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Lnamaria-IF_523第06話

Last-modified: 2007-11-17 (土) 07:26:53

……結局、アルテミスに寄った事は全て無駄だった。いえ、滞在して、戦闘して、物資を消耗しただけ、損をしたような物だ。
弾薬は戦闘にならなければ消費しなくて済む。食糧もまだ余裕はある。足りないのは水だった。
水は飲むだけじゃない。身体を洗ったり、洗濯をしたり、トイレも……衛生を保つのに大量の水を使う。機械の整備もそうだ。水が使えないと、メンテナンスにひどく手間取る。
なんとか整備が終わって食堂に歩いていくと、みんなの声が聞こえてきた。
「うっ……うっ……水を! もっと水をー!」
この声はトールだ。それをうんざりしたようにミリィが突っ込む。
「止めなよ、状況に合ってないギャグ」
「ギャグじゃねぇよ! ったく~」
「……?なに?どうしたの?」
「……だって、水の使用制限だって、昨日シャワー浴びれなかったんだも~ん」
「「……」」
「……はぁ……」
「みんなー」
「お! ルナ。ストライクの整備、完了か?」
「うん。でも、パーツ洗浄機もあまり使えないから、まいっちゃう。手間ばっかりかかって」
「……ほらフレイ!」
「……あ、あの…ルナマリアさん……」
「え?」
「この間はごめんなさい! ……私、考え無しにあんなこと言っちゃって……」
「……あんなこと?」
「……アルテミスで、ルナマリアさんがコーディネイターだって……」
「……! ……あぁ、まぁしょうがなかったわ。ミリィをあのままにしておけなかったし……」
「……ありがとう……」
本当に、この子は考え無しに言っちゃったんだろうな。気にしてない訳じゃないけど。しょうがないか。私の方が年上だし、大人にならなきゃ……


この水不足、どうするんだろうと思っていたら、マリューさんからみんなに呼び出しが掛かった。
「補給を?」
「受けられるんですか? どこで!」
「受けられると言うか、まぁ……勝手に補給すると言うか……」
「私達は今、デブリベルトに向かっています」
「……デブリベルト? って……」
「ちょっと待って下さいよ! まさか……」
なんの事やらわからないと言ったようなトールとは対照的にサイが気色ばむ。
「君は勘がいいねぇ~」
フラガさんがサイを誉める。って事は? デブリベルトには、様々な残骸が集まっている。そこから?
「デブリベルトには、宇宙空間を漂う様々な物が集まっています。そこには無論、戦闘で破壊された戦艦等もある訳で……」
「まさか……そっから補給しようって……」
「仕方ないだろ? そうでもしなきゃ、こっちが保たないんだから……」
「あなた達にはその際、船外作業艇での船外活動を手伝ってもらいたいの」
「「ぇぇー……」」
「あまり嬉しくないのは同じだ。だが他に方法は無いのだ。我々が生き延びる為にはな……」
「喪われたもの達をあさり回ろうと言うんじゃないわ。ただ……ほんの少し、今私達に必要な物を分けてもらおうというだけ。生きる為に」
ヘリオポリス……今頃無神経なジャンク屋に漁られている事だろう。それに比べれば……
「……そうよね。ジャンク屋組合なんて物まであるんだもん。この世界。それに比べりゃ可愛いもんじゃない。ね?」
「そっか。そうだな。ルナの言う通りだな」
「……ヘリオポリスも、あさられたのかな」
ミリィがぽつりとつぶやいた。私も、思っていた事だった。
「「……」」
「いっぱい、無くした物あるよね」
「……うん」
「でも、生きてるからいいじゃない。頑張ろうよ、生きるために!」
「ルナに言われちゃあなぁ」
「頑張るしかないか」
「やぁねぇ、私は元々前向きよ?」
「そうだったな。ははは」
「ふふふ」
そう言えば、ここしばらく抗不安剤を飲んでいなかった事に気がついた。
なくても過ごせちゃうんだ……って言うか、コーディネイターってばれて一部の人からひどいイジメに遭うまでは、普通に過ごしてたし。
やっぱあいつらいないと不安が軽くなるのかな。ここじゃ付き合うのは皆見知った人ばかりだし。
こんな、命の危機、なんて状況に続けざまに遭遇すると、あいつらの事なんか、くだらない、小さな事に思える。
あいつらのせいで、辛い目に遭わせちゃったね。ごめんね?
私は自分の左腕をそっと撫ぜた。




