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Lnamaria-IF_赤き月の鷹_第13話

Last-modified: 2013-10-28 (月) 02:45:51

議長とのお茶会

ガルナハンを攻略したミネルバは、ジブラルタルより進軍したザフト軍によって解放された黒海沿岸都市の一つ、ディオキアに寄港した。

「今まで海だの基地だの山の中だのばかりだったから、こう言うきれいな街いいですね、ザラ隊長」
「ああ、そうだな」
「あ? この曲って?」

「ああ、お前ら! ラクス様がコンサートやってんぞ!」

ショーンやヴィーノ達が駆けて行く。

「ご存知なかったんですか?御出になること」
「あぁ……ああまぁいゃ……」
「ま、ちゃんと連絡取り合っていられる状況じゃなかったですもんね。きっとお二人とも」
「ぁぁいゃ、まぁうん……」
「ああ!」

ひっどーい! 人にぶつかってあやまりもせず行っちゃうなんて! これだから男は!

「す、すみません。誰かにぶつかられて……」
「ま、確かにここは危ないな。向こうへ行こう」
「はい」

そのままアスランはあたしの腰に手を回して歩いていこうとした。

「いいんですか?見なくて」
「え? シンか。ああ、まぁうん」

まぁ、婚約者なら別にコンサート見なくても普段のファンに見せない普通の姿って奴を見てるだろうしね。

あたしたちは舞台の正面から、それほど人のいない横手に移動した。

「やっぱりなんか……変わられましたよねラクスさん」

メイリンが言う。

「いや! …ぁ…それはまあ、ちょっと……」

ラクス・クラインか……こうして見ているとただのアイドルと言う感じがする。曲がりなりにも一軍を率いた将には見えない。彼女は御輿だっただけなのか?

「なーに、お姉ちゃん、まるで睨む様に見ちゃって?」
「え? ああ、確かに感じ変わったわね。でも、今のご時勢じゃこういう元気の出る感じの方がいいかもね」

恨む価値も、ないか……。

◇◇◇

その日の午後、あたしたちミネルバのパイロットはディオキアの街を見下ろすホテルに呼ばれた。なんとデュランダル議長が来ているというのだ! タリア艦長とレイは先に行っているらしい。

ハイネ・ヴェステンフルス――有名なフェイスのパイロットが案内してくれた。

「失礼します。お呼びになったミネルバのパイロット達です」
「やぁ!久しぶりだね、アスラン」
「はい、議長」
「あぁそれから……」
「ルナマリア・ホークであります」
「シ、シン・アスカです!」
「ゲイル・リバースです」
「ショーン・コネリーです」

「君のことはよく覚えているよ」

ええ!? あたし!? そう言えば、オーブのカガリ代表に文句つけた時、議長もいたっけ。やばっ!

「このところは大活躍だそうじゃないか」
「えぇ?」
「叙勲の申請もきていたね。結果は早晩手元に届くだろう」
「ぁぁ…ありがとうございます!」

「それから君も。例のローエングリンゲートで素晴らしい活躍だったそうだね、シン君」
「いえ、そんな」
「アーモリーワンでの発進が初陣だったというのに、みんな大したものだ」
「あれはザラ隊長の作戦が凄かったんです。俺、いえ自分はただそれに従っただけで」
「この街が解放されたのも、君達があそこを落としてくれたおかげだ。いやぁ、本当によくやってくれた」
「ありがとうございます!」

あたしたちは席に着き、お茶をご馳走になった。

「兎も角今は、世界中が実に複雑な状態でね」
「宇宙(そら)の方は今どうなってますの?月の地球軍などは」
「相変わらずだよ。時折小規模な戦闘はあるが、まあそれだけだ。そして地上は地上で何がどうなっているのかさっぱり判らん。この辺りの都市のように連合に抵抗し我々に助けを求めてくる地域もあるし。一体何をやっているのかね、我々は」
「停戦、終戦に向けての動きはありませんの?」
「残念ながらね。連合側は何一つ譲歩しようとしない。戦争などしていたくはないが、それではこちらとしてもどうにもできんさ。いや、軍人の君達にする話ではないかもしれんがね。戦いを終わらせる、戦わない道を選ぶということは、戦うと決めるより遙かに難しいものさ、やはり」
「でも……」
「ん?」

シンが会話に口を出した

「あ……すみません」
「いや構わんよ。思うことがあったのなら遠慮なく言ってくれたまえ。実際、前線で戦う君達の意見は貴重だ。私もそれを聞きたくて君達に来てもらったようなものだし。さあ」
「……確かに戦わないようにすることは大切だと思います。でも敵の脅威がある時は仕方ありません。戦うべき時には戦わないと。何一つ自分たちすら守れません。普通に、平和に暮らしている人達は守られるべきです!」
「ルナマリア君はどうかね?」
「私もそう思います。かかる火の粉は掃わなきゃいけません。自衛のための戦いも否定するのなら、それは、自殺です。」
「……しかしそうやって、殺されたから殺して、殺したから殺されて、それでほんとに最後は平和になるのかと、以前言われたことがあります。私はその時答えることができませんでした。そして今もまだその答えを見つけられないまま、また戦場にいます」

