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Lnamaria-IF_523第09話

Last-modified: 2007-11-17 (土) 07:38:49

「艦隊と合流したってのに、なんでこんな急がなきゃならないんですか?」
格納庫に顔を出すと、フラガさんは妙に焦って作業をしていた。
「不安なんだよ! 壊れたままだと……」
「第8艦隊っつったって、パイロットはひよっこ揃いさ! なんかあった時には、やっぱ大尉が出れねぇとな」
マードックさんがひょっこり顔を出す。
「お嬢ちゃん、残るんだってな。心強いや」
「そう言えば、お嬢ちゃん。夢! 夢は、見ないのか? 最近、その予知夢って奴」
「夢……ですか?」
「ああ、今までも、結構当たってたじゃないか」
「……地中海のような所で戦ってる夢でしょうか? 最近は。陸上戦もあり、海上戦もありです」
私が、ザフトレッドの制服を着て戦っているとは、言えない。
「だー! 降下に失敗するってのか!? それともアラスカから……まさかな」
「夢ですよ、夢」
「とにかく、用心して悪い事はないやね。お嬢ちゃんも……お、艦長!」
あ、マリューさんが、格納庫へ上がってきた。
「あらら、こんなところへ」
「ごめんなさいね。ちょっと、ルナマリアさんと話したくて……」
私達は、格納庫の床へ降りた。
「私自身、余裕が無くて、あなたとゆっくり話す機会を作れなかったから。……その……一度、ちゃんとお礼を言いたかったの」
「え?」
「あなたには本当に大変な思いをさせて、ほんと、ここまでありがとう」
「……自分の身を守るためでもあったし……」
「色々無理言って、頑張ってもらって……感謝してるわ」
「そんな……マリューさん」
「口には出さないかもしれないけど、みんなあなたには感謝してるのよ?」
「ぁぁ……」
「これからもよろしくね?」
そう言うと、マリューさんは手を差し出してきた。
「あ、はい」
「うふ」
握手をすると、マリューさんは、また後で、と言って去って行った。




アークエンジェルは、第8艦隊旗艦メネラオスの隣に位置した。
ハルバートン提督は、モビルスーツとこの艦の開発の一番の推進者だったそうだ。きっと、近くで見たいのだろう。
程なくして、ハルバートン提督がランチでアークエンジェルへとやってきた。私達ヘリオポリス組も整列して出迎えた。
「ん? おぉーー! いやぁ、ヘリオポリス崩壊の知らせを受けた時は、もう駄目かと思ったぞ。それがここで、君達と会えるとは……」
「ありがとうございます! お久しぶりです、閣下!」
「先も戦闘中との報告を受けて、気を揉んだ。大丈夫か!?」
「ナタル・バジルールであります!」
「第7機動艦隊、ムウ・ラ・フラガであります」
「おおー、君が居てくれて幸いだったぁ」
「いえ、さして役にも立ちませんで……」
「ああー、そして彼らが……」
「はい、艦を手伝ってくれました、ヘリオポリスの学生達です」
マリューさんがそう言うと、ハルバートン提督は私達の前に立った。
「君達の御家族の消息も確認してきたぞ。皆さん、御無事だ!」
「あーよかったぁ」
みんな、安心のため息を漏らす。よかった……父さんも母さんも無事だった……
「とんでもない状況の中、よく頑張ってくれたなぁ。私からも礼を言う」
「閣下、お時間があまり……」
副官の人が提督を促す。
「うむ。後でまた君達ともゆっくりと話がしたいものだなぁ」
そう言ってハルバートン提督は去って行った。


格納庫には、戦闘機――スカイグラスパーが二機、積み込まれていた。
そうか。ここからアラスカに降下するんだ。
私は黙々とキーボードを走らせる。私のプログラムは基礎OSから外部プログラムへと進めていた。もっと滑らかに、もっと早く、ストライクが動くように……


「精が出るな」
「あ!? ハルバートン提督?」
「ルナマリア・ホーク君だな? 報告書で見ているんでね」
「……はい……」
「しかし、改めて驚かされるよ。君達コーディネイターの力というものには」
「……」
「ザフトのモビルスーツに、せめて対抗せんと造ったものだというのに、君達が扱うと、とんでもないスーパーウェポンになってしまうようだ」
「そんなことは……この子には何度も助けられました。この子じゃなかったら、ここまで来れなかったかもしれません」
本音だった。このストライクじゃなければ……ザフトのモビルスーツだったら……きっと、私は死んでいた。
「ありがとう」
ふふ。『この子』か。女性にかかってはこのような物まで『この子』になってしまうのだなぁ。ハルバートンは妙な所で感心した。
「君の御両親は、ナチュラルだそうだが?」
「え! ……あ、はい」
「どんな夢を託して、君をコーディネイターとしたのか……」
「……恨んだ事も、あります。なんでコーディネイターにしたんだろうって」
「そうか。済まない事を聞いた。何にせよ、早く終わらせたいものだな、こんな戦争は!」
「閣下! メネラオスから、至急お戻りいただきたいと」
「やれやれ……君達とゆっくり話す間もないわ! ここまで、アークエンジェルとストライクを守ってもらって感謝している。そして志願してくれた事にもな。良い時代が来るまで、死ぬなよ!」


