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Lnamaria-IF_赤き月の鷹_第18話

Last-modified: 2013-10-28 (月) 02:48:00

示される世界

クレタ海での激戦から逃れる事に成功したミネルバは、ラコニア湾に身を潜め、修理を行い補給を待っていた。
モビルスーツも、ザクウォーリアが大破、ファントムが中破の損害を出した。

「ショーン、ゲイル、お見舞いに来たわよ!」
「ルナ、やあ、面目ない。しばらくモビルスーツには乗れん。と言っても乗るモビルスーツがぶっ壊れちまったけどな」
「ルナー! もう痛くて散々よ」
「でも、元気そうでよかった。大破って聞いた時は心臓止まるかと思った」
「アスランとシンはどうしてる?」
「どうして?」
「いや、あいつらだけ見舞いに来ないから、気になってな」

優しいなぁ。ショーンって。自分が怪我してるのに人の事まで気遣って。

「あー。オーブ軍と激戦繰り広げたからね。オーブに縁あるでしょう、二人とも。ちょっと欝に入ったみたいで部屋に閉じこもってる」
「そうか。ま、無理もないかな」
「そうね。シンが空母を沈めた時の話は聞いてるわ。辛いわよね」
「うん……」

隣では艦長がエクステンデットの様子を見に来ていた。エクステンデットの名前は、アウル・ニーダと言うそうだ。今は眠っているが、最初の頃より消耗してる感じがする。

「そう……。なんとかなるのね?」
「ええ。本国から、アーモリーワンで捕まったエクステンデットの治療研究の資料が届きましたので」
「だいぶ消耗しているようだけど?」
「さすがに艦内ですから、フェブラリウス市と同じレベルの治療は施せません。が、これなら本国まで十分持つ物と思われます」
「そう」
「後、艦長の存在がありがたいですな。エクステンデットは投薬より精神操作等を中心として強化された者らしいので。このようにちょくちょく顔を出していただけると、精神的、容体的にかなりの落ち着きを見せます」
「はぁ……じゃ、措置は今まで通り続けてちょうだい」
「分かりました」

そっか、エクステンデットの少年、助かるんだ。ザフトの人を何人も殺した相手なのに、素直によかったと思える。だって、ロドニアのラボの話、そして今のこの精神操作された証のような状態の少年を見ると、そう思ってしまう。この少年だって被害者だ。

艦長が立ち去り際、つぶやくのが聞こえた。

「情が移っちゃったかな。はぁ……まだ若いつもりだったのになぁ。あんな大きな子供なんている年じゃないわよ」

◇◇◇

修理も終わり、ミネルバもジブラルタルへ出航しようとしていたある日、とんでもない知らせが入った。
ユーラシアへの反乱が頻発していたユーラシアに、ユーラシア中央より地球軍が侵攻。既に3都市が壊滅したと言う――

ミネルバは艦隊司令部の命を受け、次の攻撃目標と目されるベルリンに向かった

急ぎティレニア海を抜けリヨン湾から上陸、北東に進路を取る。

「あーあ、ジブラルタルまであと少しなのに、反対方向に行かなきゃならないとは、付いてないねぇ」
「そうですね、ハイネさん」
「だが、誰かが止めねば奴等はますます頭に乗って都市を焼き続けるだろう! そんなことは決して許されることではない!」
「そりゃそうだ。しかし、今からしゃかりきになってもしょうがないじゃないか。力を抜けよ、アスラン」
「……そうですね、すみません」
「謝る事はないさ。でもよかったよ。君とシン、一時は引きこもりになるんじゃないかと心配したからねぇ」
「引きこもり、ですか」
「はは、冗談さ。きっとすぐに立ち直るだろうと信じていたよ。シンは?」
「シンなら、都市を壊滅させたのが巨大なモビルアーマーらしいと言うので、入ってきた情報と今までに出遭った敵モビルアーマーから作り上げた仮想のモビルアーマー相手にシミュレーションやってます。朝から晩まで。体壊さないか心配なぐらい」
「そう言う立ち直りの方法もあるさ。じゃあ、俺も付き合ってくるか。連携が重用だったようだからな。敵モビルアーマーを倒すのに。だろ?」
「ええ、そうでした。私も行きます!」
「俺も行きます」