デブリ帯に着くと、私達はポッドでの船外活動を始めた。
時々出会う死体に驚いたりしながら、順調に物資を集めていった。
でも、どうしても水が足りない。


「あそこの水を!?」
「ユニウス7には、一億トン近い水が凍り付いているんだ。」
「ユニウス7って、なぁ……」
「あの血のバレンタインの、でしょ?」
「大勢、死んでるんだよね? そのまんまでさ」
みんながざわつき出す。
「そう、ユニウス7を……」
私の最近の夢に時々現れる、凍りついた巨大なデブリ。あそこで私はいつも誰かと一緒に戦っていた。それはとても大切な仲間で……アスランもいたような気がする。
「気が進まないかも知れないけど、水は、あれしか見つかっていないの」
「誰も、大喜びしてる訳じゃない。水が見つかった! ってよ……」
私が俯いているので心配してくれたんだろう、マリューさんとフラガさんが声をかけてくれる。
「……いえ、いいんです。毒を食らわば皿までも。ですよ」
「そうか。ならいいんだ」
「……でも……」
「なんだい?」
「笑わないで下さいね? 最近、夢を見るんです。今まで見た事も無かったはずのユニウス7の夢を……そこで、凍った大地の上で、私は戦っているんです。ザフトのジンってモビルスーツと」
「……気をつけろって事か」
「……はい……」
「わかったわ。ユニウス7からの水の補給の時には、ルナマリアさんとフラガ大尉で交代で護衛に当たる事にしましょう。いいわね? 二人とも」
「はい!」
「了解しました!」




水の補給は順調に進んだ。プラントの砂時計型のコロニーは、かなりの面積が水面だ。その凍った海? 湖? から適当な大きさにした氷塊を、船外作業艇で次々に運び込んで行く。
私の心配は、余計な心配だったかな?
私とフラガさんは既に2交代している。水の補給も後4時間程で終わるみたいだから、後一交代ずつ……
「あ……」
大きなデブリの向こうを白い綺麗な船が通り過ぎて行く。民間船? まるで、まだ生きてるみたいだ。撃沈されたばかりって感じ。
――!
デブリの向こうに強行偵察型――複座のジン! なんでこんなところに…… アークエンジェルが見つかって、応援を呼ばれたらアウトだわ……
私は、デブリの影からその複座のジンに狙いを付ける。
「……行っちゃえ……行ってよ……そのまま……あ!」
ジンが船外作業艇に気づき、銃口を向ける!
「馬鹿! なんで気づくのよ!」
私が放ったビームライフルの光は過たずジンの胴体に吸い込まれて行き……小さな爆発が起こった。
「……馬鹿……」
「ありがとう、ルナ!」
「マ、マジ死ぬかと思ったぜ」
「お嬢ちゃん! どうした!」
「……殺したくなんて、なかったのに……あ!」
救命ビーコンの音! 救命ポッド!?


「つくづく君は、落とし物を拾うのが好きなようだな」
「すみません。でも、私が拾わなきゃ誰も来なかったかも知れないから、しょうがないですよね?」
「……まぁ、今度はな」
ナタルさんがため息をつく。
「開けますぜ?」
マードックさんが用心深くハッチを開ける。
「ハロ ハロ、ハロー、ハロ、ラクス、ハロ」
出て来たのは、けたたましく奇声を上げるピンクのボールだった。
「「はぁ??」」
「ありがとう。御苦労様です」
「「はぁ??」」
続いて、こんな宇宙にふさわしくない、ふわふわに広がるスカートを膨らませて、飛び出てきた女の子一人。
……プラントの反逆者! ラクス・クライン!……
心がざわめく。
「……ラクス・クライン!」
「え?」
マリューさんやナタルさんがこちらを振り向く。
私は、ただ目の前の少女から目が離せずに睨み付けていた。


時が止まったようなその時間は、その少女の言葉で破られた。
「あらあら?まぁ!これはザフトの船ではありませんのね!?」
「「……はぁ……」」
「ポットを拾っていただいて、ありがとうございました。私はラクス・クラインですわ」
「ハロ ハロ! ラクス、ハロー」
「これは友達のハロです」
「ハロハロ。オモエモナー。ハロハロ?」
「……はぁ……」
「……やれやれ……」
如何にもほんわかした感じの少女だ。でも、私は力強い言葉で戦いの場に立つ彼女を知っているような気がした。


知りたかった。私の心を妙にざわめかせるこの少女の事を。
「なんて言ってる?」
「聞こえない。黙ってよトール」
「お前ら、静かにしろって」
いきなり扉が開く!
「「うおぉぉ……」」
「お前達にはまだ、積み込み作業が残っているだろう!」
ナタルさんの一喝!
「「うわぁぁ……」」
「さっさと仕事に戻れ! ほら、ルナマリアも」
「はーい」
しょうがない私も引き上げだ。
あ。扉からちらっと見えた時、ラクス・クラインと名乗った少女がにこりと微笑んだ。
私は見とれてしまい、またナタルさんにどやされてしまった……




