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Lnamaria-IF_第04話

Last-modified: 2013-10-28 (月) 02:16:19

 ブラストインパルスは機雷などに引っ掛かる事も無く、小惑星に不時着中のミネルバに着艦した。
 いつもなら整備士が駆け寄ってくるところだが、今回はそれが無かった。
「あれ、ヨウランとヴィーノはどこ行ったのかしら?」
「あそこだろ、多分」
 床に降りて左右を見渡しているルナマリアの問いに、シンは吐き捨てるように答えた。
 シンの指さした先では、アスランが整備士達に取り囲まれているところだった。サインさえ求めている者も少なくない。
「人が三人死んだってのに……!」
 明らかに嫌悪の色を浮かべて、シンは格納庫を出ていく。
 ルナマリアは慌てて追おうとしたが、その背中が「ついてくるな」と言っているような気がした。

 ルナマリアは結局、部屋に籠もっていた。
 戦闘記録をコピーしたチップをパソコンに差し込み、画面に映るブラストインパルスを眺める。
「……今見れば丸見えじゃない。なんで気付かなかったのかしら」
 思わずそう毒づいた。モニターの端には時々、しかしきっちりと紫色のモビルアーマーが写し出されている。
 八つ当たりに枕を蹴飛ばしていると、扉の向こうから声がした。
「お姉ちゃん? 入っていい?」
「どうぞ。鍵は開いてるわよ」
 ルナマリアの部屋に入ったメイリンは、またしてもベッドに寝転がっているルナマリアを目撃した。
「お姉ちゃん、その……シンから話は聞いたよ」
「………」
「シンにも言ったけど……みんなの事、怒らないでほしいの。まだ三人が死んだって知ってるのはブリッジにいた人だけだし……」
「……ショーンは」
「え?」
「あいつはどうしてるの?」
 だんまりを決め込んでいたルナマリアのいきなりの質問に、メイリンは戸惑いつつ答えた。
「今何しているか、だったら分からないけど……ともかく無事だよ」
「でしょうね。英雄様が守ってくれたんだもの、私みたいな駄目赤服が隊長機に乗る部隊の場合とは違うわよ」
「……気にしてるの?」
「気にしてないはずないでしょう!?」
 ルナマリアは跳ね起きて叫んだ。メイリンの声には少し苛立ちの様な感情が込められていたが、あいにくルナマリアにはそんな事に気付く余裕はない。
「戦闘記録を見る限りじゃ誰がどう見ても私の責任よ! シンがいなきゃ一撃で私は死んでいたわ!
 あんな目立つカラーリングをしたモビルアーマー一機さえ私は見逃してたのよ!?」
 シンもルナマリアも、脳天気な仲間に怒っているのではない。二人が怒っているのは―――自分自身。
「これじゃ、何のための赤服なのよ! きっとハーネンフース先輩も怒ってるわ……」
「お姉ちゃんのバカッ!」
「なっ!?」
 いきなりメイリンが言った言葉に、ルナマリアは怒るより先に驚いた。だがメイリンは構わず怒鳴り続ける。

「シンがなんて言ってたか知ってるの、お姉ちゃんは!
 悔しいって! 自分が怪我さえしてなければ、みんなを守れたかもしれないのにって!
 それどころかお姉ちゃんのサポートさえろくに出来なかったって、泣いてたんだよ!?
 自分の力を使えないことに、悔しがってたんだよ! お姉ちゃんは違うでしょ!?
 頑張れるだけ頑張ったんでしょ! だったら今回の経験を生かして、次頑張ればいいじゃない!
 こんな所で寝てないで、次の出撃に備えて訓練でもしてればいいじゃない!
 シンは頑張ることさえできないんだよ! ただ怪我が治るのを待つことしかできないんだよ!?」
 そう。彼女は確かに見たのだ。いつも強気なシンが、部屋でたった一人で泣いているのを。
 彼は他の誰よりも、今回の戦いに責任を感じていた。
「今のお姉ちゃんはただ引きこもって逃げてるだけよ! もう知らないっ!」
「ちょ、ちょっとメイリン!?」
 メイリンは言うや否や後ろを振り向き、開ききらなかった扉に右肩をぶつけながら走っていった。 部屋にはまるで顔面を盛大に殴られたような表情しているルナマリア一人だけが、ぽつんと残っていた。