ベルリンまでの間、あたしたちはこうして対敵巨大モビルアーマー対策に明け暮れた。

『コンディションレッド発令、コンディションレッド発令。パイロットは搭乗機にて待機してください』

いよいよ、ベルリンが目視できる地点にまで来たのだ。ベルリンはすでに攻撃を受けているらしい。

『みんな!』
「何でしょうか? 艦長」
『情勢は思ったより混乱してるわ。既に前線の友軍とは連絡が取れなくなっています』
「「ええ?」」
『戦力が苦しいのは承知しているけど、本艦は何としてもあれを止めなければなりません。司令部は貴方達に期待しているわ。お願いね』
「……」
「さぁ、訓練の成果を見せてやろうぜ! パーッと行って、さっさと倒そうぜ」
「「はい!」」

「ルナマリア・ホーク、グフ、出るわよ!」

……

「何なんだよこの化け物は!」
「いったい何門のビーム砲積んでんのよ!」

敵巨大モビルアーマーの円盤ユニットの外周から無数のビームが放たれ街を破壊していく!

インパルスとセイバーがビームライフルを撃つ!

――あれは! やはり持っていたか! 陽電子リフレクター! でもこんなにいくつも広い範囲で!

「死角は下よ!」

「やらせるかー!」

「何?」

今まで巻き添えに会うのを避けていたらしい敵の護衛らしきモビルスーツ隊がこちらに向かってくる!

「アスラン、シン。相手頼む! 俺とルナマリアでモビルアーマーは潰す!」
「「了解!」」

「はあぁぁぁッ!!」

あたしは一気にモビルアーマーの円盤の下に潜り込み、コクピット付近にドラウプニルを叩き込む!
効かない? まさか、ラミネート装甲? なら!スレイヤーウィップ! 高周波パルスでコクピットの装甲が裂ける!

「危ない! ルナマリア!」

何? とっさに避ける!

何あれ! こいつモビルスーツでもあるの? 巨大な手が飛んでビームを放ってくる!

ハイネさんがその巨大な手にドラウプニルを叩き込む!

「まじかよ!」

その巨大な手は、陽電子リフレクターを張った! こんな物まで!

「ルナマリア! こいつらは俺が引き受ける! 早く本体を潰せ!」
「はい!」

あたしはテンペストを抜く!

「うあぁぁぁーーー!」

降下しながら巨大な脚を切り裂く! 支持部を失ったモビルアーマーは重い響きを立てて倒れる!

「これでとどめよ!」

一気に装甲の裂け目からコクピットを串刺しにする!

――敵巨大モビルアーマーは、ようやく動きを止めた……

◇◇◇

敵を倒しただけで事が終わるわけではなかった。
あたしたちが敵を倒してから、再建されたザフトの現地司令部。それは今被害の救助にてんてこ舞いだ。
彼らにちょっと悪いと思いながら、あたしは戦の疲れを癒していた。

『議長からの緊急メッセージです。各員可能な限り聞くように』

いきなり艦内放送が流れ、デュランダル議長の声が流れ始める。
何だろう?
休憩室の大型スクリーンの前に走る! そこにはどんどん人が集まってきた。

『……こうして未だ戦火の収まらぬわけ。そもそも、またもこのような戦争状態に陥ってしまった本当のわけを。
各国の政策に基づく情報の有無により、未だご存知ない方も多くいらっしゃるでしょう。
これは過日、ユーラシア中央から西側地域の都市へ向け、連合の新型巨大兵器が侵攻したときの様子です』

画面に、あの巨大モビルアーマーの姿が映し出される。

『この巨大破壊兵器は何の勧告もなしに突如攻撃を始め、逃げる間もない住民ごと3都市を焼き払い尚も侵攻しました。我々はすぐさまこれの阻止と防衛戦を行いましたが、残念ながら多くの犠牲を出す結果となりました。侵攻したのは地球軍、されたのは地球の都市です。何故こんなことになったのか。連合側の目的はザフトの支配からの地域の解放ということですが、これが解放なのでしょうか? こうして住民を都市ごと焼き払うことが!
確かに我々の軍は連合のやり方に異を唱え、その同盟国であるユーラシアからの分離、独立を果たそうとする人々を人道的な立場からも支援してきました。こんな得るもののないただ戦うばかりの日々に終わりを告げ自分たちの平和な暮らしを取り戻したいと。戦場になど行かず、ただ愛する者達とありたいと。そう願う人々を我々は支援しました』