……! あのジン、もしかして!
作業が終わって、食堂に行く時に、ふと私が狙撃したジンの事を思い出した。
あれは、もしかしてあの子の事を探しに来ていたの? そんな! でも、そんな事わかる訳ないじゃない! わかったって……どうしようもなかったのよ。あの時は、あれしか……
「嫌よ!」
……? 食堂から、フレイの鋭い叫び声が聞こえた。
「フレイー!」
「嫌ったら嫌!」
「なんでよ~」
「どうしたの? カズイ」
「……ん。あの女の子の食事だよ。ミリィがフレイに持ってって、って言ったら、フレイが嫌だって。それで揉めてるだけさ」
「私はやーよ!コーディネイターの子の所に行くなんて。怖くって……」
「……」
「フレイ!」
「……あ! ……も、もちろん、ルナマリアさんは別よ? それは分かってるわ。でもあの子はザフトの子でしょ? コーディネイターって、頭いいだけじゃなくて、運動神経とかも凄くいいのよ? 何かあったらどうするのよ! …ねぇ?」
……本当に考え無しね。この子。人の気持ちを考えないの?
「フレイ!」
「でも、あの子はいきなり君に飛びかかったりはしないと思うけど……」
「……そんなの分からないじゃない! コーディネイターの能力なんて、見かけじゃ全然分からないんだもの。凄く強かったらどうするの? ねぇ?」
「……はぁ……じゃ、いいわよ。私が持っていくから」
私は答えた。正直、あの子の事が知りたかった。しゃべってみたかったのだ。


「まぁ!誰が凄く強いんですの?」
え?
「ハロ ハーロー。ゲンキ! オマエモナ!」
「「あっ!」」
あの子――ラクス・クラインが、そこにいた。
「わぁー……驚かせてしまったのならすみません。私、喉が渇いて……それに笑わないで下さいね、大分お腹も空いてしまいましたの。こちらは食堂ですか? なにか頂けると嬉しいのですけど……」
私は、また、この子に見とれてしまった。
「鍵とかってしてないわけ…?」
「やだ! なんでザフトの子が勝手に歩き回ってんの?」
「あら? 勝手にではありませんわ。私、ちゃんとお部屋で聞きましたのよ。出かけても良いですかー? って。それも3度も」
「「……」」
「それに、私はザフトではありません。ザフトは軍の名称で、正式にはゾディアック アライアンス オブ フリーダム……」
「な、なんだって一緒よ! コーディネイターなんだから」
「同じではありませんわ。確かに私はコーディネイターですが、軍の人間ではありませんもの」
「「……」」
「貴方も軍の方ではないのでしょう? でしたら、私と貴方は同じですわね。御挨拶が遅れました。私は……」
「……ちょっとやだ! 止めてよ!」
フレイのあまりにもの嫌がりぶりに、ラクスさんはきょとん、と首を傾げた。
「冗談じゃないわ、なんで私があんたなんかと握手しなきゃなんないのよ! コーディネイターのくせに! 馴れ馴れしくしないで!」
――!
「フレイ!」
バシン!
ミリィが、フレイの頬を叩いた。フレイはびっくりした顔で固まっている。
「ごめん。ルナ。この子にはよく叱って置くから。その子を部屋に戻して、食事運んでいって」
「……わかったわ。じゃあ、ラクスさん、行きましょう」
私がトレイを左手に乗せて右手を差し出すと、ラクスさんは嬉しそうに手を握ってきた。




「何よ! ミリィ! なんであたしが叩かれなきゃいけないのよ!」
「まだ、わからないの?」
お嬢様にしては、いい子なんだけどね。ミリアリアはサイを見た。
サイは頷くとフレイに言った。
「フレイ、自分がコーディネイターだったらって考えた事があるか?」
「ないわよ! そんなの! 気持ち悪い事言わないで!」
「親は子供をコーディネイトするかしないか選べるけどな、子供は選べない。フレイ、実はお前はコーディネイターだよって言われたら、どうする?」
「そんなの、私の親は絶対子供をコーディネイトなんかしないもん!」
「たとえ話もわからないの?」
ミリアリアはつい口を出してしまった。
「ルナの、左腕見た?」
「え? 確か包帯が巻かれてたけど、それがどうかしたの?」
「ヘリオポリスが崩壊した日、地球軍の士官からコーディネイターは敵だと言われてね、ルナが自分で切ったのよ」
「……!」
フレイは驚愕した。信じられなかった。自分で自分の身を傷つけるなんて!
「それだけじゃない。ルナがコーディネイターだとわかったら、地球軍の奴らルナに銃を向けやがった。ルナは、また切ろうとした。……今までもな、ルナがコーディネイターだって知った奴から、ひどい嫌がらせを受け続けて、ルナのリストカットが始まったんだ。今も医者に通ってる」
「フレイが、コーディネイトを嫌うのはわかるわ。でも、コーディネイター自身は、コーディネイターだと言うだけで、嫌わないで欲しいの」
「……わかってるわよ。ルナマリアさんは特別って。でも、よく知りもしないのにコーディネイターとなんか仲良く出来ないわよ! 特にあの子、ザフトのお偉いさんの娘でしょう!? 仲良くなんてできないわよ!」
「おい、フレイ!」
居た堪れなくなって、フレイは部屋を飛び出した。
「……そうよ、ルナマリアさんはサイもミリィも仲間だって言うから信じられるけど、他のコーディネイターなんてすぐに信じられるわけ無いじゃない……」