――ざわわ。心がざわつく。何? 何なの? 久しぶりに、普通の時に声が聞こえる。
……低軌道会戦――地球に降下しようとするアークエンジェルを援護する地球連合軍第8艦隊と、ザフト軍クルーゼ隊が交戦した戦い。コズミック・イラ71年2月13日、アークエンジェルを追撃していたクルーゼ隊はアークエンジェルが地球に降下する前に撃破すべく戦闘を仕掛け、アークエンジェルを援護する第8艦隊と交戦状態となる。艦船総数など、物量ではザフト側の戦艦3隻に対して圧倒的に第8艦隊が上回っていたが、ザフト軍モビルスーツの前になす術も無く壊滅、第8艦隊司令官のデュエイン・ハルバートン提督も戦死する――
まるで教科書の文章のような、感情の篭らない声が淡々と文章を紡いでゆく。
「……うぅ……」
「ルナマリア君! どうかしたのかね?」
声が成人男性の物に変わる。自慢気に話している。脳裏に浮かぶのは、これは教室?
(地球軍のモビルアーマーは160機弱。対して、ザフト側のモビルスーツはわずか14機。これで地球軍を打ち破ったんだ)
(もし、教官がハルバートン提督だったらどうされますか)
ああ、質問しているのは私だ……
(いい質問だ。私ならまず戦艦の数の優位を生かして砲撃戦を仕掛けるな。それで大体終わりだ。後は、モビルアーマーを一撃離脱に徹底させる事かな? 帰る所が無くなれば、如何にモビルスーツがモビルアーマーに優越しているとて早晩バッテリー切れで終わりだ……なぜそうしなかったのかは未だに謎だよ)
「大丈夫かね! 大丈夫かね! ルナマリア君!」
「……ああ、提督……来ます。ザフトが。数は戦艦が3隻、モビルスーツが十数機……」
「何だと!?」
「わかるんです、私。時々妙に感が鋭くなる事があって! 信じてください!」
「……歴戦の君の言う事だ。信じよう。すぐにメネラオスに戻る!」
「あと! 最初からモビルアーマーを出さないでください! まずは徹底的に戦艦同士で砲撃戦をしてください! モビルアーマーには一撃離脱を徹底させて! 多分、それで、勝てます!」


「お姉様!」
フレイが格納庫に飛び込んで来たのは、その時だった。
「なんで? お姉様が残るの!? 他のみんなも残るって!」
「え、みんなも? なんで?」
話し始めた二人の女性の声を聴きながら、不思議な事もある物だな、とハルバートンは思った。ルナマリア君が言った事は普通の人が聞いた所で信じまい。だが、私はそれを本気にしている……
「ご苦労様です、ハルバートン准将」
「これは! アルスター事務次官殿。事務次官殿もご苦労な事でしたなぁ」
「いやはや、命を失うかと覚悟しましたよ。ルナマリア君のお蔭もあって助かりましたが」
「事務次官殿。アラスカへ着いたらどうか、モビルスーツの開発にご助力頂きたく」
ハルバートンは頭を下げた。アルスター事務次官はブルーコスモスとは言っても穏健派だ。手も握れるかもしれない。頭を下げる事にさほど抵抗感はなかった。
「わかっているさ。我が軍のモビルアーマーが手も無くザフトのモビルスーツにやられて行く光景を見ていたのだよ? 私は。G計画、推進しようじゃないか!」
「ありがたくあります」
「その代わりと言ってはなんだが……」
ジョージ・アルスターは切り出した。
ルナマリア君の残留を聞いて自分も志願するとまで言った娘との約束、そしてルナマリア君との約束、果たさねばなるまい。
「アークエンジェルは、先遣隊から人員補給を受けただけ、でしたかな」
「大気圏内用戦闘機を2機、それとストライク兼用の予備部品も補給してあります。無論、弾薬も」
「しかし、乗る人がいない」
「確かに。しかし今の我々にはもう、アークエンジェルに割ける人員はないのです。それにアラスカへ降りるのです。そう心配した事は……」
「だが、一機はフラガ大尉が乗るとして、もう一人ぐらい、なんとかなるでしょう。万が一と言う事もある……アークエンジェルには出来るだけの事をしてやりたいのですよ」
「……わかりました。一人、なんとか致しましょう」
「助かる! これで娘に怒られずに済むと言う物です。……フレイ、別れの挨拶は済んだか?」
「……ええ。お姉様、ご無事で」
「フレイも元気でね? また状況が落ち着いたら、会いましょう」
「では、事務次官殿、我々はすぐに、避難民より一足早くメネラオスへ向かいます。よろしければご一緒にどうぞ」
「ああ、よろしく頼むよ。さ、フレイ」
フレイは、格納庫を出るまで、ルナマリア君に手を振っていた。まったく、コーディネイターを毛嫌いしていたと言うのに、変わる物だ。ナチュラルとコーディネイターの融和は、案外早いかもしれない。
「早く、平和な世の中にしたい物ですな? 子供らが安心して会えるような?」
「同感です。事務次官殿」
二人の男は、それぞれに決意を新たにした。