 一方、ガーティ・ルーのネオはブリッジから宇宙を眺めていた。
 もっとも別にそういった趣味があるのではなく、指令が届く時刻まで適当に時間を潰しているだけである。
「やれやれ。あんなミスをしちまった、とジブリール閣下に知れれば怒られるかな?」
 ネオが言っているのは先ほどの戦いでインパルスを追いつめながら撤退する事になったことである。
「ミス、ですか? 撃墜したモビルスーツの数は、こちらもザフトも同じですが」
「それじゃあ駄目なのさ。特殊部隊ってのは過大な期待をかけられるもんでな」
 イアンとネオが雑談していると、突然ブリッジのモニターに若い男の姿が映った。
 二つに別れている眉毛の先端が特徴的な、どこか押しつけるような尊大な態度を持つ男である。
『ふむ、久しぶりだなネオ』
「ジブリール閣下! まさか直々に通信を行うとは……!」
 ブリッジにいた全員が素早く敬礼する。ジブリールと呼ばれた男は全く動じない。そうされるのが当然だと言わんばかりの態度だ。
『さて、まずは新型機の強奪、さすがと言っておこうか』
「お褒めにあずかり、光栄です閣下」
『次の指令で作戦の仕上げとなる……これを完了すれば、後は曲を奏でるだけだ。
               レクイエム 
 コーディネイター共への鎮魂歌をな。まずはこのポイントを見たまえ。地球軌道の近くだが……』

「えええええええ!? ユニウスセブンが、地球へ向かって降下中ですかぁ!?」
「アーサー!たまにはもう少し静かに喋りなさい!」
 例のごとく素っ頓狂な声を上げたアーサーを、例のごとくタリアがたしなめた。
「人為的な物にせよ偶発的な物にせよ、放っておくわけにはいかない。ミネルバはすぐに破砕作業の支援に向かってくれ。
 ジュール隊も向かっているが、人手は多い方がいいだろうからな。さて……」
デュランダルは脇の金髪の少女―――オーブ代表、カガリ・ユラ・アスハに向き直った。
「難しくはありますが御国元とも直接連絡の取れるよう試みてみます。
 出迎えの艦とも早急に合流できるよう計らいますので、もうしばらくミネルバにご搭乗頂きたい」
「落ちたら、落ちたらどうなるんだ? オーブは…いや地球は!」
「あれだけの質量のものです。申し上げずとも、それは姫にもお解りでしょう。できれば……」
「分かっている! アスラ……アレックスにはこちらからも手伝うように言っておく。むしろこちらにとっての重大事だからな……」
「それはありがたい。感謝いたします」
 デュランダルはカガリの返事に笑みを浮かべる。しかし、その笑みにはどこか含みがあった。

「カガリ……本当にいいのか? さっきの戦いもそうだが、今の俺がザフトのモビルスーツに乗るのは問題が」
「分かってるさ。だがしょうがないだろう、こんな所で死ぬわけにはいかなかったし、ユニウスセブンが地球に落ちたら終わりなんだからな。
 それに、もう一回乗ったんだから大した違いは無いだろ」
 カガリの返事にアスランはため息を吐くしかない。
 先ほどの戦いで、アスランにザクに乗るように言ったのはカガリである。
 基本的には頭より先に腕が動きがちな彼女としては、ただ見ているだけと言うことは我慢できないらしい。
 それにアスランとしても、カガリの言い分に理がないと考えているわけではない。
 自分たちが死んだり、オーブが無くなったりしてしまえば問題に直面する事さえできなくなる。
「それよりしっかりやってくれよ? もしあんな物が地上に落ちたら……ああ、考えるだけで嫌だ」
 カガリは頭を振りながら、心底不安げな顔で言った。一国の国家元首である以上、自国の民を思いやる気持ちは人一倍強い。
「分かってるさ。しっかりやるよ……ん?」

