が動き始めた。
 エリカたちの前まで来るとM1アストレイは動きを止めた。
 コックピットハッチが開き中から女の子が降りてきた。
 女の子はエリカの元へと駆け寄る。女の子は紺の髪とメガネをかけている事がキラの位置からでもわかった。
 二人は何を話しているようだが、キラの位置からでは聞き取れない内容だ。
 話し終わると、女の子はその場を後にした。
 エリカはキラの方へと振り向いた。

「今から模擬戦をするから準備して。あなたのMSは目の前にある奴よ」
 キラは目の前のM1アストレイに乗り込んだ。
 M1アストレイに乗り込むとエリカから通信回線で指示された場所へと向かう。
 その場所はモルゲンレーテの外に出た所にあるようだ。
 モルゲンレーテの外に出ると、そこにはキラが乗っている同じMSが三機待ち構えていた。
 エリカから通信が入り、模擬戦を始めるように命令が下った。
 相手から通信が入る。
「誰だか知らないけど手加減はしないから」
 そういうと三機のM1アストレイが一斉に動き始めた。
 一機が接近戦を仕掛けてきた。一気にキラの懐まで加速し、殴るようだ。
 キラはその攻撃を十分に引き付けて避けようとした。
 避けられると思い操縦桿を操作した。だがキラの思い通りに動かず、一瞬の硬直の後M1アストレイは避ける動作を開始した。その時には、間に合わず相手攻撃を受けてしまった。
 キラは振動に耐えながら、エリカに通信を開いた。
「模擬戦は中止だ」
 キラは通信を切るとすぐさまモルゲンレーテの地下ドックへと戻る。
 後ろのほうで女性の声がするがキラは無視する事にした。
 キラは地下ドックに戻ると、すぐさまコックピットに備え付けてあるキーボードを探し始めた。
 キーボードを発見するとMSのOSを書き換え始めた。
 書き換え始めたキラは、OSに使用されている複雑なプログラムに頭を悩ませた。
「どうかしら?」
 エリカは心配になったのかキラの様子を見に来た。
「はっきりいって、このプログラムは確かに最高ですけど、無駄な部分もありますね」
「それ貴方が作ったのよ」
 エリカの言葉にキラは少し驚く。
 キラはモニターに表示されているプログラムに目を通す。プログラムの一部分は確かにキラの癖が残っていた。それを見たキラはこれは誰が作ったの想像がついた。
 キラは丸一日かけてOSを書き換えた。
 OSを書き換えた頃にはもう夜になっていた。
「当分、コンピュータはさわりたくないな…」
 キラはエリカの研究室で休んでいると、エリカが部屋に入ってきた。
「今から、シミュレーションをやって欲しいのだけど…」
「別にかまいませんよ」
 キラの答えには覇気が感じられなかった。
 それもその筈だ。朝からコンピュータを睨めっこをし、それが終わるとシミュレーションが待っているのだから。 
 地下ドッグに着くとキラはシミュレーション装置に乗り込んだ。
 キラはM1アストレイを選ぶ。
 相手は三機のM1アストレイのようだ。
 三機は一向に動こうとしないので、キラから動くことにした。
 キラはビームライフルを三回使用した。三つのビームは三機を狙う。三機はビームを避けるためその場を散る。散ったM1アストレイでキラから一番近いのに向かってキラは加速した。キラが接近に気がついたM1アストレイは、ビームライフルを構えた。
「その選択は間違っている」
 相手に言い聞かせるように、言葉を発した。M1アストレイがビームライフルを使用する動作を起こすと同時に、キラは相手のライフルを持つ腕をビームサーベルでなぎ払う。体勢を崩したM1アストレイをもう一機のM1アストレイに向かって蹴り飛ばした。蹴り飛ばした方向にいたM1アストレイが蹴り飛ばされM1アストレイを助けるために近づく。それを狙ってキラはビームライフルで二機を貫いた。と同時にキラのビームライフルが爆発し、ライフル持っていた腕ごと巻き込んだ。
「終わる間際に、ライフルに向かってバルカンを撃ったのか」
 キラは先程の行動に感心していると、コックピットの衝撃が走った。
「オーブのシミュレーション装置もザフトと同じぐらいの性能があるのか」
 キラはオーブの技術力の高さに感心した。
 キラがM1アストレイの体勢を整えた瞬間、相手のビームサーベルがコックピットを狙っているのを確認した。
 キラはM1アストレイの残った腕を使いビームサーベルを構えた。
 キラは相手のコックピットに向かってサーベルを突き出したが、相手は其れを片腕を犠牲にして避けると、残った腕で、キラのM1アストレイにコックピットめがけてサーベルを振り下ろした。
 三対一で勝負をしたがキラはギリギリの差で負けた。
 いやキラは自分がこの三機に負けるとは、これぽっち思っていなかったようだ。そのせいでキラは油断をしていた。その油断のせいでキラは負けてしまった。
 キラはシミュレーションから出ると、近くある椅子に腰掛けた。
 今までしていたサングラスを外すと、目頭を抑えた。
 シミュレータ越しに女性の話し声が聞こえる。
 先程まで戦っていたパイロットは全員女性のようだ。
 女性達はエリカに連れられその場を後にした。
 10分ぐらい足っただろうかエリカがキラの元へ帰ってきた。
「今日はどうもありがとう。また明日お願いするは」
「いつまで続くんですか?」
「さあね」
 キラはエリカの言葉に溜息をついた。
「今回の勝負で、自分の悪い所も判ったような気がします」
「なにか得るものがあったのね」
「はい。今日はこれで失礼します」
 キラはエリカに挨拶をすると、モルゲンレーテを後にした。 


第8話完 
第9話へ続く

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