「ナスカ級1、ローラシア級2、グリーン18、距離500。会敵予測、15分後です」
「こちらへ向かってきているのか?」
「3隻か……当たったな」
「何ですか? 閣下?」
「いや。なんでもない」
ルナマリアの言が当たった事に、改めてハルバートンは驚きを感じた。
「全艦、密集陣形にて、迎撃体勢! アークエンジェルは動くな! そのまま本艦に付け!」
「Nジャマー、展開! アンチビーム爆雷、用意!……モビルアーマー隊は出さなくてよろしいので?」
「その必要は無い。今出しても、主砲射撃の邪魔になろうよ」
ハルバートンは思う。ルナマリア君の言った事は考えてみれば道理だ。こちらの勝機は、艦艇とモビルアーマーの数を生かす事にしかない。……モビルスーツの威力に怯えて、考えが後ろ向きになっていたかもしれんな。
最初から勝てぬとなどと考えていれば負けるのが当たり前だ!
「補給艦、離脱!」
「ランチ収容、ハッチ閉鎖!」
「うむ。砲撃戦用意!」
後に低軌道会戦と呼ばれる事になる戦いが始まった。


ネルソン級、アガメムノン級合せて10隻を超える地球軍の戦艦からビームが、ミサイルが放たれる。
アンチビーム爆雷などでその威力は削がれるため沈められる艦はなかったが、尚もかなりの密度で砲撃を浴びせ続ける。
ザフト艦も負けじと砲撃を開始する。モビルスーツの発艦も確認された。
「撃て! 撃て! 撃ちまくれ!」
ホフマンが全艦隊に向かって吼える。
「ジン2機、いや、3機撃破を確認!」
オペレーターが伝えて来る。
艦橋は歓喜の声に包まれる。
だが、すぐにオペレータの声がそれに水を差す。
「敵モビルスーツ、イエローゾーン突破しました!」
「む。モビルアーマー隊、発進!」
「ワルキューレワン、ワルキューレツー、発進!」
ハルバートンの指示でホフマンが命令を下す。


「セレウコス、被弾、戦闘不能!」
「カサンドロス、沈黙!」
「アンティゴノス、プトレマイオス、撃沈!」
「ぬうぅ……」
モビルスーツに内懐に入り込まれたとたん、これだ。やはり、奴らは侮るべきではないのだ。
「モビルアーマー隊に伝えろ! 一撃離脱に徹しろと! 奴らの攻撃のじゃまをするだけでいい!」
「敵ナスカ級、及びローラシア級接近!」
「セレウコス、カサンドロスに直撃照準!」
「なに!?」
「接近してくるか! ようし、全艦、前方に突出しているローラシア級に攻撃を集中しろ!」
第8艦隊のビームとミサイルが放たれる。ただ一艦、ガモフを目掛けて!
ナスカ級より小柄な船体は、すでに被弾していた。急に密度を増したビームが、ミサイルが、その破孔を穿った。ガモフは、内側からの圧力に耐え切れず爆散した。
だが、歓喜の声が上がる前にオペレーターが告げる。
「モビルアーマー隊、損耗率20%!」
「早いな……」
戦いの行方は、誰にもわからない……