 アスランとカガリが話し込んでいる先の休憩室では、ミネルバクルー―――といっても、ルナマリアの同期生だけだが―――が集まっていた。
「ユニウスセブンが地球に向かってるって、マジか?」
「マジっぽいぜ、ショーン。急いで発進するから、とか言われて整備士はスラスターの修理を急がされてさ、ヴィーノなんか疲れ切ってベッドで爆睡してるぜ。
 たまたまインパルス担当になってた俺はすぐ終わったんだけどな」
「感謝しろよヨウラン。俺達が頑張ったおかげで楽できたんだからな」
「はいはい、いつかお前とルナにジュースでもおごってやるさ」
 そうやって三人で話すシンの様子はいつも通りにしか見えない。
(本当に泣いてたのかしら……?)
 正直な話、ルナマリアにはシンの泣く様子はどうしても想像できなかった。
「おい、何ぼーっとしてんだよルナ?」
「あ、ううん、なんでもないわ」
 シンの問いに、慌ててルナマリアは答えた。ショーンが呆れたような声を出す。
「何か最近おかしくねえか、お前。まあここでぼうっとする分にはいいけどよ、俺と出撃した時は勘弁してくれよな」
「ま、それも仕方ないんじゃねえの? 式典用のジンに乗るはずがいつの間にかインパルスのパイロットだぜ?
 いきなり正規軍と戦う羽目になって、おまけに……」
「その話はやめてよ、ヨウラン……」
 ルナマリアが小さな声で言った。シンとショーンも目を伏せている。
「……悪ぃ」
 同期のゲイルが死んだという事実はショーン達も気にしている。もちろん、ヨウランも。
「ま、まああれだ。ユニウスセブンが落ちるっつったってさ、変なゴタゴタも綺麗に無くなって、案外楽かも。俺達プラントには……」
 とっさに場を明るくしようとして言った冗談だったが、あまりにも不謹慎だった。特に、カガリには。

「案外楽……案外楽だと!? よくもそんな事が言えるなッ!!!」
「え、え!?」
「お、おい待てカガリ!」
 アスランは止めようとしたが、そんな程度で止まるカガリではない。まさかこんな所にオーブ代表がいると思わなかったヨウランは固まるしかない。
「これがどんな事態か、地球がどうなるか、どれだけの人間が死ぬことになるか、ほんとに解って言ってるのかッ!?」
「す、すみません、冗談です……」
「冗談でも言っていいことと悪いことがあるだろうが!」
「こらカガリ、よせってば!」
 今にもヨウランをぶん殴りかねない様子で歩き寄って行くカガリを、アスランは慌てて止めた。
だが足は止まっても口は止まらない。
「だいたいあれは犠牲者達の墓標になっているんだろう! そんな物を落として案外楽だと!?」
「話の前後関係も聞いてないのに、ずいぶん偉そうな口を叩くんだな、あんたは。口だけ立派なのはアスハのお家芸かよ?」
「なっ!?」
 静かに、しかしはっきりと暴言を言ったのはシンだった。ルナマリアが、慌てて止めに入る。
「ちょ、ちょっとシン!? 相手は……」
「オーブの国家元首、か? そこに住んでいた人間として現実を教えてやりたいだけさ。
 そうでもしなきゃ無能は治らないだろ。そういう家系の人間だしな」
「な、なんだと!?」
「よせカガリ!こんなところでよけいに問題を作ってどうする!」
 本当に握り拳を作ったカガリを、急いでアスランが止めた。カガリの腕を抑えながら、眉を上げてシンをにらみつける。
「君もだ。なんでわざわざ喧嘩を売りつける? 下らない理由ならただではおかないぞ」
 できるだけ静かな声で言ったアスランだったが、シンには完全に逆効果だったらしい。
「下らないだ?……下らないなんて言わせるか! 関係ないってのも大間違いだね! 俺の家族はアスハに殺されたんだ!」
 室内の全員が絶句する中、シンは構わずに続ける。
「国を信じて、あんた達の理想とかってのを信じて、そして最後の最後に、オノゴロで殺された!
 だから俺はあんた達を信じない! オーブなんて国も信じない! そんなあんた達の言う綺麗事を信じない!
 あの大馬鹿野郎はこの国の正義を貫くとかなんとか言ってたけどな……結局あいつは理念を守っただけで、国民はちっとも守らなかったんだ!
 だからオーブからプラントに移住した奴は、みんなオーブに帰らないんだ! オーブってのは……アスハってのは、そういうのだって分かってるからな!
 あんた達だって、あいつが言った言葉で誰が死ぬことになるのか、ちゃんと考えたのかよッ!」
 一気に言い終えたシンは息を切らせながら、それでも正真正銘の憎しみを込めて視線をカガリに向けた。
「何も解ってないような奴が……解ってるようなこと、言わないで欲しいね!」
 言うと同時に、シンは左肩をわざとカガリにぶつけて走り去る。
 誰もが―――ルナマリアさえ、言う言葉が見つからず、ただそこに立ちつくす事しかできなかった。