『あの連合の化け物が何もかも焼き払っていったのよ!』
『敵は連合だ!ザフトは助けてくれた!嘘だと思うなら見に来てくれ!』

被災者の方々が声を上げている。
そうだ。あのモビルアーマーのやった事はひどすぎる! 改めて怒りがこみ上げる。

『なのに和平を望む我々の手をはねのけ、我々と手を取り合い、憎しみで討ち合う世界よりも対話による平和への道を選ぼうとしたユーラシア西側の人々を連合は裏切りとして有無を言わさず焼き払ったのです! 子供まで! 
何故ですか? 何故こんなことをするのです! 平和など許さぬと! 戦わねばならないと! 誰が! 何故言うのです! 何故我々は手を取り合ってはいけないのですか!?』

あ、ラクス・クラインの替え玉が現れ、議長を静めるように議長の肩に手を置く。
アスラン……複雑そうな顔をしてる。

『このたびの戦争は確かにわたくしどもコーディネイターの一部の者達が起こした、大きな惨劇から始まりました。それを止め得なかったこと、それによって生まれてしまった数多の悲劇を、わたくしどもも忘れはしません。被災された方々の悲しみ、苦しみは今も尚、深く果てないことでしょう。それもまた新たなる戦いへの引き金を引いてしまったのも、仕方のないことだったのかもしれません。
ですが! このままではいけません! こんな討ち合うばかりの世界に、安らぎはないのです! 果てしなく続く憎しみの連鎖も苦しさを、わたくし達はもう十分に知ったはずではありませんか? どうか目を覆う涙を拭ったら前を見てください!その悲しみを叫んだら今度は相手の言葉を聞いてください!そうしてわたく達は優しさと光の溢れる世界へ帰ろうではありませんか!
それがわたくし達全ての人の、真の願いでもあるはずです!』

再び議長が立ち上がり話し始める。

『なのにどうあってもそれを邪魔しようとする者がいるのです。
自分たちの利益のために戦えと、戦えと! 戦わない者は臆病だ、従わない者は裏切りだ、そう叫んで常に我等に武器を持たせ敵を創り上げて、討てと指し示してきた者達。平和な世界にだけはさせまいとする者達。このユーラシア西側の惨劇も彼等の仕業であることは明らかです!
間違った危険な存在とコーディネイター忌み嫌うあのブルーコスモスも、彼等の創り上げたものに過ぎないことを皆さんは御存じでしょうか?
その背後にいる彼等、そうして常に敵を創り上げ、常に世界に戦争をもたらそうとする軍需産業複合体、死の商人、ロゴス! 彼等こそが平和を望む私達全ての、真の敵です!

そうか! ディオキアでの議長の話を思い出す。
そうか……プラントを地球の一員だと認めてもらう、プラントのためになる事、とうとう始めたんだ!
まさか敵モビルアーマーまで議長の仕業なんて……はは、それはありえないか。

『私が心から願うのはもう二度と戦争など起きない平和な世界です。よってそれを阻害せんとする者、世界の真の敵、ロゴスこそを滅ぼさんと戦うことを私はここに宣言します!
私だって名を挙げた方々に軍を送るような馬鹿な真似をするつもりはありません。ロゴスを討つというのはそういうことではない。ただ、彼等の創るこの歪んだ戦争のシステムは、今度こそもう本当に終わりにしたい。
コーディネイターは間違った危険な存在と、解り合えぬ化け物と、何故あなた方は思うのです? そもそもいつ? 誰がそう言い出したのです? 私から見ればこんなことを平然と出来るロゴスの方がよほど化け物だ。それもこれもただ我々と戦い続けるためだけにやっている』

画面には、ロドニアのラボで得られたらしい資料が流れている。

『己の身に危険が迫れば人は皆戦います。それは本能です。だから彼等は討つ。そして討ち返させる。私達の歴史はそんな悲しい繰り返しだ。戦争が終われば兵器は要らない。今あるものを壊さなければ新しいビルは造れない。畑を吹き飛ばさなければ飢えて苦しむ人々に食料を買わせることが出来ない。平和な世界では儲からないから、牛耳れないからと、彼等は常に我々を戦わせようとするのです。こんなことは本当にもう終わりにしましょう。我々は殺し合いたいわけではない! こんな大量の兵器など持たずとも人は生きていけます。戦い続けなくとも生きていけるはずです!歩み寄り話し合い、今度こそ彼等の創った戦う世界から共に抜け出そうではありませんか!』

議長の演説は終わった。

シンは明るい顔でレイと話してる。みんなも。
うまくやったじゃない! 議長! みんなの意気が上がってる! あたしも会話の輪に加わった。

二日後、オーブに政変があり、久々にアークエンジェルとともに姿を現したカガリ・ユラ・アスハの手によって、ウナト・エマ・セイランが宰相の座から追放され、連合との条約の破棄を宣言した事がニュースに流れた。

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