「クセルクセス、パリス、前へ出ます!」
「Xナンバー、接近!」
「ビームを使うんだ! 落とせ!」
「アークエンジェルより、リアルタイム回線」
「……なんだ?」
『本艦は、艦隊を離脱し、直ちに、降下シークエンスに入りたいと思います。許可を!』
「なんだと!?」
「自分達だけ逃げ出そうという気か!」
『敵の狙いは本艦です! 本艦が離れなければ、本艦が離れない限り、敵は諦めません!』
「うっ……」
『アラスカは無理ですが、この位置なら、地球軍制空権内へ降りられます! 突入限界点まで持ち堪えれば、ジンとザフト艦は振り切れます。閣下!』
「ぬぅ……。マリュー・ラミアス。ふん! 相変わらず無茶な奴だな」
『……部下は、上官に習うものですから……』
「いいだろう。アークエンジェルは直ちに降下準備に入れ。限界点まではきっちり送ってやる。送り狼は、1機も通さんぞ!」
『はい!』
アークエンジェルとの通信が切れる。ハルバートンはホフマンに命ずる。
「シャトルも脱出させておけ。同じくアラスカには着けないだろうが、これ以上戦闘に巻き込まれるよりよいだろう」
「はっ」




私はストライクのコクピットに座って戦況を聞いて一喜一憂していた。
怖い……何も出来ないのが怖い。
『総員、大気圏突入準備作業を開始せよ』
とうとう降りるのね。うまくいくといいけど。
『イージス、ブリッツ、先陣隊列を突破! メネラオスが応戦中!』
「艦長! ギリギリまで俺達を出せ! 何分ある?」
フラガさんが要請する!
「このままじゃぁ、メネラオスも危ないですよ! 艦長! カタログスペックでは、ストライクは、単体でも降下可能です!」
「ええ、でもやった人はいないのよ? ……わかったわ。許可します」
「ただし、フェイズスリーまでに戻れ! 高度とタイムは常に注意しろ!」
「はい!」
「こんな状況で出るなんて、俺だって初めてだぜ……!」
「ルナマリア・ホーク、行きます!」


「……動きが鈍い! 重力に引かれてるの!?」
でも! 頑張らなきゃ!
幸いジンでここまで降りてくる命知らずはいない。
見つけた! イージス!
イージスは私を認めると、こちらにやってきた!
「ルナ! ルナマリア・ホーク」
「アスラン! あなた馬鹿よ! このまま大気圏突入するつもり!?」
「目的も果たせずして、今更戻れるか!」
「しつこいんだよ! お前らぁ!」
フラガさんもうまくブリッツを牽制している。
「アークエンジェルに着艦しなさい! 投降して! そうすれば無事に地球に降りられるわ!」
「うるさい!」
私の忠告はアスランを怒らせてしまったようだった。
本気で攻撃して来る! 私は回避に専念する。
ああ! アークエンジェルと離れてしまう!
――! 上から衝撃が来た。
何? あ、残ったローラシア級が、爆発している! やった。
でも、今の衝撃で決定的にアークエンジェルと離れてしまった。……もう、この高度ではストライクでは戻れない。
!? アークエンジェルが、寄せて来てくれてる!? これなら、なんとか……




「もはやこれまでか!」
ラウ・ル・クルーゼは唇を噛んだ。
自らもシグーに乗り込みモビルアーマーを落としまくったものの、地球軍は未だに18隻を数え、モビルアーマーも50機はいるだろう。
アークエンジェルまで辿り着いたのはイージスとブリッツのみ。その2機も、重力でこれ以上の攻撃は無理そうだ。
それに対してこちらはガモフをやられ、デュエル、バスターを除けばジンも残りは6機。その半数は被弾、バッテリー充電のために戦線を離脱している。
――! 閃光が走った。ツィーグラーがやられた光だった。
「潮時か……! アデス、撤収するぞ! モビルスーツ隊に撤退命令を出せ!」
ヴェサリウスから、撤退信号が放たれる。
「ハルバートンめ! 能力を侮っていたか……! 次は見ていろ!」
モビルスーツを収容すると、ヴェサリウスは最大戦速で撤退していった。


メネラオス艦橋では、ナスカ級が撤退するのを確認しても、誰もが無言だった。引き続く被害報告に、感覚が磨耗していたのだった。だが、
「どうやら勝ったな」
彼らの司令官がぼそりとつぶやくと、艦橋のあちこちから、勝った……勝った……と言う声が聞こえ始め、それは歓喜の声に変わった。
「「ばんざーい! ばんざーい!」」
「アークエンジェルはどうか?」
「は。どうやらアフリカに降下したようです」
「そうか……無事にアラスカまで辿り着ければよいのだが……」
勝ったとは言え艦艇の約半数、モビルアーマーの2/3を撃破されると言う大損害を受けている。
これでアークエンジェルがアラスカに辿り着けなければその犠牲が無駄となる。
「だが……これ以上ここにいても出来る事はなさそうだな。各艦、モビルアーマーの収容及び生存者の救助を行え! 帰還する!」






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