「ふむ……こいつはなかなか面白い指令だな? ジブリール閣下は俺達がどういう部隊かよく分かっていらっしゃる」
 ネオは既にブラックアウトしたモニターを見つめつつ、まるで天気の話でもするかのようにイアンに話しかけた。
「しかしこれは何というか……あやふやな指令ですな。戦う相手さえ状況によって変わるとは……」
「なぁに、だから俺達の出番なのさ。とりあえずダガーLを二機とも準備しとけ。後は……カオスだな。
 ガイアとアビスは、今回は用無しだ」
「は?」
 怪訝な顔をしたイアンに、ネオは例の笑みを浮かべて答えた。
「強奪したモビルスーツじゃあ、いい写真が取れないだろう?」

「彼の事は気にするな。彼のような考えがあるのは仕方のないことだって、君も分かってるだろう?」
 あの後呆然とするカガリを部屋まで連れていったアスランは、慰める作業に手を焼いていた。
「だって……お父様の事まであんな風に……」
 完全に打ちひしがれた様子で言うカガリに何か言おうとしたアスランだったが、放送によって遮られた。
『モビルスーツ発進10分前。各パイロットは準備をして下さい。繰り返します……』
「……悪い、もう行く。大丈夫、彼もいつかきっと分かるさ」
 多少後ろ髪を引かれる思いがしたが、アスランは部屋を出た。
(これぐらいでへこたれるほど、カガリはやわじゃないさ……)
 そう自分に言い聞かせ、格納庫へ向かうアスランは途中で先ほど見かけた人影を見付けた。やたらに左右を見渡している。
「あれ? 君は……」
「あ、どうしたんですか? 格納庫ならこの道で大丈夫ですよ」
「いや、道は分かってる。ところで君はさっき休憩室にいた……えっと」
「ルナマリアです、アスランさん」
 せっかく作った偽名は何の役にも立ってないな、とアスランは心の中で毒づいた。
「何か探しているようだが、手伝おうか? もうそろそろユニウスセブンなんだ、急がないと」
「いえ、結構です。シンなら待っていれば格納庫で会えますから……あ」
 アスランがシンの名前を聞いて眉をミリ単位でつり上げたのを見て、ルナマリアはしまったという表情になった。
 どうやらシンのことは名前まできっちり記憶に残っていたらしい。
「すみません、さっきはあいつが失礼な事を言ってしまいまして」
 頭を下げようとしたルナマリアを、アスランは慌てて止めた。
「いやいいんだ、君が謝ることはないさ。しかし格納庫で会える、ってことは彼もモビルスーツに乗るのか? あの右腕で?」
「ええ。インパルスは私とシンの二人乗りなんですよ。彼がサポートで私が操縦です」
「へぇ……」
 ということは彼女もパイロットなのか、という事に気付いたアスランは驚いた。
 ただでさえ女性の赤服は少ないのに、その上パイロットとなれば彼が知っているのはシホ・ハーネンフース一名だけだ。
 アスランはあくまで興味本位で聞いてみた。
「ということは、君も優秀なのか? 新型機に乗っているし、数少ない女性赤服だ。アカデミーではどんな成績だったんだ?」
 イザークが議員だった時にオーブに来たことがあり、その時の雑談でアカデミーでのシホの成績は優秀だったと言うことを聞いていたアスランは、女性赤服は優秀だという先入観があった。
 だが、この質問はルナマリアのプライドをかなり傷つける質問だった。
「ご期待に添えず、申し訳ありませんが」
 アスランから視線を外して、そのまま一度も顔を合わせないまま苛ついた声でルナマリアは続ける。
「私のアカデミーでの成績は、歴代赤服の中で最下位です!」
「え!?」
 アスランに謝る暇も与えず、ルナマリアは顔を背けたまま「失礼します」とだけ言って床を蹴り、そのまま先に格納庫へ向かった。