アスランも話に加わる。

「そう、問題はそこだ。何故我々はこうまで戦い続けるのか。何故戦争はこうまでなくならないのか。戦争は嫌だといつの時代も人は叫び続けているのにね。君は何故だと思う?シン」
「ぇ!それはやっぱり、いつの時代も身勝手で馬鹿な連中がいて、ブルーコスモスや大西洋連邦みたいに…違いますか?」
「いや、まあそうだね。それもある。誰かの持ち物が欲しい。自分たちと違う。憎い。怖い。間違っている。そんな理由で戦い続けているのも確かだ、人は。だが、もっとどうしようもない、救いようのない一面もあるのだよ、戦争には」
「ぇ?」
「たとえばあの機体、ZGMF-2000グフイグナイテッド。ルナ君の愛機でもあるが、つい先頃、量産体制に入ったばかりだ。今は戦争中だからね。こうして新しい機体が次々と作られる。戦場ではミサイルが撃たれ、モビルスーツが撃たれる。様々なものが破壊されていく」
「……」
「故に工場では次々と新しい機体を作りミサイルを作り戦場へ送る。両軍ともね。生産ラインは要求に負われ追いつかないほどだ。その一機、一体の価格を考えてみてくれたまえ。これをただ産業としてとらえるのなら、これほど回転がよく、また利益の上がるものは他にないだろう」
「ぇ!」
「議長そんなお話……」
「……でもそれは……」
「そう、ルナマリア君、戦争である以上それは当たり前。仕方のないことだ。しかし人というものは、それで儲かると解ると逆も考えるものさ。これも仕方のないことでね」
「いえ、私の言いたかった事はそうではなくて……」
「ふむ、何かね?」
「聞いたことがあります。昨今の巨大資本にとって全世界を巻き込んだ大戦争などと言う物は、悪夢だと。なぜなら現代の戦争は彼らの資産を徹底的に破壊し、良質な労働者と言う資源を戦争に取られてしまうのですから。資本主義の発達した現代、最も大きな消費は民需です。これを減退させる戦争は企業にとって悪夢に他なりません。そうなれば経済は後退するでしょう。現にそうなっています」
「ちょっとルナマリア君、来てくれたまえ!」
「え、は、はい」

議長はベランダの隅へ歩いていく。あたしもあわてて追いかける。

「ふふふ、ルナマリア君は賢いな」
「そう言う言い方、嫌いです。大人っぽくて」
「そうだな。気をつけよう」

議長は苦笑した。

「いいかね、政治家は、清濁併せ呑まねばいけない。これから私が話すのは、ある意味汚い話だ。秘密にしてくれたまえよ?」
「は、はい!」
「人と人とが協力できる状態とはなんだと思うね?」
「お互いに協力すれば得になる事を持つ事ですか?」
「そうだ。その簡単な方法が、共通の敵を持つ事だ。これから皆の前で話す事は、私がやろうとする事は、倫理的には間違いかも知れないが、プラントを地球の仲間だと思ってもらうためには、プラントのためには必要な事だと私は信じる。どうか話を合わせてくれ給え」
「はい、いいですよ。でも、私に論破されるようじゃだめですよ」
「はっきり言う。気に入らんな」
「どうも。気休めかもしれませんが、議長ならうまくやれますよ!」
「ありがとう。信じよう」

あたし達はみんなの所へ戻った。

「さて、さっきの続きだが、戦争が終われば兵器は要らない。それでは儲からない。だが戦争になれば自分たちは儲かるのだ。ならば戦争はそんな彼等にとっては是非ともやって欲しいこととなるのではないのかね?」
「そんな!」
「あれは敵だ、危険だ、戦おう、撃たれた、許せない、戦おう。人類の歴史にはずっとそう人々に叫び、常に産業として戦争を考え作ってきた者達がいるのだよ。自分たちに利益のためにね。今度のこの戦争の裏にも間違いなく彼等ロゴスがいるだろう」
「ロゴスと言うんですか? そんな物があったなんて!」
「彼等こそがあのブルーコスモスの母体でもあるのだからね」
「なんて事! ロゴス……許せませんね!」
「だから難しいのはそこなのだ。彼等に踊らされている限り、プラントと地球はこれからも戦い続けていくだろう。できることならそれを何とかしたいのだがね。私も。だがそれこそ、何より本当に難しいのだよ……」

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