「またここに居なくてはいけませんの?」
部屋に入ると、ラクスさんはつまらなそうに言った
「ええ、そうですよ」
「つまりませんわー……ずーっと一人で。私も向こうで皆さんとお話しながら頂きたいのに……」
「これは地球軍の艦ですから。コーディネイターのこと、その……さっきのようにあまり好きじゃないって人も居るし……殊に、今は敵同士ですから……」
「残念ですわねぇ」
「……ええ」
つまらなそうにしているこの子も、魅力的な顔だ、と思った。
「でも! あなたは優しいんですのね! ありがとう」
「……!」
「ふふ」
「……私も、コーディネイターですから……」
「そうですか。でもあなたが優しいのは、あなただからでしょう?」
「……え?」
「お名前を教えていただけます?」
「ルナマリア・ホークです」
「そう。ありがとう。ルナマリア様」
「様は止めてください、ラクスさん。仲のいい友達はルナって呼びます」
「まぁ。じゃあ、私達、お友達になって頂けますの!?」
「は、はい。ラクスさんがよろしければ」
「『さん』はいりません。ラクス、でよろしいですわ」
「じゃあ、ラクス。友達の握手をしましょう」
「はい、ルナ。ふふふ」
「ふふふ」
花が咲いたように笑うラクスは、眩しかった。友達と言ってくれた事が嬉しかった。
「あら?」
「え?」
「その包帯……もしかしてザフトの方との戦闘で怪我でもされたのでしょうか?」
いきなり憂いを秘めた顔になるラクス。私はあわてて説明する。
「え、いえ、これは……そのー。さっきのラクスみたいに、コーディネイターを敵視する人に遭った時に、衝動的にやっちゃったんです。自分で。自傷行為ってやつですね。あはは」
「まぁ……」
「ごめんね、ラクス」
「なんで、私に謝るのですの?」
「だって、ラクスが悲しそうな顔しているから」
「辛い……思いをされて来たのですね。でも、謝るならどうかご自分の身体に謝ってください」
「うん、もうしないって、謝ったよ。この前」
「よかった! ……その方とは、どうなさったのですか?」
「仲良くなった人もいるし……実は、それこの艦のマリュー艦長なんだけどね。まぁ、絶対遭いたくないままの人もいるし。色々です」
「でも、一人だけでも分かり合えたのは、素晴らしい事ですわ」
「そうですね。あ、しゃべってばっかり! さあ、食事も冷めないうちに食べてください」
「ええ!」
私は、ううん、私達は、幸せだった。


名残惜しく部屋を出ると、サイが近づいてきた。
「ルナ! ミリィから聞いた」
「……? ああ」
「あんまり、気にすんな。フレイには後で言っとく」
「うん……フレイってさ、ブルーコスモス?」
「まさか!」
「そう。よかった……」
「……でも、そう思われても仕方ないよな」
「……まぁ私もね? 思わないでもないんだな。病気でもないのに遺伝子弄るのおかしいって。イジメに遭ってた時は特にね。コーディネイターなのに変かな? 両親を恨んだりもしたわ。両親が私をコーディネイトなんかしたから苛められるんだ――って。私の両親は何を思って私をコーディネイトしたんだろう……」
「ルナ……」
部屋の中から、歌声が流れてきた。ラクスが歌っているのだろう。
「あの子が歌ってるのか?綺麗な声だなー」
「ええ」
「でもやっぱ、それも遺伝子弄って、そうなったもんなのかな?」
「ラクスは、自分自身はコーディネイトは受けてないって言ってたよ」
「そうなのか!? 弄ってなくてピンクの髪か!? やっぱ一旦コーディネイトしちゃうと後が怖いなぁ。……あ、悪い、ルナ!」
「だーめ。罰。デコピン!」
「いったー! じゃ、俺達も食事に行こうぜ!」
「ええ!」










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