 一方、一足先にユニウスセブンに到着したジュール隊は、既に作業に入っていた。
 旗艦ヴォルテールの艦橋では、多数の人間がせわしなく動いている。
『こちらディアッカ小隊。メテオブレイカー設置完了だぜ』
『シホ小隊、メテオブレイカー設置完了。いつでも作動できます』
 部下達の報告にうなずいた白髪の男、イザーク・ジュール隊長は通信士に振り向いた。
「ミネルバと通信はできるか?」
「はい、可能です」
「よし、こちらは作業に入ったと伝えろ。それから……」
 落ち着いた様子でイザークは命令を出していく。しかし、モビルスーツ隊からの通信がその落ち着きを一気に吹き飛ばした。
『な、なんだお前ら!?』
『な……!? た、隊長、敵です!』
「どうした!? フェイル、光学映像写せ!」
「はっ!……隊長、これは、ジンです! ジンがメテオブレイカーを破壊しています!」
 その映し出された光学映像に写るのは確かにジン・ハイマニューバ2型……ジンシリーズの最終量産機である。
 それを見たイザークは盛大に顔をしかめた。
「馬鹿な、ジンがなぜ……いや、考えている暇はないか。
 俺のザクを準備、同時にゲイツのライフルを射出しろ!急いでミネルバにも伝えろ、我が隊は謎の敵に襲われているとな!」

 アスランはザクに搭乗し、気持ちを落ち着けていた。出撃までは後一分も無いだろう。
 どうやらショーンのザクの腕を移植したらしく、アスランの乗るザクの左腕はきっちりと付いている。
(挨拶ぐらいはしておいた方がいいか……)
 そう思い、コアスプレンダーへの通信回線を開く。あの二人とは気まずいのだが、戦闘中までそれを引きずるわけにはいかない。
『なんですか? アスハのお付きさん」
 いきなりぶしつけなシンの声が聞こえた。ため息を吐きたい衝動にかられたが、なんとか抑える。
「シン君、だったな? とりあえず今回は一緒の出撃だ。よろしく頼む」
『二年間のブランクがあるからって、足を引っ張らないで下さいよ。それはショーンが乗るはずだったんですしね』
「………」
 無駄だと悟ったアスランは、おとなしく相手を変える事にした。
「ルナマリアもよろしく頼む。まあ戦闘中は君とは話さないらしいが……」
『ええ、よろしくお願いしますね。私みたいな駄目赤服があなたみたいな英雄と共に出撃できるなんて光栄の極みです』
「………」
 盛大な嫌味に、アスランはまた黙り込むしかない。
 気まずい雰囲気―――と言っても通信越しの雰囲気だが―――を破ったのはメイリンからの通信だった。
『各モビルスーツは、対MS戦の準備をして下さい!』
「何だと? 対MS戦?」
 アスランの問いに答えるかのように、通信は続く。
『ジュール隊が謎の部隊と交戦中!急いで援護に回って下さい!』
「イザーク……!?」
 思わず知った名前を聞いて驚いたアスランだったが、それでも自分のすべきことを忘れたわけではない。
 素早くビーム突撃銃をザクの腕に持たせ、戦闘準備に入った。

「何イライラしてんだよ、ルナ」
「それはそっちもでしょ!」
 シンの質問に、ルナマリアはぶっきらぼうに答えた。シンが言い返そうとするより先に、メイリンから通信が入る。
『ねぇ、シン。シルエットは?』
「え、ああ。フォースで頼む」
『もう、しっかりしてよ、二人とも。やらなきゃいけない事はいっぱいあるでしょ』
 メイリンの言葉の外に様々な意味を感じて、ルナマリアはむかっと来た(実際メイリンは私生活での事も込めて言ったのだが)。
 だがあいにく、ルナマリアには言い返せる暇が無い。既に発進数秒前だ。
『コアスプレンダー発進、どうぞ!』
「……ルナマリア・ホーク、コアスプレンダー、出るわよ!」
 様々なパーツが射出されていき、合体して青きモビルスーツ・フォースインパルスとなる。
『ミネルバは先の戦いのダメージが残っているため、あまりスピードは出せません。
 モビルスーツ隊は先にユニウスセブンに向かって下さい!』
「了解した。行くぞ、ルナ!」
「分かってるわよ!」
『………』
 デブリ帯での戦いとは違う意味で、メイリンは心配になった。

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